04年04月に読んだ本。   ←04年03月分へ 04年05月分へ→ ↑Indexへ ↓高永麻弥へのメール
●「博士の愛した数式」小川洋子[新潮社]1500円(04/04/30) →【bk1】【Amazon】

全国の書店員が「いちばん売りたい本」を選ぶ、「第一回本屋大賞」受賞作です。
前から話題になっていた本だというのは知ってたんですが、この前初めて本屋でみかけて手を取りました。パラパラと読み出したらやめられなくなったので、購入。
シングルマザーの家政婦の「私」が新しく派遣されたのは、80分しか記憶が持たない「博士」の家だった。「博士」は数学者として活躍していたが、17年前に交通事故で脳に障害をおった。事故以前の記憶ははっきりしているのだが、事故の後は80分間のことしか覚えていることができない。不器用で、人と話すときになにかと数字の話を持ち出す博士と、「私」とその息子の「ルート」の心温まる交流を描いた作品です。
優しい、きらきらとした光を感じる物語でした。ほんのすこしの思いやりであっても、それを人と分け合うことの暖かさ。博士の愛する、美しい数学の世界を「私」の目を通して垣間見ること。それらが胸に染みます。
タイトルにあるとおりに数式の話もでてきますが、数学の楽しさ・美しさを博士が易しく教えてくれるので、数学アレルギーだった人にも大丈夫です。むしろ、アレルギーだった人の方が得るものが大きいかもしれません。
作中で出てきた「オイラーの公式」は正しくはオイラーの公式にθ=πを代入したものです。オイラーの公式は私も大学生の授業で習って物理の問題を解く「道具」として利用していましたが、この物語を通すことで新たに美しさを感じることができました。私自身は数学は暗記することが少なくて済んだから好きな教科でしたが、こういう美しさやおもしろさを感じながら学んでいければもっと楽しかったんじゃないかなあ、という気がします。


●「真・運命のタロット8 《吊るされた男》、そして… 上/下」皆川ゆか[講談社X文庫ティーンズハート]各620円(04/04/30) →【bk1】上/下 【Amazon】上/下

首を長くして待ってました。5年ぶりの「真・運命のタロット」シリーズ、新作です。
1980年代、ミッドウェイ海域で行われた人工的に超能力者を作り出すための大規模実験。そこで記憶を無くしたライコは実験体として扱われていた。ライコを助けるために、彼女が囚われている潜水艦に向かった大河と《戦車》がみたのは…
ライコが投げやりになり、女教皇が自分を閉ざすことで閉塞感があった物語でしたが、ついにそこから抜け出すことができました。
どんなに辛い記憶であっても、過去の自分の選択を積み重ねた上に今の自分はあるのだから。そうやって前に進むことを選んだ彼女の姿に、あの人の強さが重なって心が打たれました。
正直、今回は読んでてわからない部分もかなり多かったです。科学者たちの会話とか、最後の《世界》に関わる描写とか。本当は既刊も読み直し、今回の話も自分で何度も読み返して意味を読み解くのが筋なのでしょうが、ついネタバレ掲示板関係を回ってそこに書いてある意見を読んで「ああ、そういうことなのか」と横着なことをしてしまいました。
登場人物たちが時間を行き来する物語なので、もともとややこしいところはありましたが、「真」になってから設定周りがさらに複雑に… 私のようなヌルい読者には辛い部分もありますが、それでもこの過酷なお話が行き着くところを最後まで見届けたいなあ、と。
7月にはシリーズ完結編となる「《世界》。」がいよいよ刊行。完結編とはいえ、すべての謎がとかれるわけではないようで、作者が賛否両論分かれそうな終わり方だと明言しています。それでも、一時期はもう読めないかと思っていただけに、《世界》までたどり着けるのは嬉しい。楽しみに発売を待ってます。
以下、ネタバレ感想。各種ネタバレスレッドで読んだ話も混ざっている、かなり危険なネタバレ感想なので注意を。→《死神》が香港で回収したのはライコの下半身のようですが、あちこちで言われるように、《世界》はライコの胎児が転写された存在なのでしょうか…
《死神》の《愚者》に対するこだわりから、一部で《死神》=片桐説が囁かれています。転写でそこまで性格が変わるものなだろうかと思いますが、そこまで変えてしまうだけの体験があったのかもしれません。もしそうなら、そのことをぜひ読んでみたいものですが。
大河=《魔法使い》の可能性はかなり高いように思えますが、個人的には大河はあんまり好きなキャラではないので(唯がかわいそう)、それはちょっと…
《悪魔》はカインの兄だったですかっ。それで肉体関係もあったわけで、ふたりの間に複雑なものがあったんでしょうねぇ。命が失われてゆくカインをじっと見続ける《悪魔》の姿は切ないものがありました。リンダも今までは私にとってはよくわからない人でしたが、今回のライコへの説教や、男気溢れる最期には胸が打たれました。


