02年11月に読んだ本。   ←02年10月分へ 02年12月分へ→ ↑Indexへ ↓麻弥へのメール
●「ベストセラー本ゲーム化会議」麻野一哉・飯田 和敏・米光一成[原書房]1300円(02/11/29) →【bk1】

人気ゲームクリエーター3人が、「あのベストセラー作品をゲームにしたら?」ということで、
「世界がもし100人の村だったら」
「愛のひだりがわ」
「冷静と情熱のあいだ(Blu/Rosso)」
「煙か土か食い物」
「チーズはどこへ消えた?」/「バターはどこへ溶けた?」
「模倣犯」
「あらしのよるに」
「白い犬とワルツを」
「虹」
「新ゴーマニズム宣言SPECIAL戦争論2」
「PLATONIC SEX」
「新「親孝行」術」
「あらゆる場所に花束が……」
「痛快!憲法学」
「FOCUS」
「バトル・ロワイアル」
を「ゲーム化するのなら、どんなゲームにするか?」について、好き勝手に語ってる爆笑本です。 →オフィシャサイト
ゲームにするための解析作業に伴って、その作品の根本思想や作品世界の価値観、そしてテーマを掘り下げることになり、また作品の根っこを「ゲームシステム」という分かりやすい形に変換することで思いもかけないものが見えたりして、おもしろかったです。
ただしネタバレが多いので、いつか読もうと思っている本があれば避けておいた方がいいかも。


●「海馬が耳から駆けてゆく4」菅野彰[新書館]1400円(02/11/27) →【bk1】

ボーイズラブ作家・菅野彰さんのとりとめもない爆笑エッセイ集「海馬が耳から駆けてゆく」の4冊目です。
今回も電車の中で読まなくてよかったなあと思うくらい、家で読んでて怪しい笑い声を響かせてしまいました。でも、爆笑したんだけど、ある意味笑えないというか… 作者と年齢が近いこともあって、30になったときにガクっと体力の衰えを感じるというのは、よーく実感として分かるんですよ。それだけに、シャレにならないというか…
小説家という仕事は精神的なプレッシャーだけでなく、肉体的にも辛そうですが、菅野さんには体を大事にしてもらいたいなあと思う一方で、好きな作家さんだけに新刊もガンガンだしてほしいなあとつい思ってしまうんですよね…
それにしても花粉症って、辛そうだなあ、本当に。
弟君(←23歳、ボクサー)の話、なんだか妙に愛らしく感じてしまいました… まんま丈くんって感じです。
気楽に読めるエッセイとしておもしろいし、小説作品を読んでなくても大丈夫ですから、興味があれば「海馬が耳から駆けてゆく1(文庫版)」あたりでも読んでみてください。おもしろいですよ。


●「スリー・アゲーツ 三つの瑪瑙」五條瑛[集英社文庫]952円(02/11/25) →【bk1】

"鉱物シリーズ"2冊目、待望の単行本化です。「プラチナ・ビーズ」がおもしろかったので、続編の文庫本化を心待ちにしていました。噂通りのおもしろさで、一気読みでした。
ソウルで追い詰めたはずの北朝鮮の工作員・チョンは、アメリカと韓国の情報機関員たちの手をすり抜けて、大量の精巧な偽ドル札と共に消息を絶った。そして各国が日本に渡ったチョンの行方を探す中、アメリカ情報機関に関連した「会社」の下請けアナリストの葉山はチョンの日本の「偽装家族」の手がかりを掴むが…
最後の方はボロ泣きでした。厳しい状況の中、北朝鮮と日本の「二つの家族」を守ろうとする北朝鮮工作員の気持ちが、ダイレクトに響いてきて心が痛かったです。
もちろん、スパイ小説としてのおもしろさ―複数の組織の思惑と駆け引き、情報戦―も一級品でおもしろいので、今の社会情勢から「北朝鮮』という国に興味を持ったのであれば、一作目の「プラチナ・ビーズ」から読んでみてはどうでしょうか。もちろん、この作品はフィクションだということは分かった上で、の話ですが。


