7月に読んだ本。

●「遺体処置 EM2」雨宮早希[幻冬舎ノベルズ](97/7/30)

「エンバーミング」シリーズ第二弾。おもしろいですよー、今回は。
エンバーミングというのは遺体修復のこと。日本ではなじみのない風習だけど、アメリカでは日常的に行われてるそうです。この話の主人公は、村上美弥子という女性の日本人初のエンバーマー。事故を起こしたヘリコプターに乗っていた遺体の修復をうける。このヘリコプター事故から連鎖的に事件が発生し…
後半の展開にもドキドキしましたが、一番おもしろかったのはエンバーミングをする場面ですね。私の好きなもののひとつに、「特殊職場モノ」というのがあるですが、今回はその専門知識をわかりやすく説明してくれて、おもしろかったです。


●「水の屍」神崎京介[幻冬舎ノベルズ](97/7/29)

帯の村上龍氏の推薦を読んで買いました。
−−フリーバイク便ライダーの沢木は静岡から湧き水を汲んでほしいという依頼を受けた。依頼主は、水アレルギーの少女。ふたりが出会ってから、奇妙なできごとが…
ストーリーの発端はなかなかおもしろかったけど…うむむ。
この話のキーワードである、「リセット・ハイ」という現象の説明が、うさんくさくて、「ちょー」な匂いがするんですよ(^ ^;)。もちろんこれは小説だから、この理論は実在しないけど、でも小説世界でのリアリティをもう少し感じさせてほしかったです。
この作者の前の「0と1の叫び」も謎の骨組みはなかなかおもしろかったのに、全体のバランスの悪さでもったいないことをしてるなあ、って思う。


●「暗殺者(アサシン)は一度哭く」荻野目悠樹[集英社スーパーファンタジー文庫](97/7/25)

女暗殺者・メムのシリーズ二冊目。前回の最後であんなことになってどうなるかと思ったら、ボロボロの状態のまま、話は進むのね(T T;)。この作者の本っていうのは、兇王子シリーズのギヴァもそうなんだけど、主人公がとことんボロボロにされちゃって…
前半の展開はまだ予想範囲ないですが、まさか後半あんなことになろうとは(T T;)。
…で…これで終わったの?それとも続くの?気になってし方ないです。


●「IN POCKET 1997年7月号」[講談社](97/7/25)

文庫本雑誌の7月号です。やっと手に入れることができました(*^ ^*)。今回は、ミステリのショートショート競作。参加者は、高橋克彦、東野圭吾、今野敏、斎藤肇、太田忠司、井上雅彦という豪華ラインナップ。できばえもみごとなものです。これで150円なんて、お得だよねぇ。


●「キル・ゾーン 罪」須賀しのぶ[集英社コバルト文庫](97/7/25)

私が今一番楽しみにしているシリーズの、待望の最新刊です。今回のコバルトの新刊では一番に読みました。今回、なにが嬉しいかって、口絵イラストがあるんですよぉ〜〜〜〜〜!!
なんか、このシリーズも人気がでてきたっていうのが実感できて、嬉しいですねぇ。
このシリーズは、SFミリタリーモノです。といっても、SFが苦手な人でも全然平気ですし、男性キャラが本当にいいっ!!ので、ぜひぜひ読んでくださいね〜。
今回の話は、捕らわれのキャッスルの女装(笑)シーンも出てきます。ついにキャッスルがラファエルの秘密を知ってしまったのでした。キャッスルを救出に行った、エイゼン以下5名も囚われの身に。そしてなんとエイゼンが……!!
番外編として、エイゼンとキャッスルの出会い編の「バディ・システム」が収録されています。
今回はエイゼンの出番が多いですね〜。彼の過去なども詳しくエイゼン視点から描いてくれますし。それに対して、寝てるだけのラファエルくん(^ ^;)。でも、この様子だと、次巻にはとんでもないことになりそうですねぇ…そうならないように、がんばれサリエルくん!!
ラストは、まさかあれがそのまんま…なことはないと思うけど、早く続きを読みたいです〜〜(T T;)。


●「妖狐の舞う夜 霊鬼綺談」小早川恵美[講談社ホワイトハート](97/7/25)

四位広猫さんの表紙につられて買ってしまいました。
サイキックホラーと書いてますが、要はゴーストバスターもの。美形の少年二人が出てきてますが、ボーイズラブではなく、淡い友情モノであるのがなかなかよいです。