●「超・殺人事件 推理作家の苦悩」東野圭吾[新潮文庫]438円(04/04/27) →【bk1】【Amazon】

3年前にハードカバーで出版され、話題になった本がいよいよ文庫本化。推理小説作家の苦悩(?)を愉快に描いた8つの短篇が収録されています。
カデコリとしてはバカミスというよりミステリバカ話にはいるのかもしれませんが、それでも作品によってはまっうな「ミステリ」になっているあたりがさすが東野圭吾。
どれもおもしろかったですが、その中でも気に入ったのは「超税金対策殺人事件」「超高齢化社会殺人事件」「超長編小説殺人事件」。
「超長編小説殺人事件」はたしか「IN POCKET」で読んだ記憶がありましたが、当時のミステリといえばいわゆる"弁当箱本"が次々と出ていただけに、余計におかしかった記憶があります。
「超読書機械殺人事件」、星新一的な味わいがありました。


●「《女子大生会計士の事件簿》世界一やさしい会計の本です」山田真哉[日本実業出版社]1300円(04/04/24) →【bk1】【Amazon】

ビジネスジャンプで連載中のマンガの原作本「女子大生会計士の事件簿」の作者が書いた、会計に関する本です。現役美人女子大生であり、敏腕公認会計士の萌実を主人公にした、会計監査にまつわる事件を集めた短編小説「女子大生会計士の事件簿」も4つの短篇(連作)が収録されています。
会計の基本的な考え方が、単純にした説明と豊富な図版で分りやすく説明されています。この手の本を何冊か読んだことありますが、わかったようでいて、もうひとつしっくりこない感じが残っていました。会計の二面性や"流れ"で考えるというのを知って、そのもやもやが少しはすっきりした感じがします。
このシリーズは、キャラクターの会話で進むことが多く、小説としては少々物足りないですが、会計の知識を学ぶための軽いビジネス書としてはおもしろくてオススメです。


●「フルメタル・パニック! −サイドアームズ− 音程は哀しく、射程は遠く」賀東招二[富士見ファンタジア文庫]520円(04/04/23) →【bk1】【Amazon】

学園ラブコメ・アクション巨大ロボット軍隊SFモノ「フルメタル・パニック!」シリーズ新刊。今回はミスリルメンバー中心の短篇集です。
表題作の、クルツメインのほろ苦い話もよかったですが、整備士オヤジの話が個人的にはとても好きです。アーム・スレイブの細かい設定はよくこれだけ考えたものだなあ、と関心しました。「女神の来日」についてはノーコメントの方向で。


●「A君(17)の戦争7 はたすべきちかい」豪屋大介[富士見ファンタジア文庫]560円(04/04/22) →【bk1】【Amazon】

「A君(17)の戦争」の最新刊。いよいよ総力戦です。
いかにも苛められっ子の冴えない少年が、なぜかアニメ的な異世界に「魔王」として召還された。彼の役割は、人間に攻められ、滅亡しかけた魔界を救うことだった…という、軟弱ヲタクの皮を被った架空戦記な作品です。
前回、魔族側もなんとか一息つける状況になったものの、人族大同盟条約を締結したランバルト国は、魔族の首都・ワルキュラを陥落させるために20万もの大軍を送り込んだ。魔族側の戦力は1/4、彼らにあるのは人族よりも発達した魔法テクノロジーと情報網、そして総帥・オノデラゴウシの狡猾な頭脳のみ。
生き延びるか、滅亡か。存亡をかけた戦いに巻きずりこまれた剛士がハマってしまった戦争というゲーム。最後の演説のシーンは、あまりに悲しすぎました。足元に底の見えない薄暗い穴がぽっかりと口を開けているような。
あと1冊か2冊で終わるとのこと。もうどうしようもない泥沼状態ですが、少しでも救いの見えるラストになるといいのですが。


