第155局「来ない二人」。
新初段戦のトップは伊角vs桑原本因坊。まずは棋院前で二人並んで写真を撮っていたが、緊張気味の伊角にさらにプレッシャーをかけるような言葉をかけ、対局前から完全に桑原ペースに。
地下鉄市ヶ谷駅からでてきたヒカルは、伊角の対局を見るために棋院に向かった。ちょうどJR市ヶ谷駅からやってきた門脇はヒカルをみつけ、声をかけた。彼も伊角の対局を見にきたのだった。ヒカルは週刊碁を読んで、自分が院生時代に棋院で対局した相手がプロ試験合格者の門脇だということは知っていた。「―覚えていてくれたか、光栄だねェ」と門脇は呟き、自分は実は去年のプロ試験を受けるつもりだったと告白した。しかし肩ならしのつもりで対局した院生にコテンパンにやられ、自分の甘さに気がついた門脇は1年間鍛えなおしたのだ。そのままでは合格してもヒカルのような棋士を相手にやっていく自信がなかったために。自信家の自分がそう思ってしまったほど、あのときのヒカルは強かったのだ。…しかし、そんなヒカルはプロ試験で3敗も喫し、新初段戦では無残な負け、そしてプロになったら不戦敗続き… 門脇はヒカルに「どうなってるんだ」と問いつめた。
日本棋院「幽玄の間」に続く控え室には、越智・本田・和谷がすでにきていて、和谷はヒカルが遅いのを気にしていた。「プロ試験6敗でよく合格できたね」という越智に、今年のプロ試験は伊角が全勝、門脇はその伊角に一敗とふたりが白星を全部持っていってあとは壮絶な潰しあいとなったのだ、と本田はいい訳をしていた。話題は北斗杯に。アキラが代表決定らしいという話を聞いて、「実績考慮ならボクが選ばれてもおかしくないのに」とグチる越智に、「オレに負けたくせに」とからかうように和谷は言い、越智は「あれは不本意な一局、本因坊戦は2次予選まであがった」と反論。そういえば本因坊戦2次予選はヒカルも勝ちあがってる、と本田は言った。今年の合格者である本田も北斗杯の参加資格はあるようだし、若手の実績は少ないから差別化は難しいのではないか…今年の合格者といえば、関西棋院に有望なのがいるらしいと越智が言い出した。それを聞いて、予選は一同に会して行なわれるんだろうかという話に。
伊角が一手目を打ち、新初段戦が始まった。伊角が緊張してないかと心配する和谷。それでも伊角は一手目をすぐに打ったが、一手目に20分かけた去年のヒカルとは大違いだと和谷は言った。和谷はヒカルも門脇が遅いのが気になっていた。二人は知り合いではないはずだから、ふたりで遊んでいることはないだろうが… その和谷の呟きを聞いて、本田がプロ試験終盤で聞いた門脇の呟きを思い出し、「あれは進藤のことだ」とひらめいた。「…大島、福井、本田… アイツが去年負けたのはこの3人… やっぱり信じられん」と門脇は呟いたらしい。それを聞いて、和谷はそれがすぐにヒカルのことだとすぐにわかった。そして和谷も突然思い出した。昔、門脇が受験を1年延ばしたという噂をネットで聞いたのだ。その原因は子供に負けて1年鍛えなおすというものだった。和谷はそれを読んだときには、子供に負けるなんて門脇もたいしたことないと思った。しかし、門脇の呟きからすると彼はヒカルを高く評価しているということになる。そんな門脇とヒカルが二人してこないのは何かあるんだろうか?と考えてしまう和谷。「進藤気にして何の得があるんだよ」とムキになる越智。ヒカルは北斗杯確定か?という本田の言葉に怒り出す越智。そんなときにドアが開き、みんなヒカルがやってきたかと思ったが、入ってきたのは桜野千恵子さんだった。
路上で、ヒカルを問い詰める門脇。ヒカルがプロ試験で3敗したのは子供だから実力に波があったのかと思ったが、あのときの彼の強さはそんなレベルではなかった。「あの一局でオレはひと回りほども年の離れたキミに尊敬とあこがれを抱いたんだぜ 笑うか?」との門脇の言葉に、ヒカルは暗い目で「ううん」と答えた。今ではあの対局が幻のように思える門脇は、あの時のまっすぐな期待を今のヒカルにも持ってもいいのだろうか?と問いかけた。そして本来の目的である伊角の対局を見に行こうと言い出した門脇にヒカルは今から自分と打たないか?ともちかけた。
