スペシャル(25・26局)「突きつけられた佐為の刃 ヒカル最大の壁」
院生研修の昼休み、ファストフードでお昼を食べているときに、院生以外での囲碁勉強の話になった。ヒカルが師匠についてなくひとりで勉強している(佐為のことは言えない)のを聞いた和谷は、強くなるためにはひとつでも多く強い人に打ってもらうことが必要だといって、ヒカルを和谷の師匠・森下九段の研究会に誘う。ヒカルは行く気がなかったが、佐為が行きたがって行くことに。
研修会に行くために棋院にやってきたヒカルは、一階でぐずぐずしていた。そこに緒方が通りかかり、ヒカルに声をかける。ヒカルが研究会にくることを聞いて、塔矢名人の研究会にもこないか、とヒカルを誘った。しかしヒカルは行かないと答える。ヒカルはアキラとは一緒に「お勉強」するのではなく、戦いたいのだ。アキラは自分のライバルなのだから。そのときちょうど和谷も棋院に現れた。緒方は帰り際に若獅子戦で見れるかもしれないアキラとヒカルの対局を楽しみにしていると言い、ヒカルを煽った。ヒカルは若手プロと院生たちで戦う若獅子戦が楽しみになったが、和谷に出場できるのは院生一組16位までだと聞いてショックを受けた。今のヒカルは2組18位にすぎないのだ。しかし5月にそこまであがれるくらいに成長しないことには、アキラには追いつけない。気を取りなおして和谷と一緒に森下研究会に行ったヒカルは、思いがけない人と再会した。囲碁教室で先生をしていた白川七段がそこにいたのだ。白川は1年前に囲碁を始めたばかりのヒカルが院生になっていたことに驚くが、ヒカルには才能を感じていた。アキラをライバル宣言するヒカルを森下は頼もしく思った。森下は塔矢名人と同期ゆえにライバル心を持っていて、何かにつけて塔矢一門と張りあっているのだ。
ヒカルは院生研修、二組で連敗を続けていた。あと少しというところで勝てない。対局合間の休憩で、一組の飯島が友達にスランプをグチって「勝って気分を立てなおせば気持ちも晴れる」とアドバイスされていたのを聞き、ヒカルも気持ちを持ちなおそうと頑張ったがやはりあと一歩のところで負けてしまう。
森下研究会。ヒカルは囲碁の勉強を頑張っているのに対戦成績が落ちていることに気をやんでいた。皆で検討中、佐為の意見をヒカルが提案してみると皆に感心され、ヒカルは佐為の強さを改めて感じた。しかし、そんなに強い佐為と毎日打っていても、院生研修での順位は落ちるばかり。2月の成績はボロボロ、3月ははまた二組の一番下からのスタートだ。このままでは若獅子戦には出場できない。佐為と打ってるのになぜ?と叫ぶヒカルに「私と打ってるからです」と佐為は言った。
塔矢名人研究会で、ある棋士が「歴史上一番強い棋士」をインタビューされたときに本因坊秀策の名前をあげたという話で盛り上がっていた。いくら囲碁の研究が進んでいても、囲碁の強さは個人の資質に負うところが大きいのだ。「もし本因坊秀策が現代の定石を覚えたら?」「そりゃ最強だ」という会話を聞いて、緒方はsaiが和谷にそう評されていたことを思いだしていた。
ヒカルは強くなったからこそ、佐為の切り込む一手の刃の切っ先が見えるようになった。今までは闇雲に向ってきたヒカルが、佐為の一手を恐れるようになり、それでつい手控えてしまうようになった。それが実践でも現れてしまうから院生研修の対局で僅差で負けてしまう。今、ヒカルに必要なのは怖くてもギリギリまで踏み込む気持ち。アキラはいつでもそうだったという佐為の言葉に、ヒカルは勇気を持って踏み込む…があっさりと佐為にノサれてしまうのだった。
再び塔矢名人研究会。話題は若獅子戦になり、緒方が何気なくアキラにヒカルも若獅子戦に出るらしいと伝える。アキラは目を伏せ、ヒカルのことを気にしてないふりをする。名人は「…例の子か」と呟いた。
