01年4月に読んだ本。   ←01年03月分へ 01年5月分へ→ ↑Indexへ ↓麻弥へのメール
●「滅びの星の皇子 ノルマルク戦記1」赤城毅[中央公論社C★NOVELS]900 円(01/04/29)

この作者は前から気になっていたのと、このジャンルは好きなのでお試し購入してみました。
異世界を舞台にした、剣の時代の戦記物語。滅びを呼ぶという、破蠍星の日、破蠍星の時に生まれたノルマルク王の第二皇子ユリアスは父親に疎まれ、塔に幽閉される生活を送っていた。しかしノルマルク王が他国に侵略して逆に返り討ちにあい、第一皇子も行方不明になってしまった。その時に初めてユリアスは塔を脱出し、他国に逃げおおせることになる。それから3年、祖国復興のために立ちあがったユリアスだったが、彼の倒すべき相手は幼少時代に唯一優しくしてくれた隣国のデミアンであった。
悪くはない作品なんですが、もうひとつ吸引力に欠けるかも。運命のために親友と戦わねばならないというシチュエーションは好みではありますが…なんかもうひとつも萌えないんだなあ。キャラ造型がもうひとつ浅いせいかもしれない。世界観もありきたりだし、ストーリー展開も予想を大きくずれるものではなかったし。続きは特に読みたいとは思わないけども、イラストに引きずられて買っちゃうかもしれない。


●「騎士とビショップ」たけうちりうと[パレット文庫]429円(01/04/29)

なんか突然ボーイズラブが読みたくなったので適当に選んで購入。私には棋士萌え属性があるんで、受が「チェスのジュニアチャンプ」という話だから楽しめるかなあ、と思いまして。イラストはなかなかよかったし。
攻も受もアテ馬も好みじゃないんで…というのでボーイズラブとしての感想はおしまいになってしまうけれども。「萌え」なくして読むには辛いレベルの作品。主人公がチェスのジュニアチャンプというのもストーリー上大して意味をもたなかったし、恋愛モノとしてみるにはもうひとつ切なさが足りないし。あと、この話の女の子の扱い方がなあ。あのエピソードがアテ馬があんな行動をとってしまうくらい受が魅力的だと示したかったのかもしれないけども、私には嫌悪感しかなかったです。ボーイズラブであっても女の子を人間として扱ってくれる作品の方が好みなんで。


●「トリニティ・ブラッド Rage Against the Moons フロム・ジ・エンパイア」吉田直[角川スニーカー文庫]514円(01/04/28)

この前出たばかりの「トリニティ・ブラッド Reborn on the Mars 嘆きの星」の同じ世界の数年前の話。雑誌「The Sneaker」に連載されてた短編をまとめたものです。
ヘルシング(60%)+トライガン(30%)+ラグナロク(10%)ぽい、吸血鬼vs人類(古代文明の兵器アリ)のバトルファンタジー。
雑誌掲載分の短編は番外編的な話になるかと思ってましたが、話こそそれぞれで完結しているものの、第三の敵の暗躍についての連作短編となっています。話のパーツはアニメ・マンガ・ゲーム・ライトノベルの寄せ集め的なところはあるんですが、世界観や謎の作りなどは案外奥が深そうに思えますねぇ。カキワリでは終わらない感じ。
それにしてもトレス!! カッコいいよー、めちゃ好みっす。萌え。イラストがこれまたいいし。トレスの出番が多かったら、イラスト目目当てで「The Sneaker」を買っちゃうかも。今回で自分の中で続きが楽しみなシリーズにランクアップしました。


●「キル・ゾーン 叛逆」須賀しのぶ[集英社コバルト文庫]476円(01/04/27)

