04年01月に読んだ本。   ←03年12月分へ 04年02月分へ→ ↑Indexへ ↓麻弥へのメール
●「カラミティナイトIII」高瀬彼方[ハルキ文庫]940円(04/01/23) →【bk1】【Amazon】

待ってました。「カラミティナイト」、2年半ぶりの新刊です。
絶望を魔に変える「災厄の心臓」を移植されてしまった忍。彼の絶望が「災厄の心臓」に力を与え、やがて世界を滅亡させるというのだ。「災厄の心臓」自体は戦う力がなく、自らを守るために宿主に好意を抱く人に力を与え、騎士とする。自らの弱さに"絶望"したおとなしい少女・智美は「災厄の心臓」と契約をして第五の騎士となってしまった。「災厄の心臓」の力で世界を破滅させようとする「慟哭の三十人衆」に襲われた智美は、たった一人の親友・優子を戦いに巻き込むハメになってしまった。悲しいすれ違いの後、互いの気持ちをぶつけることでやっと心が再び通じ合うようになった智美と優子。しかし状況は高校生の少女たちで解決できるようなものではなく…
今回も痛い話でした。智美も優子も、本当にいい子だけに、お互いをどれだけ大切に思っていても…いや、大切に思っているからこそ、どんどん深みにはまり、狂気に侵食されてゆく智美が痛ましかったです。少しでも状況を改善しようとする、智美たちの「努力」は所詮は現状から目をそらすための逃避にしかならない。それでもつかの間の平和での何気ないやりとり(必死で本を薦める智美とか)そういうのがほほえましく、眩しく感じます。だからこそ余計、これから落ちてゆく闇が余計に深く思えてしまいますが…
ネタバレ感想→このまま、美由紀が第六の騎士になったとして、狂気を自分でコントロールできなくなって暴走してしまい、智美が泣く泣く処分せざるをえない展開になりそうな予感がありますが、それじゃ智美ちゃんがあまりにもかわいそうすます。
その一方で、容赦ない話を好む人間としては、それを待ち望んでいる部分もあるんですよ。困ったことに。
←とにかく、早く続きを読みたいです。


●「著作権の考え方」岡本薫[岩波新書]740円(04/01/16) →【bk1】【Amazon】

帯には"「一億総クリエーター、総ユーザー」時代の必読書"と記されていますが、ネットで自分のサイトを持っていれば、著作権の問題というのは避けて通ることができません。「これくらい、別にいいだろう」と思ってやったことが閲覧者から「著作権侵害では?」という指摘をうけたり、逆に自分が描いた絵や文章が他のサイトでまるまる使われていることをみたり…
いざ困ってからネットで著作権を調べることで、ある程度のことは「分かったつもり」にはなれると思います。でも、本質まで理解している人はどの程度いるのでしょうか。
私自身、ファンサイト運営時代に必要に迫られて色々と調べました。だから細かい事例はある程度知っていたりします。でもなぜ著作権法でそういう権利が定められているのか?ということは解説を読んである程度わかったつもりでいても、本質的な部分はやはりわかっていません。
だから、私にとって著作権は公式の意味を理解しないまま計算に使っているような、そういう足元がおぼつかない感じがつきまとっていました。
この本は著作権法がどういう問題を解決するために制定されてきたのかの歴史的な流れ、そして国際法の動向、国内法の運用について等々、著作権法の「枠組み」をクリアにし、分かりやすく解説を行っています。著作権法の「意味づけ」の部分が非常に分かりやすいです。
今現在「著作権問題」と騒がれているものの大部分は実は「契約の不備」の問題であるとか、自助努力をせずにお上に決めてもらおうとする日本人のメンタリティの問題についての話が興味深かったです。
音楽CDのコピープロテクトについて、書籍の貸与権について、音楽CDの輸入権の問題についてなど、タイムリーな話題も豊富でした。
いい本ではありますが、基本的な用語の説明や事例の話などはあまりありません。また「ファンサイトで気を付けること」などの具体的なアドバイスも載ってません。そういう細かいことについてはWeb上で解説しているサイトがいくつもあるので、そのあたりをみればいいのではないでしょうか。逆に、そういうサイトを山のようにみた上で、全体の流れを整理するのに読むといいかも。
特にWebで「著作権」についてあれこれ語りたがる人は、誤ったベクトルによる主張をして恥をかかないために必読です。


