02年01月に読んだ本。   ←01年12月分へ 02年02月分へ→ ↑Indexへ ↓麻弥へのメール
●「アルビオンの騎士 前編/後編」志麻友紀[角川ビーンズ文庫]438円(02/01/30) →【bk1】(前編)/【bk1】(後編)

「ローゼンクロイツ」シリーズ第二弾。
アキテーヌの宰相のオスカーと妃のセシルは、隣国バナークの大公の結婚式に出席したが、そこでエルビオンの若き英雄・ヴァンダリス王子に出会い、ヴァンダリスはセシルに心を奪われる。その頃、バルナークには怪盗ローゼンクロイツの偽者が出没していて…
前作以上にロマンとロマンスに溢れた冒険活劇少女小説に仕上がっています。ラブ度高いし、「拉致監禁」や「花嫁略奪」という乙女心が燃える展開もありますし。
それにしてもヴァンダリスで「王家の紋章」のイズミル王子を連想したのは私だけではありますまい…
続きが楽しみなシリーズです。


●「ローゼンクロイツ 仮面の貴婦人」志麻友紀[角川ビーンズ文庫]438円(02/01/29) →【bk1】

第一回角川ルビー小説賞優秀賞受賞作なんですが、もう片方の受賞作がイマイチだったこともあって敬遠してたんですが、「活字倶楽部」の書評が気になって読んでみることに。
ファーレンに出没する義賊・ローゼンクロイツ。あるときは絶世の美女、そしてあるときは貴公子然とした美少年。その正体は、皇帝の第一愛妾の隠し子の少年・セシルだった。何にもしばられない生活を送っていたセシルだが、隣国・アキテーヌの宰相に嫁ぐ予定だった異父妹が暗殺され、その敵が誰かをさぐるために身代わりとなってアキテーヌの宰相・オスカーの元に嫁ぐ。冷酷なオスカーを始めは嫌っていたセシルだが、少しずつ彼に惹かれるようになり…
17世紀〜18世紀のヨーロッパを彷彿とさせる架空世界での冒険恋愛談。男同士の恋愛ものではありますが、ボーイズラブというよりはたしかに少女小説。「ベルサイユのバラ」とか「ラ・セーヌの星」などを彷彿とさせる、ロマンとロマンスに溢れています。
世界観もわりとしっかりしてて読みやすいですが、ストーリーがもう一山あればさらによかったかも。まあこの長さでは仕方ないかなあ。
先が楽しみな新人さんであります。


●「導きの星I 目覚めの大地」小川一水[ハルキ文庫]800円(02/01/30) →【bk1】

銀河に進出した地球人は、文明の萌芽がある知的生命体をみつけてはその育成を手助けしていた。その外文明支援省の新任観察官・司がやってきたのはリスザルのようなスワリス族が二足歩行を始めた惑星オセアノ。司は3人の目的人格(パーソノイド)(外見美少女)とともに支援を始めたが…
おもしろかったです。「シム・アース」みたいな話になるかと思ってたんですがそれが微妙にずれてきて、表面から見えるものと中身は違うことが示唆される終盤がとにかくおもしろいです。一体、誰がなんのためにやっているのか? かなりスケールの大きな話になりそう。巻末についてたこの世界での人間社会の設定話が興味深かったです。人口コントロールが完璧で、機械で生産は賄えるので「働かなくても生きていける」世界。豊かではあるけれども閉塞した歪んだ世界。その設定が物語上に深く関わってくるんでしょうか。続編が楽しみです。
村田蓮爾さんのイラストとカバーデザインがすばらしい。ハルキ文庫も気合が入ってますね。


