11月に読んだ本。
●「心とろかすような マサの事件簿」宮部みゆき[東京創元社](97/11/29)
宮部みゆきのデビュー作、「パーフェクト・ブルー」は元警察犬のマサを主人公にした話でしたが、これはその続編の短編集です。
当時、「パーフェクト・ブルー」を読んだ時は、ちょっとその「犬視点」に馴染めなかったんだけど、今回のは楽しめました。私もそういうものに慣れたから、っていうのがあるのかなあ。
ほろっとくるような話も、心が寒くなるような話も、みごとに描いています。さすが宮部みゆき。
ハラショウのエピソードとか、キたもんなあ…
宮部みゆきは、ハズレがない作家ですので、もし万が一読んだことがない人は、短編集から読んでみることをオススメします。
この短編集も、「パーフェクト・ブルー」を読んでなくても楽しめます。私もすっかり話を忘れたまま読んでいたし(笑)。
ファンの方はもちろん買い、ですよね。
●「バカンスの掟 雷&冥シリーズ3」尾鮭あさみ[角川ルビー文庫](97/11/29)
雷&冥シリーズ第3弾。学園モノのボーイズラブ小説なんですが、登場人物も話もハチャメチャです。
今回は修学旅行で、沖縄。そこで、暴力団同士の抗争に巻き込まれちゃうことに…
今回登場の新キャラがいい感じです。大人の男でねー。カッコいいです(*^ ^*)。
話も文章も、あいかわらずの飛ばし方で、楽しかったです。
●「顔のない女 EM3」雨宮早希[集英社](97/11/28)
エンバーミングシリーズ3冊目。
エンバーミングというのは遺体修復のこと。日本ではなじみのない風習だけど、アメリカでは日常的に行われてるそうです。この話の主人公は、村上美弥子という女性の日本人初のエンバーマー。彼女元に送り込まれてきた遺体は、顔を原形をとりとめないほど潰されていた。その容疑者は、整形をしながら逃亡中の容疑者・今井葉子だった…
現実に起こった、あの事件を彷彿させるものですよね。
まあとにかく、シリーズも第3作になって、安定してきたかなあ、って気がします。
安定して楽しめますね。
●「小説たけまる増刊号」我孫子武丸[集英社](97/11/27)
評判の本、やっと私もゲットすることができました(*^ ^*)。
これは、我孫子武丸の短編集ですが、本の構成というか、装丁がおもしろいんです。
「小説すばる」のような、文芸誌スタイルになってるんですよ〜。これがどうおもしろいかは、実物をみてもらえば、すぐにわかるんですけど…特に、目次なんて圧倒です。我孫子武丸の連発だし(笑)。グラビアまでついてます(笑)。裏表紙の広告には爆笑でした。
…実をいうと、中身はほんのちょっとしかまだ読んでません(^ ^;)。最後まで読み終わるの待ったらいつアップできるかわかんないし、中身読まなくても、買って満足だったから。
とにかく、アイデアが楽しくて、パラパラみてるだけで笑えるというか、それだけで値段分(1900円ですが)とったかなあ、って気がするので。
とにかく、一度眺めてください。装丁のせいか、文芸誌のあたりにおいてあったりします。あれ、本屋さんが勘違いしてるのか、わかった上でシャレで置いているのか…私が買った本屋の場合は、前者のような気がしますが(^ ^;)。
●「やさしい竜の殺し方」津守時生[角川スニーカーブックス](97/11/25)
ネットで評判よかったのと、オススメしてくれる方がいたので、買ってみました。
宮木圏の武道会優勝者に、幻獣退治の依頼が来た。傭兵たち5人がパーティを組んで、でかけることなる…というこのあたりは、いかにも「RPG」な設定。でも、この後の展開が意外な方向に行くんですね〜。
幻獣ハンターの少年に、美貌の元聖騎士(男)は熱烈な愛の告白をされちゃいます。その少年は、実は人間ではなくて…あ、でもそれほど怪しげな(^ ^;)話じゃないですよ〜。えっちシーンは別にないし(笑)。
帯に「『愛してる』は最強呪文」と書いてあるとおりに…結局、愛と癒しの、成長物語というところでしょうか。
キャラ同士のテンポのよい会話が楽しいです。
個人的には、あとがきに書いてあった、「ショタの竜王さま」のエピソードも読んでみたかったなあ。
ライトなファンタジーが好きな方にはオススメです。
●「西の善き魔女2 秘密の花園」荻原規子[中央公論社](97/11/23)
「西の善き魔女」の第二巻。今回は、フェリエルは、トーラスの修道院付属女学校に送りこまれます。
舞台が全寮制の女子校、女だけの世界での「戦い」が描かれます。
…いやあ、女って怖いですよねー、ほんと(笑)。
今回のフェリエル、カッコいいです〜〜〜。そして、ルーンはかわいいし(笑)。
なんだか、ヒーローとヒロインか逆の立場のような気がしてきた(笑)。
あとは、アデイル、出番は少ないながらやってくれますねぇ……。アデイルの、あの小説にしても、単なる趣味だけではなく(…それも大きいんだろうけど(^ ^;))、ちゃんと意味のあったことなのね。
マリエもいいです。なんだか、ユーシスだけが情けないというか(^ ^;)。
やっぱり女の子が強いよ、この話は。
とんでもない授業があるし、結構陰残な事件は起こってるのに、読後感はすっきりしてるのは、フェリエルのおかげかな?
