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【インターネットはタダではない】 01/08/30 23:35

遅くなってすみませぬ。…というわけで、2ちゃんねる閉鎖危機事件についての話。
もしご存知ない方がいれば、初心者のための2ちゃんねる存続危機解説を参考に。

この話を聞いたときに思い出したのは、ちょっと昔の自分絡みのこと。私がやっていた「みーはー倶楽部」というジャニーズ系総合情報サイトは、とある会社がサービスで「無料HPスペース」として解放していたところでした。開設した96年頭の頃は、私の利用していたプロバイダのHPスペースが500KBしかなく、geocitiesなどの無料HPレンタルサイトも存在しなかったのでご好意に甘えたのでした。
最初は友達くらいしか来なかったサイトも、2年半後に閉鎖したときには1日8000くらいトップページのカウンターが回るくらいになっていました。
…で、そのサイトを間借りしていたサーバーがサービスを辞めることになって今のbignetに移動したんですが、そのときにサーバーの管理人からメールをいただきまして。なんと、うちのサイトは最盛期には1日で200万ヒット(画像も含めて)あったそうです。チャットや掲示板は含まない状態(別のサーバーに置いてたので)でまさかそんなにあるとは想像もできませんでした。そのサーバーの管理人は、うちのサイトのためにサーバーや回線を増設したりしてたとか。そのメールを読んだときにはその場で土下座したい気分でした。サイトを作るのに自分だけが苦労してボランティアしてたような気分でいたけれども、それは無言でインフラを支えてくれる人の努力に甘えた上でのこと。「インターネットはタダではない」のだから。ネットについての知識が全くないわけではなかったのに、それらの視点が抜け落ちてた自分があまりに恥ずかしかったのでした。
(念のため、そのサーバーの管理人の方は「苦労したことで勉強になりました」とねぎらってくださったし、今でも昔のアドレスにアクセスすると自動で転送されるような設定にしてくださってる、優しい方です。)

…さて。恥ずかしいですが、自分の無知をさらけ出します。今回の危機の原因である「サーバーの負荷は大丈夫であるが、転送量が多過ぎて転送料が月に700万ほどかかり、サーバー会社が限界と言っている」という話を聞いて、「あれ?」とひっかかったのは私だけでしょうか? 「転送料って?」と。
そう思ったのは、私だけではないんじゃないかと。たとえば私の知り合いは「転送料? なんでそんなものにお金がかかるんだ? そんなわけないだろう」と言ってましたし。ちなみにLinuxを使う程度にはマニアな人なんですが。(8/31 22:49追記。Windowsプレインストールマシーンしか使えない初心者と比べるとLinuxユーザーというのは十分にパソコンマニアであるし、このご時世ですからパソコンマニアは自動的にネット一般の知識もそれなりに詳しいだろうという程度の意味合いです)

インターネットのイメージはテレビ的なものである人は少なくないと思います。初期投資(テレビ購入)とランニングコスト(電気代)にはお金がかかるものの、いったん接続してしまえばあとはタダで見放題、そんな感じ。マスメディアも「インターネットを使えばタダでなんでもできるぞ」みたいな煽り方を昔はよくしていましたし(今も?)、そういうイメージを持っている一般人も多いのではないでしょうか。
自分が直接サービスや物に対して対価を払っていない場合は、それにかかるコストについての意識は鈍感になりがちです。(ゴミ処理とかね)

かつて、サーバーさえ自前で用意して「インターネット」につないでしまえば、あとはいくらでもタダでサイトを持てるのでは…と思ったことがありました。ちょっと調べてみて、それはありえない話だとわかりました。

インターネットというのは多くのサーバーが網の目のように結びついたものであります。でも「蜘蛛の巣」というよりは樹形図の方が近いかもしれません。NSPIXP(Network Service Provider Internet eXchange Point)などのインターネットの基幹ネットワークの多数が相互接続するポイントがありまして、「一次プロバイダ」と呼ばれるプロバイダはここに接続しております。さらにその下に別のプロバイダやレンタルサーバーの会社が繋がってたりします。基幹ネットワークの相互接続ポイントに接続するサービスを行なってる会社のひとつがJPIXですが、接続するだけで毎月かなりのお金がいるようです。…私の知識不足のために2ちゃんねるレベルのサイトを維持するためには毎月どれくらいの金額がかかるのかはわからないのですが…
また、検索しててこういう記事を見つけました。AGC、太平洋横断海底光ケーブル南ルートの接続が完了。こういう事業って今は国じゃなくて、企業が営利目的でやってるんですね。かかったコストのことを考えると、その回線を使うのにお金がかかるのはしごく当たり前のこと。インターネットに直接接続したとしても、その回線の太さ分の費用が月々発生しそうです。

