ついにプロ試験編が終わりました。原作の方でプロ試験編が終わったあとに、コミックスを読みかえしてみたら、和谷くんや伊角くんのセリフの片鱗に「プロになることがどれだけ大変か」がみえてきて、しみじみしたものです。でも、プロ試験も、出発点に過ぎないんですよね。
今週も作画はよかったです。原作と同じカメラアングル、カット割りが多かったですが、それは原作の映像的な見せ方がうまいからそのまま使ってたりするんでしょうか。
アニメオリジナルシーンでの三谷くんの顔とか、気になってしまう部分もありましたが…
プロ試験最終日、ヒカルと越智くんの対局は、越智くんのわずかなスキを見逃さなかったヒカルがいつの間にか有利に立っていました。
越智の向こうにアキラを感じる佐為。アキラはヒカルの中に佐為とヒカルの二人をみてたせいで困惑しました。初めてアキラに相対したのは佐為。でも今後のアキラに答えてゆくのは、佐為ではなく、佐為の力を吸収したヒカルである…… ここしばらくの佐為のアイデンティティを揺るがすエピソードの連続の後のセリフですから、佐為は自分が身をひくつもりなのか?と受けとってしまいそうになりますが、きっかけはどうであれ、最終的にアキラの対になるのはヒカルであると佐為は分かっているゆえのセリフなのではないかと思います。
その頃、アキラは日本棋院で指導碁を。天野記者にあれこれ声をかけられるものの、プロ試験の結果が気になるアキラはあからさまに気もそぞろ。しかし、天野が日本棋院研修センターにプロ試験の結果の電話を聞きに行こうとするとと、いきなり立ちあがって「ボクにも結果を―」と態度を豹変させるアキラ。
アキラも分かりやすい人です。普段はあまり回りのことに興味のない人なのに、ヒカルの名前を聞くとすぐにスイッチが入っちゃいますから。
そして、研修センター。最終戦を勝利し、残った和谷とヒカルの結果を外で待っている伊角さんの上に雨が降りはじめます。対局室でのざわめきに、伊角さんが視線をそちらに向けると嬉しそうに泣く和谷くんの姿が。伊角さんも「勝つものが上にいく」ことは、この世界にいる誰もが覚悟していることなのはもちろん分かってはいても。そして、動揺を治めようとお茶を飲もうとしてこぼしてしまった伊角さんの耳に、対局室からざわめきが聞こえました。ヒカルが負けたらプレーオフなのに、誰もそれを言いにきてくれない。そう考えて不安になっていた伊角さんの元に、たまたま片桐さんがやってきました。伊角さんをみてこわばった片桐さんの表情をみて、自分がプロ試験に負けたことが分かった伊角さんでした。その伊角さんの気持ちを現すように強く降り始める雨。
…長かったプロ試験の結果が出揃いました。伊角さん、やっぱり落ちました。順当な結果ではあるものの、ちょっと情けなそうなところが普通の人の思いいれを誘いやすいキャラなだけに、切ないです。
今年の合格者は、越智くん、和谷くん、ヒカルとなりました。みんな子供で、しかも越智くんとヒカルは院生となって1年前後。結局、こういう世界でものをいうのは実力であることが見事に反映されてますね。いや、実力と共に気力や運というものですか。伊角さんは実力はあるのに、その二つが欠けていたから。でも今年もし門脇さんが試験を受けていたらこの結果にはならなかったかもしれないわけで、佐為のおかげで潜在的にヒカルの合格の一番の敵が排除されたという形になってたんですね。この偶然が今後のストーリーにどう影響するかはお楽しみに。
さて、場面変わって越智くんち。ヒカルとの勝負に負けて落ちこむ越智くん。結果は1目半の僅差、ヒカルの碁は院生師範にもほめられるような強さを感じさせるものでした。その越智くんちに雨の中をものともせずに碁の内容を見せてもらうためにアキラがやってきましたが、「負けた碁はみせたくない」とアキラを拒む越智くん。帰りのタクシーの中で自分の元までやってきたヒカルを迎え撃つ意志をみせるアキラ。
越智くんは結局アキラの興味を自分に向かせることはできませんでした。越智くんはプライドが高いだけに、さぞ悔しいだろうなあと思います。でも彼はその悔しさを前に進むエネルギーに変換することができますから、この悔しさが越智くんを成長させるのでしょう。
アキラも、今までは正面から相対することを避けていたヒカルの「謎」に真正面から向きあう覚悟ができました。
そして次の月曜日は葉瀬中の話。ヒカルの母は今後のことが不安になり、担任のタマ子先生に相談にきました。ヒカルの母親は囲碁界のことを知らないだけに、進学しなさそうなこととか、まだ中学生なのに「プロ」になってしまうこととか、戸惑うのも無理はないですよね。ヒカルも親の理解を得ようと努力してないし。あの年齢の子供は親の気持ちを考えずに行動するのはよくあることで、そのあたりのリアルさは原作者のほったゆみさんが中学生くらいの子供の母親であるゆえなのかも。
囲碁部が気になってこっそり覗きにいったヒカルは、大会にむけてわいわいやっていく囲碁部のメンバーをみて、そこに自分の居場所はないことを改めて感じたのでした。でもヒカルはプロに、アキラと同じステージに立てたのですから、今は前をみて歩くだけ…
張り詰めた糸のようだったプロ試験編からみると、囲碁部のシーンはほのぼのしてていいですよね。でもその中にはヒカルは入っていけないという意味では寂しいシーンではありますが。
そして次のステージへ。
さて、アニメと原作との違いです。今回は原作からのカットはなく、アニメオリジナルシーンがいくつかありました。
(1)雨に濡れてとぼとぼ歩く伊角さん
原作では片桐さんの強張った表情ですべてを悟った伊角さんの表情で全てを表していましたが、アニメではさらにわかりやすく追加シーンを。伊角さんのかわいそうさがパワーアップ
(2)廊下でばったり出会った三谷くんに「プロ合格したんだってな。せいぜいガンバレよ」といわれるヒカル
(3)「ヒカルもくればいいのに。みんなでお祝いするのに」と呟くあかり。
この二つはアニメオリジナルなんですが、うーんこれはいただけないです。葉瀬中囲碁部が今回のエピソードにでてきた意味がこれでは微妙に変わってしまいます。
三谷くんは、おそらく心の底ではヒカルの「裏切り」を許しているとは思いますが、でも彼は意地っ張りゆえ、この段階ではヒカルにあんな素直(三谷くんにしては!)にお祝いをいうことはないのではないでしょうか。そうじゃないと、この●●話後のエピソードでの三谷くんのヒカルに対する態度が変になってしまいますから。
それに、あかりちゃんは"ヒカルが囲碁部にくればいいのに"とは言わないと思います。あかりちゃんはなぜヒカルが囲碁部に顔を出さないのかその理由を十分に知っていますし… というか、ヒカルに「もうこないで」と言ったのはあかりちゃんですものね。はるか高みを目指して邁進するヒカルの今の居場所は、囲碁部ではないのです。
楽しかった囲碁部の日々を恋しく思いつつも、そこは自分の居場所ではないと寂しく感じるヒカル。それでも、ヒカルはアキラを追いかけてプロの道を進むことを選んだのですから。
今回のエピソードは囲碁部の面々の近況報告と、ヒカルにとっての懐かしいけれどももう戻れない場所、そしてこれからの険しい道への決意、そういうものを表していたのではないでしょうか。そういう意味では、アニメオリジナルエピソードはしっくり来ないんですよね…
こういうセリフを言わせたくなった気持ちは分からなくはないんですが。