妹
君の後ろに女性が立っていた。 金色の柔らかそうな髪の毛が風に揺れている。君と同じ色の瞳は、まっすぐ前を向いていた。 「うん。妹のセラフだよ」 君が答える。 同じなまえ 君の妹のセラフは、動かない。紹介されたのに、何も聞こえなかったように。何も見えなかったように。 意識がないの? 「小さい頃からずっとこうなんだ」 君が説明する。 君の澄んだ瞳が曇るのは、妹のことを話すときだけ。 「妹は小さい頃、まだ飛べないのに高いところから飛ぼうとして、失敗して落ちて。それから意識がないんだ」 僕は君の案内で、君と君の妹が住んでいるという家に向かった。 崖から上へ上がる道の中ほどのところにそれはあって、とても小さいと思った。 君の妹のセラフは、何も喋らず、ただ君の後を付いて歩いていた。 君は妹を隣の部屋に連れて行って、それからひとりで戻ってきた。 妹さんは? 「隣の部屋で寝てるよ。一日中ほとんど寝てるんだ。たまに起きても、あんな感じだし」 申し訳なさそうに、悲しそうに、君が笑った。 「ごはん一緒に食べよう。いつもひとりで、さびしかったんだ」 君が言う。 僕は断る理由がなかった。 |
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