●「デルフィニア戦記13 闘神達の祝宴」茅田砂胡[中央公論社](97/7/24)

「デルフィニア戦記」シリーズ最新刊。まだ旅行準備とか、ホームページの更新とか全然終わってないのに、つい手を出してしまいました(^ ^;)。
表紙のリィが美しいです(*^ ^*)。今回は、なんと舞踏会の話!!リィの盛装が拝めます(*^ ^*)。
デルフィニアの王宮は恋の季節(笑)らしく、今回はほのぼのとした恋愛話中心です。


●「スレイヤーズすぺしゃる11 激走!乗合馬車」神坂一[富士見ファンタジア文庫](97/7/22)

最新刊、出てましたよ〜。さっそく買って、一気に読んじゃいました。
いつもながら勢いがあって、おもしろかったです(*^ ^*)。
あ、これで感想が終わってしまう(^ ^;)。


●「虹を操る少年」東野圭吾[講談社文庫](97/7/21)

これも文庫本化を待っていた本です。
−−天才少年・光瑠は、色を鋭敏に見分ける能力があった。彼は、光を演奏し、メッセージを出す「光楽」を始め、若者たちを虜にしていく。そして、その能力を疎んじた大人からの魔の手が忍び寄り……
SF、になるのかな。ジャンル分けすると。私は光瑠のような能力は全くありませんが(^ ^;)、「色」はすごく好きで、だからマーク・ロスコが好きだし、色の見本をのせた、ぶっとい本をつい買っちゃったりするし(^ ^;)。光も好きです。光GENJIのコンサートを心から愛してるのも、あのライティングに負うところが大きいから。でも、光楽は、もっともっとキレイなんだろうな〜〜〜。本を読んでて、ぜひ光瑠が行うコンサートをみたくなったなあ、というのが感想です。
東野圭吾はハズレのない作家なので、読んだことのない人は読んでみてね。特に最近の作品は、レベル高いですし。(でもマイベストは「魔球」。)


●「歪む教室」関俊介[角川スニーカー文庫](97/7/21)

第一回角川学園小説大賞金賞受賞作。高校生活最後の夏休み、矢島裕和は学校に閉じ込められてしまう。そして、次々とおかしなことが……というような内容。帯には「戦慄の学園ホラー」になっていますが、これホラーではないよね(^ ^;)。…全然怖くないんだもん。
かといって、恋愛モノとはちょっと違う感じがするしなあ…
ホラーというのは、常識とか、理屈が全く通じないところが怖いから、「なんだかよくわからないことが起こる」のはいいんだけど、ただそれがなにが起こってるのかもよくわからないし、わからないまま終わっちゃうっていうのはなあ…個人的には、ホラーというのは、全く別の理屈や法則で動いているところが怖いのではないかと、思ってるんですが。
最後の部分が伝えたいことであったとするならば、分量バランスがよくないですよね。もっとそのあたりの伏線をムードを盛り上げるようにきちんとひいておくか、いっそのこと全体量をこの3分の1位にしておけば…「ふーん、それで?」って感じで読み終わっちゃって、残念でした。


●「日輪の遺産」浅田次郎[講談社文庫](97/7/18)

わーい、浅田次郎の本がついに文庫本化!!!!そろそろ初期の作品が文庫本化されていくんですよね〜〜〜
読みたくて仕方ないのに、ハードカバーはかりで購入を躊躇していたから、嬉しい限りです。(ハードカバーは値段的な問題もあるけど、それ以上に置き場所に困るという問題があるのだ(^ ^;))
ストーリーを簡単に紹介するなら、「帝国陸軍がマッカーサーより強奪し、終戦直前にどこかに隠した、時価200兆円の財宝。それをめぐる話を、当時と現代と両方から描いていく」という感じで、タイトルとあらすじだけでは「謀略小説」か「冒険小説」のように思えるんですが、ちょっと違う、「浅田次郎」らしい小説です。…「勇気」の物語である、という感じでしょうか。
初期の話だけあって、話全体の構成のバランスが少々おかしかったりするけど、そんなの問題に全然ならないです。キャラがね、いいんですよ、本当に。血の通った、というのはこういうことを言うんだろうなあ。口の悪い乱暴な不動産会社の社長も、一見冷たそうなボラティアの福祉員も、強欲な老人も、女学生たちも、マッカーサーも、みんな、「いい」んだよなあ〜〜〜。浅田次郎の小説は、「うまい」や「すごい」というよりは、ひたすら「いい」んですよ。もう、「いい」としか言う言葉がないです。
これ、出張帰りの新幹線の中で読んでたんですが、そんな環境でもついボロボロ泣いてしまいました(^ ^;)。読んだあとに、胸の中にポッと暖かい灯がつくような、勇気がでてくる、そんな話です。
今まで不幸にも浅田次郎を読んだことがない人は、ぜひ読んでくださいね。特に「蒼穹の昴」は、ぶっとい本ですが、一気に読ませる本です。
氏が直木賞を受賞したそうで、それは本当に喜ばしいことですが、でもなんで「蒼穹の昴」の時に受賞しなかったかな〜、とつい思っちゃいます。「鉄道員(ぽっぽや)」も素敵な話だろうけど(実はまだ読んでないけど、ネットでは絶賛されてますものね。…読みたいけど、ハードカバーだから…しくしく)、やはりその作家の一番力に溢れた作品に賞をあげてほしいものです。高橋克彦のときもそう思ったけど。逢坂剛の場合は、その点は幸福でしたよね。


