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【ヒカルの碁:第92局「打倒進藤」】 00/11/06
今週のジャンプ。「ヒカルの碁」は第92局「打倒進藤」。和谷くんとヒカルの対局はヒカルの勝ち。消沈してうつむく和谷くんの、耳からアゴにかけての線が美しいなあ。和谷くんの気持ちをうまくあらわしています。ノートを見つけたときの三谷くんの背中のように、小畑先生の表現力が見事だからこそ、「絵で微妙な気持ちをみせる」演出が可能なんでしょうね。さて、話は戻って、切り替えがはやい和谷くんは、ヒカルに「sai…いつか話したネット碁の強い奴並に、お前は強くなった」と。前に院生編で和谷くんと対局したときに「saiのように強くなるかもな」と言ってた言葉をうけてのエピソードでしたが、この前の「sai」の伏線がこの前ふりでしかないんだったらがっかりだなあ。…まあ、ほったさんのことですからそうみせかけて、あとの方でじわっと効いてくるようになるかもしれないけど。
で、これでユン先生、柿本先生に続いて佐為とヒカルを同程度だと認める人が3人目。くどいくらいダメ押しのエピソードですが、ここまで立て続けにやられるということは、佐為のアイデンティティの危機のエピソードは思った以上に近そうな感じがします。プロ試験編が終って、プロ編に進む間にあるのかも。
さて舞台は変わって越智くんの家。越智くんが試験から帰ってくるとアキラが待ち構えています。越智くんの勝利を誉めはするものの、アキラの気持ちはヒカルの対局に。もちろん越智くんもそれに気がついていて、いらだたしく思います。越智くんの祖父が「合格祝い」を口に出したところ、「まだ最終戦が残っています」と止めるアキラ。結局、アキラはヒカルしかみてない、自分のことなんて眼中にないことに怒った越智くんは、「進藤に勝てばボクをあなたのライバルとして認めてくれますか?」と宣言を。勝利をすれば、塔矢名人の研究会に通わせてください、という越智くんに「わかった、そうなったら父に頼んでみよう」と返事をしたアキラでした。…それにしてもアキラってほんと思いこんだら周りのことが全然見えなくなっちゃうのねぇ。今回のも越智くんが何にいらだっているのか、もうひとつわかってない感じでした。これだからストーカーと呼ばれちゃうんだよ。でも、越智くんがもう少し美形だったら、越智→アキラにも萌えられたのに。そういう愛憎半ばの関係性は結構好みなので。
そして最終戦の日。最後の対局予想をしている奈瀬ちゃんと飯島くん。和谷VSフクはフク有利、ヒカルVS越智は五分五分ではないかという飯島くんに、「進藤の評価も上がったもんねぇ」という奈瀬ちゃん。ヒカルの棋力があがったことを、こういうなにげない会話でみせて説明くさくならず、次のエピソードにすんなりつなげるあたりがほったさんのうまさだなあ。あと、プレーオフに関する説明が少し。ヒカルと和谷くんが3敗、伊角さんが4敗で、そのうち合格は二人。もしヒカルか和谷くんが負けて伊角さんが勝てばプレーオフ。そしてヒカルはメンバー最強の越智くんが相手、和谷くんは苦手とするフク相手と負ける要素もあるわけで。…和谷くんがフク苦手というのは院生編の最初からの伏線ですが、あそこを書いてるときにはすでにプロ試験編の主なエピソードの骨組は決まってたんでしょうね。「ヒカルの碁」は無駄のない構成からしても、最終話までのおよそのエピソードは決まってるし、表面に表れない裏設定もかなり 煮詰めてあるんじゃないかと私は考えてるんですが、どうでしょう?
