今週のダイジェスト。
・アキラはひとりつぶやき続ける。ヒカルと出会った頃、碁会所で2度打ったのがsaiだと。しかし思わず呟いた自分の言葉のおかしさに言葉を濁し、アキラは顔を伏せる。ヒカルは驚愕していた。自分しか知らないはずの佐為をアキラがみつけたのだ。
・だがアキラは「キミの打つ碁がキミのすべてだ。」とつぶやいた。それを聞いたヒカルは、佐為は自分の中にいるのだからそれが正解だよと心の中でつぶやき、アキラに「おまえには――そうだな　いつか話すかもしれない」と呟きながらお昼にでかけていった。
・その言葉を聞いて「話せ!!」と詰め寄るアキラと口げんかしながら、ヒカルはエレベータを降りていった。
・その夜。夜遅く帰ってきたヒカルは、そのまま眠りにつき、夢をみた。夢だと分かって夢をみているのなら、いいことがあればいいのに…と考えていると、ヒカルの目の前に人影が現れる。
・佐為だった。
・佐為は、優しく穏やかに微笑みながらヒカルをみていた。たとえ夢でも、佐為に会えたことを喜ぶヒカル。ヒカルは嬉しそうに、佐為がいなくなってからの出来事を報告した。アキラと対局して、いい勝負だったけれども負けたこと。アキラと仲良くなって、碁会所でも打とうと約束したこと。三谷のこと、伊角のこと…
・佐為は包み込むような笑顔を返してくれるが、何もいってくれない。
・そしてヒカルはアキラが自分の中の佐為に気づいたことを嬉しそうに報告した。その佐為はどこか遠くから差す光をみている。そんな佐為に、ヒカルは行くなと声をかけたが、佐為は黙って扇子をヒカルに渡した。ヒカルはそれを受けとって、…夢から覚めた。
・「佐為」と名前を呼んで、ヒカルは少しだけ涙を流した。
・名人の碁会所で、学校帰りにアキラとヒカルが対局や検討をするようになっていたが、二人ともついムキになって子供のようなケンカをしてしまい、いつもヒカルが怒って帰るのだった。しかし呆れる碁会所の客がヒカルをバカにするような発言をすると、アキラはヒカルを侮らないでほしいと氷のような冷たい顔で言い放つのだった。
・日本棋院に和谷とヒカルが向っていた。この日、ヒカルは川崎三段との対局。ヒカルはアキラはもう高段者と対局しているが、自分はまだ初段、低段者相手との戦いを勝ち抜いていかなければいけない…と考えていた。
・お昼、川崎三段はなぜあれだけ強い彼がまだ初段なのかと驚き、和谷を問い詰めていた。
・ヒカルは売店で扇子を見つけて購入。扇子を眺めるヒカルの決意に満ちた顔。そして午後の対局が始まった。

「美しい一局」でした。アニメスタッフの皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。本当に、ありがとうございました。

泣きすぎで目が痛いです。今回は、先週分の感想で「アキラの独白シーン、最後の3ページが飛ばされている」とかきましたが、そのシーンと原作の第一部終了・148局（夢から目が覚めたヒカルが家をでるところまで）に、第二部の最初の話、149局の抜粋（碁会所でのケンカ、最強初段、売店で買った扇子）が追加されていました。
そしてエンディングは、昔のエンディング「SINCERELY」のインストから、一番最初のオープニング「GET OVER」に続きながら、原作のそれから先のハイライトを繋いだ、「未来」の総集編となっていました。最後の最後には、ヒカルの笑顔があって、そして染みの消えた碁盤…すべての始まりだった碁盤が最後にきて、じーんとしました。ちなみにこの曲はアルバム「ヒカルの碁　主題歌全集」にボーナストラックして収録されています。
原作では、第一部「佐為編」は、夢のように美しく、切ない思いのまま「美しい一局」が幕を下ろしました。アニメはそこに「未来」を凝縮してつけることで、躍動感が付け加えられました。佐為の扇子を受け継いだヒカルの決意を感じられる終わり方で、これはこれでよかったなあ、と。ただし話としては「これから!!」という感じになったので、「打ち切り」ぽい終わり方には見えますが。
ちなみにあれらのシーンは今後のコミックスにでてきますので（アニメオリジナルもありましたが）、どんな話なんだろう？と思ったら、ぜひコミックス18巻（番外編）か、19巻（第二部開始）から読んでください。物語はまだまだこれからなのです。

アニメの話に戻って。最終回ということもあって、作画がとても美しかったです。カット割りはかなり原作に忠実でしたが、原作の微妙なニュアンスをうまく出してくれました。アニメは途中が作画がひどい状態になってもうダメかと思いましたが、最後の最後でこれだけ持ち直して、美しい絵でみることができて幸せでした。声優さんたちの演技もすばらしかったです。声優さんといえば、今回のヒカル父の正夫さんがお風呂で鼻歌を歌っていましたが、あの声をあてたのは、佐為役の千葉進歩さんだったんですよね。佐為の最後の登場シーンは原作と同じく佐為は一言も言葉を発しませんでしたが、でも千葉さんが最終話のスタジオ収録にいてくれたのがなんだか嬉しいです。このあたりの話はアニメオフィシャルサイトの「コラム対局室」にも書かれています。