おお、約10か月ぶりの「キル・ゾーン」の新刊がっ!! ネタバレになるのであらすじはなにもかけませんが……え? 前作のラストのアレがそのままこうなりますかっ!! うわ… でもこれ読んだら「…本当にあと一冊で終わるの?」と思ってしまうのも仕方ないのではないかと… あと2冊だったら普通は収束に入るものだと思うんですが、なにもかも全然カタがついてないですもの。どんな終わらせ方をするんでしょう? 全く想像もつかない。
とにかくあと一冊、今まで発売を心待ちにしてリアルタイムに楽しんできたシリーズの終焉を惜しみつつも楽しみに待っています。この話でみんな幸せにというのは絶対に無理でしょうが、それぞれのキャラが悔いのない人生をおくれますように。
以下ネタバレ→ここにきてパパがあんなことに。いやん、パパがヘルごときに負けてほしくないっ!! あれではヴィクトールも許せないでしょうし。キルゾーン最大の悪役であるユージィンのラストは、ヴィクトールと共に滅び行く火星と心中してほしいものであります。その火星崩壊にしても、話にちょろっと匂わせていることから最後はそうなるんだろうと思ってたんですが、今回の話ではその気配が全くなかったからびっくり。あと一冊でどうにかなるんでしょうか。前巻でマックスが感じていた「ユージィンの望み」って、今回ラファエルが想像したような「完全なユーベルメンシュに自分の魂を移して永遠に生き、火星の権力を永久に握る」というような俗物なものとは思えない…というか、ユージィンファンとしては思いたくないですねぇ。もっと芸術家ぽい昏い望みの方があの人にはお似合いだと思うので。
キャッスルとラファエルとエイゼンの三角関係はどこに着陸するのやら想像もできません……まさか本気でパパとキャッスルがくっつくなんて展開に納得するファンはいないんだろうしなあ。今すぐは無理でも、将来的にキャッスルとラファエルが結ばれることを想像させるようなものを個人的に希望。エイゼンは誰かのために生きることができる人とは思えないし。でもエイゼン→キャッスルについてもなんらかの形のケリはつけてほしいなあ。


●「エンジェル・ハウリング2 戦慄の門」秋田禎信[富士見ファンタジア文庫]480円(01/04/26)

「オーフェン」シリーズでお馴染みの秋田禎信の新シリーズ「エンジェル・ハウリング」第二弾。今回は「ドラゴンマガジン」で連載していたもうひとりの主人公・フリウの話。
硝化の森で父と二人、人目を忍ぶように暮らしていた、左目が水晶檻のフリウ。記憶をなくした美少女が遭遇してから平和な生活は終わった。黒衣の男たち、女暗殺者と様々な人々が彼女の前に現れ、記憶に押し込めていた8年前の出来事が再び呼び戻されるのだった…
雑誌掲載の方は番外編的な短編かと思ったら、一冊目とは主人公が別の長編だったんですね。一作目の謎が少し明かされ、また新たな謎が。今回は話もかなり動いていたし、わりとおもしろかったです。まだ明らかにされてない世界観や謎はなかなかなかなかおもしろそうだけど、問題は次に本が出たときに細かい部分まで覚えてられるかということですな。詳しいあらすじやらキャラ紹介やらをつけてくれるとありがたいんだけどなあ。
話の基本トーンが「オーフェン」に比べるとかなりシリアスで暗いです。私としてはこういう方が好みだけど、世間的にはどうだろ。
あのおしゃべり精霊はうっとおしいんで消えてくれるといいんだけどな。


●「ふわふわの泉」野尻抱介[ファミ通文庫]640円(01/04/24)

「ピニェルの振り子 銀河博物誌1」「ロケットガール」シリーズでお馴染みの野尻さんの新作。
「楽に生きたい」がモットーの化学大好き女子高生・泉は文化祭の実験の失敗から、「ダイヤモンドよりも堅く空気よりも軽い」夢の新素材の合成に成功する。それにふわふわと名づけ、大もうけをしてそのあとを楽に生きようと行動にでたが…
読んでてワクワクした。いやあ、楽しかった。
「もし、夢の新素材があったらどんなことができるのか?」からどんどん世界が広がってゆくのが爽快で。
いろんなネタを積め込みすぎてエピソード同士の整合性や一冊の本としてのダイナミック性に欠けてるせいで、テーマがストーリーとうまくリンクしてないような印象を受けてしまったのは確か。でも、私にとっては次々と惜しげもなく継ぎ込まれるアイデアの部分が楽しくて、それで十分満足でした。ただ理系素質がない人にはちと辛い作品かもしれません。
参謀体質な旭くんは結構好みです。


●「ぶたぶた」矢崎存美[徳間デュアル文庫]676円(01/04/22)

