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【アニメ ヒカルの碁 第34局「勝ってはならない」】 02/06/09

碁会所「石心」にやってきたヒカルはオジさんたちにさっそく歓迎され、席に連れていかれ対局をせがまれる。
アキラは、日本棋院の仕事「ふれあい囲碁祭り」にやってきた。午前中にこのイベントの運営スポンサーでもある都議と、その秘書、後援会の二人との多面打ちをアキラはやる予定だった。その都議は囲碁は下手な癖に見栄を張って置石を減らすが、負けると悔しがる人なのでイベントの運営委員がアキラに「負けてあげてほしい」と頼むのだった。そして都議一行がやってくる。彼は桜野千恵子棋士に会えるのを楽しみにしていたが、彼女が都合でこれなくなって変わりにやってきたアキラを侮るようなことを言った。アキラはそれには平気だったが、都議が碁盤の上に濡れたコップを平気で置くという所業に顔を顰めた。
イベントが始まった。一般の人の対局が始まり、アキラは都議たち相手に4面打ちをやることに。後援会の二人は5子と6子置き、囲碁が強いという秘書が3子置きで始めようとすると、都議も見栄を張って3子置きで始めた。
「石心」でヒカルはオジさんたちに囲まれていた。ヒカルの目算が苦手だというのに気がついたマスターは、ヒカルにわざと持碁(じご)にしてみたらどうか?という。互戦であればコミの5目半があるから引き分けになることはないが、置石だと引き分けがあるのだ。わざと持碁にするには中盤に形を作ってヨセで正確な計算をする必要がある。しかもわざとヘタな手を打って相手に気づかれたり、いつもより打つのが遅くなってもいけないのだ。とりあえずまずはひとり相手にヒカルは挑戦を始める。
アキラには10手も打てば相手の実力はわかる。後援会のふたりは妥当な置石、都議はヘタなので差を詰めないようにしなければならない。秘書は強いので気を抜くとうまくいかなくなりそうだ。秘書は真剣な顔をしているアキラを皮肉な目で見ていた。恐らく彼は都議に負けてくれといわれているのだろう、と。
「石心」でヒカルは1面持碁を見事に成功させた。しかしマスターによるとプロなら1面での持碁は100%成功させることができるという。ヒカルは次の段階の2面持碁に。
アキラは計算しながら四面打ちを続けていた。秘書はアキラが自分との盤面を気にしているのを知って、都議に負けなければいけないのが悔しいから自分には勝つ積もりで真剣になってるんだろうと考え、ぜひ悔しがらせてやろうと考えていた。その頃、運営委員はアキラがお客さんを一刀両断しないかという心配を少ししていた。
アキラは細かく調整しながら打ちつづける。そして秘書との対局が終局。結果は黒63目、白63目で持碁となった。アキラは秘書との検討をしながら他の人との対局を続ける。やがて後援会のひとりも終局。それもまた持碁に。秘書はひょっとしてアキラがわざと持碁にしたのかと驚く。しかし自分との対局で不自然な手はなく、自分相手に3子置きではプロでも勝つのがやっとのはずなのだが…偶然だろうと思い出した頃に、都議も終局。こちらも持碁だった。他のふたりも持碁だと聞いて訝しがる都議。そして最後のひとりも終局。それも持碁だった。そんなことができるのだろうかと驚く都議をアキラが冷たい顔で振りかえって、初手から検討しようと言い出した。
イベント終了後、都議たちは車で帰ることに。四人持碁の話を聞いて、都議が機嫌を悪くしたのではないかと怯える運営委員に、秘書はそれは大丈夫だと答えた。謝って頭を下げるアキラに、露骨にやってはお客さんに失礼だから、今度からはもっとうまくやるようにと答えて去っていった。帰りのタクシーの中、彼は「プロの力とは恐れ入る―」と思いかえしていた。
午後から多面打ちのためにやってきた芦原は、四面持碁の話を聞き、アキラを捕まえて声を荒げた。こんなところで才能の無駄使いをするな、と。これから棋戦の予選も始まり、勝ちあがっていけば対局数が増えていくのだ。こんなイベントで全力を出していたら損じゃないか、と。横からみてたら余裕がなさそうなアキラに、芦原は誰も追いかけてこないから気負うな、という。アキラは「…でもプロ試験予選は通った」と呟く。そして、「なんでもない」と微笑んだ。
ヒカルは3面持碁はひとり分だけ1目間違えて失敗。河合さんがうるさかったせいだと騒ぐヒカルを見ながら、マスターは興奮を隠せなかった。人が成長する様を目の前でまざまざと見ることができたのだから。