●「A君(17)の戦争4 かがやけるまぼろし」豪屋大介[富士見ファンタジア文庫]620円(02/11/22) →【bk1】

「A君(17)の戦争」のシリーズ4作目。
いかにも苛められっ子の冴えない少年が、なぜかアニメ的な異世界に「魔王」として召還された。彼の役割は、人間に攻められ、滅亡しかけた魔界を救うことだった…
軟弱ヲタクの皮を被った架空戦記な作品…ですが、この4作目は読み始めて「なんじゃ、こりゃ?」になってしまいました。ネタに困って、物語をひっくり返して、「なんちゃってメタ小説」にして逃げよう…というわけではなく、嘘っぽい、平和で幸せな世界に亀裂が見え始め、「嘘」だからこそ描写することができる「真実」が浮かび上がってくる後半にゾクゾクしました。
こういうネタがやりたかったために、ああいうわざとらしい世界観やキャラ設定にしてたのかな。でもヲタクネタの滑り具合は、テクニックとしてわざとしているわけではないように思えますが。
剛士の行なった選択、その結末がどうなるか続きが楽しみです。
…でも、個人的にはおもしろかったですが、こういう話は一般ウケはしなさそう…


●「レンズマン・シリーズ3 第二段階レンズマン」E.E.スミス/翻訳・小隅黎[創元SF文庫]900円(02/11/21) →【bk1】

スペース・オペラの金字塔である、E・E・ドク・スミスの「レンズマン・シリーズ」の新訳三作目がでました。コンスタントに半年に一冊ペースで刊行されるのは嬉しい限り。
銀河を舞台に、宇宙犯罪を取り締まる「銀河パトロール」と中心的存在のレンズマンと、海賊組織ボスコーンの死闘を描いた作品。とにかく派手でパワフルな話。今回はなんといっても新キャラ・ナドレックが素敵すぎます。4人目の第二段階レンズマンにして、臆病な冷血人間。15年くらい前に旧訳で読んだときにはさほど魅力的に思えなかったんですが、当時の私には彼の魅力はわからなかったんだろうなあ。
さて、次は「レンズの子ら」。半年後には読めるんでしょうか?


●「風よ。龍に届いているか 上/下」ベニー松山[創土社]1650円(02/11/14) →【bk1】上/

本のタイトルだけは知っていました。かのコンピータRPG・往年の名作「ウィザードリィ」シリーズのノベライズのこの作品は、ノベライズという枷を外してファンタジーとして読んでも名作であると… そう評判は聞いていたものの、一度も実物はお目にかかったことがありませんでしたが、それもそのはず刊行された1994年、諸般の事情で初版のみで絶版となったとのこと。今回、その物語「風よ。龍に届いているか」とその外伝である「不死王」を加えてハードカバー2冊で復活しました。
世界的に起こる異変の原因を探るため、森羅万象の理を映し出すという伝説の宝珠を求め、冒険者たちはスケイルの迷宮に潜り、目的の宝珠を手に入れることができた。しかし分かったことは、来るべき破滅が避けられないということだけ。時を同じくして現れた得体の知れない化け物、破滅が近づく世界で冒険者たちは何を求めて戦うのか?
ウィザードリィのPC版のシナリオ3、ファミコン版では2の「リルガミンの遺産」を元にしたオリジナルストーリー。私はウィザードリィはファミコン版の3→1とGB外伝1しかプレイしていません。この話の元となる2はやってなかったことと、記憶が曖昧になっていたこともあって、冒頭の世界観や歴史的背景の説明部分は読みづらい部分がありましたが、実際の冒険が始まると物語にぐいぐい引きずりこまれて一気読みでした。滅びを前に戦いぬくことを選んだ男たちの熱さがダイレクトに心に響きました。おもしろかった。「小説版ウィザードリィ 隣り合わせの灰と青春」で気になったぎこちなさはすっかり拭い去れていましたし。
かつてウィザードリィに夢中になった人だけでなく、そうでない人でもぜひ読んでほしいものです。ただしウィザードリィをプレイしたことがない人にはゲームシステム部分の説明(属性とか魔法のレベルによる回数制限問題など)に違和感を覚えるのではないかと思いますが、そのあたり「こういうものだ」と割りきれる人であれば大丈夫かと。
お値段は高いですが、それに価する濃密さがある物語なので。
マイナー出版社ゆえ、書店で見かけることはまずないかも。確実に手に入れたければ、ネット書店を利用した方がよさそうです。


●「Hyper Hybrid Organization 01-02 突破」高畑京一郎[電撃文庫]550円(02/11/10) →【bk1】

「Hyper hybrid organization 01-01 運命の日」の続きが1年半ぶりにやっとでました。改造人間と「悪の組織」の戦い、要するに仮面ライダーネタの話ですが、かなりビターで「裏・仮面ライダー」な話です。今回は「ショッカー養成所」の話。
口絵イラストが青年とオッサンばかりで、最近の「萌え」要素が強い電撃文庫とは思えないほどですが、私にとっては「戦う男たちの熱い絆や憎しみ」がじっくりと描かれていて大満足でした。燃えた、萌えた。
これでコンスタントに出版されればいいんですが…雑誌電撃hpでの外伝も、どうも休みがちになっていますから。速見さんがユニコーンに身を投じるきっかけとなったエピソードとか知りたいのになあ。とにかく、じっと待つしかないんでしょうね。


