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【アニメ ヒカルの碁 第66局「運命の出会い」】 03/01/26

今週のダイジェスト。
・アキラが小学六年生の頃。名人の経営する碁会所で、アキラは芦原と対局・検討をしていた。芦原に碁ではヒケをとらないアキラだが、まだプロになることを躊躇していた。
・芦原はアキラには同年代のライバルがいないからつまらないんだろ、と指摘。アキラは漠然とした不安を抱えつつ、そんな自分には誰かが必要なんだろうか…と考えていた。
・小学生の磯部秀樹は、子供名人戦で優勝し、大人に指導碁するほどの腕前であったが、塔矢アキラの方が強いという噂を聞いて苛立っていた。彼は塔矢名人の碁会所の場所を聞き、そこにいるはずのアキラに会いにいった。
・碁会所で磯辺はアキラに対局を申し込む。磯部の棋力を聞いて嬉しそうに勝負を引きうけるアキラ。磯部はもし自分がアキラに勝てば「磯部秀樹くんに負けた」と言えというと、アキラに嬉しそうにその言葉を受ける。
・対局が始まった。一転して真剣な顔になるアキラ。磯部はアキラに圧倒されて焦るが、アキラは相手の力のなさを感じ取り、次第につまらなそうな表情になってしまった。
・結果は磯部の中押し負けとなり、磯部は慌てて帰ってゆく。対局後、アキラは磯部の名前すら覚えていないほど、彼には感心を持っていなかった。
・塔矢家、名人との対局後、アキラは名人に碁の内容を誉められた。父親の自分への期待を感じ取り、喜ぶアキラ。放課後、碁会所で市河にそのことを嬉しそうにアキラは報告した。
・自分の力を自覚し、プロとして後に続くものを引っ張って行こうと決意したアキラの前に、ひとりの少年が現れ、対局しようと誘った。少年は「進藤ヒカル」と自己紹介をした…

新年最初の佐為編に続き、今週も番外編の放映でした。コミックス18巻に収録された番外編「塔矢アキラ編」をそのままアニメ化しています。アニメでは、冒頭に番外編の説明をするチビ佐為が付け加えられていました。
今回は作画もきれいで、アキラファンには嬉しかったのではないでしょうか。それでも原作ファンとしては、アキラが磯部くんと対局しているときにどんどんつまらなそうな表情にうつりかわってゆくあたりの表情が原作に比べるともうひとつだったのが残念でした。…あれだけのレベルの作画というだけで十分なんですけれども、どうしても欲深くなってしまいますね。

昔、アキラが「なぜヒカルと出会うまでプロでも院生でもなかったんだろう?」というのをつらつらと考えたことがあります。「アキラが既にプロだと物語上不都合だから」というのはおいといて、初期アキラの描写のされ方から「情熱の行き場がわからないためにプロとして生きていくことに戸惑いを覚えていたんだろうか?」と思ったんですが、今回の話からすると大筋としてはあってたかも。今回の「アキラの漠然とした不満」を読んだときに連想したのが「お金持ちの令嬢で親が決めた婚約者がいて、その婚約者はいい人で自分も好ましく思っているし、結婚すると幸せになれるだろうけども、このまま結婚していいんだろうか…」というシチュエーション。あながち間違ってはいないように思うんですが。

それにしても、アキラってナチュラルに残酷ですね。幼少の頃加賀くんに恨まれたり、和谷くんの反感をかったり、囲碁部であれだけイジメられたのも無理はないかもと思ってしまいました。アキラは人を蔑んだり見下したりはしないけれども、単に自分とレベルが違い過ぎるから関心が持てないだけなんですよね。神様が下界のことに興味を持てないのと同じで。それを隠すだけの演技力はアキラにはないから(隠そうという発想自体がないかも?)自分をアキラの視野に入れてもらえない人はカリカリしちゃうんでしょう。
「忘れちゃった」はキツいセリフですが、あまりにもアキラらしい。
アキラはこの後すぐに淡々と過ぎてた日々が終わり、深い絶望を知り激しい情熱を覚え、気持ちがジェットコースター状態になるけれども、でもきっとそれはアキラにとっては「漠然とした不安」を感じてた子供の頃よりも、「幸せ」なのではないかと思います。

また、名人がアキラを大会に出したり院生にさせなかった理由が今回でよくわかりました。なまじ自分に自信のある子だったら、ここまで力が違うとプライドを打ち砕かれてやる気なくしてしまう恐れがありますし。ヒカルもアキラとの力の差に打ちのめされても、それでもよく追いかけていこうと思えたものです。ただあの囲碁部のときはヒカルがまだ弱く成長過程であったために、自分の到達限界予想点とアキラとの力の差を比べることができなかったかもしれません。

主人公のライバルがサラブレッドでしかも本人にも才能がある…という設定の話はいくらでもありますが、その場合はライバルのサブエピソードとして「父親(母親)越え」というのが加わることが多いです。あまりにも偉大過ぎる父親ゆえに周りの人は「さすが●●の息子」という誉め方をして、自分の力を認めてくれない。自分に皆が父親の影をみる。そこからどうやってアイデンティティの確立をするか…という風に。(庇護者(or指導者)との葛藤は、逆にヒカルの佐為へのコンプレックスという形で描かれてましたね。)
アキラの場合、小学生の段階では父親べったりです。偉大な父親がすべてのモノサシになっているわけで。このまま成長すれば、中学から高校くらいのときに父親との葛藤になるんだろうけども、でもsaiと父親との対局のことを問い詰めたりしないことからもわかるように、アキラはいつの間にか父親から精神的に独立を果たしています。父親は父親、自分は自分、と。
人当たりがよくて穏やかに見えるアキラの心の奥底にたまっていたマグマが、初めての挫折を味わい、眠っていた情熱がヒカルに一点集中で向かってしまいました。それは父親と比べて自分は…という考えが浮かぶ余裕すらないもので。ヒカルの謎を追いつづけることでアキラは自分の立ち位置を考えざるをえなくなり、それによって自然に自立できたのではないでしょうか。
でもいつか、本当の意味での「父親越え」…名人とアキラの真剣勝負をみたいものです。



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