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【著作権のはなし】 01/10/18 23:42

さて、これからの話は、今朝ちゆ12歳をみてあれこれ考えて、お昼休みに書いたネタ。帰ってきたら状況変わっててあんまり意味がなくなったけども折角書いたので載せておきます。この件は、10/18のフジコ日記に詳しいですので、そちらもご参考に。

ちゆ12歳より。ドラえもんのファンサイト(?)が小学館より警告を受けたという話題にをみて、その経過を読んだのですが… これ、どう考えても小学館の社員が出したメールとは思えないんですが。
可能性として考えられるのは、
(A)小学館の社員とは無関係なタダのいたずら
(B)小学館の事情をよくわかってないアホアホバイトが、「インターネットで問題のあるドラえもんのサイトをみつけたら報告しろ」と課長が言ったことを「警告しろ」だと聞き間違えて勝手に行動した

のどちらかではないかと。
その根拠は、
(1)文章がビジネスマンとは思えないほど幼稚。
(2)著作権ビジネスに携わっている人が著作権の基本を知らないのはおかしい。
(3)どうやら小学館関係のメールアドレスを用いず、個人のメールアドレスでだしているらしい。(経緯文章および掲示板からすると)
(4)しかも個人名どころか担当部署すら明記してなかったようである。
(5)業務といいながら公式見解と反する個人的な見解を述べているが、まともなビジネスマンであればこういうことはまずやらない。

他にもありますけど、まあとりあえずこれだけ。

一応(2)について書いておくと、作品についての感想や批評は「表現の自由」ですし、正当な引用は著作権法上認められているものであるので、「文章まで全部削除しろ」というのは変です。絵の撤去を求められることは十分ありえますが。

あの厳しすぎるとも思える小学館の著作権規定は、おそらく「ドラえもんを使ったマッドゲームソフト」などキャラクターイメージを著しく損なうものに対抗する意味で設置してると思うんですよ。ファンが自作イラストやパロディ小説を載せることまでは実質的には細かく制限はしてないはず。もちろん、問い合わせすれば「許可してません」としか返事しないだろうけどね。

ネットでの著作権問題は、一口でいえないくらい難しく微妙な話なんですが。個人的な考えは過去にいろいろと書きましたので、興味があれば日記のセレクションをみてください。
本来の理念とずれてしまっている、現行の著作権法の運用にも問題はあるでしょうが、WEBサイトを開設しているのであれば、地雷を踏まない/逆鱗に触れないよう、リスクを避けるための努力はした方がいいんじゃないかと思います。それか、徹底的に戦う覚悟を決めることですね。
具体的なリスク回避法は、
(1)著作権法の基本的な概念を勉強する
(2)世間の動向を知る(どんな訴訟や事件が起こったか…)
(3)人の著作物にかかわる内容を扱っているなら、著作権者がどういう考えの持ち主なのかを知る。(厳しいか、寛大か? ディズニーキャラでのやおいはあまりにも危険)
(4)(広告バナー設置も含む)金銭的な利益を得ない。
(5)著作権者の感情を逆なでするようなコンテンツと著作権に抵触するようなコンテンツは一緒にしない。前者で激怒させてしまったせいで、後者を口実に報復される可能性はゼロではない。(ボロクソに書いた悪口とやおい小説を一緒に置くとか)せめて別名義でサイトを設置する。

えらそうなことを書いてるけど「じゃお前はどうなんだ?」といわれるとな…私も問題となりそうなことやってるわけで。「ヒカルの碁」の感想ですね。あれは抄録とはいえないし、要約であっても元著作の紹介以上のもので、元著作を読まなくても済むようなものは問題となるそうな。そういう意味では問題あるんですよね。
一応私は問題を自覚しつつ、自分なりにリスクを算定した上でやっています。サイトにもメールマガジンにも広告は載せていないし、セリフを載せるのは「おおお、これは書きたい!!」というものだけに留めておいて、元著作からそのまま利用しないようにしています。また、小説的な表現はしない。また、あらすじよりも感想の方をボリュームが多くなるようにがんばるとか。
大体、元メディアがマンガで、あれだけ絵が美しいものですから「あんなあらすじでは絶対に本物の代替物にはならない」と胸を張って言えますけどね…
それに、現在のところ、集英社は非営利での二次利用にはわりと寛大だからやってられるというのもあるかもしれません。もし集英社が「二次利用は一切禁止」ということになったら、感想は残してあらすじ部分は全部撤去しちゃうだろうなあ。
…まあ、最近はあらすじが細かく長くなりがちなんで、もう少し大雑把にした方が無難かも…