さて、対局場で越智くんと顔をあわせたヒカル。「毎晩のように塔矢と打ってきた」という越智くんの言葉の後ろに、アキラの幻影をみたヒカルだった…以下次号。
問題はこの次。…ほったさんのことだから、プレーオフにもつれ込むと思わせてあっさり終ったりするなんてこともあるかなあ。伊角さんには頑張ってほしいけれども、和谷くんが落ちるとも思えないし。ましてヒカルは。
さてさてさて!! 今回一番のトピックは、なんといっても緒方さんが王座への挑戦権を得たことが分かったことですっ!! 本因坊戦でヘタレな負け方をして以降、話にはまったく登場していなかったんですが、落ちこんでいたわけではなかったのねっ。河合さん(ヒカル行きつけ碁会所の顔のこいオジさん)の初登場のときの「緒方は勢いあるからいずれタイトルのひとつでもとる」というセリフといい、「新しい波」のこともありますから、今回は勝てるとみたっ!! 緒方王座。…いい響きだなあ。劇中でもそろそろ対局が始まる頃だろうし、遠くない先に緒方さんの再登場はあるかも…あるといいな。はやく緒方さんの顔をみたいです。
で、緒方さんが王座になって、ヒカルとの新初段戦をするという展開もあるわけですね。saiがらみからヒカルは桑原本因坊の可能性の方が高いかな。
【ヒカルの碁 第93局「プロ試験最終戦」】 00/11/13
今週の「ヒカルの碁」。第93局「プロ試験最終戦」。越智くんの口からアキラの名前がでて、驚くヒカル。なぜ越智が?…と思いつつ、自分のことを何か言ってなかったか、越智くんに問い詰めます。ヒカルのことしか見えていないアキラへの苛立ちゆえか、越智くんは「アキラはヒカルのことは気にしていない。それよりもヒカルとの一局に勝てば自分をライバルとして認めてくれると言った」と告げます。しかしヒカルは本能的に、越智くんの言葉は嘘で、アキラは自分のことを意識している…ことに気がつきます。その越智くんの後ろに見える、幻のアキラに向かって「越智に勝ったら俺をライバルとして認めてくれるんだな」と叫ぶヒカル。アキラの眼中にない越智くんも気の毒だけど、ヒカルだってアキラが本当にみているのは自分じゃないことは知ってるから。だからこそ、アキラに本当の「自分」をみてもらって初めてスタートラインに立てるのだから。
さて、一方展開予想をしている奈瀬ちゃんと飯島くん。和谷くんの噂をしているところにちょうど和谷くんが登場。先週のヒカルと違い、自分の噂話をしているところに平気で入っていけるあたりが彼のキャラなんでしょうね。でもこの和谷くん、ちょっと加賀くん入ってるような。小畑さん、絵はきれいなんだけどそれぞれのキャラのビジュアルの統一がとれてないところあるからね。(一時の脅威的な伊角さんの美形化といい、緒方さんの若返りといい) それにしても、「どんな明日だろう 俺たちの明日って」で哀愁漂ってますが、今回の試験はダメでもまだあなたたち若いんだから強気にならなきゃ!! 奈瀬ちゃんは女流枠だってあるんだし。
そして、対局開始時間に。ヒカルは越智くんの向こうにアキラの視線を感じます。そしてヒカルの後ろにには佐為が…
今回の対局はある意味アキラと佐為の代理戦争だとすれば(あのアキラと佐為の対比はそういうイメージですよね?)アキラは佐為に勝てるはずがありません。ということで、ヒカルの勝ちかな? プレーオフはにおわせておいて、結局そこまでいかないまま終るんじゃないかなあという気がしてきました。…いや、ほったさんのことだから和谷vs伊角さんというある意味残酷な対戦を仕組む可能性は捨てきれませんが。
それにしても、こういうまわりくどい、じれったいライバル関係は小年誌では珍しいですよね。アキラにしてもそんな回りくどいことしなくても、ヒカルの家にいって「一局打ってくれ」といえば済むことなんですが。…アキラの場合は同年代で初めてみつけたライバルにコテンパンにされて、焦がれて相手に近づこうとすれば拒否され、やっとのことで叶った対局では失望させられる。しかも、それでもまた可能性をみせられて混乱した挙句、「もう会わない」と言ってしまう。そのせいで気になっても自分から近づくこともできない。アキラはただでさえあの何かに夢中になったら周りが見えなくなる性格ですから。
一方、ヒカルの方もアキラが見ているのは佐為であって自分ではない、という焦燥感があって。だからこそ、正面からみてもらえるだけのカをつけるまでは会いに行くわけにもいかないのだから。
こういう直接あいまみえないことで成立する奇妙に歪んだライバル意識も、この作品に独自のおもしろさを与えているわけですが、ヒカルがプロに合格したらふたりの対局が簡単に実現しそう。そうすると緊張感が保たなくなりそうですが、どうするのかなあほったさんは。ほったさんのことだから、意外な展開で魅せてくれるでしょう。それよりも個人的にははやく緒方さんとか、倉田さんとか出してほしいものです。