●「不健全な精神だって健全な肉体に宿りたいのだ」菅野彰[イースト・プレス]1200円(04/04/20) →【bk1】【Amazon】

ボーイズラブ作家・菅野さんが雑誌「恋運暦」に連載していた爆笑エッセイが一冊にまとまりました。最初はがけっぷちの30前女が結婚のためになんか(占い、エステ…)するぞーという「結婚への道」というタイトルのエッセイだったのが、いつの間にやらよくわからない方向にいってしまい… 今回も大爆笑でした。
「それ三十までだから」という呪い(?)、私も作者と同年代ということもあってよくわかります。昔は平然と寝ずに遊んだり、コンサート1日3回みたりしたことが今となっては遠い昔のことですよ…
同じ作者のエッセイ「海馬が耳から駆けてゆく」は一冊目は文庫版がでていますので、女性作家の爆笑ダメ日常/非日常エッセイに興味がある人はお試しください。


●「禁じられた楽園」恩田陸[徳間文庫]1800円(04/04/19) →【bk1】【Amazon】

大学生の捷は、同級生で世界的に有名な現代アーティスト・鳥山響一から彼の故郷への招待を受け取った。資産家の鳥山家は熊野に多くの山を持っており、そこに響一の叔父で天才建築家の鳥山彩城が自作のインスタレーションをちりばめたプライベート美術館を製作したのだ。その魅惑的な誘いは、夏の日の恐怖の始まりだった…
帯には「現代の語り部が贈る、めくるめく幻想ホラー超大作」と書かれています。
超大作というのは微妙に違うような感じですが、首筋のすぐそばに「何か」がいるような、ピリピリとした生理的な怖さのある作品でした。
予感に満ちた序盤、中盤のイメージの奔流、そしてオチの尻すぼみ感…なんとも恩田陸らしい作品で、満足でした。
響一というカリスマ的な人物・および彼の作品についての禍々しいまでの美しさに魅せられました。怖いけれども、私も「神の庭」に行ってあのインスタレーションを体験してみたい。


●「導きの星II 争いの地平」小川一水[ハルキ文庫]780円(04/04/15) →【bk1】【Amazon】

「導きの星I 目覚めの大地」の続き。発売されてから2年近く、一冊目を読んでから買い続けていたものの、なんとなく積読状態でした。でも、とてもおもしろいとの話を聞いて読んでみることに。
銀河に進出した地球人は、文明の萌芽がある知的生命体をみつけてはその育成を手助けしていた。その外文明支援省の新任観察官・司と3人の美少女の外見をした目的人格(パーソノイド)が補佐しているのは、リスザルのようなスワリス族とヒジュリキ族が争っている惑星オセアノ。司たちの支援の下、順調に文明を発達させているスワリスたちだが、争いの火は絶えなくて…
最初読み出しても意味がわからず、結局シリーズ1冊目を取り出して再読してからの再チャレンジ。ややこしい話だけに、完結した今に一気読みできるのはよかったかもしれません。
読んでで思ったのが、「神様も大変だなあ」ということだったり。ここで司たちはスワリスからみると「神様」に近い万能の存在ですが、司たちが良かれと思っていたことが裏目にでたり、祭り上げられたり落としめられたりと本当に大変です。
もし、地球にもこうやって見守っている「神様」がいたとしても、人類の個々の意志までは操れなくて間接的にしか力が揮えないのであれば、司たちと同じような苦労や、もどかしい思いをしてきたのかもしれません。そんなことを読みながら考えたりしていました。
閉塞状況になってきている人類社会側の描写がストーリーにどう関わってくるのかが楽しみです。


