プロ試験予選初日。5日間で1日一局対局を行ない、そのうち3勝したものが一か月後の本選へと勝ちあがる。院生の上位8名、和谷や伊角は予選免除で本選から出場。いつもどおり打って勝ちあがるだけだと思っていたヒカルだったが、プロ試験受験者は院生受験者と違って大人も多く、ヒカルは怯んでしまう。院生は18までしかいることはできないが、院生じゃなくても「外来」としてプロ試験は30歳まで受験することができる。アマの強い人で受験する人もいるのだ。
プロ試験会場となるのは、いつもの院生研修部屋。しかし大人がいてタバコの煙が充満しているそこは、いつもと違った空間のようにヒカルには感じられたのだった。棋院の玄関で出会った「ヒゲ男」が別の受験生と口論しているのにビビるヒカル。
荷物を置きにいった控え室には、フクや他の馴染みの院生メンバーがいた。ヒカルはフクに去年アキラがプロ試験予選を受けた話を聞いて―アキラは院生ではなかったので、どんなに強くても外来として予選から受けなければいけなかったのだ―1年前のアキラと同じ道を自分は歩いているのだと闘志を燃やした。
予選はまず対局相手の抽選から始まった。名前を呼ばれてひとりずつ紙のくじを引く。これで3日分の対局相手は決まるのだ。ヒカルの初日の相手は、なんとあのヒゲ男「椿」。圧倒されつつも、気合を込めて一手目を打つヒカル。しかし椿は一手も打たず、中座してしまう。そして30分が経過しても戻ってこなかった。
ヒカルはわけがわからず動揺が収まらない。やがて椿が戻ってきて対局が始まったが、ヒカルは平常心を失ったままだった。やがてお昼の休憩に。椿はヒカルをお昼に誘い出し、自分のペースで蕎麦屋に連れていった。怖がりつつも、椿に対局が始まって30分どこにいってたのか、ヒカルは聞いた。椿は気持ちを落ちつけるために、そのあたりをバイクで走ってきたという。気持ちを落ちついて実力を発揮できるようにするのが一番大切なのだ。椿はヒカルが動揺したままだと見ぬいて指摘した。予選の持ち時間はひとり2時間、それをどう使うはその人の勝手。
ヒカルは院生では2組では持ち時間30分、1組では持ち時間1時間しか体験していない。お昼休憩を挟むような対局は初めてなのだ。椿はそれだからヒカルは自分にあっさりとお昼休憩の手番をくれたのか、という。次は椿の番だから、自分はこのお昼中にじっくりと考えることができるのだと椿は言う。ヒカルはすっかり椿に圧倒され、萎縮してしまった。「これでは勝てるはずがない」と佐為は嘆息するばかり。
椿とヒカルの対局は、椿の4目半勝ち。ふたりの対局を側でみていた奈瀬とフクは共に初日白星をあげていた。飯島もやってきて、4人で帰り道についた。食事時の手番のことを考えてなかったと呟くヒカルに、奈瀬はそんなのどっちでもいいんだと言い放った。考えすぎで悪い手を打つこともあるから、食事中は何も考えずにリフレッシュした方がいいのだと。飯島は自分の手番で食事休憩をしたいと思っていて、フクはどちらでもかまわなかった。二日かけて一局を打つようなタイトル戦であれば手番かそうでないかは大きな差となるために、1日の終わりに「封じ手」を行ない、翌朝開封するような形になるが、食事休憩くらいであれば差がつくようなことはないのだ。ヒカルは二日かけて打つ碁があることさえ知らなかった。ヒカルにハッパをかけて息巻く奈瀬だったが、彼女の翌日の対戦相手は椿だからなのだ。駅に来て、ヒカルは地下鉄の駅に向うために3人と別れた。ヒカルがいなくなってから、飯島は奈瀬に言った。普通院生たちは、碁会所で高段者の大人たちに揉まれながら力をつけてゆくが、ヒカルは小さな大会に二度ほど出ただけだという。そんな奴がもうプロ試験を受けるところまできているのだ… その飯島の言葉にひょっとしてヒカルは天才なのか?と思った奈瀬だったが、飯島はヒカルの強さは危なかしい強さだというのだ。「急に成長するヤツはよく転ぶ…ってね」
帰宅したヒカルは、食事の準備をしていた母親に翌日留守番をしてほしいといわれて、プロ試験なのでダメだと言った。母親はヒカルがプロ試験を受けていることが初耳だったのでびっくり。ヒカルは事情を説明せずに、負けた苛立ちもあって自室に引き上げてしまう。
翌日、プロ試験二日目。ヒカルはどうしても椿に苦手意識を持ってしまい、声をかけられただけでビビってしまう。そして二日目の対局が始まったが…
今回はヒカルの弱点がはっきりする話です。中学生くらいの子供では、知らない大人と真剣勝負をする機会というのは普通ありませんから、ヒカルがビビるのもムリないこと。経験を積んで慣れていくしかないんですが、ヒカルにはその経験が少な過ぎたわけで。で、それをどうやって乗り越えてゆくか…は今後の話。
ヒカルは母親にプロ試験という進路に関わりのあることをちゃんと説明してなかった…というのは困ったものです。いくら自分の意志で進路を決めるにしても、まだヒカルは子供で親に養ってもらっている身なのですから。まあ私もあの自分は親を疎ましく思ってましたし、ヒカルの気持ちもわからなくもないんですが… そういうヒカルの「身勝手なお子様ぶり」を描いているのは、今後の人間的成長を見せるという意味もあるんですけどね。
今回はほぼ原作に忠実な展開でした。違ったのは、微妙なところだけ。
(1)椿の蕎麦屋での自己紹介
原作では「花の椿」だという紹介をしてましたが、アニメでは「昔、椿という強い侍がいて…」になってました。これは原作の連載当時から、椿さんのモデルは黒澤明監督の映画「用心棒」の椿三十郎じゃないかという話がファンサイトでもでてましたが、そういうことを踏まえた上での話になったんじゃないかなあと思います。
(2)ヒカルと母親の会話
原作では「昨日負けてイライラしてんだ」となってましたが、ヒカルの母親が作っているのはカレーだということを考えると、アニメのように「プロ試験予選1日目の夜」にした方がしっくりくるんじゃないかと思います。朝からカレーを食べるのは変ですもんねぇ…
椿さんの声は、もっと「熊男」ぽい声になるかと思ってたのでイメージとはかなり違ってしまいました。
今回は絵がとてもきれいでした。ずっとこのレベルが続いてくれるといいんですが…
オープニングとエンディングが新しい曲と映像に模様替え。葉瀬中メンバー中心だったのが、今度は院生中心に。最近の本編では絵の動きがギクシャクしてたのでどうなるかと思いましたが、オープニングだけあって力入っててよかったです。個人的には緒方さんの登場が嬉しい。これから当分本編での緒方さんの出番はないですから、その分オープニングで心を慰めようかと。