今週のダイジェスト。
・日本に戻ってきた伊角は、「週刊碁」でヒカルの不戦敗を知った。
・伊角は和谷と久しぶりに会い、中国棋院での出来事などを語った。伊角は自分の碁に自信を付けて帰ってくることができた。
・伊角はプロ試験にむけて最後のしこりを除くためにもヒカルと打ちたいと思っていたが、不戦負の理由が気になっていたのだ。和谷は伊角に、ヒカルが理由もわからずに5月から手合いを休みつづけていたことを教えた。
・日本棋院にやってきた伊角は、記者の天野と出会った。天野にヒカルのことを聞いた天野は、緒方からもそのことを聞かれたと話した。
・伊角は駐車場にいた緒方に声をかけ、車で送ってもらうながら、囲碁イベントのときに緒方がヒカルと打ったときの話を聞いた。
・碁会所「石心」に行った伊角は、マスターや河合からヒカルの話を聞いた。河合は5月のゴールデンウィークに因島に行ったときのこと、そしてヒカルが何かを探していたようなことを話した。
・伊角はヒカルの家を訪ね、ヒカルの母親にヒカルの部屋に通されてヒカルの帰宅を待つことに。伊角は碁盤にほこりが溜まってることで、本当に長いことヒカルが碁を打ってないことを知った。
・学校から帰ってきたヒカルは、二階に人がいる気配に気がつき、慌てて部屋に入るが、そこに佐為はいなくてがっかりした。
・ヒカルがずっと打っていないことを問い詰める伊角。そこで伊角はアキラが三段に昇格し、本因坊リーグの三次予選決勝まで進んでいることをヒカルに教えた。
・日本棋院。荻原雅彦九段と塔矢アキラ三段の本因坊戦三次予選決勝が行なわれていた。
・対局を観戦していた天野記者は控え室で桑原本因坊と出会った。もし勝てば15歳プロ2年目にして本因坊リーグ入りというアキラの快挙に「新しい波」を感じ、興奮気味の天野。その一方で、天野にはトッププロたちに注目されていたヒカルが不戦敗を続けていることが理解できなかった。
・桑原はそんなヒカルを心配していないという。アキラが上を向いているかぎり、ヒカルは自分の向き合うべき相手の前に戻ってくる、と。ヒカルを買かぶりすぎではないかという天野に、桑原はアキラ自身がヒカルを宿命のライバルだと思っているのだから、と答えて去っていった。
・アキラがもう頂上近くまで来ていることに驚きの色が隠せないヒカル。碁への情熱をヒカルが失ってないことに伊角は気がつき、ヒカルに一局打とうと詰め寄った。
・放っておいてほしいというヒカルに、伊角は自分のために打ってほしいと頼む。
・伊角はプロ試験でのヒカルとの対局で、「ハガシ」の反則をしたときに、すぐに負けを認めず、ごまかせないかと考えてしまった自分の弱さを恥じていた。それを払拭するためにもヒカルともう一度打ちたいのだ、と。
今回は原作1.2話分をアニメ1話にしているせいで、アニメのオリジナル部分がかなり追加されています。その追加部分も流れに違和感ないし、緒方さんの予想外の登場になんだかとても得した気分です。天野さんの登場にしても、あの会話があったから、天野さんが桑原先生にヒカルのことを聞くという展開もより自然になりましたし。
今回、1.2話という少ない分量しかアニメにしなかったのは、来週のエピソードの流れを考えてのことでしょうね。来週が今から楽しみです。
作画は結構きれいでしたが、ただ顔が妙に長いのが少し気になりました。でも切なげなヒカルの表情とか、伊角さんの真剣な顔、いい感じにしあがっています。
ヒカルが部屋に急いできたときの、一瞬嬉しそうな顔になって、すぐにがっかりした顔になるあたり、原作のコマ間がうまく表現されていました。こういうことをやってくれると、アニメ化されてよかったなあ、としみじみ思います。
話自体は結構地味なところですが、声優さんの演技も絶妙で(特に桑原先生)、なかなかに味わい深い回になりました。演出も間延びしてなかったし。
