日記  今の日記 / 「ヒカルの碁」感想INDEX     …………… 本の感想ページ

【ヒカルの碁 第143局「碁界鳴動」】 01/12/10

第143局「碁界鳴動」。碁聖戦第5局。塔矢行洋引退のため現在は空位、新タイトルは挑戦者決定戦の決勝進出者2名による5番戦で決まることになった。それに挑んだのは、緒方精次十段と十年前には名人戦三連覇を為したこともある乃木。結果は緒方の中押し勝ち、緒方碁聖が誕生した。新王座が決まって盛り上がっているところにやってきたのは桑原本因坊。ベテランである乃木がやられたことを軽く牽制する。来月から始まる名人戦は一柳棋聖と若手の畑中との対決だ。桑原は一柳なら勝てる、まだ「青くさいやつらに天下を明渡せん」と言う。その言葉に天野記者は緒方さんはすでに二冠なんですがと言うと、桑原は緒方がタイトルホルダーなら王座や十段戦も試してみようかと緒方を弄ぶかのように言い出す。緒方は冷静に「上座に座ってお待ちしていますよ」と言い放った。自分の言葉に翻弄されない緒方をみて、桑原は「いかんな 貫禄がついてきた」とひとり呟くのだった。
一方、桑原本因坊への挑戦権を決める本因坊リーグが始まった。アキラの対局相手は新初段戦での相手でもあった座間。彼は2年前、新初段戦であたった相手がもうこんなところにまで来たと驚きながらも胸を貸してやろうという心積もりであるようだ。本因坊リーグは、座間、一柳、乃木、緒方、畑中、倉田、アキラ、そしてあとひとりとの間で行なわれ、桑原本因坊への挑戦者を決めるだった。
日本棋院出版部。毎朝新聞の三宅から信じられない情報がもたらされた。なんと塔矢行洋が中国の北京チームと契約をしたのだという。中国にはJリーグのような団体リーグがあり、北京チームはそのうちのひとつである。これらのチームでは、韓国のトッププロと契約しているところもあるが… 塔矢行洋は引退することで日本での対局スケジュールに縛られることがなくなった。中国チームの契約料は安いかもしれないが、元名人にとっては世界中の強豪と対局できることの方が魅力的だったのだろう。元名人の家に慌てて電話する天野。
そして中国棋院。パソコンを使っていた楊海の元に同僚が元名人の情報をあわてて告げにきたが、楊海はすでに知っていた。ネットでもその話題でもちきりらしい。中国の若手トッププロ・王星と同じ上海チームに所属しているその同僚は、元名人が北京チームに所属して総力が上がることで、団体リーグも盛り上がると喜んでいた。彼は元名人ファンで、彼を「神の一手に最も近い男」だと賞賛する。その言葉を聞いて、楊海は「神の一手はこの中から生まれる」と目の前のパソコンを叩いた。囲碁においてコンピュータが人間を上回るのは100年はかかると同僚は訝しがった。しかし楊海は言う、オレには100年もいらない、と。開発のスポンサーもついて、いよいよプログラムの作成にはいる。データ入力だけは別のところで既に始まっている… そういう楊海をみて、同僚は「お前がそんなことをやってるから、お前のチームは弱いんだ」と言った。「オレ個人の勝率は!!」とついムキになる楊海に、「オレより悪いだろ」とすかさずつっこみをいれる同僚。
場面は日本棋院に戻る。天野は元名人にコンタクトをとったが、つながらない。しかし別の人が中国のサイトをいくつかみたところ、おそらく事実だろう、と。年間どのくらい試合があるのか、おいかけてゆくために日本棋院の出版部も忙しくなりそうだという吉川に、天野は呟く。
「何か大きく動いていないか? 囲碁界が。」


前回の「新しい波」プレリュードを経て、それを迎え撃つベテランたち、そして世界に向けての大きな流れ、新しい「神の一手」へのアプローチ…といくつもの旋律が高らかに奏でられたお話でした。
しかし、いきなり大風呂敷を広げたな〜〜〜!! もちろん、韓国や中国関係のエピソードもちょこちょことはでてきましたが、こういう風に関わってくるとは。ヒカルの碁の場合は、新展開に入る前にそのひとつ上のステージを少しみせて、スムーズに次の展開に移るわけです。ヒカルが小学生のときには囲碁部の話、囲碁部のときには院生の話、院生のときにはプロの世界、と。ヒカルが低段位のときにはタイトルを狙うようなトッププロ、そこにはもちろんアキラも含むわけですが。でも今回はそのもうひとつ上のステージじゃ…「世界」というのは。たぶん「トッププロとの争い」と「世界での戦い」と同時に進んでいくのかも。
ちゃんと風呂敷が畳めるのか少し心配ではありますが、ほったさんは今までもいくつもの伏線をうまく連鎖させて最大活用できましたから、畳むときのことを考えずに広げるだけ広げるなんてことはしない方だとは思いますが… でも物語の終了まではなんとも言えませんが。
でも、ここにいずれはヒカルも絡んでくるってことですよね? タイトル戦だけではなく、国際棋戦も… 今はそういうの想像もできないけれども、考えてみればヒカルは2年前でさえ部屋に碁盤すらなくネット碁で遊んでたわけで。その頃はヒカルがプロになるなんて思ってもいないかったからなあ。