で、「転送料」のこと。レンタルサーバーの場合はデータの「転送量」によって料金が決まるところが多いというのは、ただ単に利用者間での不平等を無くすためなんでしょうか? 同じ料金が払っているのに、一部の人気サイトにアクセスが集中するせいで回線が占有されて遅くなったら損した気分になるのはもっともかと。それに転送量が大きくなると、速度を出すために回線をさらに太くする必要が出てきて、その分さらに整備投資がかかりそうですものね。
もしくは、レンタルサーバーの会社が回線を借りている、さらに上流のサーバーへ払う金額は接続してる回線の太さだけではなく、転送量によって決まるったりするのでしょうか? これについては調べてみたけれどもよくわからなかったのです。もしご存知の方がいたら教えてくださいませ。
もちろん「転送量無制限」をうたっているレンタルサーバーもあるけれども、実際のところはあまりにもアクセス過多だと追い出されるようです。超有名素材サイト牛飼いとアイコンの部屋の「HTML MEMO」→「直接りンクの話」にも色々と。2ちゃんねる研究にも2ちゃんねる以外の規模の大きい掲示板でもサーバー転送量が多過ぎて追い出された話がでています。
レンタルサーバーだけでなく、有名なプロバイダに個人サイトを置く場合であっても、あまりにもアクセス集中すると追い出されてしまうこともあるそうです。ひょっとして、有名サイトで独自ドメインとったりするところの何割かはプロバイダのスペースを追い出されてしまったのでしょうか。

自分が直接払っているお金には敏感でも、自分の行動によって発生するコストは見えないだけに鈍感になりがち。地上波のテレビ放映やゴミや下水道の費用のように最終的には自分がなんらかの形で負担しているのならいいんですが、誰かにコストをすべて押しつけているような形になっていることもあるかもしれません。
ここ1年ほど、「広告」に頼るのではなくサービスの有料化を行なって、ユーザーにコストを負担させる商用サイトが増えてきました。「インターネットはタダ」はそろそろ限界に来てるようです。その動きはこれからも加速しそうです。
なんらかの恩恵を受けるなら、それにかかるコストはエンドユーザーが負担するのは当然だというのが私の考えです。今までの「なんでもタダ」の方が歪んでたんじゃないかと。でもそれを実現するには、それにはネットでの小額課金が普及しないことには無理だろうから、まだ先の話でしょうが。


【インターネットはタダではない2】 01/08/31 23:26

つっこみメールがきたんで昨日の話に少し追記しておきました。あと、2ちゃんねるが使用しているBig-serverはある転送量までは料金一定、それを超えたら従量制になるとのこと。
さて、昨日の【インターネットはタダではない】関連として、愚者の戯言の8/31に補足説明があります。「転送料」はインターネットのしくみを知っていれば当たり前のことでしょう。でも今のインターネットはブラックボックス化していて、テレビやラジオと同じようにしくみなんて知らなくても使うことはできますもの。一体何割のユーザーがシステムを知っているやら。(…そういう私も最低限の知識しか持ってないですが)
「牛飼いとアイコンの部屋」の件は、通信ログの件は口実にすぎなくて実際に問題にされていたのは転送量だったのではないでしょうか。ただし「転送量無制限」と言った手前、それを口実にでていってもらうことはできないので、「通信ログさえこれだけの量があるんだから転送量はもっとハンパじゃないんだ、という意図を読みとってほしい」とサーバー屋さんは思ってたんじゃないかなあ、と私は邪推しました。

2ちゃんねる売却というのは雑誌あわせのネタだったそうですが、それを知ったときに、今回の閉鎖騒動自体がネタ?と一瞬思ってしまいました。あまりにもタイミングよすぎたので。
でもまあ、ネットにおいてコミュニケーションの場の寿命は3年だという説がありますが、それに従うと2ちゃんねるもそろそろ崩壊してもおかしくないかなあ、と。なくなるとそれなりに寂しいのはたしか。(801板だけでも生き残ってほしい…) でも数か月もしないうちに新しい秩序ができるだろうし。バトンは誰かに引き継がれるんでしょう。
おまけ。2ちゃんねるの批判板のスレッドサーバー変えたらいかんの?に昨日私が書いた疑問「サーバー自前で立てたらどれくらいのコストがかかるのだろう?」試算が載ってました。2ちゃん規模だと月々の回線費用だけでもかなり高くなりそうなんですねぇ。


【祭りの終わり。】 01/09/02 23:19

あ、もう9月なんだねぇ…

2ちゃんねる危機騒動はひろゆき氏の公式声明(?)がメールマガジンで出たし、とりあえず一区切りかもしれません。でも2ちゃんねるが法人化したら掲示板の雰囲気が変わるだろうし。ある意味では、かなり前に参加者の激増で雰囲気が変わってしまったときに、場としての何かが死につつあったのかもしれません。私が気がついたのは8か月くらい前だけど、もっと前に「変わってしまった」と思った人もいるでしょうし。…コミュニケーションの場で発生するベクトルはコントロールできるものじゃないから、移り変わっていくのは仕方ないですけどね。
どんな新しい2ちゃんねるになるかはお手並み拝見。

また今回の騒動に関して、The Battle Watcher ANNEXの8/31になかなか興味深い見解が。私は「天然」かなあという気がしますがどうでしょうか。


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