…それにしても、ルーン。一体、どこであれを覚えたのやら(^ ^;)。
●「紅の喪章 デルフィニア戦記14」茅田砂胡[中央公論社](97/11/22)
「デルフィニア戦記」の14巻。今回は、シェラ大活躍です〜〜〜!!
いやあ、成長したよねー…しみじみ。
あとは、リィが………まあ、表紙をみてください。この表紙はなかなかいいですよね(*^ ^*)。
とにかく今回も一気読みさせられました、はい。
●「魔術士オーフェンまわり道1 悪逆の道」秋田禎信[角川mini文庫](97/11/21)
オーフェンシリーズがmini文庫に登場。これは本編での「無謀編」って感じの話です。オーフェンは本編でのストレスを発散するべく(?)暴れるし、クリーオウはいつもどおりだし(笑)、マジクは…いつもほどは不幸ではないかもしれない。あれでも(笑)。まあ、とにかく楽しかったです。
●「28年目のハーフタイム」金子達仁[文芸春秋](97/11/20)
ワールドカップの予選からこっち、中田くんにハマっちゃって、色々なページをみている時に、この本の紹介を読みました。さっそく、ゲット。
ブラジルに勝った、あのオリンピックでのサッカー。あの裏で一体何があったのか、それについて検証した、ノンフィクションです。雑誌「Number」の連載記事を元にした本です。
…これが…すごくおもしろい。人間ドラマとしての魅力、サッカー自体の魅力と怖さ、日本と世界の文化的な話、世代的な話…なんだかもう、頭がぐるぐるでした。とにかく、わかりやすいっ!!サッカーの素人にもわかりやすくクリアに書いてあります。もっとも、わかりやすいからといって、この作者の視点で描かれた物語を、絶対的な真実と受け取ってはいけないのはわかっていますが。でも一面の事実には違いないだろうし。
私自身はフィクションの方が好きで、ノンフィクションはあまり読まないのですが、ノンフィクションのおもしろさを堪能させていただきました。
これは、本当にオススメ。私が今年読んだ中で、三指に入るおもしろさです。
それと、11/20に発売された、雑誌「Number 12/4号」に、同じ金子さんの『「伝説が作られた夜」。』と『「祈り」。』というドキュメントが載ってるんですが、これがまたすごい。何度読んでも泣けるなあ、これは。文章がうまい、描写が的確、切り口がおもしろい。今回のワールドカップ出場記念に、なにか一冊関連本を買う気があるなら、絶対に「Number」を!!
「28年目〜」のデータを書いておくと、ISBN 4-16-353260-9、1429円(税別)のハードカバーです。今年の9月25日発行、11月15日に4版がかかっています。今度のワールドカップで、たぶん増刷がかかるだろうし、簡単に手に入るようになるんじゃないかな?
●「禁猟区」図子慧[集英社スーパーファンタジー文庫](97/11/19)
「狩人月」の続編の「禁猟区」と、読み切りの「雨の日、ぼくは釣りに行く」の二つの話がのっています。
「禁猟区」の方は、JUNEなバンパイヤものです。……まあまあ、おもしろかったけど…。
もうひとつの「雨の日〜」の方は、冴えない女子校生・ニッキは、学校でも人気の美形・新庄につきまとわれ、嫌がらせを受け続ける。なぜそんな目に会うのか、ニッキには理解できないまま、やがて…という感じの話。うん、これはよかったです〜。ニッキの感じる苛立ちがすごくリアルでよかったなあ、と。この人の場合は、男同士の話よりも、女の子がでてくる話の方が、いいなあ。
●「狩人月」図子慧[集英社スーパーファンタジー文庫](97/11/14)
「禁猟区」という本を買って、最初の方を読んでいたら、意味がわからない…あらら、続編だったのね(^ ^;)。というわけで、買ってきました。JUNEというか、耽美(^ ^;)な短編が5つ載っています。作家歴の長い方だけあって、なかなか読ませるなあ、と。一番おもしろかったのは、「めくるめく月」。高校生の、男二人と女一人の、歪んだ三角関係の話。好きなパターンなんです、こういう三すくみって。
●「スリピッシュ! 〜盤外の遊戯〜」今野緒雪[集英社コバルト文庫](97/11/13)
「スリピッシュ! -東方牢城の主-」の続編。
今回は、アカシュが誘拐されてしまい、東方検断副官エイ様が振り回されて苦労するわけです(^ ^;)。
かわいそうに、エイ様…。
今回、初登場(だよね?前の時には、本文中に書いてあっただけだと思うから)の王様!!いやあ、おもしろい方ですね(*^ ^*)。あと、指輪の運命が(笑)。
●「グイン・サーガ58 運命のマルガ」栗本薫[ハヤカワ文庫](97/11/13)
