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ハイランド アンティーク

「オルゴール購入のためのヒント」

オルゴールを購入したいが、どの機種を目標にすれば良いか、また予算はどれくらいを考えれば良いのか、迷っていらっしゃる方が多くいらっしゃいます。そういう方たちへの参考になればと、ガイドラインを作ってみました。

オルゴールに魅力を感じられる方々も、どの要素に心を惹かれたのかは、まったく様々で、ある方は純粋にその音色に、別の方は、その精密なメカニズムに、またある方は調度品的外観に、あるいは単に骨董的、歴史的、財産的価値に主な関心を持っているかも知れません。多くの方は、おそらく、それら複数の要素の組み合わせだと思います。

オルゴールの種類:

自分が興味を持っているのはシリンダー型か、ディスク型か? まず第一に、自分にたずねなくてはなりません。自分の心を動かしたあのメロディーと音色は、繊細なシリンダー型のものか、豊かな音量を誇るディスク型のものか、まず確かめなくてはなりません。機種が同じでもサイズが違うと、音楽の豊かさはまったく変わってきます。各種のサンプル音色を聞いてみて下さい。

オルゴールの価格:

全ての商品に当てはまることですが、古物、中古品の価格の設定は最も難しい課題です。中古車市場のように数多く扱われていますとおのずから相場価格や、査定の方法も標準化してきますが、オルゴールは扱われる数も少ないですし、原産地が国外、仕入先、運搬方法、為替変動、扱う業者にも、お客さんの方にも知識が不足している、等々、不確定要素は限りありません。さらに、そのものの「程度」、「修理経歴」、「由来」、「希少さ」、「人気度」など多くの要素が絡んできます。

とは言うものの、欧米ではある程度の幅の中に収まっていますし、ここ10年あまり、国内にもかなりの数が入ってきていますし、業者もお客様も、知識が豊富になってきていますし、価格的にも、以前より平均化して、かつ、買いやすい価格になってきました。とても良い傾向だと思います。それでもまだ欧米でも、まったく同じ機種の価格に2倍以上の差がついているのも事実です。(それなりの理由はあるにしろ)

ここでは、あえて、私が扱う極平均的なものの参考価格を示してみたいと思います。買う方にとっては、ある程度の指針がないと、高い買い物なのか、安い買い物なのか不安でたまりません。

ここでいう「平均的」なものとは:

 1.主要部分はすべてオリジナル、ただし部分的な修理、消耗部品を交換してあるものは容認する。

 2.交換されている部品は、オリジナルの素材と仕様に則って製作されている。

 3.今後10年間以上は(部分的な修理や調整は必要かもしれないが)オーバーホールなしで機能するものとして整備されている。

 4.特にプレミアムが付くような「由来」はない。

 5.多分これまでに3〜4人のオーナーの手をわたっている。

(例−1)例えば、縦型コインオペレートのディスクオルゴールなら、ひとつのありそうなシナリオとして:

  (1)1890年頃、メーカーからレストランやパブなどに営業用として販売され、30〜40年間その店でジュークボックスとして実際に稼働していた。

  (2)1930年頃、店の改装のため、よりポピュラーになってきた蓄音機に交換した。そのとき改装業者の知り合いの古物商、または蓄音機を納めた業者に下取り品として引き取られ、「中古品」として売りに出される。

  (3) 1935年頃、音楽の好きなマニアが見つけて、自宅に持ち込む。

  (4) 1980年頃、その子の代になって家を改装なり引っ越しすることになって家財品を処分するとき、エステートセールを行ない、業者に引き取ってもらう。

  (5)エステート業者はすぐにオークションに出し、オルゴール愛好家または専門ディーラーに落とされた。ここで最小限必要な修理、整備を行なう。

  (6)1998年頃、その愛好家、または専門ディーラーから売りに出されて、ハイランドアンティークの手に渡る。ここで完全な修理、修復を行ない、オリジナルの機能を回復させる。

  (7)そして今、あなたの手に渡されようとしている。

(例−2) テーブルモデル(卓上型)の場合は、もっとシンプルな例が多い:

