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【アニメ ヒカルの碁 第57局「saiと打たせろ」】 02/11/17

今週のダイジェスト。
・自宅に戻り、ヒカルはsaiに対局中に感じたことを話す。自分はあの場で一番真中にいたような気がした。saiの考えや名人の考えも分かったのだ。そのとき初めて名人の引退宣言を思いだしてヒカルは慌てた。
・翌日、ヒカルは名人に会いに病院に行く。なんだか上の空の佐為に文句をいうヒカル。
・なんとか引退宣言を撤回させようとしたヒカルだが、名人は意見を変えなかった。名人はsaiの正体は詮索しないから、また打たせてほしいと懇願する。
・saiは苦々しい顔で、「もう遅い」と。止まったいた時の砂が滑り落ちはじめたのを感じていたのだ。
・saiの正体をさぐるためにやってきた緒方は、ヒカルと名人のやりとりを耳にした。ヒカルがsaiと関わりがあることを知った緒方は、逃げるヒカルを追い詰め、自分にもsaiと打たせろと詰め寄った。
・そこにアキラがやってきた。驚いた緒方のスキをみてヒカルは逃げ出した。緒方とアキラは名人の病室に行き、緒方は名人を問い詰めるがはぐらかされるだけだった。
・また打たせてやるというヒカルに苦々しく応じる佐為。
・日本棋院での森下九段の研究会では、名人とsaiの対局の検討を行っていた。ヒカルは自分の見つけた黒逆転の手を披露して皆に感心される。
・saiは自分にはない、ヒカルの未来に嫉妬を覚えていた。

ついに、佐為の止まっていた砂時計が動きはじめました…

今週は、原作2話分をアニメ1話にしていました。作画が微妙ですが、でも先週・先々週と作画が素晴らしかったので、文句はないです。毎週あのレベルは無理でしょうから。でも原作ではあまりに切なかった佐為の微妙な表情が…… それでも止め絵は許容範囲ですが、動きがぎこちないのが残念。

冒頭でヒカルが「名人の考えも佐為の考えも分かっていた」と話してますが、ヒカルが佐為の憑坐になって、今回の対局を内側でみてたからこそそういう感覚になったのでしょう。佐為の力を借りることで、今のヒカルではなし得なかった深いところまで到達できたのかもしれません。だからこそ、佐為が「神はこの一局をヒカルにみせるために私に千年の時を永らえさせたのだ」という考えに繋がるのかも。

多視点を俯瞰する面白み。それが今回も際立っていたと思うのです。この「日常」がいつまでも続くと思ってるヒカルと、自分の時の短さに苦しむ左為、そして碁への純粋な思いを語る名人。この三者の感情ベクトルのズレをうまく表現し、神の視点にいる読者が一望できるようにすっきりとまとめてますね。バトル系の少年マンガというのは、感情のベクトルが一方向に同じか対立しているかしかないのが多いんですが、「微妙な気持ちのすれ違い」をうまく表現しているという意味では、「ヒカルの碁」は少女マンガ的な恋愛ものに近いものがあるかも。

名人は息子とは違って、「謎は謎のまま」受けいれることができる人のようです。で、これでやっと佐為と名人は「両思い」になれましたが、名人の口から「saiと打ちたい」という言葉を聞いても、それは遅すぎた告白なんでしょう。緒方さんの「saiと打たせろ」の言葉に苦笑いをする佐為の顔も切ない…
佐為は精神のみの存在ですが、それが今までこの世に留まっていられたのは、「神の一手を打つまで成仏するわけにはいかない」という強烈な思念ゆえだったんでしょうね。だからこそ、自分の存在意義が他人のためにあったという考えは、佐為をこの世に留めておく楔を外してしまうものだったのかもしれません。

今回の話で、ヒカルの態度に腹を立ててしまう人がいるかもしれません。佐為が好きな人からすると、ヒカルは佐為をないがしろにしているように思えるかもしれないけど、思春期のナイーブな時期に精神に寄生されて、それを受け入れてくれるだけでも十分「優しい」と言えるのではないかと個人的には思っています。ヒカルと佐為がよくケンカをするのも、佐為が気持ちが子供っぽいところがあるというのと、ヒカルも佐為を対等の存在として受け入れてるからというのもあるんじゃないかな。今回の件にしても、ヒカルは佐為を喜ばせたくて色々と行動をしたのに、思い通りに嬉しがってくれなくてむくれてるだけです。いかにも子供ですが。ただ神の視点にいる視聴者からすると、佐為ののっぴきならない状態や気持ちが分かってるから、ヒカルの言動はそれを理解してくれないので苛立つ部分があるのは確かだけども。でも設定上ヒカル→佐為へ気持ちが伝わっても、佐為→ヒカルには伝わらないので、自分の中に留めてそれを伝えようとしない佐為にも問題はあるんですよね。

今回、ヒカルとアキラが久しぶりに会話をしました。「進藤」「塔矢」が会話と言えるなら、ですが。作中ではこの日は2001年4月15日(日)です。アキラとヒカルが最後に会話を交わしたのは、あのインターネットカフェでのことですから、1999年8月29日(日)。ということで、ほぼ1年半ぶりのことであります。物理的な距離は近く、お互い強く意識しているライバル同士なのにねぇ。 さて、アキラは合理的ではないけれども、saiの謎についてひとつの答えを見つけました。それがどうアキラとヒカルの関係に関わるのか… また同じくsaiにつながる糸をみつけた緒方さんは、どんな行動を起こすのでしょうか。

それにしても今回の緒方さんは、声優さんの演技が加わることで原作以上に「大人げなさ」がでていたように思えます。病院で本気で子供を追いかけまわすなよ…

アニメと原作の違い。
(1)自宅にて。
窓枠に腰かけたヒカルは、名人の言葉を思いだしてバランスを崩しかけるシーンはアニメオリジナルです。
(2)病院
原作ではすぐに病院前でしたが、アニメでは息をきらせてヒカルが走ってかけつけていました。
(3)緒方さんの服。
原作では私服でしたが、アニメではトレードマークの白スーツでした…
(4)自動販売機前。
原作でのヒカルのセリフの一部がカット。こういう形で評判が広がっていったら、ネットで「ヒカル」が「sai」として打っているとバレそうで困るという内容です。
「時間はあるんだから」と振り返ったヒカルに、佐為が笑おうとしてどことなく悲しい表情になってしまうのはアニメオリジナルです。


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