これで「伊角の碁」がうまく「ヒカルの碁」にリンクしました。あの状態のヒカルをおいといて伊角さんの話を長々と書いたことで、連載当時は「伊角の碁」を「展開に行き詰まった挙句、人気とりのために書いたエピソード」だと言う人も結構いたものです。でもコミックスでまとめて読むと違和感ないし、現在のジャンプ連載中のエピソードからすると、中国棋院での話が必要だったことは明かですが、当時はヒカルの落ち込みぶりが気になって、苛立ちを感じてた人が多かったのでしょう。
伊角さんとヒカルのプロ試験での対局は、しこりを残したままで終わりました。連載当時、私はしこりを無くすためにもプロ試験はプレーオフまでもつれ込むんじゃないかと予想してたんですが、あのまま終わって、伊角さんがひどい状態で放りだされて、「…うわ。」と思ったものでした。でも、そのしっくりこないまま放り出されたからこそ、今回のエピソードに繋がるわけで。
まだ佐為のことを諦めきれない、ヒカルの姿が切ないです。部屋に戻るたびに、「ひょっとして」という希望を捨てきれてないんでしょうね。
伊角さんが眠りかけていたヒカルの「アキラへの情熱」を刺激してきましたが、それだけではヒカルの立ち直りへの決定打に欠けますが、さて…
それにしても桑原先生、おいしいです。生き様がしっかり皺に刻まれてるなあ、という感じがします。遠くから本質を見極める力を持っているような。さらに大きくなるためには苦しみ、迷うことも必要。戻ってくるまでじっと待てばいいだけ。桑原先生はまだまだ元気で、若い者とは貫禄が違います。この段階での緒方さんでは、全然勝てそうにないですものね…
アニメと原作との違い。
(1)和谷薬。
原作では「セーロ丸」ですが、アニメでは特定商品名を出さないようにしているので、「和谷がよく飲んでた薬」ということで伊角さんが「和谷薬」と呼んでたことにしたんでしょうね。あと、ふたりが落ち合った店は原作ではマクドナルドですが、アニメでは今までと同じく「ナックドナルド」になっていました。
(2)公園のヒカル。
夕暮れ、公園の滑り台に寝転がってぼうっとしているヒカルのシーンは、アニメオリジナルです。
(3)棋院にて。
棋院で伊角さんが天野さんに出会って、ヒカルのことを聞くシーンはアニメオリジナルです。成澤先生から伊角さんが中国にいったことを聞いていたとか、中国の若手の話を聞かせてほしいという会話がありました。伊角さんがヒカルのことを聞いて、天野さんが緒方さんにも聞かれたということを喋ります。
(4)緒方先生の車。
伊角さんが緒方さんに声をかけて、車で送ってもらうシーンもアニメオリジナル。原作では緒方さんと伊角さんの会話シーン自体が存在しないから、今回のアニメオリジナル部分は嬉しかったです。会話は、囲碁ぜミナールのときに、ヒカルと自室で対局したという話。ヒカルの様子は変じゃなかったか、と聞いた伊角さんに、緒方さんは気がついていない、なんせ酔っ払っていたからということを答えていました。
(5)碁会所・石心にて。
伊角さんが石心(原作では道玄坂)のマスターと河合さんにヒカルのことを聞きにいくシーンもアニメオリジナルです。なるほど、たしかに伊角さんはヒカルが石心に通い詰めていたことを知っているし、一度いってますものね。
(6)人のいる気配
原作では慌てて部屋のドアをあけてくるヒカルのシーンからですが、アニメではヒカルが玄関で二階の気配に気がつく、というようになっていました。玄関から二階の気配なんてわかるものなんでしょうか…
(7)オレが打ったら佐為は…
ヒカルは、自分が打たずにいたらいつか佐為が帰ってくるんだと、自分に言い聞かせ、祈り続けているようなところがあります。アニメではセリフを一言付け加えることで、その状況をはっきりさせていました。