●「銀河パトロール隊 レンズマン・シリーズ1」E.E.スミス 小隅黎・訳[創元SF文庫]840円(02/01/29) →【bk1】

スペース・オペラの金字塔である、E・E・ドク・スミスの「レンズマン」シリーズの新訳の刊行がいよいよスタート。待ってました!
銀河を舞台に、宇宙犯罪を取り締まる「銀河パトロール」と中心的存在のレンズマンと、海賊組織ボスコーンの死闘を描いた作品。
私は15年ほど前にアニメから原作にハマったんですが、なんせ昔のことなので記憶があいまいで。シーンごとになんとなく記憶はあるんですが… 新訳ということで旧訳に比べるとすっきりと読みやすくはなっていると思います。ただ、原作が1937年という第2次世界大戦前にでたということで、読み始めたときにはやはり古さがひっかかってしまったのでした。計算尺とか。
でも物語も半ばをすぎる頃には世界に引きずりこまれました。あのトップスピードで突っ走る感覚と途方もないスケール感に「古きよきアメリカ」の底無しのパワーを感じました。やはりレンズマンはおもしろい!!
このあと「グレーレンズマン」「第二段階レンズマン」とエスカレートしていく物語をもう一度読めるのかと思うと、楽しみです。
「サムライ・レンズマン」(古橋秀之)がおもしろいと思った方に本編も読んでもらいたいものです。ただ最初がとっつきにくいので、100ページは我慢して読んでほしいんですが…
本編が好きだった方には「サムライ・レンズマン」(古橋秀之)もあわせて読んでもらえれば。原作のエッセンスをぎゅっと絞りこんだ、熱い物語になっています。
原作を知らない人は、いっそのこと「サムライ・レンズマン」(古橋秀之)から入った方がいいかも… こっちの方がはるかにとっつきやすいので。ただ、「サムライ・レンズマン」は原作3冊目より後の物語ですから、それまでの話の一部ネタバレとなるのが問題かも。


●「BLOODLINK 赤い誓約」山下卓[ファミ通文庫]640円(02/01/22) →【bk1】

「BLOODLINK 獣と神と人」の続編。発売されたのは少々前なのになんとなく読んでなかったんですが、掲示板で薦められたし、ネットでの評判もいいので購入。
普通の高校生の和志が「人から変容した怪物」を戦う使命を与えられ、そのために自分の親友・クラスメイトを亡くし、自分を好いてくれた女の子までを殺さざるをえなくなってしまいます。その辛い記憶を共有している、淡い恋愛関係にあるお隣のカンナ(9才、銀髪碧眼の気の強いプチ女王様で、超天才・金持ち)との間がギクシャクしてしまうことに。痛みを抱えながら和志の取った行動は…
過酷な話。物語のフォーマット自体はライトノベルお馴染みのものを使っていますが、メインとなるのは「リアルな苦しみ」であって、そういう意味では●「カラミティナイトII」高瀬彼方に通じるものがあるかも。それで「カラミティナイト」の友情部分を恋愛に置き換えたような感じ。
この作家さんは筆力のある方だし、また和志の苦しみをじっくり書かれているのでそれがよく伝わってきますが、個人的な好みではもっとストーリーをガンガンに進めてほしかったなあ。
正直いうとヒロインは私の好みではないんですが、それでも第六章は涙腺にきました。


●「勝手に使うな!知的所有権のトンデモ話」稲森謙太郎[講談社+α新書]740円(02/01/19) →【bk1】

わりと最近の話題を中心に、著作権・商標権・特許などで話題になった事例を紹介した軽い読み物。時事的なものもあって、ネット関係の話も多いです。
著作権法の成立はかなり古い頃でして、今からすると理不尽だったり時代に合わなかったりするのもあります。また判決でも「ちょっとこれはいくらなんでも…」なのもあるわけで、そういうのに対するツッコミも。
弁護士の書いたものは、どうしても原則論・きれいごとになってしまいますが、それだけよりはこういう実情を知っておいた方がいいんじゃないでしょうか。
内容はほとんどが知ってる話でしたが、ジャニーズがタレントのグループ名を商標登録している話もちょろっとでてまして。まあ、あの事務所だからやってるだろうなあとは思ってたんですが、その番号と並び順をみる限りでは後でまとめて登録したのかな?と思えるものがあるんですが…
ネットで自分のサイトを持っている人は著作権まわりの知識を持っている必要がありますが、その入門書としてはいいかもしれません。


●「石川くん 〜啄木の短歌は、とんでもない!〜」枡野浩一[朝日出版社]700円(02/01/19) →【bk1】

 はたらけど
  はたらけど猶わが生活楽にならざり
   ぢつと手を見る

 不来方のお城の草に寝転ころびて
  空にすはれし
   十五の心

日本人なら知らない人はいない明治時代の歌人・石川啄木の歌を、現代の歌人・枡野浩一がそのエッセンスを汲み取って、今の言葉で新しく読みなおした歌+「石川くん」に当てた手紙、です。 「ほぼ日刊イトイ」での連載をまとめたもの。
枡野さんは「ハッピーロンリーウォーリーソング」という短歌集の文庫版を出してますが、個人的には映画や本の評論エッセイ+短歌の「君の鳥は歌を歌える」が一番好き。

