03年03月に読んだ本。   ←03年02月分へ 03年04月分へ→ ↑Indexへ ↓麻弥へのメール
●「超常現象をなぜ信じるのか 思い込みを生む「体験」のあやうさ」菊池聡[講談社ブルーバックス]860円(03/03/27) →【bk1】

5年ほど前の本でありますが、本屋でみかけて興味を持ったので購入。
タイトルからすると超常現象を否定的に解明するタイプの本のように思えますが、実際はもっと基本的な部分の話になっています。
人間は外界をどう認識して、脳でどう処理されているのか。私たちが「見た」と思っていることは、光学的にカメラが捕らえたものとなぜ同じにならないのか。
私たちが「体験した」と思っていることはどれだけ正しいのか。記憶はどれだけあいまいなのか。
私たちは自分の予測にそった情報だけを都合よく取捨選択しているのか。
それらのことを、実際に行われた心理学的な実験の結果を引用しながら、素人にもわかりやすく解説をしてくれます。
超常現象だけに限らず、玉石混合の情報があふれすぎている今、自分の思っている「真実」がどれだけ危ういものであるかを自覚していないと、情報を凶器にしかねません。何か知りたいことがあったら、google検索したり、2chや他の掲示板を読みふけったりする人には、ぜひ一度読んでほしい本だと思います。情報リテラシーを学ぶのに参考になる一冊。


●「フルメタル・パニック! 踊るベリー・メリー・クリスマス」賀東招二[富士見ファンタジア文庫]580円(03/03/25) →【bk1】

「フルメタル・パニック!」の長編は、「終わるデイ・バイ・デイ(下)」以来、2年ぶり。短編はコミカルで楽しいですが、パワーの部分ではやはり長編こそがおもしろい。
トラブルでつぶれてしまった修学旅行のやり直しとして、クリスマスイブに巨大豪華客船に招待された陣代高校2年生たち。クリスマスイブはかなめの誕生日だったが、宗介は用事があって参加できなくなったという。がっかりしたかなめだったが、旅行当日、客船を占拠したテロリストたちはどうみても見覚えがあって…
ついにかなめ・宗介・テッサの三角関係(?)に終止符が打たれました。かなめは元々好きキャラではなかったんですが、前回の長編で見せてくれた健気な勇気は魅力的で、今回もその勇敢な部分と「夢見る乙女」な部分との揺れがいい味を出していました。
迷いがなくなった宗介は、かけねなしにカッコよかったし。
アクションシーンの派手さも期待通りのものだし、水中のチェスゲームような、潜水艦対決にはワクワクしました。
学園ラブコメ・アクション巨大ロボット軍隊SFものですが、これがとてもおもしろい作品ですので、興味があったらぜひ読んでみてください。


●「小説 鋼の錬金術師 砂礫の大地」井上真[エニックス]857円(03/03/11) →【bk1】

エニックスの「ガンガン」で連載中のマンガ「鋼の錬金術師」(荒川弘)のノベライズ。話はオリジナルの番外編となっています。長編と短編が一つずつ収録されています。
長編は「賢者の石」の情報を求めて各地を旅しているエドワードとアルフォンスがエルリック兄弟を名乗る偽者に出会って…という定番の設定ではありますが、キャラの掴み方・描き方もうまいし、「等価交換」という「鋼の錬金術師」という根本設定を生かした展開になっていて、ノベライズとしてはかなりデキがよい部類に入るのではないかと思います。
短編は東方司令部を舞台にしたコメディで、なかなか愉快でした。
原作が好きな人が読んでイメージ壊されるということはないし、表紙や挿絵も書き下ろしだし、あとがきマンガもおもしろかったですから、原作ファンにはオススメ。
原作を知らない人には原作コミックスの方をオススメしたいです。「鋼の錬金術師」は、現在の個人的に大プッシュの少年マンガのひとつで、強さや勢いだけでなく、苦さもバランスよくブレンドされた正当派の「少年マンガ」です。コミックスは現在エニックスから4巻まででています。


●「ヒカルの碁 [KAIO vs.HAZE]」横手美智子[ジャンプジェイブックス]743円(03/03/09) →【bk1】

アニメの脚本を担当されている横手美智子さんによる、「ヒカルの碁 [Boy Meets Ghost]」に続く「ヒカルの碁」ノベライズの第二段。
今回は、中学生編〜大会終了まで。内容はほぼ原作をそのままなぞっています。あからさまな間違い(この時点でのヒカルとアキラの対局は1年4か月ぶりではなく、4か月ぶりです)があったのは残念ですが、小説ならではのいい表現(ヒカルは佐為の気配をすぐ側に感じているのに、影は自分のものしかない…というような)もありますし、ノベライズとしてはいい感じではないでしょうか。
小畑さんの挿絵書き下ろしは、カラー1枚(表紙で、三谷/ヒカル/筒井/あかり)と、モノクロ2枚(佐為/三谷と、佐為/ヒカル/アキラ/筒井/あかり/三谷)の計3枚です。この頃の葉瀬中囲碁部のほのぼのとした空気が好きだったので、今の小畑さんの絵で、あの頃の彼らを見るのはなんだか妙にほろ苦い気分になります。失われた楽園を見ているようで。