  (1)1900年頃、ドイツのメーカーから、アメリカの販売代理店を介して、ある中流家庭に販売される。居間の片隅に置かれて、家族や多くの友人達に喜ばれた。特に毎年のクリスマスパーティーは、親戚一同が集まって「Silent Night, Holly Night」を繰り返し繰り返し演奏した。

  (2)1950年頃、先代も亡くなって、子供の代になり、しばらくは大事にしていたが、同じ曲はもう聞き飽きたし、新しいディスクを買いたいと思ってももう製作販売して無いらしい。大型ラジオを置いたので部屋の中が少々狭くなったので、しばらくガレージの隅にしまって置くことにした。

  (3)1990年頃、孫の代になって、車をもう一台買ったのでガレージを拡張することになり、しまってたものを片付けているうちに、下積みになって眠っていたオルゴールが出てきて、特に興味もないので、いつか新聞で見たことのある買い取り専門業者に引き取ってもらった。

  (4)買い取り専門業者は、オルゴール専門家に多少でも高く売るため、そのままの状態でオークションにかける。

  (5)オークションで落としたオルゴール専門の業者(兼、愛好家)は最小限の整備をして、しばらくは自分の手元に置いて自分も楽しみながら、必要になれば売りに出すことにする。

  (6)1999年、ハイランドアンティークの手に渡る。ここで完全に整備、修理して、販売品のリストに載る。

  (7) そして今、あなたの手に渡る日を待っている。

想像は限りなくふくらみますが、さて本題に戻って:

いくつかの種類を例にとって、その機種の特徴と、価格の一例を書いてみます。

 1.<4インチ(10cm)クラス:音も編曲もシンプルで、最も小型のシリンダーオルゴールと同程度、しかし小さいながらディスクオルゴールの仲間で、ディスクさえ取り替えれば、どんな曲でも演奏できる。木ケースの作りで価格が左右される場合が多い。ディスクは通常5〜10枚付きで 8〜12万円。(体験クラス)

 2.7〜8インチ(20.5cm)クラス:当時のターゲットは初心者向け、女性向けといった感じ。高級玩具の域。サイズの割りには良い豊かな音が響く。飾りの絵もかわいらしいものが多い。30〜40万円。(入門クラス)

 3.9〜10インチ(25cm)クラス:玩具の域を越えて、自動演奏楽器の部類に一歩近づき、飾りの絵もクラシックで格調高いものになってくる。音の響きはより豊かになるが、まだ演奏時間が不十分で、曲の旋律を部分的にカットしたものが多い。40〜50万円。(初級クラス)

 4.11〜12インチ(30cm)クラス:自動演奏楽器として十分聞き応えのある演奏時間と音量。ケースも本格的な作りになってくる。このクラス位から櫛歯をダブルにして、音量をさらに上げたり、音響効果をより豊かにしたものが出始める。シングルコーム:60〜80万、ダブルコーム:80万〜100万 (中級クラス)

 5.14〜16インチ(40cm)クラス:自動演奏楽器そのもの、一部コインオペレートで営業用にも使われた。演奏時間約1分は殆どのメロディーを組み込むには十分で、本格的にオルゴールそ楽しむ標準クラスと言える。実際のところ当時も最も多く売られたもの(自家用車でいうなら2000ccクラス?)。シングルコーム:90万〜120万、ダブルコーム:150〜200万(愛好家標準クラス)

 6.18〜20インチ(50cm)クラス:テーブルモデルもあるが、このサイズあたりから縦型が主流になってくる。櫛歯はダブルコームが主流になるが、なぜか単弾式が多くなってくる。本格的な曲を演奏するには、トレモロ的に音を長く延ばす必要性が出てきたためと思われる。体裁も調度品として存在をアピールするようになる。テーブルモデル:220〜260万、縦型(下部のディスク格納台とセットで)280〜450万(上級クラス)