●「夏の葬列」山川方夫[集英社文庫](97/7/18)

夏の文庫本フェアのカタログで、この本が文庫になってるのを初めて知りました。表題作の「夏の葬列」は、高校の国語の教科書に載ってて、その当時にこの作者の本を探しても全然見つからなかったんだよね。
この本には、短編かいくつかと、中編がいくか載っています。
表題作の「夏の葬列」は、今読んでも、話の展開の仕方、描写のひとつひとつがキレイに決まっていて、読み応えのある話でした。…で、他の話は…短編はおもしろかったけど、中編は…私、「私小説」というのはどうも苦手なんですよ(^ ^;)。私が好きなのは、「物語」だから。
それにしても、このシリーズって、完全に読書感想文対策なんでしょうねぇ。巻末の解説だとか、鑑賞の手引きとかの分量が多すぎます(^ ^;)。これだけあれば、本文を読まなくても、感想文を書けそうだもんね(^ ^;)。


●「ものを食う人びと」辺見庸[角川文庫](97/7/17)

この本はタイトルと、その装丁から、「なんか説教くさそうな本だな〜」というので、読まず嫌いをしてました。特に世間的に話題になってる本だから、余計避けちゃって。
ある雑誌で、この本の紹介文を読んで、この作者が、芥川賞を受賞した「自動起床装置」の作者であることと、この本の内容を知って、買うことにしました。「自動起床装置」は、全体の話は忘れちゃったけど、なんか細かいところが妙に印象に残っていた話だったから。
「食べること」と「生きること」がストレートにイコールで結ばれている世界、たとえば飢餓のソマリア、残留日本兵による食人事件が起こったミンダナオ島、まだ操業を続けているチェルノブイリの(事故を起こした四号機以外の)原子力発電所の社員食堂…そういう場所に出かけていって、同じ食を体験していた作者の渾身のルポルタージュです。声高に叫ぶのではなく、淡々と描いているだげに、余計事実が突き刺さります。この圧倒的な現実の前では、言葉を失ってしまいました。そして、私のような人間でも、なんだか頭の中がグルグルとしちゃって、色々考えたな…
考えたことを行動に移すだけの勇気も行動力もないけれども、どんなことでも知らないよりは知っていた方が、なにも考えないよりは一度でも考えた方が、少しはマシなんだと…そう思うけど、どうかなあ。


●「三月は深き紅の淵を」恩田陸[講談社](97/7/16)