さて。私は石川啄木は教科書とか、雑誌や本に抜粋された歌しか知らなかったので、「貧乏でも一所懸命働いたのに報われなかった悲劇の歌人」というイメージがあったんですが… この人って、「鬼畜」というよりは今だったら「ドキュソ」とか「厨房」とかレッテル張られて2chに単独ウォッチスレッド立てられそうな人だなあ、と思いました。なんたって、田舎に年老いた母親と妻を残して上京してきて、稼ぎは一切仕送りせず、風俗店で全部使い、友人の金田一京介(あの辞書で有名な言語学者)に借金を重ねては返さない。働かないわりにはプライドはヤケに高い。エゴイスト。妻に読まれないためにローマ字で書いていた日記の内容のドス黒いこと… うわー、こんな人だったのか。
そんなどうしようもない石川くんを茶化したり慰めたり責めたりしながらも、枡野さんの石川くんに当てた手紙には愛が感じられますね。石川啄木はどうしようもない男だったかもしれないけれども、私だって立派には程遠い人間だし、ダメな部分にこそ親しみを感じることもあるわけで。

 一度でも我に頭を下げさせし
  人みな死ねと
   いのりてしこと

 どんよりと
  くもれる空を見てゐしに
   人を殺したくなりにけるかな

そんなダメ人間でも、彼の残した表現はやはりすごい。言葉の選び方、音やリズムのよさ、字面の美しさ。それにもう90年近く前の歌なのに時代を超えてストレートに伝わってくるものがある。…もちろん、中には今となっては意味がよくわからないものもあるけども、それは枡野さんがうまく「なりきって」今の言葉で見せてくれるので、それを読むと「なるほど」と思えることもあります。
こうやって石川啄木の人生をちゃんと知ると「身勝手な人だなあ」と思いつつも彼の歌に深みを覚えますね。私が一番好きな彼の歌も最後の方に紹介されてるんですが、「石川くん」を知った後に読むと余計に胸が締め付けられるような気持ちになりました。

 いのちなき砂のかなしさよ
  さらさらと
   握れば指のあひだより落つ

オススメです。


●「捩れ屋敷の利鈍」森博嗣[講談社ノベルス]700円(02/01/18) →【bk1】

森さんの作品は犀川先生&萌絵のシリーズは長編は全部読みましたが、新シリーズになってからどうもしっくりこなくてずっとご無沙汰に。
でもこの新作は、両方のシリーズキャラクターの競演があるというので手にとってみたんですが… 本編が袋とじされている。うわー、弱いんです、ミステリでの「袋とじ」には。(泡坂妻夫の「生者と死者」はあのしかけを考えたこと自体がすごかったですよねぇ。大好きだ)
物語は、謎好きな好事家が作った「メビウスの輪」を模した屋敷に萌絵ちゃんが招かれまして(国枝先生も一緒)、そこに保呂草も仕事で訪れるわけですが、不可解な状況での密室殺人が起こり…というような話です。
まあミステリとして謎解きの部分は悪くはないですが「ああ、そうだったんですか」程度で驚きがもうひとつ。でもああいうバカ屋敷が出てくる話が好きだし、長さが短くてすっきり楽しめたので、個人的には満足です。敢えて不満を言うなら、あの屋敷は「住むために」作ったものじゃないってことかなあ。生活しづらいバカ屋敷に住んでこそのミステリだと思うんですが。


