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【ヒカルの碁 つぶやき。(1)〜「ミステリ」としての「ヒカルの碁」】 03/03/10


私は一時期、ミステリ小説にハマって読み漁っていたことがありました。最近はあまり沢山読んでなくて、胸を張って「ミステリ読み」と言えないのが寂しい限りですが。
何をミステリと呼ぶのかという定義は人によって違うでしょうし、私はそれを深く語れるほどはミステリを読んでないので省略します。ただ、私が「ミステリ」に感じていた魅力のうちで最大のものは、「ロジカルに作られた話である」ということでした。

典型的なミステリにはコアになる「謎」と「答」があり、それを最大限に生かすように物語が作られていることが多いです。本当によくできたミステリ小説であれば、一度目の読書で味わう驚きよりも、二度目の読書で巧みな伏線の引き方や構成を確認している時の方がおもしろかったりするほどです。

私が「ヒカルの碁」にハマった原因はいくつもありますが、ロジカルに作成された物語をパズルのように読み解くことがおもしろかったということも大きな理由を占めています。
しかも、「ヒカルの碁」の物語は伏線の繋がり方がわかりやすいのに、ひとつの伏線にいくつもの意味が与えられ、伏線が無駄なく物語に編み込まれて、物語の構造が鉱物の結晶構造のように立体的でクリアで美しいから、ここまで夢中になったのかもしれません。

でも「ヒカルの碁」という物語はロジカルに構成されているとはいえ、連載当初から細部まで構想があったとはいくらなんでも思えません。「ネームの日々」から推定すると、キャラクターの性格、エピソードなどは実際にネームを作る段階で作るようです。それでもあれだけの伏線の連鎖は行き当たりばったりに物語を書いていってできるものではないので、大まかな流れと主要キャラの物語上の役割程度は構想にあったのではないかと個人的には推測しています。

さて。先週予告していた、「いつからほったさんは第2部の構想を持っていたのか?」という話。
ネットの掲示板などで「ほったさんは148局で佐為が消えたら終了するつもりだったのに、編集部に引き伸ばすようにいわれて無理矢理連載を続けているらしい」という内容の書き込みを何度も読んだことがあります。場合によっては「知り合いが集英社の社員で、ジャンプ編集部の人に聞いた話」などとまことしやかに出所が付け加えられて。
私はジャンプの関係者の知り合いもいないし、出版界の事情も全く知りませんので、この噂の信憑性は判断できません。ただ、ほったさんからアウトプットされた物語から、いくつかのことは推測することができます。

第2部…第149局以降の構想が連載当初からあったものかどうかはわかりません。ただし、伏線の繋がりからするとわりと早い段階で第2部の展開を想定しての伏線を引き始めているように思えます。断定はできませんが。
第1部中盤になると、第2部を見据えたエピソードがあからさまな形ででてきます。それは第62局の門脇さんのエピソードです。この話は、もし第一部で物語が終了していれば、全く意味がないエピソードになります。第62局と第61局の最後2ページとあわせてまるごと削除したとしても、そこに1話欠けた話があったことには誰も気がつかないのではないでしょうか。あの門脇さんのエピソードは、ヒカルが佐為を失ってからこそ意味をなすのですから。

現在の北斗杯関係の伏線も、順番に伏線を辿って物語の上流にゆけば、1〜2巻あたりに辿りつくものもあるんですが、これはほったさんが伏線の有効活用がうまいだけであって、最初からの構想ではなかった可能性はあるんですよね…
ただ、とても気になることがひとつありまして。それは、倉田さんの物語上の役割です。
「ヒカルの碁」の物語当初から名前がでてくる日本のトッププロ棋士は4名います。塔矢行洋先生、緒方さん、倉田さんは第1局から名前だけでてきます。桑原本因坊は2巻から登場します。塔矢先生、緒方さん、桑原先生が第一部の物語上で果たした役割の大きさは書くまでもないことですが、それに比べると倉田さんの第一部における役割のあまりの小ささがひっかかるのです。
初期からジャンプの連載を読んでいた人にとっては「倉田四段」は謎の期待キャラでした。初期から名前が出てきて、いろんな人の話題にのぼるのにいつまでたっても本編に登場しない。しかも話に出てくるたびに昇段しているし… これだけ名前が出てくるということは、まず間違いなく重要キャラだろう。年が若い重要キャラであれば、今までのことから考えてきっと美形に違いない!!…と思い込んで、期待ばかりが膨らんでいました。だから、本物の倉田さんをみたときのショックがどれだけ大きかったか… もちろんあのコロコロしてお子様な倉田さんも愛らしいキャラで、好きなんですけどね。
第1部での倉田さんの主なエピソードは「秀策の署名鑑定士」と「一色碁」の二つです。両方とも、倉田さんがヒカルを知ることがメインで、それは第1部ではあまり大きな意味はなく、やはり第2部で倉田さんが北斗杯の団長になってから大きな意味を持つエピソードとなります。
倉田さんが本編に登場した段階ではすでにほったさんに第2部の構想があったのは明らかですが、問題は倉田さんの名前が出てきた段階…つまり第1局においてはどうだったのかということです。その段階で倉田さんは主に第2部で大きな意味を持つキャラとして設定されていたのか、本来は第1部でもっと大きな役割があったのに変更になったのか、それとも単に「強い若手」として名前を出しておいただけなのか。
…私自身は、ほったさんは最初から第2部の構想がぼんやりとはあったのではないかなあ、と考えています。

本当はどうなのかは、いつかほったさんがどこかのインタビューで答えてくれるかもしれませんが、それまではわからないままでしょうね。答えがわかるまでは、アウトプットされた物語から構成や作り方を推理していく「ゲーム」を楽しんでおこうと思っています。


ついでに、最近の関連商品(?)情報。
小説版の「ヒカルの碁 HAZE VS KAIO」を読みました。表紙(カラー)とイラスト2枚を小畑先生が書き下ろししています。基本的に原作そのままのノベライズですが、いくつかなかなかにいい感じの表現(ヒカルが佐為の気配をすぐ側に感じても、足元の影は自分の分しかない…とか)があって、結構よかったです。それにしても、アキラってヒカルしか見えてなくてはた迷惑な行動してたなあ、としみじみ。それも無理のないことではありましたが。
あと、この当時はヒカルとアキラの棋力の差というのはとんでもなく大きかったんだなあ、と。ずいぶん遠い昔のことに思えました。

ジャンプ公式サイトの今週の壁紙コーナーに「ヒカルの碁」が。永夏初登場の回の扉絵ですが、睫毛のない永夏って、今となってはニセモノのように思えて仕方ありません…

雑誌季刊「S」の第二号が発売されています。今回の表紙も小畑さんの変名かもしれない(?)水屋洋花×水屋美沙のコンビ。ポップな感じのイラストで、今回のが最初であれば「小畑さん?」と気がつかなかったかもしれません。中に載ってた下書きのラインは「小畑さん」ぽさが強かったですが。


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