「山崎ぶたぶた」という名前の「生きている」ピンク色のぶたのぬいぐるみと、彼が出会う人々のお話です。連作短編集。ちょっと前にネットの書評系で話題になってたので気になっていたので、文庫本化を機会に購入。
ほわんとしたお話。特にどうってことはないお話ばかりですが、読んでて気持ちが緩むというか。個人的にはタクシーのお話とプールのお話がよかったです。


●「フルメタル・パニック! 終わるデイ・バイ・デイ(下)」賀東招ニ[富士見ファンタジア文庫]480円(01/04/21)

「フルメタル・パニック!」シリーズ待望の新作。前作でソースケがカナメの護衛任務を解かれて永久に接触を禁じられ、カナメにも魔の手が忍び寄ってきて…ととんでもない幕切れでしたが、いやあ、待ったかいがありました。すっごいおもしろかった。
ソースケの成長ぶりもよかったし、カナメが守ってもらうだけじゃなく「戦うヒロイン」になってたこともよかった。読んで元気になる、前向きな話に仕上がってよかったです。
あと、兄貴萌え〜これからの活躍が楽しみ。
ミスリルやら「存在しない技術」やらに対する胡散臭さが今回で噴出してましたが、これがどうストーリーに関わってくるか想像すると楽しいです。
学園ラブコメ・アクション巨大ロボット軍隊SFものですが、これがとてもおもしろい作品ですので、興味があったらぜひ読んでみてください。


●「若草野球部狂想曲3 スペリング・ステップ」一色銀河[電撃文庫]570円(01/04/20)

「若草野球部狂想曲」シリーズ三冊目にして完結編。コミカル野球ラブコメ小説。
若草高校の男女混合ヘボ野球部も、甲子園で活躍した捕手・光児が加入したことでどんどん強くなり、強豪との練習試合にも勝てるようになった。しかし新しい春を迎え、「男子新入部員が入ってきたら、甲子園のために女子部員はお払い箱?」と不安と募らせる亜希と、光児の間に確執がひろまり、ふたりの進退をかけて若草野球部は関西大会ベスト4の高校と試合をするハメになったが…
おもしろかったです。さわやかで勢いがあって。キャラたちもそれぞれ成長して、前向きに終われてよかったです。
魔球だとかでてこない野球小説ですが、作者の「好き」がこれでもかっ!!というほど伝わってくるし、野球が頭脳ゲームであることがよくわかるかけひきがらみのお話がなかなかおもしろくて。このシリーズ、野球好きなら野球好きならオススメです。


●「魔女の結婚」谷瑞恵[集英社コバルト文庫]533円(01/04/19)

この方は「夜想」がとてもよかったから期待して買いつづけてるんですが、最近は方向性が私の好みからはズレていってて…それでも一応買うけど。
古代ケルトの巫女姫エレインは、村がローマに滅ぼされたときに自ら命を絶った…はずであったが、なぜか1500年後に目覚めてしまう。エレインは自分を起こしてしまった魔術師・マティアスについていって、前の世界では叶えられなかった夢である「運命の人との結婚」を成し遂げようとしたが…
ラブコメ。…になるはずが少し方向性がズレちゃったかも。うーん、ちょっと辛いなあ。何もかもがうまく噛み合ってない感じで。たとえば、ミシェルが急にエレインラブになるのに違和感を覚えたら後で種明かしされたけど、そういう設定ならばミシェルとエレインの出会ったシーンが変じゃないですか? …とか、まあ色々とひっかかるわけで。
それほど悪くはない作品だけども、期待してる作家さんだけになあ…


●「悪魔のラビリンス」二階堂黎人[講談社ノベルス]760円(01/04/18)

「人狼城の恐怖」以来の久々の蘭子もの。新本格ミステリです。時系列を人狼城以前に戻して、蘭子と正体不明の怪人「魔王ラビリンス」との対決を描いた二つの中編が載ってます。
怪人の見た目が大袈裟なわりには使われてるトリックがセコいというか…なぜ「魔王ラビリンス」が不可能事件に偽装する必要があるのかももうひとつ伝わってこないし。美学?
前作の「人狼城」が文字通りの大作だっただけに、拍子抜けしてしまいました。
まだまだ謎の積み残しがあるし、これが長編に続くのかな?