●「機械仕掛けの蛇奇使い」上遠野浩平[電撃文庫]610円(04/04/13) →【bk1】【Amazon】

8世紀にも渡って世界の大半を統治し続けてきた大帝国(ゴウク)を支えてきたのは徹底した官僚組織で、皇帝は帝国統治の象徴であるお飾りとしてしか存在できなかった。そんな第32代皇帝・ローティフェルドの唯一の趣味は骨董品コレクションを密かに鑑賞すること。彼の一番のお気に入りは、太古に世界を滅ぼそうとした、美しい少女にも少年にも見える姿をした戦鬼・バイパーの封印された巨大な鉄球だった。カミング博士の力でそのバイパーの封印を解いたのが、大帝国が「虚空に消え行く最期の日」の始まりだった…
2002年9月に雑誌「電撃hp SPECIAL」で「虚無を心に蛇と唱えよ」を掲載していますが、これはその作品のバージョン違い。雑誌掲載分の記憶があやふやだったので、帰ってきてから雑誌を取り出して読んでみましたが… 大筋では一緒ですが、細かい部分がかなり違っていました。雑誌分の感想では上遠野さんの作品の中では一番読みやすいかも。独立した話で、あまり長くないですし。(ひょっとしたら他作品との世界の繋がりはあるかもしれませんが) しかも独特の「上遠野浩平」の匂いが薄いのですし。と書きましたが、文庫版の方は設定部分の変更や、ラスト近くの改変で「上遠野浩平」色が強くなっています。私としては、文庫版の方がほろ苦くて好みです。→フォーマット、ってすごく萌え、なので。他作家の作品ですが、EGでもそれで泣いたからなあ…
世界設定はライトノベルではお馴染みの「剣と魔法の世界+ロストテクノロジー」にプラス1した世界。設定はライトノベルでありがちでも、キャラや物語の動かし方のひねりのつけ方がいかにも上遠野浩平らしいです。
崩壊する世界の「システム」と、「世界の敵」になってしまった少女。見捨てられた世界はとてもあやふやで不安定で、それでも精一杯生きてゆく。上遠野浩平は、ある意味毎回「同じ話」を書き直しているように思えますが、そうやって重ねられることで見えてくる微妙な色合いがとても好きなのです。
さて、雑誌版と文庫版の違いのメモ。完全ネタバレです。
◇じゃき起動。
雑誌:「蛇機」と表記。完全に「彼女」。名前はエウレーダ。エウレーダは復活したときに泣いていた。己の意思は最初からあり。
文庫:「蛇奇」と表記。「性別ははっきりしないが、文中では「彼」。名前はバイパー。起動直後ははリセット状態。ローティフェルドの人格をコピー。
◇世界設定。
雑誌:文庫版の表設定と同じ。
文庫:表設定は雑誌と同じで第七文明。実は虚空牙(推定:作中では固有名詞はでてこない)に負けた人類がシミュレーションしている、実験としての架空世界。
◇「じゃき」の正体。
雑誌:(表)凄腕魔法使いで、世界を破壊してまわっていたので英雄ヴィオルに封印された…とされているが、実は旧帝国・アグラスと戦っていたが、守っていたはずの市民達の理解を得られないまま、自分を封印した。
(裏)旧帝国・アグラスが崩壊寸前に神話時代怪物(ジャグヘッド)を元に作った大量殺戮用蛇機。エウレーダの開発者・シルキィは開発用兵器開発に心を痛め、エウレーダにアグラスへの忠誠心と共に正義のために世界を守れという命令を組み込んだ。
文庫:(表)破壊のために作られた人工兵器。いくつもの陣営で彼はやりとりされて世界を破壊していたが、施政者たちがパイパーをコントロールしきれなくなったため封印された。
(裏)第六文明の最後に、「自分たちが架空世界の住人であること」に気が付いた人々が、モニターの向こう側を探るためにバイパーを作成した。
◇ラストの展開。
雑誌:ジャグヘッドを倒したあと、ローティフェルドはジャグヘッドの中からエウレーダを連れ戻し、記憶も無事であるエウレーダに愛の告白。エウレーダは記憶を無くしたユイに"シルキィ"の名前を与え、優しい言葉をかけた後、エウレーダはローティフェルドの元から旅立つ。また会いにくるかもしれないことをほのめかして。
文庫:ジャグヘッドの中でバイパーはイマジネーターと出会う。ジャグヘッドの中からバイパーはジャグヘッドの倒し方をローティフェルドに伝える。ローティフェルドはジャグヘッドを倒したあとバイパーを連れ戻したが、バイパーはリセット状態で、やがて鉄球に封印された。ラストは記憶を失ったユイに優しく語りかけるローティフェルド。
ちなみにジャグヘッド関係の設定や描写は全く同じでした。彼の設定は今からみれば「虚空牙」がらみのものであるのはよくわかるのですが、当時は全く気が付かなかったです。


●「重大事件に学ぶ「危機管理」」佐々淳行[文春文庫]505円(04/04/10) →【bk1】【Amazon】

「危機管理」の第一人者であり、警視庁・防衛庁・内閣安全保障室で歴史的な事件の現場指揮をとってきた筆者による、豊富な実例に基づく危機管理の具体的な教訓がぎっしりつまった本です。
いくつもの修羅場をくぐってきた人ゆえの、ひとつひとつの言葉の重さ。内容は重いですが語り口は軽妙で、読ませる力が強いです。取り上げられているのは国家的な事件は多いものの、そこから導かれる教訓は一般市民にも役に立ちます。
それにしてもここまでズバズバ書いて大丈夫なのか?…と私のような小心者は読んでてビクビクしてしまいますが、国家の存亡や多くの人命がかかる現場で戦い続けてきた筆者にとっては、それと比べたら、批判で人の気持ちを害したり、トラブルに発展する程度のことは怖いことでもなんでもないのかもしれません。