ヒカルは家で佐為と戦い続け、森下研究会で勉強も続けてきた。白川から対局を持ちかけられて、「気持ちで負けてたらダメだ」という白川の言葉にヒカルはアキラに追い付こうと気持ちを奮い立たせていた。
ヒカルは院生研修を頑張り、ついに一組にあがった。ヒカルは気持ちが強くなり、相手が厳しい手を打ってきてもひるまずにもっと上の手で打ち返してやろうと思えるようになってきた。佐為はそんなヒカルを頼もしく思いながらも、危なかしい手も打つのでハラハラしてしまう。
ヒカルは最初の対戦相手の飯島に勝利をおさめ、午後の対戦相手のフクにもギリギリ勝った。フクはあまり考えこまずに早打ちをするタイプだが、ヒカルはそういう早碁の方が打ちやすく、向いているようだ。ヒカルはフクと打ちながら、囲碁の楽しさを改めて感じていた。
その次の週でのヒカルの対局相手は和谷。始まる前、研修室で和谷は小宮にネット碁の話をしていた。ネット碁にも強い人がいて、プロが参加していることもあるらしい。たいていはお忍びできてるが、以前プロの名前を騙ってるかと思って対局した相手にノされてしまい、後で確かめたら本人だった…という話もしていた。その相手は一柳棋聖。そしてプロじゃないのにプロ以上に強い人が一人いたという。小宮が去ったあとにヒカルはそれが誰かを聞いたところ、予想どおりsaiの名前が出た。和谷は恐ろしく強くて謎に包まれたsaiが自分と対局したときに「オレツヨイダロ」と声をかけてきた話をする。ヒカルはそれを聞いて思いだして「zeldaって和谷だったんだ」とついうっかり口を滑らせてしまう。自分とsaiしか知らないはずのことをなぜヒカルが知っているのか、ひょっとしてヒカルはsaiなのか?…という疑念に和谷は包まれたまま、時間になりヒカルと和谷の対局が始まった。ヒカルも口を滑らせて余計なことを言ってしまったことを後悔していたが、今は目の前の対局に集中しなければいけないのだ。和谷はヒカルはsaiではないと考えていた。あまりにも強さが違いすぎる。でもヒカルの中にsaiの気配を感じるのだ… 対局は和谷の中押し負け。対局後、和谷はヒカルにsaiのことを問い詰める。ヒカルはsaiの弟子ではないのか? アキラがヒカルを追いかけていたのは、ヒカルの中にsaiを感じたから?…と。ヒカルはたまたまネットカフェにいたときにネット碁をやっていた人がしていたチャットをみて記憶に残っていただけで、その人の顔もみてない…と嘘をついた。和谷は残念がるものの、ヒカルとの対局はおもしろかったと誉めた。その日の午後の相手は連勝したヒカルに恐れをなしたせいか、ヒカルが勝った。そのあとは連敗したものの、なんとか一組16位に滑りこみ、若獅子戦出場を決めた。
ファストフードで院生たちは若獅子戦の出場を決めたヒカルに「おめでとう」と言う。若獅子戦は院生研修のない土曜日に行われる。去年プロに勝ったのは伊角さんと本田くんだとか、そういう話を聞きながらヒカルは思い返していた。ネットカフェでアキラに「もう会わない」と告げられたとき、「今から打とうか?」と侮蔑するような顔でアキラに言われたときにヒカルは何も言えなかったけれども、今なら言える。「ああ 打とうぜ!」
3月、新入段者の迎えたり、成績優秀者を表彰する式典が棋院で行われていた。アキラもこれで晴れてプロの一員だ。アキラは緒方を見つけてかけよるが、厳しい顔をした緒方に「ようこそ プロの世界へ」と言われ、改めて「よろしくお願いします」と頭を下げた。
葉瀬中では卒業式を迎えていた。泣きながら別れを惜しむあかりと久美子に囲碁部で楽しかったとお礼を言う筒井。ヒカルは加賀にあの3面打ちのお礼を伝えようとするものの、加賀は「気にするなって」と軽くいなす。加賀と筒井は笑顔で卒業していった。