本を読む場所で一番好きなのは、新幹線の中だったりします。家だと、パソコン通信だ、テレビだ、ゲームだとなにかと他にも娯楽があるし、電話がかかってきたら読書が中断しちゃうしね。だから、私の読書はもっぱら電車での移動の時だけど、特に出張の時の新幹線の中では、時間がまとまってとれるし、集中して読めるし、なにより新幹線は揺れが少ないから読んでて疲れないし、そして…本に夢中になって、ふと気がついたら、全く知らない場所についてて、まわりの人もまばらになっていて…そういう瞬間に、本を読んでいたら、その「物語」に、別のところに連れさられてしまったような、そういう気分が味わえるのが好きなんです。
前置きが長くなりましたが(^ ^;)、この本は福岡への出張の新幹線の中で読みました。この本を一気に読めただけでも、あの出張は、私にとってはバカンスのような気持ちになれました。本当に素敵な本です。
−−「三月は深き紅の淵を」という本は、作者不明、本の少しの部数しか刷られず、そのわずかに配布された本も、「たったひとりにだけ、たった一晩しか貸してはいけない」という約束があるために、幻の本となってしまっていた。その、幻のような本に関する、4つの短編集です。
帯に、「かつて一度でも、むさぼるように本を読む幸せを味わったことのある人に。」と書いてますが、本当にそのとおり。「物語」を愛する人に、ぜひ読んでもらいたいな。
物語と現実が溶け合うような、メタミステリとファンタジーの中間のような、不思議な色合いの話です。作中の本『三月は〜』と、実際のこの本の話と微妙にシンクロしているところの、その差違がなんかいいなあ…。
この本を読んでて、「清流院流水も、『19ボックス』でこういうことをやりたかったのかなあ…』とふと思ったら、あの話もなんだかかわいらしく思えてしまいました。
物語と現実の溶融を願うのは、物語を愛するからこそなんだろうし。
話を戻して、「三月は〜」は第一章のあの4人の老人のやりとりも楽しいし、第二章の移り変わりゆく風景の描写もよかったし(列車の中で読んでたから、シンクロ率が高かったし)、でも短編のデキとしては、第三章が一番かなあ。第四章は、作中の学園モノの妖しい雰囲気がすごく好きです。これだけで本を書いてくれてもよかったのに〜。
とにかく、物語を愛する方、ぜひぜひ読んでくださいませ。


●「スレイヤーズでりしゃす2 呪術士の森」神坂一[角川mini文庫](97/7/10)

角川ミニ文庫で、あの「スレヤーズ」の番外編が出てました。
この字詰めの荒さをみると、「これで200円…」って悲しくなるけど(角川っていい商売してるよな〜)、買っちゃいました(^ ^;)。いいか、おもしろかったし。「スレイヤーズ」は本編よりも番外編の方が単純に楽しめるので好きだし。ストレス溜まってたり、なにもかもがおもしろくない時に、番外編の「スレイヤーズスペシャル」はとにかくオススメですよん(*^ ^*)。私、前に風邪で寝込んだ時に、二日で本編と番外編全部一気読みしてしまいました(^ ^;)。
今回の話は、ミステリーなようで、そうじゃない話です。


●「不安の立像 新・霊感探偵倶楽部」新田一実[講談社ホワイトハート](97/7/9)

霊感探偵倶楽部の最新巻。知らない方のために説明しますと、これまた「ゴーストバスターズ」もので、美形二人のコンビで、ちょっとボーイズ・ラブが入ってます。
で、このシリーズの場合は、主人公たちが古代の神様にとりつかれてます。その神様がパワーをくれるんです。(…ちょっと違うかも(^ ^;))
このシリーズ、「新」になってからあんまりおもしろくなくなっていたけど、今回はまあまあかな(*^ ^*)。
−−−大道寺家に持ちこまれた、花嫁行列の芥子人形。その人形は一体何を訴えているのか…
今回は大輔と竜憲が久しぶりに、いい感じになりましたね〜。このふたりのじれったい関係も、少しは前進するんでしょうか?


●「人買奇談」椹野道流[講談社ホワイトハート](97/7/8)

第3回ホワイトハート大賞「エンターティメント小説部門」佳作受賞作。
ホワイトハートの黄金パターン(???)の、「ゴーストバスターもの」「美形と美少年のコンビ」「ちょっとボーイズ・ラブが入ってる」の3要素をすべて兼ね備えています。
そういう道具仕立てはありがちだけど、細かい部分の作りとか、キャラはなかなかうまく、結構読ませます。
ちなみに美形の方は本業は小説家、裏稼業が霊障を扱う「組織」に属する追儺師(ついなし)。美少年は、人間と植物の精霊のハーフです。
このパターンの好きな人はどうぞ。


●「龍が吼える日 香港超常現象捜査官」星野ケイ[講談社ホワイトハート](97/7/7)