おおー、またでました!!鬼のような発刊ペースですよね〜。帯に書いてあった予定によると、なんと12月11日に外伝、1月下旬に本編がでるとか…月刊ペース…すごすぎ。
さて、今回はナリス様と、イシュトヴァーンの邂逅です。そこにヴァレリウスくんも絡んできて、恋の鞘当て…じゃないが、近いものがあるよな(爆)…で大変!!…って感じです〜。
それにしても、今回は濃密でした〜。いやあ、堪能しました。互いの心理やその駆け引き、そしてヴァレリウスくんをいたぶるナリス様(爆)。読み応え、あります。
今回で、話が大きく動きました〜。まさかこうなるとはね(*^ ^*)。さあ、これから先がどうなるのか、楽しみ。
あと、挿し絵のナリス様ですが…美しいんですが、あの天野ナリスにあった、狂気じみた美しさが…末弥さんには末弥さんの魅力があるし、ないものねだりばかりをしてるようで、心苦しいけど。
●「妖都」津原泰水[講談社メフィストクラブ](97/11/12)
ホラーです。推薦文を書いているのが、綾辻行人、井上雅彦、小野不由美、菊池秀行というメンバー。その上、装丁は京極夏彦。…ってことで、買ってしまいました。
その事件は、CRISISのボーカリストの自殺から始まった。東京で、「生きている屍体」が人を殺し始める事件が起こりはじめ…
…うーむ。自分の「ホラー感応力」のなさをつくづく自覚してしまった…ホラー自体、ロクに読んでないから、ホラーの文脈がわかってないんだろう。だから、もうひとつピンとこなかった。
あ、でも砂犬はよかったな、砂犬は。
●「きんぴか 気分はピカレスク」浅田次郎[飛天文庫](97/11/10)
浅田次郎の本がそろそろ単行本化される時期に入って、嬉しい限りです。この本も、ハードカバーの時に指をくわえてみていただけで、文庫本でやっと読めるように(*^ ^*)。
まっすぐさゆえに、世間からどこがずれてしまって、ドロップアウトした、極道者、元自衛官、元大蔵省エリート官僚。その3人を定年退職した名物刑事が集め、何をやりはじめるのか…
設定やキャラの作り方が、非常に「マンガ的」です。…そういえば今、ビジネスジャンプでマンガ化されていますが。
キャラの作り方とか、エピソードのひとつひとつはおもしろいんだけど、話をトータルでみると、バランスが悪いんですよね。ストーリーに芯がないというか。…浅田次郎さんでさえも、こういう時期があったんですねぇ…そういえば、この作品、初出の時期とどこから出たかが書いてないぞ(^ ^;)。普通は書くものだよねぇ…
それにしても、最後のあれはいただけないなあ。いくら相手がひどい奴でも、あれだけはしちゃいけないと思うよ(^ ^;)。…普通の一般の人に、どれだけ取り返しのつかない迷惑をかけてしまうか(^ ^;)。そういう感じがしたので、爽快感ががもうひとつ感じられなかったです。
●「踊る夜光怪人 〜名探偵夢水清志郎」はやみねかおる[講談社青い鳥文庫](97/11/8)
「夢水清志郎」シリーズの第5弾。これは、児童文庫の推理モノですが、とぼけた探偵に、三つ子の姉妹とのやりとりとかなかなかいい感じなんですよ。
今回は、全身が光る、「夜光怪人」の出現と、お宝のありかをしめす暗号…などがメインになっています。
暗号モノとしては、結構オーソドックスですよね。でも、私自力では解こうとはしませんでしたが(^ ^;)。
今回は、レーチが再登場。亜衣ちゃんとレーチのやりとり、なんか読んでて照れくさかったわ(^ ^;)。…若いっていいねー、青春だねー、って感じですか(笑)。
個人的には、このシリーズって結構好きなんです。よければ読んでみてください。作者のページは、ここ。
●「グリーン車の子供」戸板康二[徳間ノベルズ](97/11/5)
非常に高名な作品だし、興味があって読んでみたかったけど、古い本だけに簡単に手に入らなかったんですよね。古本屋でみつけて、迷わずゲットしました。
これは、引退した歌舞伎の名優・中村雅楽が安楽椅子探偵をする、ミステリ短編集です。発表されたのが昭和37年〜昭和51年の作品です。私が生まれるよりも、はるかに前の作品もあります。
話の半分以上は歌舞伎にかかわる話です。歌舞伎を知らなくても、「ミステリ」として楽しめますが、でも歌舞伎の知識があった方が、もっと楽しめるんだろうなあ…
ミステリとしては、ちょっと古いかな?って思う。(たしかに古い作品だもん(^ ^;))
理論的な飛躍がありすぎる話や、展開が完全に読める話もあったし…
その中で、表題作の「グリーン車の子供」は、日常のささいな謎から解き明かしていく様がみごとだったなあ、と思います。おもしろかったです。
HOMEへ