今回、1時間スペシャルということで「30分総集編、30分新作かな?」と思ってたら1時間丸ごと新作でびっくりでした。それにしても、製作スケジュールのせいか作画の荒れ方が… 私の好きな緒方さんのアップや、筒井さん、アキラあたりはまだマシでしたが、和谷くんがひどい。特に座ってる姿の全身バランスとか。作画監督がアップを手直しするだけで精一杯だったのかもしれません。それでも一般の地上波アニメレベルからすると平均以上だとは思うんですが、原作の絵が美しく、アニメも最初の方が美しかったのでついそれと比べてしまうんでしょうねぇ。今の日本のアニメ製作会社の現状からすると仕方のないこととはいえ… それでも2週に一度は結構きれいな絵になるので、来週は楽しみです。問題はこれから先ですが、物語の節目となる「絵で見せる演出」の回だけでもきれいでいてほしいものです…
キャラクターデザインをした本橋さんが作画監督に戻ってきてくれるのが一番いいんですが。
絵には不満が残ったものの、緒方さんはわりといい感じで、怪しさ爆発で素敵でした。
奈瀬ちゃんや本田くんの声が流れたのが今回が初めて。これで一組の主要メンバーは出揃いました。奈瀬ちゃんの声をやるのは新人さんだと聞いて少し不安でしたが、思ったよりもよかったです。ただ奈瀬ちゃんはもっと気が強い子というイメージがあるのでそこが少し違いましたが。本田くんは顔はジャガイモですが、声はカッコいいなあ…
今回でてきた「ナックドナルド」のモデルはあきらかに「マクドナルド」。原作では「マクドナルド」そのものなんですが、アニメでは版権の問題もあって架空のものにしたんでしょうか。
原作においてはリアリティを感じさせるために、実在の風景やモノを背景や小道具に使用しています。実在の商品・建物などを許可をとった上で使っているとか。物語中でキャラクターが飲んだジュースと同じものがメーカーから編集部に届いた…という裏話がコミックスには載っていましたが、悪いイメージを与えるものでなければメーカーからすると宣伝にもなりますからね。(ただしメーカーによっては版権が厳しくてできない場合もあるそうです。)
まあ場所スケールとかはおかしい部分はあるんですが… たとえば院生たちのたまり場となってるマクドナルドは九段下にある店の写真を元に描いてるとか。日本棋院があるのは市ヶ谷ですから、お昼休みに院生たちがそこまで行くのは難しそうなんですけどね。
今回は原作約5話を詰め込んだためにカットされたエピソードがあります。また、演出のためにエピソードの順番を大幅に変更されていたので、アニメだけみてる方は時間軸に違和感を覚えたのではないかと思います。そこで原作でのエピソードの順番とカットされたエピソードの補完を。
(1)和谷に研究会に誘われる(2月頭)
伊角さんは「九星会」という囲碁の塾に行っているという情報がカット。
(2)ヒカルが囲碁部に顔をだす
これは来週の話にエピソードがまわされました
(3)日本棋院でヒカルが緒方に研究会に誘われる
(4)森下名人研究会
(5)白川七段とヒカルの対局
アニメでは別の日に白川先生がヒカルを対局を誘ったようになってますが、原作ではヒカルが初めて森下研究会に顔を出したときです。意欲を燃やすヒカルをみて佐為が「院生の研修日もそうだがここもいい 技術的なことだけなら私が教えられるか ここはヒカルの気構えが鍛えられる そしてヒカルが棋士の世界に一歩近づくことに あの者もまた近くなる」と名人を思いだすシーンがカット。
