8月に読んだ本。

●「ターン」北村薫[新潮社](97/8/29)

「スキップ」に続く、【時と人】の3部作の真ん中の話。
真希は、交通事故を起こした翌日から、気が付くと「誰もいない」世界に閉じ込められたことに気づく。
そこは、人間どころか、動物も、虫もいない世界だった。その世界はある夏から時間がとまり、毎日3時15分になると一日が元に戻り、毎日同じ日ばかりが続く世界だった…
とてもきれいな「恋愛小説」でした。文章、世界の描き方が本当にキレイで、前向きなキャラクターがとてもいいんだけど……。
これ、北村薫の本でさえなければ、絶賛していたと思います。買ったその日に一気読みしちゃったし。
でも、前の「スキップ」には本当に感動して、途中から涙が止まらなかったんですよ。そういうものを最初から期待しちゃったからなあ…
全体バランスが、いや最後の部分がちょっと駆け足すぎたかなあ、って気がするんですよ。
そこでもうちょっと描きこんでほしかった。
【時と人】三部作の最後の作品「リセット」が近刊予定だそうで、楽しみです。


●「仔羊たちの聖夜(イブ)」西澤保彦[角川書店](97/8/28)

タックとタカチのシリーズです。ふたり(+ポワン先輩)の出会いの話も載っています。
今回の謎は、「イブの日の近くに、あるマンションから“プレゼント”を手に自殺をはかった人が、いた。彼女の自殺の動機はわからなかったらしい。その5年前にも、同じように自殺をはかった少年が…」という感じです。
このシリーズは、どちらかといえば突飛な謎をあれこれ「机上の推理」をするものですが、今回の謎は、それほど突飛ではなく、それよりは、世界とちょっと「ズレ」たような違和感というか、そういうのを感じさせる、ちょうどいい感じです。またその推理にのめりこんで行くのも、今までの話は「探偵ごっこ」がちょっと鼻についたのですが、今回のはそうせざるをえない理由も納得がいきました。
なんといっても、タカチがいいですよね〜。いつもの、クールな美女の表面が一皮向けたような感じで。
そして、その事件の真相の重さ。最後に見えてくる、この話のテーマの重さ。この作者の話って、最初の頃の作品はとにかく「ゲーム」に近い軽さがあったのが、こういう方向に近づいていくものなんですね。
この話は、なかなかオススメです。


●「龍は炎帝を追う」真堂樹[集英社コバルト文庫](97/8/26)

四龍島シリーズ第五弾。ある意味、前回の話の続きです。で、今までは振り回されて、追いかけるだけだった飛が、「追わせる」んですよね〜。
あでやかな女装姿もあり。
シーンとしては短かったけど、千雲と天狼のシーンがお気に入り。


●「龍は雲にひそむ」真堂樹[集英社コバルト文庫](97/8/25)

ずいぶん間があいたなあ(^ ^;)。この間は、京都のコンサートのおかげで、ただの壊れた人になってたからなあ(^ ^;)。本どころじゃなかったもの。
四龍島シリーズ第四弾。今回は船主との確執、幽鬼騒動の話。なんといっても、今回は千雲ですねっ!!前の話では、出てきても影が薄かったけど、今回は「にっこり笑って悪事を企む」のよー、素敵(*^ ^*)。屋本当に優しげな顔をした線の細い美形なのに、策士だし。
千雲と天狼のやりとりが、なんだか妙にやらしくて素敵です〜。…この二人がこのシリーズでは一番好きかも、私(^ ^;)。メインのお二人さんは、マクシミリアンのらぶらぶパワー(笑)が全開で、飛が…いやあ、かわいそうに、本当に(^ ^;)。惚れた相手(?)が悪かったですよね、ほんと…挿し絵が色っぽくて素敵です。


●「龍は誘う」真堂樹[集英社コバルト文庫](97/8/18)