●「若草野球部狂想曲EX」一色銀河[電撃文庫]590円(02/01/18) →【bk1】

「若草野球部狂想曲」の番外編短編集。若草高校の男女混合ヘボ野球部が部の存続を賭けて甲子園優勝校と戦わなければならなくなったときに、甲子園で活躍した捕手・光児が転校してきたが…というようなのが本編。魔球が出てこない、野球好きな作者による「野球は頭脳ゲームである」ことを魅力的に見せたコメディです。
番外編は脇キャラたちのエピソードだったんですが、物語としては何が起こるまでもない(本人にとっては重大かもしれないけれども)日常の延長の話なんですが、なんかこー、いいですなあ。自分が嫌になったり落ち込んだりすることもあるけど、友達の助けとかあって前向きになろうとする。そういう些細なことを厭味なくさらりとさわやかに描いています。
この作者は大上段に構えた物語よりも、日常世界を舞台にしたコメディとか書かせたら結構イケるんじゃないかという気がしますが。
このシリーズは区切りがついているし、次が出るとしたら新作かな。楽しみにしています。


●「シンフォニアグリーン」砦葉月[電撃文庫]570円(02/01/17) →【bk1】

電撃ゲーム大賞は、入賞を逃した作品でも筋のいいのがあれば積極的に編集がアドバイスをして作りなおして送り出されることが多いんですが、これもその作品のひとつ。
植物が極度に進化し、家や楽器、飛行機や船に成長する植物まである世界。科学の変わりに植物の特殊能力を使って人間が生活していく時代で、依頼に応じて植物を集めて町に持ってゆく「プラントハンター」を続ける少女・リィンを巡る、連作短編集です。
表紙やあらすじから受ける印象はまんま「ポスト・キノの旅」。本のデザインは「キノの旅」と同じ鎌部善彦氏というのもあるんですが、たぶんわざと同じ印象を狙っているんじゃないかと。「ああいうのが好きな人にはオススメですよ」と示すために。でもこっちの方が全体的に光溢れて明るい感じに本がしあがっています。やはりこういう本の「デザイン」の仕方は電撃はうまいなあ。
デザインから受ける印象の通り、「キノの旅」にあったような毒はなく、基本にある気持ちはあったかいもの。
物語としては悪くはないかなあ。読みやすいし。個人的には世界観はもっとしっかりと構築されてる方が好みなんですが、あまりにちゃんと作られたファンタジーは価値観が現代日本とは違いすぎるので読むのがしんどい部分があるから、これくらいの方がさらりと読めていいのかもしれませんが。


●「ジャック・ザ・ルビー 遠征王と双刀の騎士」高殿円[角川ビーンズ文庫]438円(02/01/15) →【bk1】

●「エルゼリオ 遠征王と薔薇の騎士」高殿円[角川ビーンズ文庫]495円(02/01/16) →【bk1】

「マグダミリア 三つの星 I暁の王の章」「マグダミリア 三つの星 II宰相の杖の章」「エヴァリオットの剣 わが王に告ぐ」は中世風世界での架空歴史活劇ですが、今回のはそれらのご先祖様が活躍する物語。
今回の主役は、征王と呼ばれた王様・アイオリアで女ったらしの温泉大好き(注:女)。彼女(?)が行く先々で問題を解決して、有能な部下を獲得していくお話であります。
あらすじや帯は(おそらく意図的に)コミカルに書いてあるし、本編にもそういうノリもありますが、根本はかなりヘビーな話。被差別民族の悲哀、宗教に縛られることで心が自由になれない人々、腐敗した政治や宗教… 必要に迫られて娼婦にならざるをえなかった女性がそれこそゴロゴロでてくるし。でも個人的にはそういう部分は好みだし、この作者は物語に骨を感じさせてくれるところがいいです。
「ジャック・ザ・ルビー」の方はキャラクターが設定だけ浮いてる感じで、展開もちょっとアレレなところが多く、何より地の文への気使いのなさ(視点の揺れや、地の文で平気でウソをつくこと(性別と人称のズレ))にがっかりきたんですが、「エルゼリオ」の方はそのあたりがしゃんとして、物語にもうねりが感じられてよかったです。
とりあえず次も出たら読むつもりですが、ただもうちょっと世界観の整合性やバランスにも神経を行き届かせてほしいなあ、と思います… 文明レベルと風俗と思想と小道具のズレがねぇ…一作目から比べるとそのあたりも進歩してきてるのは確かですが。


