第23局「幽玄の間」
院生研修、ヒカルは二組で6連敗していた。それを和谷にからかわれる。和谷は一組6位と今のヒカルからすると遥かに上だが、それでもアキラは和谷程度なんか歯牙にもかけないだろうという。同じく1組のフクもプロ試験でアキラとやってあっさりと負けてしまったらしい。そこにやってきて「塔矢なんか関係ないよ 自分がトップに立つだけだ」と言い放つのは越智。小学6年生、ヒカルの3ヶ月前に入ってきてすでに院生3位だ。今年はプロ試験に受かるつもりなんだろう… 和谷も今年こそは受かりたいと思っていた。そこに伊角がやってきて、今年こそ受かりたいとボヤく。伊角は今年18、今年落ちたら院生でいられなくなる。プロ試験は30才になるまでは受けられるが、伊角は去年も一昨年も院生1位なのにプロ試験に落ちてしまったのだから、今年受からないとあまりにも情けない… プロ試験の合格者はたったの3人、ヒカルの道はまだまだ先が遠い。
一方、塔矢名人宅で開かれている門下生たちの研究会、プロに混じってアキラも検討に参加していたがアキラはどことなく気が抜けたような顔をしていた。話題はアキラのプロ入りの話になった。やっとアキラがプロ入りする、なんで中学の囲碁部で遊んでいたのかわからない…と門下生の一人が言うと、緒方は「だがその頃の方が気迫があった」と言う。碁は技術だけではなく、精神面によって僅差の勝負が決まるのだ。「今のキミじゃ… 叩きがいがない」 緒方はアキラの耳元で「今度の日曜あいてるかな キミに見せたいものがある」と囁いた。
院生研修、ヒカルは初勝利をおさめた。その時ちょうど研修室にアキラがやってきて、中を覗いてヒカルをみたとたん、きびすを返した。アキラに気が付いたヒカルが追いかけて声をかけたが、アキラは無視してエレベータに乗って去っていった。無視されてるのにどこがライバルなんだ?と和谷はからかったが、ヒカルには分かっていたのだ。アキラはヒカルが自分のところまでやってくるのを待っているのだと。
アキラの乗るエレベータのドアがあいたところに緒方が待っていた。緒方はヒカルが院生になった姿をアキラにみせたかったのだ。そのとき現れた出版部の天野記者に声をかけられてアキラは出版部に寄ることになった。ヒカルがアキラの起爆剤になるのではという緒方に、アキラはバカにしたように自分は彼の手の届かないような遠いところにいってやる、近づけさせません、と言い放った。緒方は、口ではそんなことをいいながらしっかりと刺激を受けているアキラの姿につい笑いをもらした。アキラをそんなふうにしてしまうヒカルをおもしろい存在だと思う緒方だったが、「早くプロの世界にあがってこい いや、果たしてあがってこられるかな」
そしていつもの院生研修。ヒカルの対局相手の今西が突然席を立って走り出していった。ヒカルにポカミスで負けたのが悔しいのだ。学校の成績は落ち込んでいるし、囲碁も行き詰まってイライラしているのだ。なんせ院生たちは学校の勉強よりも囲碁の勉強。それでプロになれるのならいいが…
ヒカルは和谷からもうすぐ新初段シリーズが始まるという話を聞いた。4月からプロになる新人とトッププロとの対局、新人のお披露目なのだ。先週の火曜日には桑原本因坊相手に元院生の間柴が対局を挑んだが、あっさり間柴は投了。アキラはどんどん前に進んでいく。しかし院生たちはプロに受からない限り一歩も進めないのだ。和谷とヒカルは一階で座間王座とすれ違った。そして売店にいた座間に手合係が新初段の相手が塔矢アキラに決まったことを知らせた。新初段戦はお祭りみたいなものだから、新人に花を持たせてやろうかと気楽に座間は言う。