要約の著作権の話は、「インターネットマガジン」に掲載された、第30回 情報の自由な流通か、はたまたただ乗りか?−新聞記事の利用に関しての著作権の分析−が詳しいです。でも、なんでもかんでも「著作権」で規制するのはなんかおかしいと思うんだけどなあ…著作権は「表現」を守るものだったはずなのに。情報にすぎない新聞記事にも、無理矢理「思想を表現した著作物」という解釈を当てはめてるような気がして仕方ないんですよ。 (10/19 06:55追記 コラムや詳しく取材した記事ならともかく、単にプレスリリースを丸写ししただけのような記事も新聞記事にはあるじゃないですか)新聞協会の見解によると、新聞記事の要約をサイトに載せる場合に事実だけを転載したとしても、元の記事を構成する情報の取捨選択に独自の思想があるのだから、著作権の「翻案権」に抵触するそうなんです。…そりゃ、自分で苦労せずに「タダ乗り」するのは倫理的に問題だとは思いますが、なんでもかんでも著作権で規制するのはちょっと違うような…

ちょっとオマケ。誤解されてる人も中にはいるようですが、「アイデア」には著作権はありません。また、「事実」「情報」そのものにも著作権はありません。
例えばミステリのトリックには著作権はありません。「金田一少年の事件簿」が某有名小説のトリックを流用してましたが、著作権上は問題ないんですね。もちろん道義的にどうよ?という問題は残ります。
そういえば昔、あるメールマガジンの主催者が自分のアイデア(ホームページ紹介メールマガジンなんですが、読者投稿のホームページを★を並べて5段階評価するというもの)を他のメールマガジンもやっているのをみつけて、「パクリだ! 著作権侵害だ!」と騒いでたときのことを思い出しました。…もちろん著作権侵害ではありません。アイデアを保護するものは、特許や実用新案なのですから。


【ねっとのしくみ】 01/10/21 23:52

10/18に書いた、「ドラえもん」関係のファンサイトに小学館と名乗る人からメールからメールがきた件ですが、今回のは完全にイタズラのようです。詳しくは10/20のフジコ日記にて。
それにしてもそのイタズラをした人も、無防備だよね…小学館の名前を勝手に名乗ってああいう行動をとることで小学館に訴えられる可能性があることを分かってないのでしょう。プロバイダのメールアドレスをそのまま使うなんて無防備すぎ。簡単に身元が辿れるのに。

とにかく、サイト持ちの人は最低限のネットの仕組みは知るべきじゃないでしょうか。メールアドレスの偽装(from欄のね)は簡単にできるんですから、せめてメールヘッダの見方程度は、ね。

今回の話で思い出したのは、同人文化研究所に載っていたジャンプ系同人誌怪文書事件。文字通り、ジャンプ系同人誌を作成している人のところに集英社名や作者名で警告のハガキがいったそうで。そういうイタズラをする人っているんですよねぇ…
ネットでファンサイトをやるための最低限のネット&法律知識をまとめたものも作ってみたいです。時間があれば…


【グレーゾーン】 01/10/22 22:51

著作権の問題は、親告罪ということもあって「法律に抵触するのものは全部ダメ!!」と言いきるのもなんだか…という立ち位置の中途半端が問題を複雑化してるんですよねぇ。本当は、自分のサイトで人の著作物をネタにするのであれば、同じグレーゾーンにあったとしてもどの程度の濃さ…危険度なのかをちゃんと考えながらやるべきだと思いますが。
ネット外であれば、多くの人がそういうことを考えながら行動を決めてるはず。例えば道路交通法違反をしたことがないドライバーなんてほとんどいないと思いますが、でも大抵のドライバーはルール違反をするにしてもリスク算定してますよね。同じスピード違反でも、歩道が整備されてない街中を昼間走るときと、ガードレールで歩道と車道がきちんと区切られていて、人気の少ない郊外の道ではなにかあったときのリスクが全然違うわけで。
著作権法がらみのことにしても、「下手したら逮捕されるぞ」という危険度Aのものと(市販ソフトの違法コピー配布や市販音楽をMP3ファイルにして配布あたり)、分を弁えてる限りは問題化することはあまりないことと同じグレーでも幅が広いんです。ネットでの「空気」が読めていれば、そのあたりの微妙な差違は分かるとは思うけれども… それなりの経験や、前提となる知識がないとわからないかも。


【訂正。】 01/10/24 23:48

あー、もちろん違います。>Vidさん
あれはちょっと著作権法をかじったお子様が、ほんのちょっとのことで「それは法律違反ですっ!!」って文句つけたりとか、そういうことを指してます。いるんですよ、そういう人も。世の中には白か黒しかないと思ってるのかなあ。
またこれとは事情が違いますが、ちょっとなあ…とひっかかるのは、弁護士による著作権法相談では「Q:マンガのキャラクターの絵を載せたいのですが。」「A:著作権法上問題となるのでやめておきましょう」という杓子定規な答えになってたりすることがよくあることです。まあ厳密に言えばそうなんですが、「ファンが自分のページに自作イラストを載せるのは全然かまわないよ」という著作権者も結構いるわけで。著作権者によって判断が違うから、一般論で語るのは難しいんですよね。
しかも、著作権者によってどういうルールになってるかもはっきりしてないしねぇ。オフィシャル発言をすると差し障りがあること多いから仕方ないですけども。そのあたり、「空気を読みとって!!」になるのかなあ。


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