●「パラサイトムーンV 水中庭園の魚」渡瀬草一郎[電撃文庫]630円(02/11/09) →【bk1】

「パラサイトムーン」シリーズ最新刊。今回もおもしろかったです。
このシリーズは、「迷宮神群」と呼ばれる神々と、それらから影響を受けて「力」を持った人々が神群を狩るために作った組織《キャラバン》と、それらに巻きこまれて翻弄される人々を描いた、現代が舞台の伝記小説です。今回も前作に引き続き「実験室の子供達」ネタ。燃えたし、萌えた。新刊ででて、新しい事実が判明するたびに最初の巻から読みかえしたくなるし、読みかえすと更に新しい「絵」が見えてくるのがおもしろいです。
次巻は、今まで名前しかでてこなかった大物が登場するとのことで、本当に楽しみ。さて、誰かなあ。
設定が細かい分、「誰か神群と登場人物をまとめた解説サイトを作ってくれないかなあ」と思っていましたが、迷月亭といううまくまとめられたサイトがありますので、これからは分からなくなったらここを見れば大丈夫。ありがたいことです。
イラストがいかにも「美少女萌え」なんで最初から敬遠する人もいそうですが、世界の作り方、物語の容赦ない展開もおもしろいので、興味があったら読んでほしいです。
読むならシリーズ1冊目「パラサイトムーン 風見鶏の巣」から。でも1冊目を読んだ段階ではかなり意味不明だと思います。2冊目「パラサイトムーンII 鼠達の狂宴」から世界が見えてきておもしろくなりますので。


●「流血女神伝 砂の覇王9」須賀しのぶ[集英社コバルト文庫]533円(02/11/01) →【bk1】

流血女神伝シリーズ最新刊にして、エティカヤ編である「砂の覇王」編がいよいよ完結しました。
毎回内容が濃い作品ではありますが、今回の展開もすさまじかったです。山に登るあたりとかとてもよかったので、もっと枚数をかけてじっくりと書いてほしかったけれども、コバルトという媒体ではそういうわけにはわかないだろうし… でももったいないなあ。
敵が単なる無能だったり残酷だったりするならともかく、相手だって悪いわけではなく単にベクトルがズレているだけで、それでも争わなければいけない。誠実な人がどれだけ努力してもどうしようもなかったり、この容赦のなさがこの物語の魅力ではあるのですが… 切ないなあ。
カリエが自分で行なった選択は、果たして本当によかったのだろうか?と思いつつも、とにかく次巻が待ち遠しいです。
このシリーズは元気で過酷な運命と戦う女の子・カリエが主人公の、架空歴史活劇寄りの異世界ファンタジー。…でしたが、最近は神の息吹も物語に色濃くでてきています。科学の発達とともに合理的精神も生まれてきている一方で、気まぐれで残酷な神様はまだ力を失っていない世界。今後、人と人、人と国だけではなく、人と神との大きなうねりのある物語になるではないでしょうか。
非常におもしろい一級のエンターティメントなので、興味があれば「流血女神伝 帝国の娘 前編」「〜後編」から。
さて、ネタバレ感想→シャイハンのイメージがかわったお話でした。でもさよーなら〜(泣)。ムイクルも切ないですのう… イウナもかわいそうで。彼女の場合、生き残った方がもっと辛いことになるのは確かですが。
カリエの子供が生まれるのが即位して2年後というのは、父親はサルベーンではなくバルアンってことなんでしょうね。バルアンならカリエがいつの間にか処女を失っていたことを知っても、まあなんかあったんだろ〜程度で気にしないかなあ。それとも相手がサルベーンだと感づいていたりして。
さて、カリエが子供を産むことで月が満ちましたから、いよいよ女神様のお出ましですね。これからはザカール編ですから、ラクリゼ弟が月の満ちたカリエをザカールの村へ連れ去ろうとするんでしょうか。ラクリゼは果たしてそれを阻止できるのでしょうか。
カリエの子供が男の子ということで、エドはその子にアルの面影を見出して「この方に自分の全てを捧げてお仕えします」と盛りあがってそうな気がする。幸い、賢君になるようですから、本望でしょう…


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