久しぶりに動く新作の「ヒカルの碁」を見ることができて、満足でした。でもこうやって見ると予選だけでなくて、合宿話や本戦もアニメで見たくなります。続きもアニメを製作してくれたらいいのですが。
コミックス2冊半分を1時間半にまとめたということもあって、エピソードの細かいカットが多かったです。それもあって、ほんのちょっとしたセリフなどの"表現"の積み重ねで、同じエピソードでも印象が変わってしまうものだなあとしみじみとしました。ほったさんのネームにおいては、さりげない会話の積み重ねがエピソードを厚くしていることが改めてよくわかりました。
原作の北斗杯編ではヒカルの心理は直接描かれることは少ないこともあって、同期からみたヒカルの「得体の知れなさ」がクローズアップされ、それが効果をあげていました。(それを寂しく思うファンもいましたが) アニメではヒカルのモノローグが多く、「佐為を思うヒカル」も原作に比べるとストレートに描かれていて分かりやすかった分、表現としては浅くなってしまったなあ、という気がします。でもアニメはより多くの人を対象にしているだけに、これでよかったのかもしれません。
海外動向のエピソードが全部カットされ、話が国内だけで進むのでエピソードの幅は狭くなってしまいました。その分、まとまりはよかったですが。
前のアニメシリーズで実質的に原作の149局「最強初段」まで消化、最終回エンディング部分で(今回のOPでも)アキラvs一柳先生、ヒカルvs御器曽の対局もやったようなものという扱いでしょうか、今回はばっさりカットされてました。
カット割りは原作にかなり近くて、セリフまわしはほぼ原作どおり。もっとも、時間の関係で細かくカットされていますが。
作画は、平均レベルは十分に許容範囲です。ただ、一部に作画崩れがひどい部分があったのが残念。特に門脇さんのカットにはすごいものもありました。逆に卒業式のシーンでの作画が飛びぬけてきれいなのに驚きました。あかりちゃん唯一の出演シーンということもあって、スタッフの気合が入っていたのかも。
アキラは全体的にきれいでした。社くんは微妙に崩れた顔もあって残念。でも声は個人的にはイメージにあっていたので満足です。動く社くんをみてると、合宿でのシーンもアニメで見たくなってしまいました。
このスペシャルでのエピソードカットで一番ワリを食ったのは和谷くんではないかと思います。和谷くんのヒカルに対する屈託がほとんどカットされたこともあって、和谷くんの精神的成長の部分が見え辛いところがありました。「悔しい!!」もなくなったし。
今回のスペシャルで、個人的に一番ポイント高かったのは、越智くん。あの生意気な口調がやけにかわいらしく思えてしまいました…
声優キャストが発表されたときに分かっていたものの、永夏も秀英もみることができなかったのが残念でした。せめてオープニングの片隅に、静止画でもいいから見たかったなあ…
以下、アニメ放映部分とその一言感想を列記してゆきます。
(1)OP「GET OVER」
アニメ最終話のエンディングの映像に、今までのカットを繋ぎ合わせた感じ。佐為は「手」と「扇子」だけの出演。メンバーは、ヒカル、アキラ中心で、あとは和谷・伊角・越智・本田・奈瀬・あかりが出番多かったです。最後は、赤マルのポスターと同じ画像でした。
(2)晴着の梅沢由香里さんのご挨拶
(3)夢の中の佐為、扇子を渡す
最終話の一部をそのままオンエア
(4)タイトル「北斗杯への道」
(5)冬、部屋で碁を打つヒカル、脇に扇子。
アニメオリジナル
(6)ヒカル父と母の会話
。
アニメオリジナル。父親の声は、佐為の声と同じで、千葉進歩さん。
(7)ヒカル、佐為への心の中への報告。
アニメオリジナル。本因坊戦で勝ち進んでいることなど。
(8)棋院の古瀬村からヒカルに電話
北斗杯の話?