●「占星師アフサンの遠見鏡」ロバート・J・ソウヤー[ハヤカワ文庫]720円(02/01/11) →【bk1】

縄張り本能を克服し、文明を築いた恐竜・キングタリオ一族。宗教と迷信が強い力を持つ世界で、占星師見習いの青年・アフサンはキングタリオの王子であるダイホらとともに天空に輝く「神の顔」を拝むための巡礼の船旅にでかけた。遠見鏡で星や惑星、「神の顔」を観察し続けたアフサンがみつけた「世界の秘密」とは…
恐竜のガリレオ少年のお話。秋山瑞人の「猫の地球儀」の感想で、「占星師アフサンの遠見鏡を髣髴とさせる」とかかれていたのがいくつかあって気になってたんですが、90年代ベストSFとして再刊されたので購入。(ちなみに秋山さんはこの作品は知らなかったそうです)
最初は少々とっつき辛かったんですが、後半は一気に読了。世界の秩序を根底から覆す真実を知ったときに、どうするべきなのか? 心動かされるものがありました。彼らの今後が気になるなあ…
キングタリオシリーズは3部作として刊行されたそうですが、2,3作目は邦訳されてないんですよね。ネットで検索して原書で読んだ方の感想をみましたが、先に進むにつれおもしろくなるようで。うわー、読みたい!! もう何年も邦訳がでる気配がないということは、ムリなのかな…


●「キノの旅V the Beautiful World」時雨沢恵一[電撃文庫]510円(02/01/11) →【bk1】

色々な国を旅するキノと言葉を話す二輪車のエルメスの連作短編。ちょっとシニカルな童話という感じです。
話自体はまあまあ。「英雄達の国」と「予言の国」がよかったかな。
何よりも、黒星紅白氏のイラストと鎌部善彦氏のデザインが今回もすばらしい。特にモノクロイラストのキレ具合といったら、もう。帯も含めて、電撃だからこそできるトータルデザインなんだろうなあ。
このシリーズ、前作を買ったのはいいけどなんとなく読み損ねてしまったんですが、今回もつい本のデザインのよさで買ってしまって。まあ、一話完結だから途中を多少読まなくても困らないのがこのシリーズのよさですしねぇ。


●「本因坊殺人事件」内田康夫[角川文庫]480円(02/01/11) →【bk1】

囲碁ミステリ。
「天棋戦」の第六局はベテラン棋士の高村本因坊と若手の浦上八段の間で行われ、浦上八段が初タイトルをモノにした。観戦記者の近江は本因坊の手がおかしいことに気がついた。なんでもないところで長考し、深く考えるべきところですぐに打ったりしていたのだ。そして、翌日本因坊の水死体が発見された…
昭和64年に発売された作者の長編二作目。浅見光彦シリーズは何冊か読んだことがあるものの、全部読みたくなるほどではなかったんですが、この本は数少ない囲碁を扱ったミステリだということで。
作者が結構囲碁好きだということで、わりとしっかりした話となってます。読んでも損はないと思うけれども、わざわざ取り寄せてまで読むほどではないかなあ。本屋の店頭においてあるところは少ないでしょうが。


●「ほんの本棚」いしいひさいち[創元ライブラリ]600円(02/01/05) →【bk1】

マンガ家・いしいひさいちの手による、エンターティメント中心のよろず本書評。作者の描く「作家ネタマンガ」登場のキャラが書評を行ない、いしいひさいちがそれに4コママンガを付けるという構成になっています。
少し斜めからみた視点の書評がなかなかにおもしろい。それにしても、誉めているものよりも、ケナしているというより茶化してる本の方が読みたいなあという気分になるのはなんででしょうね?


●「からくりからくさ」梨木香歩[新潮文庫]590円(02/01/01) →【bk1】

「裏庭」「西の魔女が死んだ」など児童文学分野で評価が高い梨木さんの1999年に出た長編の文庫本化。今回のは児童文学ではありません。
祖母が残した古びた大きな家に、孫の蓉子を含む4人の女性たちが共同生活を送り出した。心を持つ人形の「りかさん」も一緒に。慎ましやかでありながらも豊かな生活を送っていくうちに、彼女たちの間に芽生えたものは…
物語に漂う空気がなかなかにいいです。でも癒しだけの物語じゃなくて、彼女たちみんなが厳しさに向き合って、そしてその上で「生きることの意味」に繋がるあたりとか。
庭の雑草を工夫して、食卓に乗せていくあたりの描写とか好きだなあ。
派手な展開はないけれども、しみじみとよい話でした。


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