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【アニメ ヒカルの碁 第74局「キミの中にいる」】 03/03/23

今週のダイジェスト。
・アキラとヒカルの対局は序盤から激しい戦いが続いた。最初から最後までヒカル自身がアキラと対局するのは実質的に今回が初めてなのだ。
・ヒカルの的確なヨミにアキラは高段者相手のものとかわらぬ手応えを感じていた。アキラは失望しながらもヒカルのことを気にとめずにはいられなかった日々を思い出し、予想通りだったヒカルの実力に、アキラはヒカルこそか自分の生涯のライバルだと確信していた。
・日本棋院の出版部では、韓国の若手棋士の話で盛り上がっていた。洪秀英という14歳の少年が九段を破ったことを知って、天野は今水面下で進んでいる18才以下の棋士が対象の団体戦「日中韓Jr.杯」に出場するのは秀英や連勝を続けている16歳の高永夏(コ・ヨンハ)あたりではないかと言い出し、それを聞いた出版部の記者たちは色めきたった。中韓に対抗できそうな若手棋士として真っ先にアキラの名前があがったが、天野はヒカルの名前をあげた。
・アキラはヒカルの一手にsaiの影をみる。ヒカルの中に見え隠れするもう一人の影、それはアキラがずっと見てきた「彼」であったことに気がついた。
・出版部では、天野がなぜヒカルの名前を挙げたかの説明をしていた。塔矢元名人、桑原本因坊、緒方十段棋聖といったトップ棋士たちがなぜかヒカルを気にかけており、アキラもヒカルをライバルを認識しているのだと知って天野はヒカルの可能性を確信した。アキラやヒカル、彼らに続く若手の大きなうねり。未来の日本の若手棋士たちの世界への巻きかえしを思い浮かべて盛り上がる棋院出版部だった。
・お昼の打ちかけとなった。和谷らは興味深そうにふたりの対局の盤面を覗き込む。進行が早く、盤面は複雑な戦いになっている。しかし、ヒカルもアキラに負けてはいなかった。能天気な芦原に引きずられるように皆お昼にでかけ、対局場にはヒカルとアキラだけが取り残された。
・ヒカルは盤面の戦いを振り返り今後の戦い方を考えていた。今は少しヒカルが不利ではあるが、まだこれからだ。
・ヒカルは食事に行こうとしてアキラを誘ったが、アキラは何も言わないのでひとりで行こうとした。そのとき、アキラはぽつりと「…sai」と呟く。「キミと打っててネットのsaiを思い出した」というアキラに「オレはsaiじゃねぇぜ 残念だけどな」とヒカルは軽くかわしたが、アキラは自分の思いに沈み込むように語り続けた。ヒカルの中にもうひとりいる、出会った頃に自分と打った相手こそがsaiだ、と。驚愕するヒカル。

ついに最終回まであと1話を残すのみとなりました。
今回はとにかく作画が美しかったです。特にアキラがきれい。ヒカルもかわいかったし。動きはぎこちない部分は多少あったものの、この話をこれだけの作画でみることができて、本当によかったです。
予告を見る限りでは、最終回の作画もきれいで、期待できそうなのが嬉しい。来週だけは本当に美しい絵でやってもらわなくては意味がないので。
脚本やカット割りはほぼ原作そのままですが、アキラとヒカルの対局という「動」の部分と、アキラの「答え」の「静」の部分の対比が大きな効果をあげていました。声優さんの演技もすばらしく、ヒカルとアキラの最後の会話にはそれぞれの万感の思いが感じられました。

このエピソードは、原作1.8話分をアニメ1話にしています。最後のヒカルとアキラの会話が3ページくらい飛ばされているんですが、これは重要なシーンですし、恐らく来週でじっくり描いてくれるんではないかと思っています。

ちなみに今回の話の原作でのサブタイトルは、前半部分は「ヒカルの碁」、後半部分が「ボクだけがわかる」でした。そう、今回の対局がアキラと初めて打つ「ヒカルの碁」なのですから。
何度も書いてきたことですが、「ヒカルの碁」の構造でおもしろいのは「バトルものに恋愛ドラマのような"誤解と思い込みとすれ違い"の構造を持ち込んだこと」ではないかと私は考えています。この物語のライバル関係は基本的には「ヒカルvsアキラ」と「佐為vs名人」となっているんですが、実際の本人たちの意識ではヒカル→アキラ→佐為→名人と完全一方通行でした。ヒカルの成長と佐為の消失によってこの構造は崩れてしまいましたが。
もし、アキラを打ちのめしたのが「二十歳くらいの囲碁に手馴れた大人」だったら、アキラは「勉強になった」と思いこそすれ、がむしゃらに追いかけていったりはしないはず。アキラがヒカルを追いかけたのは、自分と同じ年頃の、碁打ちとしてはド素人のような挙動をしている少年が素人ではありえないような老練な碁を打つという「不思議」があればこそ、で。