突然のシリーズ最終章(T T;)。なんで〜〜〜!!って思ったら、香港の返還にあわせて一度物語を終わらせるってことだけど…気に入ってたシリーズだけに残念だなあ。
−−−これは、サブタイトルからもなんとなくわかると思うけど、香港を舞台に、超常現象を捜査する反鬼組の面々の活躍を描いたもの。主人公のラルフは龍の血を引く末裔。弱く、人の痛みがわかる優しさゆえに強いラルフが、様子がおかしくなってきた。死んだはずの親友のローリーとの再開を気に、ラルフの龍の力が暴走しはじめる…
中盤の新堂のラブラブパワー(いや、違うって(^ ^;)>>自分)炸裂!!はすごかったですね〜。
…でも、いやあ、まさかこうなるとは(T T;)。とにかく、はやく番外編書いてください、としかいえないです。


●「まどろみ消去」森博嗣[講談社ノベルズ](97/7/4)

森さんの新刊は、短編集。どんなのになるかなあ、って思ったら、いかにも森さんだなあ、って感じの短編集でした(意味不明(^ ^;))。
話としては、…ミステリ要素のある話が半分ほど。あとの半分は、なんだかよくわからない話(^ ^;)。話そのものは…エンターティメントという意味では、正直言ってあんまりおもしろくないんですよね。森さん独自の雰囲気っていうのが味わえるから、好きな人にはそれだけで楽しいんだけどね。「犀川先生」シリーズの番外編要素の強い、「誰もいなくなった」はバカバカしい話で、楽しかったです。(あ、ホメ言葉だよ(^ ^;))
あと、最後の話が印象的だったなあ。


●「複製症候群」西澤保彦[講談社ノベルズ](97/7/4)

あの、西澤保彦の新刊です。
知らない方のために説明すると、この人の本は「新しいルールを作ったゲームとしてのミステリ」なんです。アルコールを飲むとテレポートしちゃうとか、あるグループの中で突然人格が入れ替わるだとか、同じ日を7日繰り返すとか…そういう、SF的なルールを作った上で、その範囲内で事件が起こるわけですね。
「今回はそういうルールなんだ」と納得して、そのルールの中でのゲームを楽しめる人には、たまらない作品ばかりです。
で、今回は、コピー人間モノ。突然、空から虹色の壁が降ってきて、そこに閉じ込められた高校生たち。その壁に触ると、見た目だけではなく、記憶まで全く同じ、「コピー人間」ができてしまう。
極限状態の中、殺人事件が起こって…という内容。
今回は、ミステリの要素はあんまり大きなウェイトを占めてないんですよね。
でも、この設定と、ストーリー展開で、一気に読ませます。いつになく、重いテーマになっちゃいましたね、今回は。
おもしろかったけど、でも個人的なベスト作品は、「人格転移の殺人」なんだよね。こういうもうちょっと軽いノリの方が好きなの。


●「19ボックス 新みすてり創世記」清涼院流水[講談社ノベルズ](97/7/3)

悪名高い(?)清涼院流水の3冊目。今回は薄い本です。なんと、380ページちょっとしか(笑)ないんですよ〜。
今回の趣向としては、4つの中編があって、その読む順よって、話の印象が変わるというもの。
今回もまた、言葉あそびがあちこちにちりばめられた、メタな話でした。
で、今回の感想は…1つ目の単編が、結構普通のホラーで、けっこう面白かったら驚きました(^ ^;)。
でもその後の話は、いかにも清涼院らしい、「おいおい…」な話でありました。
私はリクエストCの順に読みましたが(別に大ファンだからじゃなくて、適当に読んだらそうだったのだ(^ ^;))、結局この話って「切腹」を読んでしまえば、全体の流れがわかるから、読んだ順でそれほど話の印象とか変わるものかなあ…って思ったけど。
今更、「Aという話では、Bの話のことはフィクションとして扱われてて、Bという話ではAはフィクションの話としてでてくる」というのは、…正直いって、飽きちゃったからなあ(^ ^;)。最初に竹本健司を読んだ頃は、強烈な酩酊感を味わったものだけど。
私はこの作者の稚気ってキライじゃないけど、「変な話がとことん好き!!」という人以外にはオススメできないです(^ ^;)。


●「六人の兇王子 サーリフの宴」荻野目悠樹[集英社コバルト文庫](97/7/3)

