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【アニメ ヒカルの碁 第68局「不戦敗」】 03/02/09

今週のダイジェスト。
・ヒカルの母は葉瀬中に行き、担任の先生にヒカルのことを相談した。ヒカルは手合いを休み続けて、学校に来ていたのだった。
・浮かない顔をしたヒカルのところに、あかりがやってきて、ヒカルの不戦敗のことを聞いたが、。ヒカルは「もう打たない」というだけ。しかもプロも辞めるかもしれないという。
・そこに現れた三谷は「勝手だな」と怒りを顕わにする。売り言葉に買い言葉で、三谷は囲碁部で今度の大会に出場し、もう一度打倒海王を目指すんだと言い放った。
・三谷の言葉から、ヒカルは囲碁部で夢中で碁を打ってた日々を思い出していた。しかしその記憶は、自分が打ちたいばかりに佐為には全然打たせてやらなかった「身勝手な自分」を思い出さざるを得ない痛い記憶でもあった。
・工事現場の休憩中に椿が、碁会所「石心」では河合が不戦敗を続けるヒカルを苛立たしく思っていた。
・日本棋院の廊下で、和谷と越智が休み続けるヒカルのことを話題にしていた。
・夜。ヒカルは寝付けないまま、昔の囲碁部のことを懐かしく思い出していた。そして部屋の片隅にどけられてひっそりと置かれた碁盤に目をやり、ついどこにもいない佐為を目で探してしまう。
・放課後、ヒカルは金子に三谷の練習相手を頼まれるが、ヒカルが言葉を濁しているうちに通りかかった三谷は拒否する。あかりはせめて大会には応援にきてほしいとヒカルに伝えた。
・囲碁部は大会を前にして練習に熱が入っていた。そんな仲間を見ながら、あかりもヒカルはかつて燃えたのに…と考えていた。
・日曜日。ヒカルは迷った末、大会会場に行った。心の中で佐為に「みているだけだから」と言い訳をして。
・あかりや三谷の真剣な姿をみて、ヒカルはそれに重ねるようにかつて自分が参加した大会の幻をみる。自分の力で勝利をものにして、3人で喜びあったこと。
・ヒカルは「打ちたいと思っちゃいけない」と自分の中の何かを必死で押さえつけ、尹先生に声をかけられそうになり、ヒカルは慌てて逃げ出した。
・ヒカルは自分の中の囲碁への思いを、封じ込めようとしていた。「オレが打ちたいって思ったりしたら もしオレがまた碁を打ったら 佐為は二度と戻ってこない そんな気がする」

今回は原作のほぼ2話をアニメ1話にしています。コミカルな部分がカットされ、一部追加があったものの、基本的な流れは同じ。エピソードとしては淡々とした部分ではありますが、演出がいい感じで、ヒカルの切ない心情、手合いを休み続けるヒカルを心配する周りの気持ち、あかりちゃんの思いなどがちゃんと伝わってきました。
作画はキャラやカットによっては少し微妙なものの、全体的にきれいでいい感じです。問題は来週の後半と再来週の話。このあたりは最高の作画でみたい部分ですので、スタッフの皆さんの頑張りに期待しています。

久しぶりの三谷くんや囲碁部メンバーの登場。彼らではヒカルの心の穴を埋めることはできませんでしたが、それをきっかけにヒカルが心の底に封印してきたものが沸きあがってきました。…ただ、今のヒカルにとっては「打たない」ことは佐為を取り戻すための唯一の祈りですから、ヒカルがもう一度碁石を手にとるには、ヒカルが佐為の消失を受け入れ、それを乗り越えてゆく覚悟を持つようになるきっかけが必要なのでしょう。

ヒカルはかつて一度、選択しました。中学の囲碁大会のとき、アキラの情熱にほだされてアキラと佐為を対局させてあげたけれども、途中から自分で打った時に。それは、ヒカルが佐為の影武者にならずに自分自身の力でアキラを追うことを選択した瞬間でした。そのときから本当の意味でこの物語は「ヒカルの碁」になったのです。
そしてヒカルはここでもう一度、自分の手で選ばなきゃいけません。佐為が戻るかもしれない一縷の可能性を潰してでも、碁を打ちたいという気持ちを選ぶことを。

さて、少年マンガ、特に「ジャンプ」では、より「強く」なることが一番の価値となることが多いですし、「ヒカルの碁」でもプロの世界では強さがすべてを支配するサバイバルな世界として描かれています。その一方で、今回のエピソードのように、ヘボでも碁を楽しみ、生活の一部にしている人たちも暖かく描かれています。誰もが佐為や名人、アキラやヒカルのような高みに到達することができるわけじゃない。でも、強いことだけがすべてじゃなくて、ヘボでも碁を楽しむ大勢の人たちがいるからこそ、プロの生活が支えられているんですよね。
2年前のヒカルはヘボだったものの、楽しく碁をやっていた。そこからヒカルは今の位置まで来るのに、本当に多くのものを犠牲にして、たくさんの人を踏み越えてきたけれども…

オマケ。棋戦のタイトルは主なもので七つ(もしくは八つ)あります。それぞれのおよその開催時期と「ヒカルの碁」の中でのタイトルホルダーをまとめると、
名人 空位(塔矢行洋) 9〜11月
本因坊 桑原仁 5〜7月
棋聖 一柳 1〜3月
十段 緒方精次 3〜4月
碁聖 空位(塔矢行洋) 7〜8月
天元 空位(塔矢行洋) 11〜12月
王座 空位(塔矢行洋) 10〜12月
(富士通杯世界選手権 ? 4〜8月)
となります。
そろそろ作中では本因坊戦(桑原先生vs倉田さん)や、碁聖戦の結果がでてくる頃です。

アニメと原作との違い。
(1)母親と担任の先生との話。
原作では、プロを辞めるかもしれないヒカルについて、母親が進学の心配をし、それを聞いた担任が青ざめて、ヒカルの母親がヒカルの入れる学校はないんだと慌てるコミカルなシーンがカット。
そのかわり、母親が「どうすれば…」と聞いたあとに担任の先生が「調べてみます」と答えるシーンがアニメでは追加されています。
(2)佐為へのひどい言葉。
ヒカルが三谷くんに責められて、昔の囲碁部の頃を回想しますが、そこでヒカルが佐為に投げたひどい言葉は原作では「またどこかで打たせてやるから」でしたが、アニメでは「3人目にとりついたときに打たせてもらえよ」というさらにキツいセリフにかわっています。
ヒカルが今一番後悔するのはこの時のセリフでしょうが、でも囲碁部で頑張っていた時期からすると原作のセリフの方が当てはまるんですよね。
(3)河合さんの怒り。
原作では、河合さんは貸した1万円もまだ返してもらっていないのに、とヒカルに怒って新聞を破りますが、アニメでは「広島までつきあってやったのに」と怒っています。お金の話を出すのはちょっと…という判断からでしょうか。
(4)あかりちゃんの気持ち。
大会に見に来てほしいとヒカルに言葉をかけた後、去ってゆくヒカルの背中を切なそうに見るあかりちゃんのカットが追加。また、囲碁部での練習で、金子さんに励まされて、気をとりなおした後に久美子ちゃんと打つ具体的なシーンがアニメで追加。
(5)会場に足を踏み入れたヒカル。
このあたりの演出は、アニメでは細かい部分で色々と追加がありまして、それがヒカルのためらいをうまく表現していました。



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