簡単なストーリー箇条書き。
・対局は序盤から佐為がムチャな攻めをする。わざと攻めたくなるようなスキを作って複雑な戦いに引きずりこむのが佐為の作戦だった。しかし名人は誘いに乗らない。
・控え室の面々はそんなヒカルの打ち方を訝しがるが、桑原だけは何かに感づいている。
・名人はこの一見荒れてみえる一局が案外奥が深いことに気がつき、ヒカルに新人とは思えない威圧感を感じた。
・ヒカルは投了。ヒカルの評価を保留する緒方に、思わせぶりなことをいう桑原。緒方が去った後、桑原はアキラに、あの一局はヒカルが自分に大きなハンデを課して打っていたのではないかということを告げた。混乱するアキラ。
・名人はヒカルの持つ何かに気がついていた。「次は互戦で」と告げる名人。
・アキラは桑原に今までヒカルに翻弄されてきた経緯を話す。
・検討でヒカルが何も喋らないことをカメラマンがアキラに教える。
・家に戻って、今回の件で言い合うヒカルと佐為。
・塔矢家、アキラは名人に「次は互戦で」といったことを聞き、名人は肯定した。
今回、アニメは原作の1.8話分を1話にしていました。ヒカルと佐為の諍いのあとのヒカルのフォローの部分が放映されなかったので、今回は原作知らない人が見たら「うわー、ヒカルひどいこというなあ」という印象になっちゃったかも。そのフォロー部分は、来週か、再来週かで描かれると思いますが。
その埋め合わせとしてか、アニメオリジナル部分がいくつか追加になっていました。詳しいことはまた後ほど。
個人的には原作ではこのあたりは佐為vs名人戦への期待の大きさの反動で淡々と読んでしまったんですが、アニメではふたりの対局描写に迫力があってよかったです。あと、アキラがヒカルとのこれまでのことを桑原先生に告白するシーン、声優さんの演技もあってしみじみと味わい深いシーンになりました。アキラってば本当にヒカルに振りまわされてきたなあ。
絵は、前半の佐為がきれいで迫力ありました。動きもいいし。ヒカルもかわいかったし。後半になって全体的に少し崩れた感じになりましたが、それでも水準は保っていたと思います。今回のカット割は結構原作に近かったですね。
佐為と名人の初対局はあっさりと終わってしまいました。ヒカルの最初の思惑…佐為には打たせてやりたいけど、余計な荷物を背負いたくないので、佐為に大きなハンデを課して無茶な展開を強いて佐為の法外な強さを隠す…は大体において成功しました。しかし、名人や桑原本因坊のようないくつもの死活を乗り越え、頂点に立つような人々にはそのヒカルの意図が看破されてしまいます。今回は「勘」の部分が強調されてましたが、ある一線を越えるためには理屈を超越した何かが必要になるということを示しているわけで。…その点、緒方さんなんかまだまだこわっぱなんでしょうね。
見ていた人それぞれに不可解な印象を残した一局となりました。和谷くんと越智くんには「なぜヒカルがあれだけのトッププロ達に注目されてるのか?」という疑問が残ったでしょう。名人と桑原先生には「なぜ自らにハンデを課すような形で対局したか」 緒方さんは判断保留ですが。アキラにとっては…やっと自分の元まで近づいたヒカルがみせた対局は、自滅するような不可解な碁。でも桑原先生から「自分にハンデをつけた上での対局」である可能性を聞くわけです。それが理解できたかはともかく。アキラは元々ヒカルの「不思議」に惹かれて追いかけてたわけですが、今回も「キミは誰なんだ」には解答がでないまま。…そしてさらに惹かれつつも近寄れない状態が続くんでしょうか。
前から疑問に思ってた、佐為と秀策の関係についての説明がありました。秀策が自分が打たずに佐為に打たせてあげたことは、佐為のワガママと秀策の優しさゆえのことだと書かれています。でも他にも出会ったときの年齢だとか、お城碁の持つ意味の大きさなども関わってきてるんでしょう。秀策が佐為と出会ったのは、おそらく五歳から七歳の間です。その位の年齢では、まだ確固たる自我も芽生えてなかったでしょう。ヒカルが佐為と出会ったのは11歳から12歳の間ですから、それと比較すると出会った年齢のせいで佐為との関係がかなり違っていたことは容易に想像できます。佐為が秀策のことを幼名の「虎次郎」という名前で呼んでいるのは、親しい間柄であったというだけではなく、子離れできてない親みたいな部分があったのではないかと推測しています。(元服して改名した後に、たとえ親しい関係であっても幼名で呼び続けるものなんでしょうか?)それにお城碁というのは一族の隆盛をかけた勝負であるために、自分個人の責任だけでは済まされないんですよね。その立場にたったら、より確実に勝つために佐為に打たせるのも無理はないと思います。ヒカルは秀策に比べると一局で背負うものが小さいために、自分のプライドを優先できるので自分で自由に打てるけど。
でも佐為がいうように「優しさ」が一番の理由で秀策は佐為に自由に打たせてあげたんだろうと思いたいものです。佐為の気持ちが分かるから、佐為を喜ばせてあげたいから打たせてあげる、と。色々な齟齬はあっただろうけど、佐為と秀策の間には暖かい絆があったのではないでしょうか。
アニメと原作との違い。
(1)天野記者が机の上にみたもの。
原作では天野記者が控え室に入ってきた後、机の上の万札に気がついて「その万札は何です?」と聞くシーンがあったのですが、アニメでは万札がないのでカット。
(2)賭けの結果。
原作では緒方さんは何も言わずに机の上の万札を自分のサイフに入れるのですが、アニメではその分「賭けは私の価値ですね」というセリフがありました。
(3)エレベータ前にて。
アキラがカメラマンとであったのは、原作では幽玄の間の玄関でしたが、アニメではエレベータ前に。そこで対局室の様子を聞いた後(ここは原作と同じ)、アニメではカメラマンが記録係から聞いた話をアキラに伝えます。名人は対局後、ヒカルに「次は互戦で」と告げたことを。ますます混乱するアキラ。
(4)父親への問い
ヒカルがごろんとベットに横になった後、場面変わって塔矢家へ。アキラは父親に「次は互戦で」といったかどうかを聞き、名人はそれを肯定します。それ以上はアキラは問い詰めませんでした。ここはアニメオリジナルのシーンです。
次回は予告や内容からすると総集編なのかな?という気がします。予告で流れた昔のシーン、最初の頃は絵が本当にきれいだったなあ、とため息。