−−−邪悪な秘密結社「家」の元でこの世ならざる魔の力を持つ「兇王子」として育てられたギヴァ。彼は人間としての心を保つために、「家」を裏切り逃走する。その彼に、同じ兇王子の追手がかかる……
「六人の兇王子」シリーズ第二弾。いやあ、いいっす!!いいですよー、これはっ!!
前のときははっきり見えなかった世界や、「家」の本当の野望の片鱗、そして他の兇王子たち、そういうものが今回はくっきりとわかるんですよ〜。
特に前回はよくわからなかった、兇王子たちのそれぞれの個性がわかりだしましたしね。ああ、はやく全員でてこないかな(*^ ^*)。(一度にでてきたら、ギヴァ大変ね(^ ^;))
今回はなんといってもサーリフに尽きます。この人は「快楽の宗主」で、「力」でどんな女性でも虜にして、ただの牝(爆)にしちゃうんだな(^ ^;)。だから、今回はなかなかえっちな場面が多いし〜。
女性はだれでも彼の力でモノにできるせいか、実はモーホー(爆)で、ギヴァを手に入れたいと思ってるんだな(^ ^;)。まさか、この作者でこういう展開になろうとは…でも楽しかったですけど(笑)。
サーリフの鬼畜ぶりと、ギヴァの不幸の連続にドキドキしました〜。
でも、こんなところで話が終わっちゃうなんて、作者の方が鬼畜だわ(^ ^;)。早く続きを書いてくださいね〜。
とにかく、オススメ!!です。でもこれは一冊目の「六人の兇王子 ヴァイサルの血」から読んでくださいね。
ちなみに作者のホームページは、「荻野目悠樹」横浜西口店です。あとがきのノーカット版もあるよ。


●「視線」茅野泉[集英社コバルト文庫](97/7/2)

−−−瞳は地方都市のありふれた公立中学に通う中学3年生。転任してきた音楽担当の担任・吉村正道に目をつけられ、いびられるようになるが……
あらすじを読んで、陰惨な話かと思いましたが、主人公がへこたれずに教師と闘っていける強い子だから、そうならなくてよかった。
学校っていうのはどうしても狭い世界だし、特に義務教育の頃は、…密室だったなあ、って思う。
子供にとっては、学校と家以外の世界ってないからね。せいぜい塾あたり?
特に学校からは…逃げ出せる場所ってないから。
中学の頃、今から思うと、なんであんな理不尽な扱いをうけてたんだろう、って思うことがあるもの。
お昼は自分の席でお弁当を食べなきゃダメで、友達と食べていたのを見つかって、怒られたりね(^ ^;)。…細かいことを上げだしたらキリがないけど、今でもそんな感じなんだろうか?
なんだか、そういうことを思い出しながら読んでました。


●「黒い家」貴志裕介[角川書店](97/7/1)

第4回日本ホラー大賞受賞作。この賞はハズレがないし、選考委員が誉めてる言葉を読んで、買ってみました。
−−−若槻慎二は、保険会社の保全(支払い査定など)を担当する社員である。客に呼ばれて、「黒い家」を訪れてから、おそろしいできごとに関わることに…
サイコパスもの。怖いです。描写がうまくて、リアリティがあるから、主人公が味わう恐怖がこっちにもひしひしと伝わってきます。一気読みさせるパワーがあります。
ただ…残念といえば、この本が発表された時期かなあ。もう少し早かったらね。あと2か月ほど…
この犯人はたしかに怖いけど、現実に起こっている事件の方がもっと怖いなんてね……悲しいことですが。
なんだか、神戸の事件を思い出しながら、読んでしまいました。


●「僕たちの愛言葉」あさぎり夕[小学館パレット文庫](97/7/1)

ボーイズ・ラブものです。「泉&由鷹シリーズ」の17冊目。
…いやあ、あいかわらず泉くん、すごいです(^ ^;)。看護婦さんはともかく…温室のアレ、あれにはさすがにビビりましたわ(爆)。
本編はだーっと読んじゃって、つい考えこんじゃったのがあとがき。
同人誌を作っている人が、作者公認と偽称したりするようなことが頻発してるそうです。
中には、オフィシャルで作成したCDドラマと同じ声優さんを使って、パロディのCDドラマを作成したサークルがあるとか……
プロの声優を使ってこんなことができるなんて金があるのね…じゃなくて、これってさすがに「趣味の同人誌作り」の範囲を超えてるよ(^ ^;)。
こんな最低限のモラルもないような人もいるんだよね…
最近、同人誌関係でもモラルが欠如している人の話を聞くことがありますが、関わる人数が増えて、参加者の低年齢化が進むと、そういう事態はどのような分野であっても起こり得る問題ではあるんですけど…
インターネットも、いずれそういうことになるんだろうなあ…
今も、そういう傾向は始まりつつあるけどね(^ ^;)。

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