四龍島シリーズ第三弾。今回は温泉を舞台にした(と書くと何かが違うかも(^ ^;))陰謀、そして恋の話。でも、メインの話はおいといて、なんといってもネチネチ度を増したマクシミリアンに尽きます(笑)。自分の命さえあやうい状況の中でも、飛を試すことばかりしてるんだからなあ〜(^ ^;)。
マクシミリアンの鬼畜度が少しずつあがっていって、なかなかいい感じです。
青龍からきた刺客・天狼。ふふふ、いいですねー、こういう美形で冷酷な悪役って(*^ ^*)。
初登場の千雲といい、キャラが揃ってきたなあ、って感じでした。


●「龍は花を喰らう」真堂樹[集英社コバルト文庫](97/8/16)

四龍島シリーズ第二弾。飛の知り合いが、麻薬中毒で死亡した。その毒性の強い麻薬が、青龍市から入ってきたと突き止めたマクシミリアンと飛は、青龍市に乗り込むが…
今回の話は、青龍市を舞台にした陰謀(?)話。ただ、話の展開の予想が容易についちゃうんですよ(^ ^;)。そういうのは、ちょっと楽しめなかったなあ(^ ^;)。
ラストはそこはかとなくえっちでよかったです(笑)。


●「龍は微睡む」真堂樹[集英社コバルト文庫](97/8/12)

実家に帰っていて、帰るときの電車で、読む本が切れちゃったので(^ ^;)、買ってみました。前から店頭では気になっていたシリーズだったし。
四龍島は、「龍(ロン)」と呼ばれる4人の主に統治された島である。そこに新しい「白龍」のマクシミリアンがやってきたが、彼は妾腹の生れで、ハーフであるために白眼視されていた。白龍市の歓楽街「花路」の頭の飛(フェイ)は、彼がうつけを演じていたことを見抜き…

香港のような島を舞台にした、「チャイナ・カンフーアクション」です。
とにかく、銀髪(長髪)のクールな美形と、激しい男の子という組合わせがいいですねぇ。
その二人の、友情でもなく、恋愛でもない、熱く激しい絆が描かれるわけです。…この巻ではその序章に当たる部分ですが。
私自身は、そのものずばりなボーズ・ラブものよりも、憎しみに限りなく近い、男同士の友情というものが好みでして、この話も結構性に合いますね(*^ ^*)。
このふたりの関係も、某FF7のマザコンとそのお人形さん(爆)を彷彿させますし〜〜。
(もちろん、この小説の方が、作成年代も古いですが)
個人的には、もうちょっと憎悪が深く、鬼畜であればもっとよかったんですが(爆)。
とにかく、この一巻は、まだ序章という感じで、ストーリーは大きく動かないです。
ハマリというほどにはいきませんでしたが、なかなか気に入りました。
…で、本屋でチェックをしてみると、このあと、少々怪しげな方向(笑)にいきそうで(^ ^;)。
表紙からして……楽しみなような、怖いような(^ ^;)。


●「暗夜鬼譚〜五月雨幻燈」瀬川貴次[集英社スーパーファンタジー文庫](97/8/12)

シリーズ第六弾。今回は番外編の要素が強いです。コメディですね、今回は完全に。
賀茂の権博士のボケぶりがなかなかいいです(笑)。


●「暗夜鬼譚〜紫花玉響 上/下」瀬川貴次[集英社スーパーファンタジー文庫](97/8/12)

シリーズ第五弾。帝の夜歩きに付き合わされる夏樹。ある夜、藤の花がみごとな家に招かれ、帝はそこの姫・藤香と恋に落ちる。しかし、次の日、その家は見付からなくなってしまった…
この話は、なかなかよかったです。話の展開に緊迫感があったし。
シリーズで一番おもしろかったんじゃないかと思いました。


●「暗夜鬼譚〜血染雪乱」瀬川貴次[集英社スーパーファンタジー文庫](97/8/12)

シリーズ第四弾。都に血を吸う、美しい鬼が出てきた。しかも、賀茂の権博士そっくりな姿をしていて…
今回は、深雪が大活躍の話です。初登場の真角も、健気でなかなかいい味出してますし。
あおえちゃんの女装もあるし(笑)。


●「暗夜鬼譚〜夜叉姫恋変化 上/下」瀬川貴次[集英社スーパーファンタジー文庫](97/8/12)