今回の話は泣き所が多いんですが、個人的に一番泣けるのは「笑っていたらいいな」のシーンです。苦しみも悲しみも乗り越えて望むのは、大切な人が最後は幸せな気持ちでいてほしかった、ということ。ヒカルは佐為が消える頃には、佐為の苦りきった顔しかずっとみてなかったから。でもヒカルの「笑っていたらいいな」は自分のためというよりも、佐為のことを思っての気持ちだから泣けます。夢だとわかっていても、佐為と会えたことを無邪気に喜ぶヒカルが切ない…　佐為の前ではヒカルも子供みたいな顔になって。

さて、アニメと原作との違い。まずは本編から。
(1) 正夫さんの入浴シーン
原作では未だに足の一部しか登場してないヒカル父・正夫さんですが、アニメでは入浴シーンがシルエットでっ!!　鼻歌も歌っていました。ちなみに声は佐為役の千葉さんがあててました。
(2)夢から覚めて。
原作ではヒカルが手で目を覆って涙を流した後は、ヒカルの顔は一切映りません。朝ごはんをしっかり食べて（おかわりまでして）、遅れそうでも「走れば大丈夫」「帰りは碁会所によってくるから」と出かけてゆき、最後にカメラが引いて町の遠景になって、「佐為編終了」となりました。
アニメでは泣いた後、母親に声をかけられて起き上がります。涙をぬぐったあと、満足そうにちょっと笑うのがよかったなあ。そして「帰りに碁会所によってくるから」で、原作149局の碁会所でアキラと打つシーンに続きました。
(3)アキラとの碁会所での対局
アニメでは微妙にセリフのカットもありますが、基本的には原作と同じ。アニメではヒカルとアキラの言い合いで、「言った!」「言わない!!」というセリフの追加がありましたが、子供のケンカぽくていいなあ。あと怒って帰るヒカルが肩を怒らせて歩くのがかわいい。
(4)最強初段
セリフを大幅にカット、そしてヒカルのモノローグがアニメでは追加されています。ヒカルはアキラはもう高段者と対局をしているけれども、自分は低段者の対局を勝っていかないと上にゆけない、勝ち抜いてゆくしかないんだ、と。
このエピソードは同じシーンでも描く視点が違うので原作とアニメではかなり印象がかわります。アニメではヒカルの決意という印象が強いですが、原作では和谷くん視点で描かれていたこともあって、ヒカルの底知れない強さに和谷くんが気圧されるという風になっていました。それはその後のエピソードのつながりに深くかかわるんですが、アニメはこれで物語に区切りをつけるので、今回のような解釈の方がいいと思います。
(5)土手を走るヒカル。
ここは全部アニメオリジナルです。走りながら「佐為、オレ、お前と打つよ。いつか神の一手を」と力強く誓うヒカル。

エンディングの「GET OVER」にのって流れたシーンは、いわば「未来」の総集編となります。その解説を。
(1)オバさんと対局、扇子で脅す（？）ヒカル。
コミックス19巻、第150局より。
(2)アキラの一手に顔色を変える一柳棋聖
同じくコミックス19巻、第150局より。
(3)御器曽とヒカルの対局。
コミックス19巻、第152局、第153局より。
(4)誰かを待つかのように、ひとり、碁盤をじっと見つめる行洋。
コミックス21巻、第168局より。
(5)おごって!!和谷くん
これはアニメオリジナルです。森下先生ちにいったら、しげ子ちゃんに「二段昇段祝い」としてケーキを奢って、とせがまれて店につれていく和谷くん。元ネタはコミックス14巻に収録されている番外編「おごって和谷くん」です。
(6)森下先生に指導をうけている和谷くん。
ここはアニメオリジナルです。
(7)伊角さん
対局をする、伊角さんとそれを見守る桜野さんたち。ここはアニメオリジナル。
(8)対局が終わって立ち上がるヒカルと、それについていくアキラ
コミックス19巻、第153局より。
(9)夏目くんとタマ子先生が、金子さんが三谷くんに勉強を教えているのを目撃
夏目くんとタマ子先生が歩いているシーンはアニメオリジナル。そのあとの三谷くんと金子さんのシーンは、コミックス19巻、第154局より。
(10)バイクに乗った加賀くんが、女性と歩いている筒井くんをみて驚く
前半のバイクの加賀くんは、コミックス18巻の番外編「加賀鉄男」が元ネタ。そのあとの筒井くんのシーンはアニメオリジナルです。これにはびっくりしました。誰なんだ、あの女の人は〜。
(11)囲碁部のポスターを貼る小池くん
元ネタはコミックス18巻、番外編「加賀鉄男」より。
(12)塾で勉強するあかり、帰りに外からヒカルの部屋の窓の灯りを見上げる
コミックス19巻、第154局より。ヒカルが打ってるシーンは原作にはありませんでしたが。
(13)喫茶店、背中合わせにタバコを吸う桑原、緒方。
アニメオリジナルです。でもこれは笑いました。無視しながら意識しているのがミエミエで。
(14)それぞれの道。
ここからはアニメオリジナルのワンシーンの連続です。タバコを吸う天野さん、ラーメンを食べる倉田さん、対局する本田くん、越智くん、辻岡さん、奈瀬ちゃん、フク、見守る篠田先生。
囲碁を教えている白川先生、指導碁している芦原さん。また碁会所でケンカになったヒカルとアキラをみて頭を抱える市河さん。
(15)平八さんの家
じいちゃんの家の縁側で、じいちゃんと碁を打つヒカル。元ネタは20巻159局ですが、最後のヒカルの笑顔が眩しい。
(16)蔵の中の碁盤
すべての始まりの碁盤。染みはもう消えているけれども。