(9)和谷部屋での伊角さん、和谷くん、ヒカルの会話。
伊角さんは出場できない話、北斗杯と永夏・秀英の話、ヒカルの決意。和谷くんの屈託した気持ちを表すセリフ関係はすべてカット。
(10)ヒカルとアキラの碁会所検討
ケンカから、ヒカルの「もうこねぇ」まで。「神の一手〜」のセリフはなし。
(11)北斗通信システムでの室長と相川さんの会話
152局のシーンに、153局の社くん関係の会話を追加。
(12)伊角さん、新初段戦
二人の写真撮影シーン、桑原先生セクハラ発言あたりなど。
(13)ヒカルに声をかける門脇さん
(14)ヒカルと門脇さんの会話
アニメでは、"あのとき打っていたのは佐為"と分かりやすい説明が付け加えられていました。このヒカルvs門脇戦はそれをわかってないとエピソードの意味がわからないし、よほど熱心にアニメをみていないとあの対局をは覚えてないでしょうから、そのフォローでしょうね。
(15)控え室の和谷くん、越智くん、本田くんの会話。
会話が微妙にカットされています。和谷くんが越智くんに勝った話とか。桜野さんはアニメでは登場していません。
(16)ヒカルと門脇さんの路上での会話、続き。
ここの作画の崩れ方はひどいです。原作での小畑先生のこの部分の作画は神業(特に「ううん」のところ)だけに、残念。
(17)棋院一般対局室でのヒカルと門脇さんの対局
ここの門脇さんの顔の作画崩れは… 怖すぎです。修正する余裕はなかったのでしょうか。
(17)幽玄の間での伊角さんと桑原先生の対局
(18)門脇さん、ヒカルの対局に負ける
「オレもそう思う」は原作のコマのトレスかな? 線はきれいですが、塗りがベタっとした感じで、うーん…
(19)控え室から検討に出てきた和谷くんたちとヒカル、門脇さんとの会話
(20)本田くん、師匠の家で社くんと出会う。
ヒカルのナレーションでシーンは切り替わり、北斗杯の話にフォーカス。
(21)初手天元、本田くん負ける。そのあとの検討。
(22)北斗杯一次予選、ヒカルと本田くん対局
いきなり対局からです。それにかぶさるように本田くんへの師匠の話。個人的にはこのあたりの本田くんのエピソードが好きでしたが、焼き芋屋の話や、対局前のエピソードがないと本田くんの決意が分かりにくくなってしまうのが少し残念でした。時間が短いから仕方ありませんが。
(23)ヒカル、本田くんに勝つ。
ヒカルのモノローグがあって、一次予選は終了。
(24)梅沢由香里さんによる初手天元の解説、注目の若手棋士の紹介
(25)じいちゃんちの蔵の中、碁盤を掃除し、話しかけるヒカル。
このあたりはアニメオリジナルです。ヒカルの佐為への思いを分かりやすくするための追加なのでしょう。
(26)じいちゃんとヒカルとの会話、対局。
(27)棋院、ヒカルと冴木さんがいるところに森下先生が。
その前のヒカルと冴木さんのシーンが丸々カットなのが残念。
(28)タバコを吸う緒方さんのモノローグ、対局室での緒方さんとアキラ。
(29)ヒカルvs森下戦と、アキラvs緒方戦
昼休みの会話はカットされて、エピソードは圧縮されている印象が。
(30)状況が不利になるヒカルとアキラ、二人とも負けてしまう。
(31)大人気ない緒方さん。
作画がとてもきれいでした。
(32)階段を下りながら、森下先生とヒカルの会話。
佐為の後姿を思い浮かべるヒカルのシーンがアニメでは追加されていました。
(33)葉瀬中卒業式
体育館でのシーンがアニメで追加されていました。三谷くん、あかり、ヒカルのバストアップ。三谷くんの姿をみることができたのは嬉しかったです。
(34)写真撮影、ヒカルとあかりの会話
ここの作画が非常に綺麗です。気合が入っています。全編このレベルでみたかった…
(35)北斗杯二次予選。和谷くんとヒカルの会話、和谷くんのモノローグ
(36)ルール説明、対局開始
(37)社くんが勝って、ヒカルの対局をみて驚く
(38)昼休み、ナックドバーガーでの和谷くんとヒカルの会話
原作では珍しくロッテリアでしたが、アニメではいつものごとくナックドバーガーでした。
(39)そば屋での津坂さんと社の会話
(40)二回戦。本田くんとの会話を思い出して初手天元を期待するヒカル。5の5に打つ社くん。
(41)5の5の説明、ヒカルの二手目天元、そのあとのふたりの対局
このあたりでは原作でもワクワクしたものですが、アニメでもテンポがよかったです。作画が少々微妙でしたが…
(42)越智くんと和谷くんの対局
(43)別室での検討
(44)アキラがやってくる。倉田さんと棋院で偶然会う。
倉田さんが安太善に憤慨するエピソードが好きだったので、カットは残念。永夏に勝てよ、というのもカット。
(45)別室での会話を聞いて、対局室に走るアキラ
(46)ヒカルが勝ってるのを確かめて、別室にいくアキラ。
(47)それに気がついた越智くんのモノローグ。越智くんが和谷くんに勝利。
(48)さっさと帰ろうとする和谷くん。ヒカルと社くんの対局に驚いて別室に行く越智くんと和谷くん
(49)別室で並べなおし。対局室に行く越智くん、越智くんと社くんの力の差の話。
(50)古瀬村さんが戸刈さんと相川さんを連れてやってくる。
(51)社くん投了。実力をはっきりさせるために社くんとの対局を望む越智くんと、彼のプライドをみて自分を恥じる和谷くん。
(51)戸刈室長と相川さんの会話。
(52)予選をもう一局追加することに。
和谷くんの「悔しい!!」がないため、和谷くんの行き詰まりとそれを乗り越えようという思いが分かりにくくなったのが残念でした。
(53)越智くんと社くんの対局。代表決定。
対局はあっさり終了、ヒカルのナレーションで説明。まだ戦いはこれからだ、と。囲碁大会は宣伝の道具に過ぎなかった戸刈さんが認識を改める描写がなくなったのが残念。
(54)碁会所でのアキラとヒカルの対局。
「神様の百万年計画」の話、「打とうか」「ああ」まで。
(55)エンディング曲が流れる中、ヒカルのモノローグ
アニメのオリジナル部分。心の中の佐為に語りかけるヒカル。いつか強くなって、佐為の追い求めていた神の一手を自分が打つのだ、と。そしてアニメ最終回の夢の中のシーンでの振り返る佐為。最後に番外編・佐為の扉絵(ポスター)だった、佐為とヒカルの絵で話は終わり。
(56)エンディング「Everlasting Snow」
過去の景色、現在の景色。