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【匿名。】 00/12/12

「グイン・サーガ」の新刊のあとがきネタから、ネットでの「匿名」について。
「大辞林第二版」によると、「匿名:自分の実名を隠してあらわさないこと。また、実名を隠して別の名を用いること。」となっています。この通りの意味では、匿名の反対語は実名となりますが、ネット上では実名を出したからといってイコール信頼とはならないように思えます。その実名が実名ぽい変名かもしれないし、実社会であっても名前を知ってる相手が必ずしも信用できるかどうかは別のことになるのと同じでしょう。
個人的に考えている「匿名ではない」という条件は「真名(まな)を名乗る」こと。それは本名である必要はなく、「自分である」と認識し、アイデンティティと結びついている名前であればニックネーム(ハンドル)であってもかまわない。
「通りすがり」「●●ファン」など自らをわざと多数に埋没させて責任逃れを意図をしていハンドルは論外として、普段は使わないその場かぎりの捨てハンドルも私の中では「匿名」にラベリングされます。
そのハンドルが真名か捨てハンドルかは一見しただけではわかりませんが、私が判断基準としているのは、「継続による信頼」が存在していること。ハンドルであっても、書きこみの向こうに人格がきちんと感じられる状態。特定掲示板への定期的な書きこみや、趣味や嗜好を現したホームページなどのような、その人の嗜好のバックホーンを示す文章が多数あること。さらにフリーじゃないメールアドレスを提示していればなおよろし。
こういうのをうまくまとめているのが、黒木さんの掲示板の注意。議論系ではそうやって自らの責任をとれる人じゃないと参加できない方式にしないと、有意義な論議はできないと思うので。
逆に「匿名」であるため個々の責任が問われないために、自由な論議を目指したのが2ちゃんねるですが、それが有効に働いて中身の濃いスレッドに発展していることもあるのは確かです。でも、大抵の板では荒らし行為の誘発につながるだけで、悪意の吐き溜になってることが多いですし。聞いた話では、一部の板ではキャップ制(メールで申請することで特定のハンドルをpasswordで保護するシステム)が全員に適応されているとか。(後日訂正:聞きかじりだけで書いてました、すみません) 2ちゃんねるがアングラでもなんでもなく、これだけメジャーになって「ネットの表世界」の一部に組み入れられつつありますが、そのためには基本的な理念が色々と覆されてゆくのではないかと思います。(たしか2ちゃんねるの初期には「書きこみのIPアドレスは取得してない」とされてましたが、今は警察に提示を求められたら記録しているIPを出してるわけで。2ちゃんねるも実はすでに「匿名」ではないわけです。)
物理的には、たとえ匿名プロクシを使っていても、警察権力に頼れば誰か特定できるわけで、よほど工夫しないかぎり完全に匿名にはなれない。ネットでの匿名なんて仮のものにすぎないのですが。

インターネットは本来、初期の学術ネットだった頃は大学や研究室まで明記した実名が当たり前の世界だったわけで、ハンドル文化は「パソコン通信の悪しき習慣が流入した」という人もいる位です。今後どういう方向に行くのかはわからないけど、ブライバシーを多数の目に晒すことの危険を考えると、今から実名主義に戻ることはまず無理。ただ匿名を推奨するような流れにはなってほしくないなあ。私は「誰か」じゃなくて「あなた」とコミュニケーションをとりたいのだから。


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