そうそう、このあたりの話は、ヒカルの碁 かってヨミ。の「いただきもの」にある蓮さんの一連の「ヒカルの碁」論がなかなかおもしろいです。
来週は表紙&巻頭カラー。また?という感じですが、人気ある作品だし、小畑さんのカラーは見栄えがするし、原作付きだから他の作品に比べてスケジュールに余裕があるし…というのはあるんでしょうね。でも、「ヒカルの碁」だって80年代のジャンプ全盛期だったら玄人好みの中堅作品に過ぎなかったと思うので、ここまで頻繁にカラーは回ってこなかったでしょう。今はジャンプってコマが足りないなあ、と感じますもの。新連載や新人の読みきりもイマイチな作品ばかりだし。ちょっと前までの主力作品もパワーが足りなくなってるし。特にここしばらくの「シャーマンキング」の失速ぶりは痛々しく感じるほど。私は「ヒカルの碁」が続くかぎりジャンプは買いますけど、80年代のジャンプ黄金期を知ってるだけに、今の状態は寂しすぎる。サンデーやマガジンも飛びぬけた作品がなく、少年誌に活気が感じられないし。マンガ界全体が消沈しているように感じるけど、この閉塞状況を打破してくれるようなパワーに溢れた作品がどこかにないですかねぇ。
【ヒカルの碁 第94局「激戦」】 00/11/20
今週のジャンプ。なにげに「テニスの王子様」が休みで、「ハンター」は休載中だし。なんかちょっと寂しい感じがしました。来週は「ナルト」と「ルーキーズ」も休みで、「ハンター」が復活するかどうかはまだわかんないし、どうなるのかねぇ。ジャンプも昔と違って今は作家さんにもローテーションで休みを与えるようになってますが、その方が結果的に作家さんを潰さずに済むからだとやっと気がついたのか、それともマンガ家の立場が多少は強くなったのか。
さて今週の「ヒカルの碁」。第94局「激戦」。表紙&巻頭カラー。おそらく100局目のときにまたカラーが回ってくると思うのですが、そんなスケジュールで小畑さん大丈夫かしらん。カラーは服の質感の出し方があいかわらずうまいですね。色使いはそれほどうまいとはおもわないだけど…(ジャンプだと鳥山さん、尾田さん、岸本さんあたりが配色が上手)
今回の話は、ヒカルの記憶が走馬灯のように。2年前に佐為が現れ、そしてアキラと出会って。色々あってアキラから縁きりを宣言されたけれども、ヒカルがプロになれば…佐為ではない、ヒカル自身の力が認められれば、今度こそはライバルとして目の前に立つ資格ができるから。それらを考え、ヒカルは気合をいれます。ちなみにこの回想シーン、一見昔の原稿のコピーにみえますが「筒井の碁」によると1コマを除いては同じシーンでも微妙に構図を変えたりしてあってほとんど書きなおしだそうです。まあ、小畑さんも1巻からみてかなり絵のタッチが変わったから、古い絵を並べたら違和感を感じるのは確かですが。
さて、息詰まる熱戦となったヒカルvs越智。ヒカルの甘い手を見逃さずに攻める越智くんが有利。若獅子戦や秀英戦でヒカルがみせた「一見悪手にみえる好手」も、越智くんはさらに読みぬいて上をゆく手を打つ。絶対的に不利な状況ではあるけれども、ヒカルは少しでも光明をみつけるために必死で考え、粘りに粘って…以下次号。
熱い回でした。今週はネタバレでストーリーだけを聞いた時には正直おもしろいとは思えなかったんですが、あいかわらず巧妙なネーム割り(時間のさりげないみせ方はさすが)、そして何より小畑さんの絵チカラに感服でした。
さて、次あたりでこの越智戦も終わりかな? 今回これだけ回想シーンがあって「vsアキラにおいてヒカルがスタートラインに立つ」ことを強調してるんだから、越智くんに負けてプレーオフも戦うという展開にはならないでしょう。作中で雨が振り出しそうになってますが、きっと次回は雨をうまく使った演出をしてくれるでしょうね。
連載中時間が実時間とほぼ同時進行だった作品ですが、3月位にイッキに夏まで話がとんだかと思ったら、プロ試験編で時間の流れが逆転しましたね。作中では今は10月末のはずです。まあ、プロ試験が終ったらまた話は飛びそうですが。とにかくはやく緒方さんと倉田さんを出してくれ〜。
作者近況によると、小畑さんの初連載作品(当時は土方茂名義)「サイボーグGちゃん」がリニューアルされてコミックス化されるそうですね。要望が多かったのかな? 私もこの作品は3,4巻だけ古本屋でゲットしたんですが、今とはちょっとタッチが違います。北条司ぽい感じの絵でした。でもGちゃんの若い頃の姿って、一時期の美形な伊角さんそっくり。…このコミックスを読んで、「これが本来のタッチだったんだ」とわかりました。今の「リアル志向が入りながらアニメ絵ぽい線のきれいな絵」というのは小畑さんなりにウケる絵というのを探った上でたどり着いたところなんでしょうか。「ヒカルの碁」もコミックス最初の方はもっとアニメ絵ですもんね。ちなみに「サイボーグGちゃん」はギャグマンガです。中身は…10年前のジャンプでは4巻で打ちきられたけど、今のジャンプだったら低空飛行ながら15巻程度は連載が続きそうなレベル、と言うと却ってわかりにくいかなあ。4巻に収録されていた読みきりの版での「Gちゃん」は笑えたけどね。「Gちゃん」のコミックスがでたら1,2は買うと思います。書き下ろしがあるなら、3,4も買ってもいいけど。