伊角さんのお相手は桑原先生でしたか。緒方さんがでてくるかと少し期待してただけに残念。でも桑原先生、それセクハラなんじゃ…
門脇さんがカッコいいです。顔は美形顔ではありませんが、なんかたたずまいがいいなあ。外見はチャラチャラしてても、物腰が座っていてうわついてない、大人で。
個人的なチェックポイントは、門脇さんが伊角さんのことを「伊角」と名前呼び捨てだったこと。ヒカルのことを「進藤くん」と呼んだことからして、門脇さんは親しくもない人を呼び捨てしないでしょうし、だとすれば伊角さんとはプロ試験の時にそれなりに仲良しさんになったと思っていいんですね? 門脇さんなら伊角さんの生真面目なところを茶化しながらうまくやっていけそうな感じで、なんかこのコンビってツボ…
ヒカルの「ううん」のシーン、胸が痛いなあ… 誰より佐為に焦がれているのはヒカルですもんね…
文字にしづらいこういう感情をうまく絵にできた小畑さんはさすがです。
あの門脇さんとの対局では、佐為も久しぶりということで本気を出していたし、門脇さんも対局後にヒカルが「この人、強ぇよ」とビビっていたほどに実力がありました。その上、「千年」という謎の言葉も聞いていますし、今度ヒカルと打って、ヒカルが勝ったとしても「さすがあの時オレに勝っただけのことはある」では終わらないと思うけどなあ…どうなんでしょう。
ちなみに佐為ジャンクション状態のヒカルと対面で打ったことがあるプロ以上の実力の持ち主は、
・アキラ→ヒカルの中にsaiがいることに気が付くものの、ヒカルはヒカルだからと棚上げに
・元名人→ただならぬ気配は感じているものの、深く追求するつもりはない? 今後に期待
・緒方→酔っ払ってましたから…
・門脇→次回はどうなるか?
・御器曽→「ガキだと見くびってたから負けた」と思ってるかぎりは気が付かないだろうし、もう関連エピソードはないんじゃないかと…
あと、打ってないのに気が付いてそうなのは桑原先生ですが。
個人的には緒方さんに期待してるんですけどねぇ… でもオカルトぽいものを「ばかばかしい」で切って捨てる人ですから、発展性はないかもなあ。
新シリーズになって佐為の名前がヒカルの口からは一度もでてきてません。でも売店で買った扇子といい、秀策の棋譜並べといい、神の一手を目指す発言といい、ヒカルの心は佐為にとらわれていると思わせるエピソードが続いています。もちろんヒカルが碁を打ち続けるかぎり佐為のことは心にいるだろうし、大切な人を失ったら1年程度では心の隙間は埋められないでしょう。
でも何か、佐為を失った後復活してからのヒカルの余裕のなさ…ピリピリした感じが続いているのが気になります。もちろん今のヒカルはがむしゃらに上を目指しているからそうなるのも無理はないけれども、でもちょっと痛々しい。
先週の葉瀬中エピソードの入れ方や、今週の佐為を思うヒカルの目といい、ほったさんもそのあたりは分かっててやってると個人的には思っているのですが。北斗杯の開催が5月5日という佐為が消えてから1年後に設定していることからして、そこでなんらかの変化があるかなあ、と。
その北斗杯の選抜メンバー、関西棋院の子の噂がまたでてきました。でもあの室長ならともかく、越智くんの噂話にも「女の子」という情報はでてきてないから…男の子なのかなあ。とにかく、登場を楽しみに待っています。
あと、越智くんと和谷くんの対局(おそらくあのヒカルとアキラの一戦と同じ日にあったやつでしょう)は和谷くんが勝ったんですね。これだと和谷くんが選抜メンバーに入る可能性も高くなったかなあ。アキラはもう決定、もうひとりはおそらくヒカルでしょうから、残りのひとつは関西棋院の新人か、越智くんか、和谷くんか。
来週は巻頭カラーポスター扉つき。作中ではまだ冬ですが、ポスターは「夏」だということで、どんなになるかなあ。楽しみです。
7月19日に書店で発売の「ヒカルの碁 囲碁スターターBOX」、ジャケット&碁盤裏イラスト&碁石イラストが書き下ろし。特に碁石がかわいいから、うー、これは買ってしまいそうだなあ…2980円はちょっと高いですが。でもこんなに絵がかわいいと、もったいなくて使えそうにないです…