●「謎亭論処」西澤保彦[祥伝社NONノベル]857円(01/04/17)

西澤保彦の最新刊は、タック&タカチのシリーズの短編集。このシリーズらしく、アルコールを飲みながら推理するという形となってます。
短編集ってことで小ネタになるのは仕方ないとはいえ、謎とその解決に強引すぎるところがいくつかあったのが気になりました。
チョーモンインシリーズの方場合は話の設定がムチャなだけに「謎と解決」というミステリとしての構成については逆に自然に感じちゃうのです。タック&タカチシリーズは現実世界を舞台にしてるだけに、不自然さがついちゃうんですよねぇ…
このシリーズはキャラクターが好きだから値段分は十分楽しめましたが。このシリーズでは「依存」だけはまだ読んでないので、はやくノベルズ化か文庫本化をしてほしいなあ。


●「未完成」古処誠二[講談社ノベルス]820円(01/04/16)

メフィスト賞受賞作「UNKNOWN」の続編です。今度も防衛庁調査班の朝香ニ尉と野上三曹が調査に乗り出します。今回は、孤島にある自衛隊の基地で、射撃訓練中に忽然と小銃が消えうせてしまった事件。
古処誠二は「少年たちの密室」もなかなかデキがよかったし、このシリーズの前作も結構お気に入りでしたので期待して読みました。今回もなかなかおもしろかったです。自衛隊の生活をリアルに描いていて、特殊職場モノとしても楽しめます。
このシリーズはトリックはそれほど奇抜なものではないんですが、個人的に気に入っているのは動機のやるせなさ。それが現実世界の歪みをうまく写し取ってるあたりが見事です。
私あたりが平和ボケしてられるのも、本気でこの国を守ろうとしている人がいるからなんだろうなあ。実情をなにも知らないで、感情論だけで自衛隊無用論を唱えるのはちょっと違うかも…と考えらせされました。でも末端がいくら頑張っていても、上がアホなら組織としてはどうしようもないんだよね…それは自衛隊だけじゃなくて、会社とかでも同じではありますが、自衛隊の場合は国の安全に直接関わってくる話だけに放っておいていいことじゃないわけで。…現実的にはどんなものなんでしょうか。小説の中の描写だけがすべて事実だと思うほど私も子供じゃないけれども。
前作を読まなくてもこれだけ読んでも大丈夫ですので興味があったら読んでみてください。


●「黄昏の岸 暁の天 十二国記」小野不由美[講談社文庫]714円(01/04/13)

もう、どれだけ首を長くして待っていたことか。「十二国記」シリーズ待望の新刊です。
今回の話は、裏「魔性の子」である泰麒の帰還の話。慶や雁を始めとして王様や麒麟がいっぱいでてくるので豪華な気分。
とにかく、5年ぶりに会うことができて、とても嬉しかった。
このシリーズは、中華風異世界ファンタジーです。ダイナミックな人間ドラマ、魅力的なキャラクター、がっちりとした世界観と三拍子揃った物語。容赦ない展開にくじけずに生きてゆく登場人物たちに胸が打たれます。本好きの人なら当然読んでるでしょうが、もしまだの人がいたらぜひ読んでみてください。できれば予備知識は何も仕入れずに。読むのは刊行順に「月の影 影の海」から。講談社文庫から新装版で出揃ってますが、山田章博さんのイラストが素晴らしいので、個人的にはホワイトハート版の方を薦めたくなりますが。あとがき付きだし。
さて、以下はネタバレ。今回のストーリーだけでなく、雑誌などで小野さんが語ったこのシリーズの裏話的なものも含んでますので、そういうのを読みたくない方は読まないでください。→氾王って夢様?……という意見は同案多数かしら。でも私はこの人は結構好きですな〜。氾麟もおちゃめでかわいいし。氾国のお話とかもまた読んでみたいです。
おもしろいのはおもしろかったけど、ここで終わるか?って感じもします。「魔性の子」で泰麒の帰郷が描かれてるのでそのあたりの展開はもちろん分かってたから、もう少し先…泰麒と泰王の再会までみたかった、と思ってるのは私だけではないんじゃないかと。国も、麒麟としての力も無くしてしまった泰麒の先行きを考えると胸が締め付けられます。それでも、王様の元に帰ってこれてよかったよね。驍宗さまと再会できるといいけども。あと、恭の主従を見たかった〜!! あのコンビが一番好きなので。
今回はシリーズ中の「転」にあたる部分なのかなあ。徳間文庫版の「銀河英雄伝説」(田中芳樹)の何巻かの小野さんの解説によると、十二国記の世界というのは「死なないラインハルトがいたら?」という発想から始まったそうなんです。専制政治の問題となる点は指導者が無能だったり悪どかったりすると国を食い荒らしてしまうことで。その上、よい君主でも寿命があるために永遠ではないから。…その欠点を補うために、「十二国記」の世界では麒麟が素質のある王を選び、不老不死にする。またストッパーとして、王が腐敗してきちんと勤めを果たせなくなれば麒麟や病み、麒麟が亡くなると王も死んでしまうというシステムに。…そういう「理想的な王制」の世界を舞台にした話で描いているのは、人が救われるためには誰かにどうにかしてもらうのではなく、一人一人が自分の足で立つことなのだ…という真の意味での民主主義なんでしょうね。陽子の「人は自らを救うしかない、ということなんだ」や、戻ってきた泰麒のセリフが今回のテーマなんでしょう。また、世界のシステムに対する疑惑や、メインの登場人物たちは「王がいなくてもやっていける世界」に向けての行動をとってることがいくつかのエピソードに描かれてることから、世界を統べるものへの反乱…枠組みの打破にストーリー全体の方向は行くのかもしれません。ただし、小野さんがインタビューで「尚隆が雁を滅ぼす話までは書かない」と言ってましたから、そこまでの展開にはならないかなあ。ただあそこまで不自然な世界がなぜできたのか…の謎は解明されるでしょうか?
…なんだかんだいって、このシリーズはキャラクターもとても好きなので、各国の主従がラブラブしてる話を読むだけでも満足だったりするから…とにかく続きがはやくでてほしいものです。


