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【アニメ ヒカルの碁 第61局「佐為が消えた?」】 02/12/15

今週のダイジェスト。
・佐為が目の前にいないことに気づいたヒカルは、部屋を探し、いない佐為に腹を立てて眠ろうとしたが、落ち着かずに家中を探し回った。
・家でみつからなかったので、棋院にいくがそこでもみつからない。
・それからヒカルはじいちゃんちの蔵に行き、佐為がいた碁盤を見に行く。ヒカルにだけ見えていた血の跡が見えなくなっていることに驚くヒカル。そこでヒカルは佐為のかつての叫び―自分はいずれ消える―を思いだして心臓が高鳴るが、「神の一手を極める」という望みが叶ってない以上、佐為が消えるわけがないと思っていた。
・ヒカルはもう一度家に戻って探すがみつからない。自分との思い出の場所ではないのかもしれないと思い、じいちゃんに電話で色々聞いて、ヒカルは虎次郎と佐為の出あった場所にでかけることにした。
・翌日、5月6日の朝。ヒカルは広島の因島に出かけることに。途中でタクシーを運転していた河合さんと会い、ヒカルの話を聞いた河合さんはヒカルについて行くことに。
・因島に到着した二人は秀策ゆかりの場所を尋ね歩く。ヒカルは佐為を探し続け、佐為の名前を呼び続けるが、答えは帰ってこなかった。
・その日の夜、ヒカルは東京に帰るつもりだったが、河合に他にも秀策ゆかりの場所があることを聞いて、河合にお金を借りてもう一泊することに。
・翌日、秀策ゆかりの場所を2箇所回ったが、やはり佐為はいなくて落ち込むヒカル。お好み焼き屋にヒカルを残し、河合は近くでみかけた碁会所に足を運んだ。
・ヒカルはここにいない以上、佐為は東京にいると思い、河合をせかして戻ろうと思って碁会所にいった。そこでは河合と地元の男が言い争いをしていた。

今回は原作の2話分をアニメ1話といういつものペースですが、中身はかなり色々と変わっています。原作では、ヒカルは勝手にどこかにいった佐為に腹を立てていました。そして、秀策ゆかりの物品をロクに見ずに落ち着きなく走りまわっているヒカルに、河合さんは怒っていました。
ところがアニメではヒカルは結構「いい子」になっていて、どちらかというとヒカルの寂しさが強調されていたのではないでしょうか。あと、ヒカルが河合さんの見てないところで走りまわっている感じで、河合さんがヒカルがうろちょろしているのは「ガキだから仕方ない」と思っている感じです。

このあたりの話、原作を連載中に読んだ時には、もうひとつしっくりこなかったんですね。あの衝撃の佐為の消失の後だけに、もっと衝撃的な展開があると思っていたので、拍子抜けしたのでした。後からすると、ああやってじりじりするような思いでヒカルが佐為を探し回る姿をみたからこそ、後のシーンが胸に染みるわけで…
原作でのヒカルは、「あのとき佐為が消えると言っていたことは本当かもしれない」という不安を押し殺して、「どこかにいっただけ」の佐為を探し出す、という強い意志を見せています。でも時間が経つにつれ、期待が少しずつ失望に変わり、心の底に封印していた不安がよみがえってきます。ヒカルはその不安を認めたくないから、その気持ちを「佐為への怒り」という別の気持ちに擦り変えているだけで。
だから佐為に腹を立て、虎次郎に嫉妬を感じながらも、一方で因島に佐為を連れくれば喜ぶかなと考えている気持ちが泣かせるんですよね… あのシーンは、原作ではヒカルが喜ぶ佐為を想像しているのか、嬉しそうに笑っているんです。まだ佐為は戻ってくると信じているからこその笑顔で、それが逆に切なくて。

アニメのヒカルは、もうとっくに「佐為が消えた」ことを分かっていて、でも自分を納得させるためにあがいているような印象になってしまいました。なぜかはわかりませんが、ヒカルの寂しさの方が強調されていたせいかも。でもアニメの方が原作よりも「ヒカルが佐為がいなくなったことを寂しく思っている」ことが「わかりやすい」のは確かかもしれません。私は原作の表現の方が好きですが。