●「ブギーポップ・スタッカート ジンクス・ショップへようこそ」上遠野浩平[電撃文庫]550円(03/03/09) →【bk1】

「ブギーポップ・アンバランス ホーリィ&ゴースト」より1年半ぶりのブギーポップを冠したシリーズの新作。
お金持ちのお嬢様・楢崎不二子がオキシジェンと名乗る奇妙な男とであったのが始まりだった。不二子はオキシジェンの能力を生かして、"人生の裏技"といえる「ジンクス」を売る店を始めた。そして運命に導かるように、その店に引き寄せられて関わった人たちは…
紹介文から今回は番外編的なオムニバスかと思ったらむしろ逆で、シリーズ全体の核心に関わる話で驚きました。
ただ、ブギーポップが世に出てから既に5年、物語の構成・語り口、イラストやデザインにしても読者は慣れてしまっているから、「フォーマット」と感じちゃうところもあるんですよね… そのためか中盤まではもうひとつしっくり来なかったけれども、それでも後半は読んでて話にぐいぐい引き込まれました。
今回の話から、物語の幕引きの部分が見えてきましたが、ラストでああなるとは。この話の時系列の部分はわからないけれども、現在「電撃hp」で連載中の「ビートのディシプリン」の方でピート・ビートが受けている「ディシプリン」とも繋がりのあることかな?とふと思いました。そちらの方もそろそろ答えが見えてきそうですしね。
挿絵の緒方さんの絵のタッチがまたかわりましたね。今回のはあんまり好みじゃないんで、うーん…


●「クイーンズ・ガード 額の中の美女たち」駒崎優[講談社X文庫ホワイトハート]550円(03/03/07) →【bk1】

1年ぶり、「クイーンズ・ガード」の2作目です。現代日本を舞台にした、ホテルのトラブル処理課のお話。どちらかというと、コメディです。
今回は、政治家と企業の癒着疑惑の話に、絵が絡んできます。私は美術関係のコンゲームの話って好きなので、あらすじ読んでそっちを期待したんですが、絵は「道具」に過ぎなくて残念でした。
ミステリー的な展開はエピソードの詰めも構成も甘くてイマイチでしたが、「足のない獅子」シリーズと同じく肩の力を抜いて気楽に楽しめるお話でした。
ただ、できれば事件の解決に個々のキャラの能力が生きてくれればいいのになあ…


●「嘘をもうひとつだけ」東野圭吾[講談社文庫]495円(03/03/06) →【bk1】

3年前にハードカバーで出た作品の文庫本化。加賀刑事が出てくる5つのお話が収録されている、ミステリ短編集です。
東野圭吾の作品だけに、レベルが高いところで安定している、安心して読めるミステリ集。ミステリ的な部分にプラスαのほろ苦さが含まれているのが印象的。表題作である「嘘をもうひとつだけ」の動機が切なくて、好みでした。
オススメ。


●「ミステリ・アンソロジーV 血文字パズル」有栖川有栖/太田忠司/麻耶雄嵩/若竹七海[角川スニーカー文庫]600円(03/03/02) →【bk1】

スニーカー文庫からでている、ミステリアンソロジー集もこれで5作目。今回のテーマはタイトルから分かるとおりに「ダイイング・メッセージ」でした。今回はバラエティにとんでて粒揃いでおもしろかったです。
◆「砕けた叫び」有栖川有栖
火村助教授と作家アリスのシリーズ。正当派の話ではありますが、人間死ぬ間際にそういうややこしいこと考えるかなあ、とか… いや、それを言い出したら「ダイイング・メッセージ」というテーマ自体が成り立ちませんが。
◆「八神翁の遺産」太田忠司
デュパン鮎子&奈緒シリーズ、だそうです。読んだことないけれども、今回の短編をみる限りではおもしろそう。「神の如き名探偵」な話にみせかけて、予想外のところへの着地でした。
◆「氷山の一角」麻耶雄嵩
メルカトル鮎と美袋くんのシリーズです。こちらは「悪魔の如き名探偵」なんですが、今回もメルの美袋くんイジメが炸裂してて、「メルカトルと美袋のための殺人」が好きだった私には満足なお話でした。
◆「みたびのサマータイム」若竹七海
今回の探偵役(?)の杉原渚は「クール・キャンディ」にも出ているそうですが、そちらは読んだことありません。ミステリの謎と解決が、青春のほろにがさにうまく結びついた作品で、海沿いの田舎町の空気や、素直になれない年頃の女の子の描き方とか、よかったです。


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