●「冬栄」小野不由美[講談社 IN POCKET]190円(01/04/13)

久しぶりの本編新作に先だって、講談社文庫の情報誌「IN POCKET」に掲載された短編を読みました。
チビ泰麒が漣国を訪問する話です。廉麟は前にもでてましたが、廉王は初登場ですね〜。ほう、こんなお方でしたか。なんかこの世界の王様って一風変わった人が多いですね。読んでる方が照れちゃうような、主従ラブラブなお話でした。泰麒がキュート。
「本の雑誌」によると「十二国記」の短編集が7月にでるそうですから、この話もそこに収録されるかもしれないですね。他に北上次郎のシリーズ推薦文と堺三保の解説つきです。


●「ラグナロクEX. DEADMAN」安井健太郎[角川スニーカー文庫]533円(01/04/12)

「ラグナロク」シリーズの番外編の4冊目はジェイスの話とか、ヴァルハラの愉快な面々、人間との共生を目指している《闇の種族》組織の話とか、なかなかネタがおもしろかったです。
ジェイスのすさみっぷりが素敵だなあ。傭兵だった頃にリロイとサンドラとわいわいやってた時代が眩しいだけに、余計。でもジェイスが再登場したときになんか強くなってるなあって思ったけど、そっか、そんなことがあったのね。
新キャラの虚弱体質の《闇の種族》という一風変わった設定のテーゼは結構気に入りました。今後、本編にもでてくるよね?
前からヴァルハラって新羅(ファイナルファンタジー7)ぽいって思ったけど、今回ヴァルハラ内部の様子を読んでますますそういう印象を受けちゃいました。それをいうなら、ラグナロクの世界観自体がFF7ぽいか。…というより、ラグナロクが戦闘系RPGファンタジーのごっちゃ煮ぽいところがあるんですよね。だからこそ若い子にウケるんだろうなあ。


●「スカーレット・ウィザード5」茅田砂胡[中央公論社C☆NOVELS]950円(01/04/11)

「スカーレット・ウィザード」シリーズの完結編。パワフル宇宙恋愛活劇小説。囚われの息子を取り戻すために、女王様と海賊が大暴れ。
楽しくは読めたんですが…作者もあとがきであれこれ書いてますけど、このシリーズって設定まわりが稚拙なために、SF属性のない私でさえもひっかかてしまう部分がたくさんあって、話にもうひとつのめりこめないままになってしまいました。別にSF的考証をしっかりやれとかいうつもりは全くありませんが、もう少しごまかし方を覚えてくれるといいんだけどなあ。
…でも結局、「ゼルフィニア戦記」と繋がりのある世界観には一体なんの意味が?? 一巻でそのあたりを示唆してたときには、それがストーリー全体に深くかかわるかと期待してたのになあ。
とりあえず次回作に期待しましょう。