ヒカルは、アキラが最初に追いかけていたのは佐為であることを気にしていたし、そしてアキラから佐為を取り上げてしまったことを申し訳なく思っているところがあるのではないでしょうか。
でも、今回の回想シーンから分かるように、アキラがヒカルそのものの実力(秀英との一局)に感心しているし、思い出しているのはヒカル自身の力で打った碁についての話なんですよね。既にアキラは佐為ではなく、ヒカル自身を自分の生涯のライバルとして認識しているのです。

かなり昔の感想に「ヒカルとアキラが正面から向き合うために、アキラがヒカルと佐為を違う存在だと認識して、その上で自分のライバルはヒカルだと認める必要があるのでは?」みたいなことを書いた記憶があります。しかし「ヒカルの碁」の世界観は現実世界でのリアリティとほぼ同じとみていいでしょう。佐為の存在以外は。ヒカルが佐為のことを誰にも言わないのは、「言っても信じてもらえない」と考えているからではないかと思います。
だから、どうやってアキラが真実を知るのだろうと思ってたんですが。…なるほど、実際に対局してみればわかる、と。このためにも今までの二人の対局は避けられてたのですね。
いくら師匠と似たような雰囲気の打ち手とはなっても、ヒカルと佐為では個性も違うはず。その部分にアキラも違和感を感じ、それがヒカルのことがわからない、アキラにとっての謎になってたわけで。うまい具合に、アキラがヒカル自身で打った碁をみたのは、ヒカルと秀英の一局だけなので、こうやってやっと対面で打つことでその違和感に気がついたのかもしれせん。

お昼休憩に入った直後のコマ、アキラとヒカルはずいぶん息を切らしていますが、囲碁は座りっぱなしであっても、プロ棋士同士の場合は頭をフル回転させているせいでかなり体力を消耗するそうで、タイトル戦などの二日がかりの対局で体重が3キロも減ることがあるとか。
能天気な芦原さんに引きずられていく冴木さんのシーンがおもしろかったですが、芦原さんってすっかりお笑い担当キャラになっていますね。実は芦原さん、アキラの近くにいてヒカルとの事情を全く知らないのは彼だけだったりするのですが。

今回、話題にでた日中韓Jr.杯なんですが、現在連載中の「ジャンプ」ではちょうどこの大会の真っ最中なのです。話題に上った、連勝記録を続けている16歳の高永夏(コ・ヨンハ)もでてきます。
私は「原作にアニメが追いついたためにエピソードの引き伸ばしがあったら嫌なので、ずっと続けるよりも今回のように話の区切りのいいところでアニメが終了することに賛成」なんですが、でもこの「日中韓Jr.杯」もアニメでみたいなあという気持ちが押さえきれなくなっています。動いて喋る永夏さんと秀英が見たくて仕方ないんですよ。
物語が次の区切りのいいところに辿りついたら、第二弾をやってくれないかなあ… OAVでもいいから。「ヒカルの碁」のアニメは視聴率も悪くなかったので、その可能性もゼロではないと思いますが。

来週の予告、セリフなしの予告がとてもいい効果をあげています。予告を見ただけで泣けて仕方なかったので、実際にみたらボロボロ泣いちゃうかも。
次の話は原作の残りの量からして、オリジナル部分が加わることは間違いないでしょうが、どう描かれるかに期待しています。

原作とアニメの違い。
(1)ヒカルのヨミ。
アキラの一手に即座にヒカルのヨミが働いて「スベリ」を選んだシーン、原作ではあれこれ考えるシーンにセリフがちょっとついています。囲碁用語ばかりですが。
(2)アキラの回想シーン。
倉田さんとの会話のシーン、原作では「オレを脅かしに〜」からになっていますが、アニメでは分かりやすいようにその前の部分にあたる「キミって上ばっか見てるな」からの部分が追加されています。アニメで一度放映されているシーンですが、作画がきれいだったから書きなおしされているかも。
(3)韓国の若手
アニメでは、天野さんが読んでる記事にスーツ姿の秀英くん14歳バージョンの顔写真がついていて、なんだか得した気分でした。
(4)食事に。
芦原さんが冴木さんを食事に引きずっていくあたりのシーンが、セリフは同じであるものの、動きの描写が色々と増えていました。
(5)もうひとりいる
アキラの呟きのシーン、3ページほど間を飛ばされていましたが、おそらくこれは来週の放映で流されるでしょう。



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