シリーズ第三弾。夏樹は美しい姫君・常陸の宮に会い、心を惹かれる。その頃、宮中では人間が虫に変化したような物の怪騒ぎが相次ぐ…
メインは、夏樹の哀しい恋物語です。前半は緊迫したムードがあったんですが、後半、あおえちゃんが出てくると………楽しいですけど(笑)。
それにしても、結局、滝夜叉姫って、綾姫が○○したわけじゃなくて、×××なんですよね。
あおえちゃんの言葉から見当がつきますけど、でもちゃんと文中で説明しなくてもいいのかなあ…普通の本であればそれでいいけど、でもライトノベルズだから…


●「暗夜鬼譚〜遊行天女」瀬川貴次[集英社スーパーファンタジー文庫](97/8/11)

シリーズ第二弾。異常な暑さが続き、陰陽師と密教僧との雨乞い合戦が行われることになった。その雨乞いの時に、黒い物の怪が現れ…
今回はなんといっても、あおえちゃんの女装(爆)でしょうか(^ ^;)。
彼がでてくれば、なにがあってもコメディになっちゃうのね、このシリーズって(笑)。


●「暗夜鬼譚〜春宵白梅花」瀬川貴次[集英社スーパーファンタジー文庫](97/8/10)

友達がお気に入りのシリーズで、ずっと気になってたんだけど、古本屋でまとめて出てたのをきっかけに、読むことにしました。
時は平安、魑魅魍魎が跋扈する時代。元服したばかりの近衛府につとめる夏樹は、絶世の美少年・一条に会う。彼は陰陽寮の学生だった…という風に、陰陽師系統の悪霊退治モノです。
結構、会話とか、コミカルでおもしろいです(*^ ^*)。
前からウワサ(?)に聞いていた、「あおえ」ちゃん、噂どおりに情けなくてキュートでよかったです。
あと、一条というのは、「あのお方」なんだそうです(*^ ^*)。私、ファンなんですよ、あのお方。あのお方のファンの方はぜひどうぞ。


●「グイン・サーガ57 ヤーンの星の下に」栗本薫[ハヤカワ文庫](97/8/9)

すばやいですね〜〜。この前外伝がでたばかりかと思ったら、もう最新刊がでました。今回も引き続き、イシュト中心の話です。今回はなんといっても、イラストが天野喜孝さんから末弥純さんにかわったということでしょう。…前の外伝から変わってましたが、本編の方もかわると、また感慨深いですね。
今回の表紙はイシュト。…末弥さんもとてもうまい方なんですが、ちょっとこのイシュトは…なんだかさわやかなんですよ(^ ^;)。やっぱりイシュトだったらもっと目に狂気がほしいとか、嵐を感じさせてほしいなあ…今回のイシュトはとてもゴキゲンだから、こういう穏やかな顔をしている…のかもしれないけど。
それにしてもイシュトくん、もっとはやくにリンダのこと思い出さんかい(笑)…って感じです(^ ^;)。かつて愛した少女より、ナリス様の方が大切なのね、イシュトくんったら(^ ^;)。


●「狐罠」北森鴻[講談社](97/8/7)

前から評判を聞いて気になってたんだけど、ハードカバーだからずっと躊躇してたんですけど、思い切って買いました。買ってよかったです。2〜3日かけて読む予定が、一気読みしちゃいました。
私の好きなジャンルのひとつが「コン・ゲーム」をテーマにしたもの。しかも、美術品の贋作モノなんて、目がないんですよ〜(*^ ^*)。
それにしてもこの話はすごい。30過ぎの骨董屋の女性が、ある男にニセモノをつかまされた。彼女は復讐のために、贋作を作り、罠に落とそうとするが…という話です。
とにかく、骨董の世界の描写がみごとです。贋作に関するノウハウの話もおもしろかったです。それにしても、あの贋作師のすさまじいこと。そこまで、命をかけてまで作るとは…圧倒されちゃいました。
ただ、通常の殺人事件を絶対に絡めなければならなかったか?という気はちょっとしちゃったけど。


●「茶色い部屋の謎」清水義範[光文社文庫](97/8/6)

