(注意)イラスト集には6月発売予定のコミックス17巻までのネタバレが含まれていますので、コミックス派の方は17巻発売まで購入は待った方がいいと思います。
楽しみにしていたイラスト集の第一印象は「わ、デカ!!」でした。本棚に縦に入らないので横でいれています。
値段は高かったですが、個人的にはそれに見合うだけのものではあったと思います。
紙はジャンプでの裏映りがあるペラペラしたのとは全然違って重量感がありますし、大きく印刷されているために線や色の微妙なニュアンスを楽しむことができます。
収録されていたイラストはジャンプ掲載時のカラー扉絵や表紙、コミックス表紙と背表紙(16巻まで)、ポスター、イラスト類、そして番外編のアキラの回の表紙、小説版1巻の表紙、ファンブックの表紙と企画新聞のイラストも収録。番外編の佐為の回のイラストはさすがに収録されませんでした。これのデキが素晴らしいので、またなんらかの形でいい紙に印刷されたものがほしいです…
書き下ろしは
・ヒカル1枚(表紙)
・佐為1枚(裏表紙)
・佐為4枚(春夏秋冬をテーマに)
・ヒカル2枚
・佐為1枚(ポスターサイズ)
・オマケ的なページ2枚
になっています。この書き下ろしのデキがすばらしくて!! 小畑さんの絵は、私は繊細な線は好きなんですが派手な色使いをしているものの配色センスは好みじゃないですよ。書き下ろしの佐為の絵はどれも色使いは押さえ気味で、美しいです。特に冬のかき消えてしまいそうな儚い美しさには、なんと言えばいいか…
ポスターサイズの伏し寝する佐為がこれまたなまめかしい。
ヒカルの書き下ろしは、ただのお子様が痛みを知って成長し、「少年」から「大人」に移り変わりゆく時の輝きをうまく絵に留めていて、見事でした。ヒカル、カッコよくなったなあ。
コミックスの表紙イラストは、実際のイラストからデザインとして処理するときに大胆に切り取られていたようで、元絵はもう少し大きかったりすることもあります。3巻のアキラはコミックス表紙では右半身しかありませんが、元絵では上半身全部が描かれてますし。何よりサイズが大きいので絵の迫力が違います。
あと、絵によって色塗りの手間のかけ方がかなり違うんだなあと思ったり。特にジャンプの表紙は色塗りが大雑把なものが多いような。もちろんそれでも線が美しいので、鑑賞に価しますが。
連載時の本編のカラー部分も収録されていましたが、これはサイズがかなり小さいです。それが少し残念でした。せめて1/2ページくらいはほしかった…
ヒカル、佐為以外キャラクターのファンの人には値段は高いかもしれませんが、小畑さんの絵自体が好きだったら買っても損はないかと思います。収納場所に困りますが。
こうやってじっくり眺めると、ほったさんにとって小畑さんが「ヒカルの碁」の絵描きであったことは幸せなことなんだろうなあとしみじみ思います。元のストーリー自体がおもしろいですから、もし絵が小畑さんではなくもっと下手な人であってもヒットはしたと思いますが、物語の深みはかわっていたのではないかと思います。小畑さんだったからこそ、セリフなしでも微妙なキャラの気持ちが表現できたわけで。実際、セリフなど文字によるキャラクターの心理描写は、最初の頃と最近を比べると減っていますが、これはほったさんが小畑さんの絵にならそのあたりを任せても大丈夫だと思っているからできたんでしょうね。
もっとも、絵はうまいのに長いことヒットがなく不遇だった小畑さんにとっても、ほったさんとの出会いは幸運なことだったと思います。
「ヒカルの碁」は原作者と作画担当者の共同作業によって、単なる足し算以上の効果が得られることができた幸せな作品であったということで。
個人的には小畑さんの絵ではカラーよりもモノクロの原稿の方が、じっくりみたいのが多いんです。名場面の複製原画集とか出してくれないかなあ…
それがダメなら、原画展を開いてくれるといいんですが。個人的に原画で見たいのは、116、124、140、148局。どれも線で微妙なキャラの気持ちを見せてくれる、すばらしく気合の入った絵なんですが、コミックスではかなり縮小されるために線の微妙なニュアンスが消えちゃっているし、ジャンプ掲載分では紙質が悪いので保存には向かないのが… 複製原画がダメだったら、せめてワイド版でのコミックスを… 連載終了して何年かしたらそういうのも発売されるんでしょうか。