●「五徳猫 〜薔薇十字探偵の慨然〜」京極夏彦[講談社 メフィスト 小説現代5月増刊号]1400円(01/04/10)

おお、久しぶりの「百器徒然袋」シリーズ第4弾です。お馴染み京極堂シリーズの番外編ですが「憑き物落し」である本編と違って、この中編集は榎さんによる閉塞した状況の粉砕が愉快なシリーズです。
今回のお題は猫。招き猫と化け猫のお話。読んでて楽しかったものの、シリーズの1〜3作目に比べると榎さんの暴れっぷりが物足りないなあ。京極堂もそれほど出てこないし。でも「にゃんこだ」とはしゃいでいる榎さんがラブリーなのでそれですべてヨシ。
京極堂シリーズの長編の方はいつになったら新作が出版されるんでしょうね…


●「華胥」小野不由美[講談社 メフィスト 小説現代5月増刊号]1400円(01/04/09)

今回は上遠野浩平が書いてないので「メフィスト」を買うのをやめようかと思ったら、おっ、小野主上ではないですか〜。しかも十二国記シリーズの短編とわっ!! …ということで即購入。
今回は真摯に国を思って努力したのに失道してしまった王と麒麟のやるせない話でした。
この話はまず始めにテーマありきだったんでしょう。ここで描かれたテーマ→責難は成事にあらず←というのには非常にグッときましたが、ただテーマに比べて枚数が足りないせいか、説明的で説教くさい印象を受けてしまいます。じっくり練って長編にしてほしかったかも。
王と麒麟というシステムの持つ色気というのはそれが破綻したときによりはっきりするというか。王を恨みながらも慕わずにいられない 麒麟の気持ちが痛い。でも努力してもどうしようもないっていうのは、切ないよね。……あっ。今となってやっと気がつきました!! そうか、一番最後のページにでてきたあの名前って……ちゃんと救いがあってよかった。
でもまあ、どのほのぼのとしてみえる王と麒麟であっても、一国を治めるという辛さを考えると平坦ではない過去があるんでしょうね。まさかあの人にこんなに壮絶な過去があったなんて思ってもみませんでしたもの。


●「R.O.D 第三巻」倉田英之[集英社スーパーダッシュ文庫]514円(01/04/08)

紙を武器にして戦う、大の本好きのメガネ娘のアクションモノの「R.O.D」シリーズ三作目は連作短編集。物故作家の幻の恋愛小説を巡る話。このシリーズは少々ヌルくてアクションものとしては物足りない部分はありますが、でも作者の本が好き、という思いがストレートに伝わってくるのが読んでて気持ちいいんです。ねねねが盗作疑惑でネットで叩かれて落ち込んだけれどもファンに助けられるエピソードとか、ベタな展開だなあと思うけれども、いいなあ。
新キャラは個人的にはもうひとつピンときませんでしたが、新展開には期待しております。


●「EDGE3 〜毒の夏〜」とみなが貴和[講談社X文庫ホワイトハート]570円(01/04/06)