 7.24〜27インチ(60〜70cm)クラス:ディスクオルゴールの最上級クラス。演奏時間も2分を越え、3分近くになり十分過ぎるほど。高級レストランやホテルロビー等で営業用として使われたもの。今では博物館や、一部のマニアの手に収まるケースが多い。500〜800万(最上級クラス)

注意:

何度も申し上げますが、ここに示した参考価格は、当方のこれまでの限られた経験と、当方の持っている仕入れルートや、自分で整備をすることができるとの条件下で、かつ現在の為替レートに基づいて示したもので、何の権威もありません。以前別のディーラーから購入したものの妥当性を判断する目的などには決して使わないで下さい。また、現在手持ち以外の機種を当方で今後お世話させて頂くことになったとしてもこの価格を保証できるものでもありません。下記の要素によって、2倍、3倍の変動幅があることをご理解頂かなければいけません。

価格に影響する要素:

 1.程度:機械部分の摩耗度、櫛歯の折れがあるかどうか、歯の先端やスターホイールの摩耗具合、メッキ部分の状態、ネジ類の痛み具合、ガバナーの滑り具合、雑音の程度、木ケースの状態、割れはないか、修理した後はないか、傷はないか、塗装の状態、等々。総じてどれだけオリジナルの状態に近いかどうか。

 2.由来、経歴:中古自家用車などとも同じように、多くのオーナーの手を渡ったものよりワンオーナーのものが好ましく思われます。また、著名な人や場所の所有であったり、名の知れた博物館の所蔵品であったりするとプレミアがつきます。

 3.購入ルート:程度がほとんど同じであっても、仕入先によっても差が付きます。よく売れる町中のアンティーク屋で買えば当然強気で値を付けていますし、経費もかけていますので割高になるのは当然です。一方、田舎のオーナーから直接買えば、ずっと安く買えることは世の習いでしょう。(我々も常により安く手に入るよう、大変な努力をしています。)

 4.整備、修理の程度:当方でも行なっていますが、欧米にはもっともっと歴史の古い専門家が多数います。そこでは修理作業を生業としていますので、手間と時間を十分にかけて、彼らのスタンダードまで(場合によっては新品同様になるまで)整備をしています。その程度は修理人によってまちまちで、場合によっては必要以上と思われることさえあります。全く手をかけず、そのままの状態(AS IS)で買えば当然安くなります。

 5.売り手と買い手の需要、供給の関係:前のオーナーの売りに対する必要性と、買い手の、そのものを求める度合によって価格もずいぶん変わってきます。ある特定の機種を時間を限って入手するとなると、仕方なく高い買い物をする場合もあります。国内の業者から購入すれば自分で購入するよりは高くなるのが通常ですが、これも場合によりけりで、業者やオーナーがどうしても処分したいものなどに出くわせば、割安で買えることもあります。

 6.希少モデルかどうか:アンティークオルゴールのシンボルともいえるような特定の機種があります。(例えば、ポリフォンのミカドとか、シンフォニオンのエロイカなど)これらは、博物館やマニアは是非そろえておきたいと思う機種に属しますが、それだけに、なかなか売りに出て来ないのが実情です。したがって価格は少々高くなっても売れてしまうわけです。

インターネット:
最近インターネットを利用して、欧米のディーラーに直接アクセスしたり、各地で行なわれるオークションに入札依頼して直接購入する方も増えてきていますが、ある程度の知識を持ち合わせていて、リスクの負担を覚悟しなければいけません。状態の確認、価格の交渉、代金支払いの方法、梱包の方法、輸送の手配はどちらでするか、保険はどちらでかけるか、万一破損、紛失した場合はどのように処理するか、通関はどうするか、国内の輸送はどうするか。欠品や期待と合っていなかった場合の処理はどうするか、それらを通常英文でやり取りするわけですから、ある程度のノーハウと経験が必要になります。ですから、現地の業者の価格と、国内での販売価格を単純に比べられても困るわけです。

結論:

以上のように、価格の妥当性を判断するのは雲をつかむように困難ですが、最後は売り手が信頼できるディーラーかどうかに落ち着くと思います。当方も皆様に信頼して頂けるように最善の努力を続けています。

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