今回は久しぶりに絵が美しかったです。特にアキラの揺れるおかっぱ。「なんでもない」のシーンは原作に匹敵するだけの美しさでよかったです。アニメの製作現場のスケジュールの厳しさからすると絵が崩れる回があるのも無理はないですが、せめて原作での名シーンだけは絵がきれいなスタッフのときに当ればいいんですが。
話は原作3話をアニメ1話にしたので、細かい部分がカットされてますが、ストーリー上の伏線などはあまりなく、細かい描写部分が削られました。特に都議の横暴さの部分が。だからアキラが都議相手にあれだけ冷たい仕打ち(?)をするのかがアニメではちょっとわからないかも。

ヒカルは碁会所のオジさんたちに本当にかわいがられていますよねぇ。ヒカルって屈託がなく、相手の懐にするりと入っていけるタイプですし。同じ「かわいがられる」でもアキラの場合は一歩引いて尊敬されてるような感じですから、そのあたりがこの二人は対照的であります。

この「持碁」の話はヒカルのヨセの弱さを補う特訓ということと、それをアキラとシンクロしながら対照的に書くというのがあるんでしょう。やはりまだアキラの方がレベルが高いですが、そのアキラもヒカルのプロ試験の結果を気にしていて、刺激を受けている…ということで。

今回名前だけがでた、桜野千恵子さんがどんな顔をしているか…は今後をお楽しみに。

アニメ冒頭の碁会所にやってきたヒカルをオヤジがさっさと席に連れていくというのはアニメでのオリジナル描写です。
さて、原作からカットされた部分のフォロー。
(1)「ふれあい囲碁まつり」
原作での扉絵で子供と話しているアキラがかわいいんですよ。…というのはおいといて。囲碁祭りにやってきたアキラと運営委員の会話が微妙にカット。アキラの指導碁の経験は「父の碁会所でお客さんを相手に時々」という話。あとはイベントの運営で場所を借りたり、商品を用意したりするためにもお金はかかるので、スポンサーの機嫌をとらなきゃいけないという話。
(2)都議の暴言
桜野さんが来れなくなったと聞いた都議は「ちっ、生理にでもなったんかい」と暴言を吐き、後援会の人に諌められます。…いかにも下品なオヤジが言いそうなことで。そういうリアルさの積み重ねがこの「ヒカルの碁」という作品に血肉を与えているんですが。
アキラの表情を変えた都議の振るまいは、アニメでは濡れたコップを碁盤に置いたことだけになってましたが、原作ではその前に床に落ちた碁石を平気で踏みつけにするいうのがありました。 (3)打ちなおし
対局中、都議が1度置いた石を別のところに置くという「待った」をアキラが咎めるシーンがカット。プロの対局では「待った」はその場で負けになりますが、今回はアキラが悲しい顔をしながらも引き下がることになります。1度ならまだしもその段階で3回目ということで、アキラがつい言いたくなるのもわかります。アマであっても「待った」はマナーとしていいものではないのですから。ちなみにこの「待った」はプロでは即座に反則負けになるというのは、頭の片隅において方がいいかも。
(4)大丈夫?
運営委員がアキラを見ながら一刀両断しないかと心配するシーン。プロだから大丈夫だろうけれども、若い人は好き嫌いだけで物事をすすめることがあるし、相手の人たちの態度がアレでは「勝たせてやるもんか」と思えるのも無理はない、と…
(5)検討
秘書との対局が終わったあと、原作では他の3人と対局しながら、初手から並べて検討をしています。他の人での検討シーンも微妙にカットされています。
(5)ボンクラ先生
タクシーで帰る前のシーン、秘書は都議のことを「さすがにボンクラの先生も塔矢先生がわざとされたことに気がつきましたが」とボンクラ呼ばわりしています。この都議って妙に野心的な匂いを感じさせる、インパクトのあるキャラなのに名前すらでてこず、この話の出演だけってもったいないですねぇ…まあ「ヒカルの碁」では味のある脇役が多くて、「勿体ない〜」って思うことがよくありますが。それだけほったさんのキャラ造詣と、それを絵で肉付けする小畑さんのうまさがあるからなんでしょう。でももったいないよねぇ…加賀くんとか筒井さんとか。
(6)なんでもない
芦原さんがきて四人持碁の話を聞いて困惑するシーンがカット。あと本因坊戦の一次予選が始まった、の後に「富士通杯や名人戦の一次予選が始まる」というのがカット。

ちなみに次とその次の話は、これまでの伏線が集約して、思いもがけない展開に繋がるという展開になるターニングポイントとなる話です。お楽しみに。



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