そういえば、スクウェアと集英社が提携を結んで、ジャンプのネット配信も行うそうですが、「発売週の土曜」っていうんじゃなあ…好きな絵があったときにデジタルでデータがほしいとき位? できれば発売前の土曜日に「早売り」として出してくれるなら、好きなマンガだけ読みにいけるんだけどな。
【第95局「2人目の合格者」】 00/11/27
今週のジャンプ。ハンターの連載、ちゃんと再開したんですね。それにしても最近の話はすっかり旅団が主役…
さて、「ヒカルの碁」第95局「2人目の合格者」。プロ試験最終戦も終盤になった頃、日本棋院出版部の人たちが合格者取材のためにプロ試験会場にやってくる。そして、越智vsヒカルは、ヒカルが越智くんのわずかなスキを見逃さずにくいついたせいで、盤面を五分五分に戻し、また先はわからなくなる。ひたむきに戦うヒカルの向こうにアキラを感じる佐為。アキラはヒカルの中に佐為とヒカルの二人をみてたせいで困惑した。初めてアキラに相対したのは佐為。でも今後のアキラに答えてゆくのは、佐為ではなく、佐為の力を吸収したヒカルである……ここしばらくの佐為のアイデンティティを揺るがすエピソードの連続の後の、この佐為の独白はどういう意味を持つんでしょうか。佐為がヒカルの糧に甘んじるようなことにはなってほしくないです。まあほったさんのことだから、そんな単純な展開にはならないと思いますが…
一方、日本棋院で指導碁中のアキラ。プロ試験結果が気になり、気もそぞろ。出版部の記者に20連勝記録を称えられ「21世紀の旗手」ということで単独取材をしたいと申し込みされても、意識はこの日の夜に越智くんちへ行って結果を聞くことに向いてしまってるために、取材に気乗りでない様子。でも、「研修センターに電話をかけてプロ試験結果を聞くか」という記者さんの言葉に「僕にも結果をっ!!」とすぐにスイッチがはいっちゃうんだよぇ。
そして、研修センター。最終戦を勝利し、残った和谷とヒカルの結果を外で待っている伊角さん。雨が降りはじめます。対局室でのざわめきに、伊角さんが視線をそちらに向けると嬉しそうに泣く和谷くんの姿が。苦手なフクに勝利し、プロ合格を決めた和谷くんでした。動揺する伊角さん。自分に「勝つものが上にいく。それはこの世界にいる誰もが覚悟していること。その覚悟あっての上で皆今まで共に笑い語りあってきた」と自分に言い聞かせます。そして、気を落ちつけるためにお茶を飲もうとして、対局室からのざわめきについ手が滑ってお茶をこぼしてしまう伊角さん。あわててテーブルをふきながら、気が気ではない。…果たして勝者はヒカルか越智くんか…
付記。アキラパパは名人戦の防衛成功だそうです。緒方さんの王座への挑戦はどうなってるんですか〜〜〜。連勝記録は倉田さんが25連勝、なんと桑原先生も27連勝しているとか。さすがあなどれないジジィだけのことはありますな。
ネームでの説明に頼らず、画面構成と絵だけでこれだけの緊張感を出すあたりはいつものことながらさすがです。最後の小道具としてお茶を使ってのタイミングのずらし方(かつ伊角さんのキャラを見せるシーンにもなっている)とか見事。
それにしても伊角さん……やっぱり不合格かな。私は特に伊角さんファンってわけではないけれども、彼にはやっぱり合格を決めてほしかった。いくらいい人でも、強くても、勝負というのはそれだけで決まるものではないんだね。切ないねぇ。伊角さんの独白、共に夢を目指す仲間であっても結局は潰しあいをするライバルだということ、頭で分かっていても感情では処理しきれない感じが切ない。これでヒカルが勝ったとして、弟分としてかわいがってきた和谷くんとヒカルに先を越されてしまうことになるけど、それでも伊角さんは笑っておめでとうと言えるのだろうか。…勝負の苦しさをリアルに描いてきたこの作品だけに、そういう薄っぺらい表現にはなってほしくないですね。読者が一番思いいれしやすい「凡人代表」の伊角さんがどう気持ちを切り替えて次に持っていけるか、納得のいく答えをみせてほしいものです。
…それにしても、若獅子戦のあと、プロ試験になればみんなライバルだ、という表現があったじゃないですか。そのときはヒカルもピンときてなかったけど、私だって全然分かってなかったな。…なんか、痛い気持ちです。伊角さんは来年こそは頑張って(←まだ結果はでてないけど)
本日のURL:平八さんの蔵
蓮さんの「ヒカルの碁」ファンサイト。鋭い考察や感想、味わい深い創作など。やおい系ではありませんので、そういうのが苦手な方も安心。
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