今回で新キャラ続々登場。伊角さんの持ってた「週刊碁」に名前だけでてた乃木さんがお目見え。さほど重要な役を担う方ではないような気がしますが、本因坊リーグにもでてくるみたいだし。あとは名前も初登場の書生風の畑中さん。どんな方が楽しみであります。あと、名前不明な本因坊リーグ参加の軍人ぽい彼!! うわー、見た目が結構好みです。はやく本格的に活動してくれないかな〜。あと楊海さんのお友達ですが、ひょっとして前に名前だけでてきた華松力(ホア ソンリィ)さんなんでしょうか? この人と楊海さんのコンビもなんか楽しいですね〜。

流れは「新しい波の台頭」になってますから、これからオヤジキャラを若い人たちがなぎ倒していくことになるだろうけども、「ヒカルの碁」のオヤジキャラは一癖も二癖もある人たちですので、そう易々とはやられはしないでしょう。…というか、してほしくない。森下先生が今回の「戦うオヤジたち」の中に入ってなかったのが残念ですが、あの人にもぜひ頑張ってほしいものです〜。
名人もまさかこんなことになるとは… あの人、これでますます力をつけてラスボス街道まっしぐらでしょうか。アキラと名人の親子対決も、国際棋戦という大きな舞台でみれるかもしれません。っていうか、みたい。

またしても「神の一手」への別アプローチの話に。楊海さんが作成するプログラムの元データって、やはりsaiのもかなり使うんでしょうか… きっと今までのネット碁の話もそれに絡んでくるんだろうなあ。そして作成されたプログラムがあの伝説のネット碁棋士・saiの名前でネット碁に登場し、強豪をなぎ倒して…というような展開になったりして。
現在のところ、コンピュータの囲碁ソフトはとても弱いそうです。人間でいうところの8級くらいだそうです。(GBAの「ヒカルの碁」のコンピュータはもっと弱いらしい)
数年前、コンピュータがチェスで世界チャンピオンに勝利した、という世界中で話題となったできごとがありました。チェスの場合はコマはどんどんなくなりますので、終盤の手数が減るためにコンピュータの「総あたり」の思考ルーチンがわりと有効だそうです。(もちろん世界チャンピオンに勝ったのは、しらみつぶしの総あたりルーチンだけが理由ではありませんが)
将棋の場合は、まだまだ人間には敵わないものの、有段者レベルはあるそうです。ちなみにオセロにおいては、コンピュータが先手をとったら人間に絶対に勝ち目はありません。あれは先手必勝ゲームなので。
囲碁がコンピュータが人間よりはるかに弱いのは、漠然と認識する「右脳で考える力」をプログラミングするのが難しいからだそうです。ただし、人間の思考だって突き詰めれば電流の流れなのであって、いつかはコンピュータが人間ができるような曖昧な思考ができるようになる…ということで色々な研究が行なわれています。このあたりの話は調べると色々とおもしろいです。
例として1ページあげると、脳をヒントにした高性能な電子回路とか。
で、どんなに楊海さんが天才であっても、これから数年程度では「トッププロより囲碁が強いコンピュータ」はできるとは思えないんですが、このあたりをどれだけ説得力を持ってほったさんが描写することができるか。お手並み拝見。ほったさんには勉強して頑張ってほしいものです。あと集英社でいいブレーンをつけてくれればいいけどな。

それにしても、アマ碁世界大会はどうなったんでしょう…周平さん…
伊角さんが日本に帰ってきたときに碁聖戦の第一局が終了した頃ですから…それから2,3週間くらい後なんでしょうか? まだ季節は夏まっさかりですよね? 楊海さんなんてすごいカッコしているし。だとしたらアマ碁世界大会もまだ話にでてくる可能性はあるかなあ。

そして最後に。緒方さん、二冠おめでとうぅぅぅっ!! もう、久々に見た緒方さんがカッコよくて、美し過ぎてっっっ!! 今までのカッコつけてもヘタレ風味もそれはそれでかわいくて好きなんですが、こうやって桑原先生に対抗するだけの力をつけつつあるのがまたしてもカッコいい…自分のボキャラブラリーの貧困さが恨めしいですが、なんで緒方さんってこんなにカッコいいんですかっっっ!! 眼鏡外すしぐさとかにもくらくらきます。ああ、でも「上座に座ってお待ちしてますよ」の顔がっっっ!! …魂抜かれました。素晴らしい…あああ、ここアニメでみたい!! ぜひみたい!! ここまで放映してくれればいいんですが…

日本棋院より、ヒカルの碁 碁盤が12/2より発売されました。表が九路・裏が六路番になってて、佐為・ヒカル・アキラ・あかりのイラスト(原作で使われたもの)が載っています。1セット800円。うーむ、九路と十三路だったらよかったんだけど(詰碁の勉強にも使いやすいし)、サイズの問題だろうなあ。棋院としては囲碁普及促進グッズとして作成したんでしょうね。ほしいんだけど送料がちょっと高いし。どうしようかなあ…


HOMEへ / 麻弥へのメール