ハンターは久しぶりに(?)お休み。そろそろネーム詰まりですかねぇ。
さて、「ヒカルの碁」第118局「追求」。緒方に壁際に追いつめられ、saiと対局をさせろ、と強要されたヒカル。熱くなる緒方の言葉を聞きながら、佐為は切ない、どこか遠い目をしていた。ヒカルはたまたまsaiと名人のネット碁をみてただけ、となんとか言い訳するが、そこにエレベーターの扉が開き、アキラがやってくる。ヒカルの存在にアキラは目を丸くし、驚いたヒカルもあわてて扉の閉まる寸前のエレベーターに乗って難を逃れた。緒方から「ヒカルとsaiは知り合いに違いない」ということを聞くが、アキラはヒカルとsaiは知り合いというものではなく…と考えるのだった。
名人の病室に入った緒方とアキラ。緒方は名人に「saiとの対局は進藤が持ちかけてきたんですね?」と問い詰めるが、名人は「saiとはネットで合って対局を持ちかけられただけだ」とそれを否定する。それでも追求しようとする緒方だったが、アキラは父親が否定する以上、問い詰めてもムダだと思っていた。アキラは考える。緒方さんはヒカルとsaiは知り合いだと思っているが、アキラには答えが出せない。でも「進藤がすべてのナゾのカギを握っている!」と。
なんとか緒方の追及から抜け出したヒカル。緒方とアキラのふたりに疑われることになったが、名人であれば黙っていてくれるだろうと信頼していた。また名人と対局をさせてやると言っても、佐為があまりに浮かない顔をしているのをみたヒカルは、少し佐為に苛立ちを感じていた。打たせてやったばかりなのに、また「佐為の打ちたい病」がでたんじゃないかと誤解して。「あわてるなって 時間はあるんだから」と佐為を元気付けようとするヒカルに、「ヒカルにはあっても 私にはない―」と心の中で呟く佐為だった。
日が変わって、森下九段の研究会。和谷くんがsaiと名人の対局を並べ、みんなで検討を始める。皆でなんとか黒が逆転できる道はないのかと考えるときに、ヒカルが嬉しそうに、あのとき見つけた一手を披露。ヒカルの着想に周りが感心する中、佐為だけが浮かない顔をしていた。「ヒカルの才や力に 私だけではなくまわりも気づき始めた」「見える ヒカルの頭上に輝いてる 私にはない"未来"が」
痛い。痛いよー、今回のお話も。佐為ちゃんマイナス思考はいっちゃってるから、もう。私は佐為はもちろん好きですが格別にファンではない(ヒカルも和谷も名人もアキラも同じくらい好き。特別なのは緒方さんだけですね)のですが、それでもこれだけ痛いってことは、佐為ファンの人にとってはいかほどばかりか。プロ試験編の伊角さんがポカミスしてから低空飛行のあたりでも読んでてキツいものがありましたが、今になって思えばあんなのまだ生ヌルかったのね… ハラハラさせるのもエンターティメントのひとつとは言え、ネームにも絵にもケタ外れの描写力があるせいで、痛さがダブルパンチ。来週が楽しみなんだけど読むのが怖いような気持ちで。普通少年マンガであれば、主人公サイドの人たちが物語上虐げられることはまずないんですよ。例え死んだとしても蘇っちゃうのがジャンプの伝統芸ですから。でも、ほったさんですからねぇ… 葉瀬中の面々の出番がないのも、伊角さんがプロ試験に落ちてしまったのも、「ほったさんならあんなことでもやりかねんっ!!」と思わせるための伏線にすぎないのではないかとかんぐってしまいたくなるくらいです。面白いんだけども読んでて身が持たない部分もあるというか。
ああ、緒方さんが「知ってるんだな saiを! 知ってるんなら オレにも打たせろ」と言うシーン、なんだか遠い悲しい目をしている佐為の表情がっ!! 切なすぎる… これは58局での若獅子戦における佐為の悲しい一人芝居に対するアンサーとなるエピソードなんですが、せっかく「いつかは対局したい相手」と思っていた緒方さんの方から対局を申し込まれても、すべては遅すぎて。なんとも微妙で複雑な佐為の気持ちをうまく表した絵だと思います。…ってこの一文を書くために7巻を読み返した時に「あれ、小畑先生ってこんなに絵が下手だっけ?」とつい思ってしまったほど。いや、もちろんその時点でもぶっちぎりにうまいのですが、ぎりぎりまで砥がれた刀のようにピリリとした切れ味のある、ここしばらくの絵のグレードの高さから比較すると、あの当時の絵さえ気が抜けてるように見えてしまうのです。プロ生活10年目にして、まだまだ成長していく小畑先生も驚異的ですなあ。もちろんそれは、微妙な心理描写を必要とされる原作があってこそでもあるのでしょう。
それにしても佐為がマイナス思考ぐるぐる状態ですな。前回の感想にもかいたのですが、佐為が今まで存在していられたのはひょっとしたら「私は神の一手を極めるまで成仏できない」という強い思いからなのでは? 佐為は精神のみの存在ですから、その存在を支えるのはただ強い意思のみ。それが弱ってしまったからこそ、「もう時間はない」と感じるようになったんじゃ…と考えてます。だから、佐為の気持ちの持ち方で事態は絶対に好転するって!! 元気だせよー、佐為!!
