03年01月に読んだ本。   ←02年12月分へ 03年02月分へ→ ↑Indexへ ↓麻弥へのメール
●「天気晴朗なれど波高し。2」須賀しのぶ[集英社コバルト文庫]476円(03/01/31) →【bk1】

流血女神伝シリーズの番外編、トルーハンとギアスの若い頃の海軍バカ話「天気晴朗なれど波高し。」の続編です。
のっけから、前作よりもバカ度がアップ。本を購入して、つい帰りの電車で読み始めてしまったんですが、笑いを堪えるのが辛かったです。外で読むには危険な本でした。かといって家まで我慢できなくて。その一方で、叶うことのできない恋や、個人の力ではどうしようもない世の中の仕組み、そういうのにやるせない気持ちになりながらも、自分のできる範囲で精一杯楽しんで生きているキャラが素敵でした。
これを読んだ後に本編を読みかえすと、そのときにはよくわかってなかった、彼らの「その後」にしみじみとしてしまいました。トルーハンにしても、ギアスにしても、こういうバカな時代を共に過ごしたからこそ、何年も会わなくても、敵味方の立場に分かれても、あれだけ互いを信頼できるんでしょうね。本編でのふたりのその後が、納得のいくようなものになりますように。
少々ネタバレかもしれない感想。→トルーハンの「代償」はギアスになるのではないかという不安が… ギアスも体を壊している以上、それほど長くはないのでしょうが…


●「ホラー・アンソロジー 悪夢制御装置」篠田真由美・岡本賢一・瀬川ことび・乙一[角川スニーカー文庫]514円(03/01/30) →【bk1】

恒例のスニーカー文庫のミステリアンソロジーです。買ったのはかなり前でしたが、目当ての乙一の作品を読んだあとは長いこと放置状態になっていたので、感想は今頃になってしまいました。
●「ふたり遊び」篠田真由美
古城、ひとりの少女、死のにおい、ごっこ遊び、楽園…そういう道具仕立ては好みなんですが、作品としてはもうひとつピンときませんでした。
●「闇の羽音」岡本賢一
生きながらにしてああいう思いを味わうことを自分の身で想像するともぞもぞしますが、あまり印象に残らない作品でした。
●「ラベンダー・サマー」瀬川ことび
これは結構ヒット。状況はホラーなんだけども、コメディ。30分程度のドラマ化にはいいんじゃないかなあ。
●「階段」乙一
見事です。日本は住宅事情ゆえに、階段が狭くて急勾配になっているから、降りるときに怖い思いをしたことは誰にでもあると思うのです。そういう日常の怖さを、これだけの心理的な恐怖に増幅させるのがうまいなあ。
父親による精神的な虐待にしても、「行き過ぎた教育熱心」の範疇におさめることができる範囲だけにかえってタチが悪いんですよね… 「死にぞこないの青」でもその逸脱しすぎてない暴力ゆえの恐怖というのを描いていましたが、それを読者に自分の肉体や精神の延長線上にあるように思わせるのはうまさというよりは天性のものかも。


●「邂逅のハレス海 アグラファ4」三浦真奈美[中央公論社C★NOVELS]900円(03/01/28) →【bk1】

「アグラファ」シリーズ四冊目。魔法なしの架空歴史ものです。
不本意ながらも、それぞれの国において命運をかけた戦いの将となった、ミオとアイン。今回はふたりの久々の邂逅、そして初対決になるんですが、海戦のシーンのボリュームが少なかったこともあって少し物足りなかったです。
それにしても前面の敵よりも後方の味方の方が厄介という状況は、読んでる方もストレスがたまるものですが、次の巻ではふたりともそのあたりで苦労しそうです。
それにしてもこの作品の落としどころはどのあたりになるんでしょうね? ミオにとっても、アインにとっても、それなりに納得のいくような結末になればいいんですが。


●「どんどん橋、落ちた」綾辻行人[講談社文庫]590円(03/01/19) →【bk1】

5つの「本格ミステリコードぎりぎり」の短編が5つ入った短編集です。
3年ほど前にハードカバーで出たとき、綾辻行人の昔に書いた伝説の(?)「バカミス」を元にした話だというので、ハードカバーを買ってまで読む気になれませんでした。文庫本化に伴い、購入。
表面的には、ミステリ部分はかなり「ふざけた」作品になっています。でも、綾辻さんの作品をずっと読み続けてきた人には別の部分が見えてくるようになっています。私が新本格のミステリを読み出したのは、全盛期から袋小路にさしかかるあたりでしたが、それでも鮮烈なデビューを果たした作家さんたちの苦悩・行き詰まり・変化などを見てきただけに、読んでて感慨深かったです。
読む人を選ぶ作品ではありますが、バカミスが好きか、もしくはかつて新本格ミステリを読みふけったことがある人にはオススメできるかと。


●「ファンタズム」西澤保彦[講談社NOVELS]760円(03/01/07) →【bk1】

西澤保彦の新刊。
印南市で発生した無残な連続女性殺人事件。被害者の口には別の女性の名前が書かれてあった。指紋やその他の犯人の証拠は山のように残っていても、犯人の足取りはまったくつかめなく、まるで幻のようだった。そして各地で起こった事件をつなぐ糸が見えてきたが…
作者前書きによると、この作品は幻想ホラー小説の方向性を模索してたけれども別の方向にいったかも、と書かれていましたが、たしかにミステリというにはアレだし、幻想ホラーというのも違うような。
ミステリ的な趣向もあるものの、不可解状況の答えがアレですから…
ほんの少し彼岸にいってしまった人間の"異常心理"を味わいながら、自分は本当に「こちら側」の人間なのかどうかを問いかけるにはいいかもしれません。
某シリーズと繋がりのある作品のようですが、あのシリーズって好きなんだけどもそれほど細かく読んでないから、どういう繋がりになるのかが分かってなかったりします…


●「源氏がたり(ニ) 薄雲から幻まで」田辺聖子[新潮文庫]514円(03/01/03) →【bk1】

「源氏がたり1 桐壺から松風まで」の続きで、光源氏の物語の終わりまでです。私がこの後半部分で好きだったのは、明石の姫君入内の時に互いのことを理解しあえるようになった紫の上と明石の君のエピソードでした。でも一番好きな女人は、高校当時はなぜか花散里だった記憶があります。今なら朧月夜かなあ。
それよりも、今回この本を読んで印象に残ったのは、朱雀帝のあまりの報われなさだったり。あれだけ源氏を慕っていても、源氏の方はつれないもんなあ。


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