ある日の院生研修でヒカルはアキラの新初段戦が今日あることということを和谷から聞いた。対局を見たがるヒカルに、和谷は院生研修が終わったあとなら後半くらいはみれることを教える。そして和谷は対局が行われる「幽玄の間」を案内する。ここはタイトル戦などが行われる特別な部屋で、新人へのはなむけの意味もあって新初段戦ではこの部屋を使用するのだ。幽玄の間に足を踏み入れた佐為は、幽玄の間の特別なピリピリした空気を感じ取り、武者震いをしていた。
対局前、棋院前で王座とアキラは取材の写真をとっていた。まったく気後れしてないアキラをかわいげなく感じた座間王座は、新人へ花を持たせるために適当に対局するつもりだったのが予定変更をして叩き潰してやるつもりになっていた。
院生研修、ヒカルはアキラの対局を気にしながら対局を行っていた。
座間王座とアキラの対局が始まる。新初段のアキラが有利な黒を持ちながらさらに逆コミで5目半有利。普通黒のコミは5目半だから、新初段の方が11目有利みたいなものなのだ。
天野が控え室に入ったところ、アキラの同期の新初段の間柴や辻岡の他に、塔矢門下生の芦原棋士もいた。アキラの周りにいるのは大人ばかりだから、成人したての芦原が一番年の近い友達なのだ。
王座とアキラの対局が始まった。
今週は作画が…アニメ製作のスケジュールの厳しさなどはもちろん分かってるつもりですが… ああ、でもこれはいくらなんでも!! せっかくの緒方先生の見所の「今週の日曜あいてるかな?」だったのに。いや、まだ緒方さんの絵の崩れはマシだったのが救いです。
脚本はテンポがよくて悪くなかったと思うだけに、もったいないなあ。今回の一話で原作の2話半を使っているから余計話が濃く思えるのかも。
声優さんたちは頑張ってくれてるのになあ。原作の絵が美しく、アニメも最初の方はそれに応えるだけ作画が頑張っていただけに余計に今との落差が気になるのかもしれません。それでも予告をみた限りでは来週はきれいなので、それに期待しておきましょう。
今回の原作との違い。原作ではヒカルはアキラを追いかけませんでした。だから緒方さんは下ではなく、研修室の外でアキラを待ってました。ヒカルがアキラを追いかけているのは物理的なものじゃないんですが、ヒカルにアキラを追いかけさせたのは動きをつけて「わかりやすく」するためかなあ、と。
座間先生は「王座」という囲碁のタイトルのひとつを持っています。原作での座間先生の油ぎったいやらしさがちょっと薄れていたのは残念ではありますが、来週は作画もいいのでそれに期待かも。ちなみに小畑先生はオヤジを描くのが大好きで、座間先生を描くのにはかなり力が入ったとか。
このあたりのエピソードで何度も和谷くんがプロへの道の厳しさについて話しますが、原作でこのあたりを読んだときにはもうひとつ実感が沸きませんでした。この段階でのヒカルもきっとそうだったんでしょう。その頃はヒカルにとって一組への道すらあまりにも遠いので、そのさらに先のプロへの距離なんてわからなかったでしょうし。
アキラはインターネットカフェでヒカルに分かれを告げて以来の登場。ヒカルを追いかけていたときの反動で気が抜けたようになってましたが(それでもプロ試験にはあっさりと合格するあたりがアキラなんですが)、ヒカルのことになるとアキラはムキになっちゃいますから。一度過大な期待を抱いて、その幻想を粉々にされてしまったから、ヒカルへの感情はねじれちゃってるんですよねぇ。そういうところも全部緒方さんにはミエミエだったりしますが。その緒方さんも、アキラに対しては微妙な態度をとります。緒方さんにとってアキラは尊敬する師匠の息子で、若いときから成長を見守ってきた子供というだけではなく、後ろから自分を追いかけてくるライバルでもあるんですから。今回、ああやってアキラをけしかけるようなことをしたのは、単にアキラにハッパをかけるというらうな単純なものではないような気がしますが、作中でも言ってるように「ライバルは叩きがいがないと…」というあたりなのかな。緒方さん、素直じゃないから。