まずは今週のダイジェスト。
・一回戦は社くんに続いて和谷くん、ヒカル、越智くんが勝ち。ニ回戦は和谷くんvs越智くん、ヒカルvs社くんで、勝った方が一か月後の北斗杯代表に。
・お昼をロッテリアでとるヒカルと和谷くん。越智くんとは相性がよく5分の勝負をしている和谷くんは、内心ヒカルや社くんに当らずに済んだことを喜んでいた。ヒカルは本田くんから「初手天元」ことを聞き、棋譜を並べてもらって(ちなみに本田くんの師匠の名前は「船村」)、社くんが強い相手だと知っていたために社くんの対局を楽しみにしていた。
・蕎麦屋で昼食をとる津坂三段と社くん。関西棋院の名誉のためにも勝ってほしいという津坂さんに、社くんは代表になるためには誰が相手でも負けられないだけだと答える。
・棋院入り口で、社くんに負けた稲垣さんに会って、社くんとの一戦で先番が稲垣さんだったと聞いて残念がるヒカル。
・ニ回戦開始。先番は社くん。初手天元を期待するヒカル。社くんが打ったのは5-5、初手天元よりも珍しい一手。「やってくれるぜ」と思ったヒカルは、それに応えるかのように二手目を天元に打った。
今週を読んでやっとわかりました。
先週の段階で「あれだけ前振りのあった社くんをなぜ予選でヒカルとぶつけるのだろう? 北斗杯本選にはでないの?」と思ってたんですが、むしろ逆だったんですね。北斗杯の予選自体が、ヒカルと社くんがお互いよく知らない状態で、初対面で、真剣勝負をするための場として設定されたものだった、と。
そうか、この第二部自体が「神の一手への道」の物語になっているわけで… それは第二部再開の第一話・149局の一番最初にはっきり描かれているんですよね。そのときも「2部は神の一手の話なのかなあ」と思ったのですが、それを描ききるのは「紅天女」並に困難なものだろうし、まさか真正面から取り組むとは思わなかったんです。本気だったんですか。 …でも、これで2部が始まってからの物語が、自分の中ですっと一本の線で結ばれました。
社くんが関西棋院所属なのは、「遠くのライバル」設定なのでしょう。ヒカルと社くんが公式の場で戦うためには、タイトル戦の最終予選まであがってこなくてはダメですから。(北斗杯は「今回限りの大会」である可能性がありますし) それは作中でも少なくとも1,2年後にはなりますが。
初手が「5の5」、そして「天元」の意味ですが… 1私は碁には詳しくないのですが、わかる範囲で説明しますと。
囲碁とは陣取りゲームです。囲碁の布石は隅の方から打たれることが多いんですが、それは隅は辺…いわば壁…を2箇所背にしているために少ない手で陣地を囲えますから、自分の地を作りやすいわけです。そのあたりは本編の158局でも簡単な説明があります。ちなみに第1局で佐為がじいちゃんが一手目に星に打ったことに驚いている描写がありましたが、本因坊秀策の頃はもうちょっと辺や角よりのところから打たれていました。その方が確実に陣地が作れるからです。でもあまりに端の方だと、中央に進出するのが遅くなるために現代ではより真ん中に近い「星」に打たれることが多くなったそうです。「5-5」というのはそれよりさらに中央よりですが、角との距離があるためにそこに敵に飛びこまれる可能性が高いので、自分の陣地を作るのが難しくなるわけです。また作中で「5-5」が珍しい手であることが描写されていますが、先例が少ない分、自分だけの力で手探りで進めていかなければいけなので、これから先の展開が難しくなります。まさに「よほど自分の力に自信がないと打てない手だ」と。それは「社らしいけど…」ということで、よく関西棋院ではこういう手を打ってたんですねぇ、社くんは。
そんな社くんの野心的な手に、ヒカルは「天元」というもっと冒険的な手で応えます。有利不利というようなことを越えた、「お前がそうくるなら、オレはこうだっ!!」という気持ちを強く表す手なのではないでしょうか。
二人ともこれが日本代表を決めるための大切な一局なのに、「確実に勝つ」なんて全く考えてないところがいいですよね。ヒカルと秀英の一局で「なんと心躍らせる碁であることか」と評していた佐為を思い出しました。そうやって未知のことに怖がらずに、新しい道にどんどん踏み込んでゆくことが、いつか「神の一手」に繋がっていくのではないかと。
ヒカルは本田くんから社くんの話を聞いて、「強くてオモシロイ手を打ってくるヤツがいる」ということを知り、今回の対局を楽しみにしてたようです。強敵に当らずに済んだことを喜んでいる和谷くんの描写とは対照的。これじゃ和谷くんは一時的には代表になれていいかもしれないけれど、気持ちで負けていたのでは今後の展開が望めないかも… いや、むしろ北斗杯の代表に選ばれること自体が和谷くんの試練になるのではないでしょうか。ヒカル・アキラと自分との実力差、そして海外勢との力の差。とことん悔しい思いをして、和谷くんがそこから這いあがるエピソードに繋がるのではないか?と期待しています。
今回の話で、私の中の本田くんの株が上がりました。そうか、ちゃんとヒカルや和谷くんにも、自分が悔しい思いをした碁のことを伝えてたんですね。当時、あの対局が描かれた158局の感想で私は「本田くんがかわいそうだ」と書いてしまいましたが、今読みかえしてそれは的外れだったことに気がつきました。本田くんは「かわいそう」なんかじゃありませんでした。自分より年下にノサれてしまうという悔しい思いをしても、自分はプロの棋士であるという自覚の元に、悔しさから目をそらさずにちゃんと勉強する。そして自分より格上の相手(ヒカル)にも怯まず、正面から挑む。その気持ちがあった上で負けた碁であれば、本田くんの中には何かが残るし、少しずつであっても前には進むのですから。ヒカルやアキラのような「天才」たちみたいに華々しい活躍はできなくても、本田くんには今の気持ちを忘れずに頑張り続けてほしいなあ、と思います。
細かい部分の話。
今回、ヒカルと和谷くんが行ったのはロッテリア。今まではマクドナルドの描写が多かったので珍しいですね。まあたまに別のところに行きたくなる気持ちはありますが、ひょっとしてアニメのスポンサーに「ロッテ」がいるからかな?と思ったり。(注意:最初間違えててうっかり「ヒカルとアキラ」と書いてしまいました… ふたりでハンバーガーショップ、想像がつかないけれども見てみたいなあ)
和谷くん、ハンバーガー二つ目ですか。成長期の男の子だなあ。
和谷くんが対局相手だとわかったときの越智くんのあの嫌そうな顔の描写が見事。
津坂さんと社くんがいった蕎麦屋は以前に椿さんとヒカルが行ったところと同じですね。でも社くん、無口かと思いましたが馴染みの津坂さん相手にはズケズケものを言う子なんだなあ。でも性格はもうひとつよくわからないです… 静かな自信家、というところでしょうか。
ヒカルの石を打つ手の描写がきれいです。そして打った後に対局時計を押す時の顔。気迫を感じます。それに社くんはどう応えるのかが楽しみだなあ。
今後の予想。勝つのはヒカルと和谷くんになると思います。そしてヒカルは碁会所に報告に行って、今回の碁を並べてアキラに呆れられたりするのかな?