前作の「EDGE2 〜三月の誘拐者〜」がいいデキだったので新作も期待してたんですよ。それが、もう、すごい!! ミステリとしても、恋愛小説としても極上の味わいに仕上がっていて。もうとにかく、読んでてたまらん話でした。
東京では、いくつかの若者たちがよく集まる喫茶店のシュガーポットにガリウムヒ素が混入される事件が起こった。その事件が収まった頃、ドラッグストアーで青酸ガス事件が発生。松波刑事の友人が事故の犠牲で意識不明の重態に。天才プロファイラーの大滝練摩は犯人探しに協力することになるが… 一方、精神年齢が10歳くらいとなった宗一郎が、「藤崎」の存在を知ってしまい…
今回のテーマは毒。冒頭のエピソードだけでもう満腹になるほどすばらしいできばえ。あれに「毒」というタイトルをつけて短編として流通させても十分通じるんじゃないですか? 異常というよりは、普通の人間がほんのすこしあるべき世界から逸脱しかけた…という感じの犯人の心理描写が見事。前二作も犯人の心理描写がよかったんですが、今回はさらに筆が冴えているなあ。今の日本が含んでいる「毒」をうまく話にとり込んでいて、現在の世相や風潮を文字に固定していると思います。
恋愛要素としては、宗一郎の精神年齢が10歳くらいになって、少しずつものがわかりかけてきただけでもうアレでしたが、宗一郎や練摩の葛藤がとにかく切なくて、くらくらします。一作目の「EDGE〜エッジ〜」を読んだときに「練摩が男だったらもっと萌えたのに〜」と感想を書いてしまいましたが、撤回。練摩が女なのに自分が女であることを許せなく思えるからこそ、互いの思いが色々と複雑になってくるから余計にグッとくるんですね。男×男の方が練摩と宗一郎の関係は単純になったはずですから。
ジャンルとしては、天才プロファイラーもの。少し超能力がでてきますが、これはどちからというと恋愛要素に絡むものであってミステリとしての味わいを損ねるものではありません。京極夏彦や西澤保彦が平気でしたら全然大丈夫。
とにかく、ミステリ者を自認している人であれば読むべし。この犯人の心理描写だけでも読む価値はあると思います。この作者、日常と隣り合わせの狂気を書かせたら国内でも三指に入るのではないでしょうか。この本はティーンズ向けノベルズの棚にありますので少し手を出しにくいでしょうが、それを乗り越えるだけの価値はある作品です。シリーズ三作目ですが、ミステリとしてはこの本から読んでも話は理解できるので問題なし。(恋愛ものとしては一冊目から読んだ方が味わい深いですが) それでこれが気に入れば、ぜひ一冊目、2冊目も読んでください。
恋愛モノとしてのツボを説明しますと…男装の麗人の大滝練摩は天才プロファイラーなんですが、複雑な過去の事情から自分が女であることを許せなく思っていました。コンビを組んでいた藤崎宗一郎からは思慕を向けられていたが、練摩は彼に対しては友情は抱けても恋愛感情にはならず。その藤崎は練摩を大切に思うあまり、彼女をかばって色々と危ない目に合い、負傷していきます。元々藤崎には超能力があったのですが、練摩をかばって負傷をするたびにその欠陥を庇うかのように新しい超能力が目覚めてカバーしていきました。そして、ある日藤崎は取り返しのつかない傷を負って死線をさ迷います。奇跡的に目覚めたものの、記憶がまっさらになって幼児状態に。藤崎を失って、何が大切だったかやっと悟った練摩はその藤崎…宗一郎を引き取り、自分で育てることに。宗一郎は1からやりなおして驚異的な成長を遂げます。1巻ではまだ5歳くらいの知能しかなかった彼が、3巻では10歳くらいと微妙な年頃になってきて。それで練摩にほのかな思慕を抱き始めるわけで。
この物語でのツボは、「体は大人なのに心が子供」「男が記憶を無くしているために、女は今の彼を大切にしようと思いつつもつい昔の彼を恋しく思い出して引き比べてしまう」あたり。定番の記憶喪失ネタといえばそれまでなんですが、「男には超能力があるために女が昔の自分をとても大切に思っていたことがわかる」というのと、「女は自分が女であることを受け入れがたいために恋愛感情とならない」あたりがうまくスパイスとしてきいているかと。宗一郎の精神年齢が10歳くらいの子供というのもなんかもうたまらん感じですが、これが15くらいになったら……今から楽しみでありまする。
これだけ書ける作者さんなんで、ホワイトハートでおいておくのはもったいなさすぎ。一般書にでてゆくべき人ですよ、絶対に。講談社ノベルスで「EDGE」の1-3を一冊にまとめて再出版したらミステリ方面でかなり高い評価を受けるんじゃないかと思うんですが、やってくれないかなあ。


●「開かれぬ鍵 抜かれぬ剣 下 足のない獅子」駒崎優[講談社X文庫ホワイトハート]530円(01/04/05)