ヒカルが囲碁部をやめるときのゴタゴタをみて、「佐為に教えてもらえばいいのに、なんでわざわざ院生に?」と思った方がいたかもしれません。現にアキラは院生にはならなかったのですから。この佐為の言葉はその答えでもあるのでしょう。ヒカルは佐為のように圧倒的に強い相手に教えてもらうだけではなく、実力が僅差の相手と真剣勝負をすることで「気持ち」を鍛えてゆく必要もあるんですから。アキラの場合は院生とは力の差がありすぎるのでそういう効果は見込めませんでした。闘志を燃やして戦うということは、実はアキラはヒカルと出会って初めて知ったわけで。そういうのもあって、アキラはヒカルにあれだけ執着したんですよね。
(6)僅差で負け続け、二組で低迷するヒカル
勝てないヒカルをみて心配そうな顔をする佐為。佐為に心配させないように「大丈夫」だというヒカル。そしてヒカルは佐為に最近は自分以外と打つ機会を作ってあげられなくてごめんと謝ります。いつかチャンスを作ってやるからというヒカルに、佐為は意気込んで名人と対局したいと言います。今のヒカルにとってはそれはムチャなこと。でも「そーだな… いつかなんとかしてやりてーな オレばっか好きなことやってて…」と考え込むヒカルをみて、佐為は謝り、自分には永遠の時間があるからいつかヒカル以外の人と対局の機会があるまでじっと待つと明るく言います。
…実はこのヒカルと佐為の何気ないやりとりは後の展開に重要な伏線となるんですが… 佐為のことをちゃんと考えて気を使うヒカルのシーンはそれほど多くないだけに、これはちゃんといれてほしかったなあ。
(7)森下研究会(3月頭)
佐為の考えでほめられるヒカル→「私と打っているからです」。ここは原作に忠実です。
(8)塔矢研究会
現代の定石を覚えた本因坊秀策の話
(9)刀を振るう佐為(イメージ図)
(10)塔矢研究会
アキラが来月からはプロになるという話から話題は若獅子戦に。芦原は去年の若獅子戦に出て倉田に負けたことと、優勝したのは倉田、そして倉田も芦原も二十歳を過ぎたので若獅子戦の出場資格はない…というエピソードがカットされました。これがないと倉田さんは「若手の中ではかなり強い」「囲碁を覚えて2年でプロになった」ということでプロの間でもなにかと話題になる人だということが視聴者には伝わらないので、倉田さん登場のインパクトが薄れそうな。
原作では名前が頻繁にでてくるものの、実際にはなかなか登場しない倉田さんはどういう人なんだろう?とみんな期待してたんですよねぇ…
(11)アキラがプロ入り(3月中旬〜下旬?)
(12)葉瀬中卒業式(3月下旬)
原作では加賀くんと筒井さんのセリフはありませんでした。だからこそアニメでフォローしてくれたのは嬉しかったりします。ちなみに現在のところ原作ではこれ以降ふたりの本編への登場はありません。(番外編にはありますが) いいキャラなのにもったいないなあとは思うものの、キャラクター主導ではなく物語主導である部分が、私が「ヒカルの碁」を面白く思えるところだったりするんですけどね。
(13)ヒカル1組に→和谷との対局(4月)
このあたりはほぼ原作と同じです。
(14)院生メンバーで若獅子戦の話(4月下旬〜5月頭?)
原作では院生控え室での話になっています。
アニメはラストにアキラのプロ入り、葉瀬中卒業式という「区切り」となる部分を持ってきたために、「2月の成績ボロボロで3月は二組ラストからスタート」なのに、3月中に一組に昇格して16位以内に入ってしまうというヘンなことになってしまいました。(順位は月ごとに見なおしなのに)
スタッフもそれを分かった上で「旅立ち」を最後に持ってきたんだろうし、それが効果をあげているとは思います。絵には不満はあっても、脚本自体はおもしろかったと思いますし。流れを考えて削除されたエピソードがあるのは残念でしたが。次週は作画も期待できそう。