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【ホームページを持つということ3】 00/11/22

さて、前日の続き。ちょっと前にでた高瀬彼方さん「カラミティナイト」(ハルキ文庫)という小説の中盤にこんなエピソードがありました。話のネタバレについては作者である高瀬彼方さんの了解はとっていますが、未読の方の興味を削ぐことになるのは申し訳ありません。ただ今回のエピソードの部分は話の本筋ではなく、本質的なおもしろさはこれくらいでは損なわれないと思いますので、興味を持った方はぜひ本を買って読んでください。9月末にでたばかりなので、まだ手にいれやすいと思います。

高校1年生の智美は「沢村智美のホームページ 幻想の梢」というサイトを持っていて、そこに(ありがちファンタジーもどきの)自作小説を発表している。第一部でボリュームが1000枚を超える大作だ。彼女は将来の小説家を夢見ていて、「いつかプロ作家になろう同盟ウェッブリング」にも参加していた。自作を愛して、キャラクターイラストを書いたり、マスコットぬいぐるみを作ってその写真をサイトにアップするほど熱心だった。
しかし楽しいネット生活はある日を境に崩壊してしまった。「ザ・さらし者!」というヘタレなサイトを取り上げてこきおろすページに智美のページが取り上げられたせいで、嫌がらせメールが殺到し、自分がリンクしている友達のサイトにも迷惑をかけてしまった。傷ついた彼女は、WEB上からも自分のパソコンからもすべてのファイルを削除して、自分のサイトを閉じてしまったが…

こういうのはネット上で特に珍しいことではないですよね。大手のヘイト系サイトも存在するし、2ちゃんねる周辺ではお馴染みの光景ですから。(ただし最近の2ちゃんねるでは潰しにかかるよりも、こっそりとあざ笑う「まったりと観察」方式が推奨されてる模様) 今までにこうやってサイトが閉鎖されるのを頻繁にみてきたこともあって、もし私がこの世界にいてネット上で出来事をみただけなら「創作やってて、プロを目指すのを公言しているわりにはちょっとつつかれたくらいで閉鎖するなんて覚悟が足りないなあ。」と思うかもしれない。しかもネットでの智美の行動は、本名をサイト名にしてたり、自分にちょっと酔ってるフリートークとか「少しイタいヒト」として描かれてるせいもあって、もしネット上の行動だけみてたら「かわいそうだけども自業自得な部分もあるかも」と判断しちゃうんだろうな。
でも、この智美は気が弱いながらも人の気持ちも考えられる、本当にいい子なんですよ。たしかに彼女にも悪いところもあるかもしれないけれども、ただ経験と覚悟がほんの少し足りなかったというだけで、なぜあそこまでひどい目にあわなきゃいけないのか?と。(実は物語ではこのあとこんなものは比じゃないくらい、彼女はひどい事態に巻き込まれてゆくのですが…)
なんか今まで偉そうなことを書いてきてたけれども、サイトや掲示板の発言の向こうに「感情や人格を持った一人の人間」がいる…回線の向こう側にいる人のことを思いやる「想像力」、私も衰えてきてたかも。表層に浮かび上がる文字の波だけに気をとられ、感覚がマヒしてしまって。自分ではネット慣れしてると思いあがってる部分があるだけに余計。
初心にかえって、もっと言葉のひとつひとつを大事にしなきゃいけないなあ…と「カラミティナイト」を読んで考えたのでした。
…ちなみに「カラミティナイト」でのネット描写はストーリーのメインではないですが、今の空気をうまく伝えていますので、ネットモノが好きな方は読んでみるのが吉。

インターネットが量的にも質的にも始まった頃の「学術ネット」とは変わってしまった今、様々なルールも時代に合わせて変わっていってもいいんじゃないかと個人的には思っています。その話は次に。ちなみにキーワードは「棲み分け」


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