●「指輪物語 (10) 新版 追補編」J.R.R.トールキン/瀬田貞二・田中 明子(訳)[評論社文庫]900円(04/01/13) →【bk1】【Amazon】

文庫本新版には収録されていなかった追補編がやっとでました。
アラゴルンとアルウェンの恋物語、フロドたちのその後、ガンダルフの正体(?)について、中つ国の歴史背景、エルフ語の発音表記、そして訳者による固有名詞のミニ解説など、「指輪物語」の世界を深く知ることができる一冊です。
さて、読み始めていきなり挫折しそうになりました。固有名詞の説明がないまま文章が続くので、ちんぷんかんぷん。でも、分からないまま読みすすめていくと少しずつ「これは固有名詞?」「これは地名?」「種族の名前かな」分かってきました。巻末の用語解説まで読んでから、冒頭を読み返してみたら、前よりも書かれていることが見えてきました。情報が断片的だからこそ、空想がかきたてられます。
この世界の歴史背景に興味が出てきたので、「シルマリル」も読んでみたくなりましたが、値段もさることながら、「神話読み」に慣れてない自分にはあの本は読破できないんじゃないか?という不安もあって、迷ってます。どうしようかなあ。


●「バッテリー」あさのあつこ[角川文庫]514円(04/01/07) →【Amazon】

児童文学の枠を超えた作品として名高い「バッテリー」シリーズがついに文庫本化。多くの人からオススメされていましたが、ハードカバーゆえ手をだすのをためらっていました。文庫本化、万歳。
ピッチャーとして天腑の才を持つの原田巧。彼は父親の仕事の都合で中学校にあがる直前、岡山の地方都市、新田に引っ越してきた。自尊心が高く、誰とも馴れ合わないクールな巧の前に現れたのは、人懐っこいキャッチャーの永倉豪。巧の投げる球に惚れこんだ豪は、自分とバッテリーを組んでほしいと熱望して…
巧がマウンドに立つときのまっすぐで冷たく熱い思いがストレートに伝わってくる話でした。新田に吹く風を感じ、澄んだ空気の匂いもかいだような気持ちになりました。評判になるのがわかるなあ。
実は雑誌「活字倶楽部」の読者層には萌え小説として有名な作品。巧は私の好みではありませんが、青波はストライクゾーン。一見かよわそうにみえて、芯はしなやかで強いところがよいのです。今後の彼の成長が楽しみであります。


●「絵のある人生−見る楽しみ、描く喜び−」安野光雅[岩波新書]740円(04/01/06) →【bk1】【Amazon】

画家の安野光雅さんが書いた、「絵を見ること・絵を描くこと」についてのエッセイ。安野さんが心酔するプリューゲルやゴッホの絵についての話、どうしてそういう絵になってしまったのか?について「絵描き」の視点からの読み解きがおもしろかったです。
教養としての絵画鑑賞をするのではなく、絵を好きになること。絵の価値だとかいうのがわからなくても、好きか嫌いかで絵を判断してもいい。そういう「絵を楽しむコツ」を色々と教えてくれる本です。
美術展を楽しむコツの一つとして本書で書かれている、「もし1枚だけもらえるとしたらどの絵がいいか?」を考えながら鑑賞するのは、私もずっと前からやってたりします。「この絵、ほしいな〜」「いくらだったら買うかな?」とかそういうことも考えながら。美術館に展示してあるような絵は私の買えるような値段ではありませんが、ウィンドウショッピングをしている感覚で絵を楽しむことができるのでオススメ。


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