「足のない獅子」シリーズ、本当に待ちかねた新作。「〜上」であんなラストでしたから、一体あそこまで追い詰められた状況からどうなるかと不安で、不安で。このシリーズって基本的にはまったりとした話なんですが、今回は手に汗握る活劇に。でもまさかアレがああなって、それでコレがこうなるとは……バタバタと散らばっていたエピソードが収束していくさまは見事でした。
シリーズの山場らしく、見せ場も多数あり。特に今回のタイトルの意味がわかったシーンはよかったなあ。
これで「足のない獅子」シリーズは一段落、次からは新展開のようですが、その前に「足のない獅子」の短編集がでるとか。ぜひぜひジョナサンの過去話を〜〜〜〜。
このシリーズは中世イギリスを舞台にした、沈着で頭脳派ながら優しさのあるリチャードと、豪胆で気のいいギルフォードのやんちゃな騎士見習いの二人の青年の、剣も魔法もでてこないささやかな日常の冒険談です。キャラも描写もしっかりしてるし、私は結構お気に入りのシリーズだったりします。読むなら最初から。最初はどうってことない話ですが、シリーズが進むにつれてどんどんおもしろくなってゆきます。


●「マリア様がみてる いとしき歳月(後編)」今野緒雪[集英社コバルト文庫]438円(01/04/04)

「マリア様がみてる いとしき歳月(前編)」の後編。うわーん、いよいよ薔薇様たちが卒業なのです〜。卒業なんていうのは人生の通過ポイントに過ぎないのだけれども、今まで当たり前だったものを失ってしまうのは寂しいもので。卒業が永遠の別れではないから、薔薇様たちも辛気臭さとは無縁でその日を迎えようとしてたんですが……というわけで今回は白薔薇様と祐巳ちゃんの話と、薔薇様3人の互いとの絆の話、ハタからみると奇妙な姉妹であった白薔薇様と志摩子さんのお話の三本立てでした。
このシリーズらしく、なんてことはない話なんですが、なんだかしんみりとしてしまいました。ひとつの愛しい世界が終わってしまうんだよなあ。薔薇様たちももう出てこないというはないでしょうが、なんだか寂しい。
白薔薇様と志摩子さんの話もなかなか興味深かったです。祐巳ちゃんの視点からみてると、この姉妹はあんまり馴れ合ってない感じに見えてしまうんですが、それでも互いに必要な支えであったことは確かで。それにしても、志摩子さんの抱えてる秘密というのは一体なんなんでしょう。近い将来単行本に収録されるはずのコバルトでのシリーズ最初の読みきりに少しは書かれるのでしょうか。
それにしても、つぼみたちが薔薇様になるのはよいとして、あの祐巳ちゃんが紅薔薇のつぼみですかっ〜〜〜。新入生も入ってくるだろうし、来年はどんな山百合会になるか楽しみであります。
このシリーズはカトリック系お嬢様学校を舞台にした、少女達の日常を描いた(ソフトレズの)なんてことはない話(軽いラブコメではありますね)なんですが、キャラも雰囲気も好きなんですよぉ。ある意味正統派少女小説。柔らかい春の日差しのような話で、どことなく懐かしさを覚えてしまいます。はやく続きでないかなあ。


●「星界の戦旗III 家族の食卓」森岡浩之[ハヤカワ文庫]560円(01/04/03)

前作から2年半ぶりにやっとお目見えの「星界の戦旗」シリーズ3冊目。スペースオペラです。アニメ化もされてすっかりメジャーになりましたなあ。
ジントはラフィールと共に故郷であるハイド星系に戻った。三カ国連合が撤退したためにハイド星系は帝国領になったが、惑星マーティンは帝国に帰順せず、反抗をしていたが…
2年半の月日は長かったです。もう、すっかり色んなことを忘れ去ってしまって、「…この人誰?」という方が多数。頼むから最初にキャラ紹介とかつけてくれないかなあ。あと、実は基本設定を元々あんまり分かってなかった上に、少しは分かっていたことも記憶の彼方にいってしまったために、戦闘シーンの意味がよくわからなくて、そのあたりの描写は正直辛いものがありました。
主役であるラフィールとジント周りですが、ジントの人生の岐路ではあったもののふたりともパッとした活躍がないんですよねぇ。そういうのもあって、エピソードにもうひとつメリハリが感じられなくて。少し残念でした。
あと、スポールさんが出てこないのが寂しかったです。
とにかく、次の作品はもっと早くでてくれるといいんだけどなあ。
念のため、このシリーズを読むなら「星界の紋章」の三冊から。ボーイ・ミーツ・ガールの愉快な冒険談に仕上がっています。


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