ミステリーを中心に集めた短編集。表題作はタイトルからも想像がつくとおり、「名探偵もの」のパロディになっています。いやあ、笑いました(*^ ^*)。でも、「隅野老人」だけ元ネタがわかんないんです(^ ^;)。誰が教えてくださいませ。
幽霊探偵もおもしろし、「やっとかめ探偵団」の番外編も入っているし、おもしろく読めました。
あと、「バイライフ」、「あ、そうだったのね(笑)」と信じたくなってしまうよなあ(笑)。だって、清水義範の作品量って多いですもの(^ ^;)。


●「螺旋(スパイラル)」山田正紀[幻冬舎ノベルズ](97/8/6)

帯の文句の「全長6.5キロの密室から死体が焼失!!」だとかを読むと、なんだか「ちょー」なミステリの匂いがしますが、実は結構まっとうなミステリです。
ただ、体にねばっこく絡み付くような、そういう雰囲気の。
全編「旧約聖書」と「螺旋」をモチーフにした、読みごたえのあるミステリです。前作の「妖鳥(ハルピュイア)」は「女は天使か悪魔か?」がテーマであれば、今回のテーマは「人間は善か悪か?」。思い込みのせいで、人の見る目というのはどれだけくもってしまうものなのか。
…ただ。ちょっと長く感じました。たかだか500ページ、講談社ノベルズの「弁当箱」シリーズをこよなく愛する私としては、この程度の長さなんて全然苦にならないはずなんだけど…「第一の殺人」が起こるまでが、なんだか長く感じられちゃいました。


●「夢の宮〜神が棲む処〜」今野緒雪[集英社コバルト文庫](97/8/3)

「夢の宮」シリーズ最新刊。今回は、不幸続きのせいで、ロアン国の王となってしまった、宮廷画家を目指していた、第4王子の話。
今回は…うむむ。甘い話です。いきなり王になるというのは、得られるものよりも犠牲が大きいというのはわかるけど、そのあたりの葛藤が弱いなあ、と。芸術論についても、ちょっと甘いかなあ、って感じがする。まあ、コバルトだから…といわれたら、そうだけどね。
ちょっと今回は感情移入ができなかった。


●「地下鉄(メトロ)に乗って」浅田次郎[徳間文庫](97/8/1)

生活にくたびれた中年サラリーマンが、地下鉄に乗ってタイムスリップする…大人のファンタジーです。
終戦前後の日本の様子の描写の巧さ、キャラ造詣の巧みさ…さすが浅田次郎です〜。
最後とか、ちょっとうるうるきちゃった(T T;)。


●「キスが届かない」和泉桂[講談社ホワイトハート](97/8/1)

−−−若手の証券アナリスト吉野貴弘は、モデルに間違えられるような美貌の持ち主。彼は偶然入ったビストロで、自分の求めていた味に出会う。優しい味の料理を作るシェフは、それとは裏腹に冷たい印象の青年だった…
これまたボーイズラブ(というにはちょっと年齢がいってるが(^ ^;))モノです。
でてくる人が皆美形とか、若くてあれだけ成功してるとか、まあそういうのは恋愛モノとしてのファンタジーだし、お約束ってことで(^ ^;)。
今回の話はね…なんといっても、「バンビを思わせるような、人当たりのいい、笑顔のかわいい、童顔の少年(でも22才)」の「如月睦」くん。…私には、彼が山本淳一くんにしか見えませんでした(爆)。
イラストでも似てたし(^ ^;)。(淳くんはあそこまで単純なお人好しではないけどね(^ ^;))
いやもう、睦くんってばかわいいったら(*^ ^*)。


●「百万回のI LOVE YOU」青海圭[講談社ホワイトハート](97/8/1)

「水色のプレリュード」の続編。学園モノ+バンドモノ+ボーイズラブがちょっと入っているシリーズです。
それにしても……禄一郎と飛鳥の恋愛関係が、中学生のようで(ふたりは高校生の設定だが(^ ^;))、なんだか気恥ずかしかったですよ(^ ^;)。
甘々の話って、どうも苦手なんだな(^ ^;)。
音楽関係の話とか、友情とかさわやかな青春ドラマとして楽しめました。

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