「トリアージ・ドクター」の話に象徴されるように、多くの人の存亡にかかわる現場では、ひとつでも多くの命を救うために、割り切って少数を見捨てるのは「当たり前」のこと。もちろん、その犠牲の中に自らの地位、命までも含まれています。被害を最小限にするために、指揮官はそうやって割り切って非情に徹することが必要なのは頭では理解できるのですが… 私のような"保身"と"自分が傷つかないための生ぬるい平和論"が身に染みついている人間には少々キツい本でありました。
本筋とは関係ないですが、敬愛する上司だった後藤田氏についての佐々氏の描写が生き生きとしていて、読んでいて楽しかったです。それでつい佐々氏の「わが上司 後藤田正晴」も購入。目次をみただけでもおもしろそだと思うのですが、先に読まなきゃいけない本があるので、手をつけるのにはもうすこしかかりそう。


●「極限推理コロシアム」矢野龍王[講談社ノベルス]820円(04/04/09) →【bk1】【Amazon】

駒形祥一はある朝、目覚めると見知らぬ部屋にいた。彼がいた部屋は外部より封鎖された建物の一室で、その建物には彼以外に6人の男女が閉じ込めされていた。彼ら7人に「主催者」から殺人ゲームを行うというメッセージが届く。彼らのいる「夏の館」とは別に「冬の館」にも7人が閉じこめられており、両方の館にいる14名の中に殺人者2名が含まれていて、彼らはゲーム開始より殺人を始める。その殺人者の名前を当てると彼らは助かることができるが、一度でも間違えてしまうとゲームオーバーで全員が殺される。また、夏の館と冬の館のうち、片方が正解を出すと、片方のメンバーは全員殺されることになる。強制的に参加させられた殺人ゲーム、生き残りをかけて命がけの推理を始めるのだったが…
第30回メフィスト賞受賞作。わりとまっとうなミステリでした。(理由なき殺人ゲームに「まっとう」というのもなんですが…)
極限状況に追いこまれている割には登場人物たちの行動がのんびりしているように思えますが、衣食住については安堵されているからでしょうか。あんまりサバイバルしてないんですよね…
メイントリックは、某有名国産ミステリと同じタイプのものですが、あちらはスケール感が大きいところが好きだったのに、この「極限推理コロシアム」はこじんまりとまとまりすぎているのが残念。というか、単に私がハッタリの聞いているミステリが好きなだけかも。
値段分は楽しめましたが、作者の次回作を読むかどうかは、次回作のあらすじをみてからになりそうな感じです。


●「お医者さんも戸惑う健康情報を見抜く」小内亨[日経BP社]1400円(04/04/05) →【bk1】【Amazon】

テレビ・雑誌・ネットには、健康によい食品や、さまざまなダイエット食品、ガンや糖尿病に効く食品の情報が溢れています。一見もっともらしい理屈がついた「健康食品」に潜む危険性や問題について、医療専門情報サイト・Med Waveで連載されていたコラムを一冊にまとめたものです。
コラムひとつひとつが短いこともあって、サクサクと読めました。「食品」と名前がついていても、健康食品の中には使い方を間違えると危険なものもあります。もくじを読んで「え?そうなの?」と思った方にはぜひ読んでほしいです。雑誌の広告に載っていたダイエット食品を買ったことのある人にも…
ただ、残念なのはこの本の元なった連載が専門家向けの媒体だったこともあって、栄養学や統計の基礎知識がない人にはわかりにくいかもしれないこと。一般消費者向けにもう少し詳しい説明があった方がよかったかもしれません。
作者のサイト、健康情報の読み方もとてもオススメです。


●「女子大生会計士の事件簿3」山田真哉[英治出版]950円(04/04/04) →【bk1】【Amazon】

ビジネスジャンプで連載中のマンガの原作本「女子大生会計士の事件簿」のシリーズ三冊目がでいました。
現役美人女子大生であり、敏腕公認会計士の萌実を主人公にした、会計監査にまつわる事件を集めた短編集。あまりハデな事件はおこらないし、ほとんど会話で物語が進むこともあって「小説」としては物足りない部分はあります。でも、会計に興味があるけどもうひとつよくわかってない私のような人間には、そこを補ってくれる作品なので、十分に満足だったりします。
巻末の「不正・粉飾決算マニュアル」もなかなかおもしろかったです。
小説としてよりも、軽いビジネス書として読むのがいいかも。会計に興味はあっても知識がない方にオススメ。


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