門脇は日本棋院にプロ試験の申しこみをするために書類を持ってやってきたのだ。門脇は自分の顔を知らない院生(伊角、和谷)が自分がプロ試験を受けるらしいという話を噂しているのをすれ違って聞いたりした。門脇はかつて学生三冠をとったときの対局を思い出し、売店で扇子を購入。申しこみの前に、しばらくナマっていたカンを取り戻すために、たまたまエレベーターから降りてきた院生らしき少年に対局を持ちかけた。
対局を持ちかけられたヒカルは、少し考えてからそれを受けた。ふたりは棋院の一般対局室に行く。この相手はそこそこ強いらしく、その上自分とかかわりのない、通りすがりのような人で後腐れがないので、ヒカルは佐為に打たせてあげようとしたのだ。アキラとのネット碁以来、ヒカル以外の人と打ってなかった佐為は喜んで対局を始めた。
その頃、桑原本因坊と挑戦者・緒方九段による本因坊戦は最後となる第七局を迎えていた。記録係をしていた真柴は、勢いでは緒方の方が勝っているのに、ここまで縺れこまさせた桑原のしぶとさに感心していた。本因坊戦は一局を二日かけて打つが、立会人の柿本が終わりを告げようとした瞬間に桑原が打ち、緒方の封じ手となった。緒方は30分考えた末、棋譜に封じ手を書く。1日目が終わり、桑原は関係者を一緒に夕食に行こうと誘った。緒方も誘われたが、緒方は一人で食事をとると断った。皆が一足先にロビーに行き、緒方が部屋に戻ろうとしたところ桑原に呼びとめられる。桑原は緒方に封じ手はうまく書けたかと聞いた。緒方は二日制の碁を打つのはこの本因坊戦が初めて、しかも第一局から六局まではすべて桑原が封じ手を行なってきた。ただでさえ気合が高ぶるのが挑戦手合い、しかもこの大詰めで1日中対局をして疲れきっているのだから、書き間違えをしているかもしれない。迷った末やめた場所の方にうっかりと印をつけてしまうこともあるのだ… 緒方は、桑原は自分を動揺させる罠を作るために、桑原が今まで意図的に自分が封じ手を行なってきたことに気がついた。しかし緒方は桑原の言うとおり、自分が思ったところに印をつけたか、もうひとつ確信が持てなかった。そんな緒方を嘲笑う桑原に、緒方は「ジジイ…」と吐き捨てる。去り際、桑原は緒方に、新しい波がくるのなら自分が本因坊の座に座って待ちたいと告げたのだった。
さて、棋院では佐為にコテンパンにやられた門脇がじっと盤面をみつめていた。ヒカルは門脇が予想以上に強かったことに驚く。門脇がヒカルに「ほんとに院生か?」と詰め寄ろうとしたので、ヒカルは慌てて立ち去った。門脇の「碁を始めてどれくらいになる?」という問いに、ヒカルは振り返り、「千年」と答えた。ヒカルが去った後、門脇はプロ試験の申しこみ書類を破り捨てた。今回試験を受けるのはやめ、もう1年鍛えなおして来年受験をするつもりになったのだ。今度は本気でやるのだ。
本因坊戦第七局の二日目、まずは立会人の柿本が緒方の封じ手を開いてそれを告げた。緒方はそれを聞いて、安堵の息を漏らす。桑原は意地悪そうに、昨日は眠れたか緒方に問い掛ける。緒方は「年寄りのたわ言につきあう気はありません 本因坊の座はどいて頂く 新しい時代はもうそこまで来ているんだ」と言い放った。しかし、結局緒方の力が及ばず、桑原が防衛を果たした。
院生研修のあと、ヒカルは伊角や和谷はプロ試験予選に出なくていいことを知った。ここ3か月の院生研修平均順位8位までは予選は免除されて本選からの出場となるのだ。ヒカルは今月7位にまであがったが、平均順位では足りないので予選からのスタート。院生研修は今回で終わり、夏休みに入ったら予選がスタート。一か月後の本選で待ってるからという和谷にヒカルは笑顔で答える。和谷はお気楽そうなヒカルは自分たちみんなライバルだということが分かってないんじゃないかと思っていた。和谷がトイレに入ると、そこには本田がいて、個室からトントンと規則正しく扉を叩く音が聞こえていた。越智だ。本田に負けてトイレにこもっているらしい。みんな必死なのだ。全員仲良く合格というわけにはいかない。和谷も改めてプロ試験合格を決意した。
そしてプロ試験予選初日。ヒカルは意気込んで棋院にやってきた。
今回の話は、セリフ回しやカット割りが原作にほぼ忠実です。原作ニ話分を1話にまとめてテンポを維持するためにエピソードの順番を変更していますが。
原作では、
(1)門脇が日本棋院に→ヒカルと対局して負ける
このあと、門脇が来年受験するらしいとネットでの噂を聞いた和谷が伊角さんに話しているのをヒカルが聞いて「?」となっているコマがありました。
(2)自動販売機→トイレ
「仲良く全員でってワケにはいかない」というセリフは和谷がトイレに入った直後。ちなみにその前には「最終的に合格するのは三人」という部分が原作にはありました。ヒカルが院生になった直後に「プロ試験に受かるのは三人」という話がでてましたが、ここでもう一回知らせた方がいいんじゃないかなあと思いますが… 三人しか受からないということの過酷さは、話が進むにつれ実感することになります。
(2)本因坊戦1日目→二日目
ここもほぼ原作と同じ流れです。アニメでは新聞でわかった緒方さんの負けは、原作ではこの6話後にタクシーの運転手の河合さんのセリフからわかります。緒方ファンとしては、「これじゃ負けるだろうなあ」と思いながらも長いことやきもきさせられたものでした…
(3)プロ試験予選に臨むヒカル
今回の見所はなんといっても緒方さんの「…ジジイ」でしょう! あのアキラを軽く翻弄している緒方も、桑原の手にかかればただの小僧扱い。まだまだ青さが残る緒方さんですが、そういう情けないところもファンにとっては魅力でして。作画もわりといい感じでしたが、あの「ジジイ」のなんともいえない微妙な表情は原作作画には及ばないのが少しだけ残念。それ以上に声優さんの演技が迫力を補っていて、特に桑原先生役の納谷六朗さんはベテランだけあって、豹変してゆく演技がそりゃもう見事で。原作以上に妖怪な雰囲気を出しています。最初の「緒方くーん」の言い方がお茶目でなんか企んでそうなところがさらにいいですな。「アメ玉」とかあのあたりもかなり期待できそうです。
でも残念なことに、緒方さんはこれでしばらく出番がないんですよね… 原作読んでたときにはもう二度と出てこないのでは?と心配したものでした。緒方ファンとしてはこれで楽しみが… でもそれまでもアニメが楽しみな名シーンも沢山ありますし。
門脇さんは一体なんのために登場?と思った方もいるでしょうが、実は原作でもそのあたりはまだわかってません。単に偶然佐為の力でヒカルのライバルを排除してしまった、だけではアレだし… 原作ではしばらく本編はお休みしてましたが、5月末から再開しますし、そこでの門脇さんの活躍を期待しています。
オマケ。今回、本因坊戦の立会いをした柿本先生は、アニメ第ニ話・子供囲碁大会のときにうっかり助言したヒカル(佐為)を叱った先生であります。「ヒカルの碁」ではこういう感じで以前脇で出てたキャラがまたなんらかの形で登場することもよくあるのです。あと名前だけ話題になってたキャラが後で登場とか。