さて、アニメと原作との違い。セリフが今回はかなり変わっていて全部書きだすときりがないので、大きくかわった部分だけを。
(1)朝。
部屋の中で、いなくなった佐為を探すシーン、原作では碁盤の下をみるというのがあるんですが(ヒカルは佐為がそんなところに隠れられると思っているんでしょうか… かわいいけれど)、それがアニメではなくてちょっと残念でした。
(2)地図帳をみて。
因島の場所を確かめ、「連休はまだ明日一日ある。明日の朝まで待って帰ってこなかったらちょっと行ってくるか」とヒカルが呟くシーンがアニメではカット。
(3)秀策記念館にて。
秀策の碁盤をみて、あれが16のときに書かれた文字だと聞いてヒカルが「ちぇっ佐為がオレの字をヘタクソっていうはずだ」というシーンがアニメではカット。そのかわりアニメでは「佐為 聞こえないのか」と碁盤にヒカルが話しかけていました。
(4)秀策のお墓。
原作では、秀策のお墓はそっちのけでヒカルは探し回り、河合さんに「虎次郎なんかの―秀策なんかの墓参りにきたわけじゃねーよ」と言ってヒンシュクをかってました。墓から町を見下ろしながら、「おーい」と心の中で佐為にヒカルは呼びかけていました。
アニメではこのシーンはかなり変わっています。ヒカルが墓に急いでいってるときに、河合さんは記念館の係員にヒカルのことをプロになったばかりで秀策に憧れて墓参りに来たということを自慢げに話します。河合さん、ヒカルのことがかわいいんだろうなあと思わせるシーンで。
で、ヒカルの方は、秀策の墓の周辺を探し回ったあと、「佐為 どこにいっちまったんだ 何がなにかわかんねぇよ」と秀策のお墓に話しかけていました。そして突然飛び立つ鳥を見上げて、空に向けてヒカルのモノローグ「なあ、佐為 お前を探してここまで来たんだ 返事してくれよ 聞こえているんだろ?」と。
(5)船。
秀策記念館から宝泉寺に移るシーン、アニメでは船の映像が入っていました。そこで河合さんがヒカルに「長い墓参りだったなあ」とヒカルが秀策に敬意を持っているから因島にやってきたんだろうと思っているシーンがはいっています。
(6)宝泉寺
アニメでは佐為を探して見つからなかったあとのヒカルのモノローグは「やっぱりいない 佐為 お前虎次郎の元に来たかったんじゃないか?」となっています。
ちなみに原作の部分では、見つからない佐為にヒカルは腹を立てて「いねェじゃん……ちぇっ 佐為のヤロー!! こんな遠くまでわざわざ来たってのにバカみてぇ! 帰っちゃうからな! もういいっ オマエなんてもどってこなくたって」と思います。もっともこうやって腹を立てるのは、どうしようもない不安からくる苛立ちゆえなのでしょうが、こう腹を立てるから次の「帰る」と言いだしながら、まだゆかりの場所があると聞いて「や…やっぱり行くっ」っていうシーンが生きるんですよね。
(7)家への電話
アニメでは家に電話するといったあとのシーンは全部カットされていますが、原作ではヒカルのしどもろもどろの説明にヒカルの親が「誘拐では?」と誤解して、河合さんが電話を奪い取って説明をするシーンがありました。そしてその最後にヒカルのモノローグ「佐為のバカヤロー! 早く出て来い!」があって、これがヒカルの気持ちが感じさせて、泣かせるんだけどなあ。
(8)広島二日目。
お好み焼き屋でのシーン、ヒカルのモノローグも回想シーンも原作ではお好み焼き屋の出来事です。アニメでは、海辺をとぼとぼ歩くヒカルのシーンに重なって回想シーンとモノローグがありました。ここでヒカルは東京に佐為がいると思って帰ることを決意しますが、原作では「ここにいないなら東京だ」と強く信じている感じですが、アニメでは「東京にいるかもしれないし」となんだか弱気に見えます。
「いつかいっしょにもう一回こっちへ来よう」の後に、原作では「おカネは今度の旅行で全部使っちゃったけど これからいろんな手合いの対局料が入ってくるし」と呟くシーンが入ってますが、これもアニメではカット。中学生にとっては広島までの往復の旅費というのは大金で、ヒカルも貯金は全部なくなりましたが、そんなことを気にするよりも佐為の行方が気がかりだったんですよね… 原作ではこのシーンの直後にある「あっちこっち連れてってやったら喜ぶぞ佐為のヤツ」というシーンがかけねなしの笑顔で、本当に嬉しそうだからこそ、ヒカルの知らない事情を知っているこっちは切なったものでした。
(9)碁会所にて
原作では河合さんは「なんだよ 5万円ってのは!」と怒鳴っていますが、アニメではお金の話はなくなってました。お金をかけて碁をすることの教育的問題というのにも気を使っているのかも。


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