今回の話で、またヒカルがパッシング受けちゃうかなあ… 私はヒカルは基本的にいい子だと思っています。佐為ファンからすると佐為をないがしろにしているように思えるかもしれないけど、思春期のナイーブな時期に精神に寄生されて、それを受け入れてくれるだけでも十分でしょう。ヒカルと佐為がよくケンカをするのも、佐為が気持ちが子供っぽいところがあるというのと、ヒカルも佐為を対等の存在として受け入れてるからというのもあるんじゃないかな。今回の件にしても、ヒカルは佐為を喜ばせたくて色々と行動をしたのに、思い通りに嬉しがってくれなくてむくれてるだけです。いかにも子供ですが。ただ神の視点にいる読者からすると、佐為ののっぴきならない状態や気持ちが分かってるから、ヒカルの言動はそれを理解してくれないので苛立つ部分があるのは確かだけども。でも設定上ヒカル→佐為へ気持ちが伝わっても、佐為→ヒカルには伝わらないので、自分の中に留めてそれを伝えようとしない佐為にも問題はあるんだし。…ここ数話のテーマは「すれ違い」なんじゃないかと思うほどに、神の視点からみてると「うわー、いらいらするっ!!」って感じなんですが、この感じって恋愛マンガやドラマをみてるのに近いよね…さっさと二人とも素直に告白したらめでたしめでたしなのに、お互い意地はってたりちょっとした誤解のせいで気持ちがすれ違って、「あー、もっと早くくっつかっかい!!」と怒鳴りたくなるような。でも恋愛モノはそれが醍醐味ですから。ということで、今の「ヒカルの碁」に苛立ってる方も、その気持ちを楽しむ方がいいかと。(自分も含めてね)
ただ、エピソードそのものからみると佐為の存在は風前のともし火ですが、全体の伏線の張り方から考えると、今回の話を読んで私は逆に「佐為のすぐの消滅はない。もしくは消滅したとしても、なんらかの形で復活する」のではないかという印象を受けました。緒方vs sai戦が実現しなかったのもあるし、saiがネガティブ思考にハマってるからというもあります。緒方vs saiはここまで伏線をはったら対局はナシってことはないでしょう。ほったさんは時折意表をつく話の展開となりますが、あれはきっちり布石を打った上で、それを生かして思いもかけない手を打つだけの話で。「バキ!」の板垣恵介氏も先の予測できないストーリー展開を行う作家さんですが、あの人の場合はどっちかというと「ちゃぶ台ひっくり返し」に近いからなあ。でもそれがあまりにも豪快なのが非常に愉快なんですが。(「バキ!」も好きな作品です、達人萌えなの〜。) 佐為が「自分の千年はヒカルのためにあった」と感じてしまったときに、もしこれで佐為が「
これからはヒカルの未来のために私の身を捧げしましょう」と急に物分りがよくなったら佐為は確実に消えるだろうと思ったのですが、そうはならなくてよかったです。佐為が苦しい過程を経て他人のために生きることの素晴らしさを理解するか、もしくは誰かのために生かされてるのではなくそれぞれが自分のために生きているんだ!!ということが分かるようになれば、佐為も物語上の役割を終え、話はヒカルの真の意味での成長物語に移るんじゃないかと予想しています。
もっともこれは私の願望がほとんどなんですが…そう思いつつも、「ほったさんなら佐為を不本意のまま消滅させ、すべての責め苦をヒカルに背負わせる苦難の道を選択しかねない」と考えてもしまうんです。ほったさんだからなあ、あの人の考えは読みきれないんですよ。
緒方さんはヒカルとsaiは別人だけども関係があると思っていますね。なんだかんだで一番正解に近いじゃないでしょうか。アキラは「ヒカル=sai」だと断定はしかねてますが、どちらかというとそういう印象を受けてそうですもんねぇ。やっとヒカルが頑張ってアキラの中の佐為を少しずつ払拭していったのに、またしてもアキラは佐為に惹かれてしまう。この物語であるヒカルvsアキラがきちんと行われるためには、アキラは佐為の影に惑わされずにヒカルをきちんと見ることができるようにならなきゃダメだ…というのが持論なので。そのためにはアキラが佐為とヒカルを違うものだと認識しなきゃいけない、というかそうあってほしいんですけども。そういえば巷の予想では「ヒカルが佐為をとり込んでパワーアップ」というのもいくつかみかけるんですが、私はこれはイヤなんです。だってヒカルと佐為は別の人格ではないですか。そういう形でヒカルがパワーアップしても、それは純粋なヒカルの実力ではないので不正な感じを残してしまうから。「ふたりの力を合わせて戦う」ってジャンプマンガではよくありますが、この場合「敵」であるアキラは自分の身ひとつなだけにそれは卑怯に感じてしまうので。この物語の初期設定からすると、ヒカルは佐為に全部打たせて、ヒカルは「神童」の名を欲しいままにして賞賛だけ受けることも可能だったのわけです。それを敢えてやらず、ヒカルが己のプライドのために自分の力を高めていくという道を選んだのですから、最後までそれを貫きとおして欲しくて。
久しぶりの森下九段研究会は嬉しかったです。でも森下九段って名人のことを「行洋」と名前で呼ぶんですねっ。ライバル意識は剥き出しにしてても、結構仲いいんじゃ。白川先生や冴木さんのアップをもっとみたかったな〜。
それにしてもこの話、どんな方向に向かうのやら…今回は次回予告がないから、どんな話になるのかが見当もつきません。