03年11月に読んだ本。   ←03年10月分へ 03年12月分へ→ ↑Indexへ ↓麻弥へのメール
●「きみがいなけりゃ息もできない」榎田尤利[ビブロス]850円(03/11/28) →【bk1】【Amazon】

↓に同じで、「癒されたい〜」と本屋を探して、またしても安心して読める作家さんの本を買ってしまいました。いい加減新規開拓をしなきゃ…
生活能力ゼロの二木了は「豪徳寺薫子」としてマンガを描いていたが、弱小出版社のマニア雑誌に掲載されているだけ、極一部にマニアックな人気はあるものの全く売れていなかった。幼なじみで画商の東海林達彦は、見かねて幼稚園児のような二木の世話をやいていた。そんな二人の関係は、二木にメジャーな出版社の雑誌からの執筆依頼が来てから少しずつかわっていって…
どーしようもないダメ人間だけれども才能はある受と、そんな受を罵倒しながらも世話を焼く攻という「依存関係」というモチーフはボーイズラブでは定番。それほど好きなシチュではないものの、榎田さんの話では単に攻が受を甘やかしているだけではなくて、互いに自立しようという成長もみられるから安心して読むことができます。
ダメ人間受の汚い部屋の描写がとても愉快でした。


●「神様に言っとけ」榎田尤利[大洋図書SHY NOVELS]860円(03/11/27) →【bk1】【Amazon】

なんだか疲れていて癒されたい気分でボーイズラブが読もうと本屋の棚を漁ってたんですが、自分好みのシチュやカプを探すのが面倒になってしまい、結局"安心して読める"作家さんのを選んでしまいました… もうちょっと頑張って新規開拓しなきゃダメなんだけど。
冷酷なヤクザ・惣田は女に刺されて死にかけていたときに、天使から契約を持ちかけられた。惣田が純粋な魂の持ち主と愛を交し合うことができたら、生き返ることができるという。その条件を飲んだ惣田は大学生・清水陽一の体に魂を入れられて、天使の指定した「純粋な魂の持ち主」がいるという花屋にでかけた。その相手は眼鏡をかけておどおどとした冴えない青年で…
一見クールなヤクザ×シャイなメガネくんな花屋のお話。カプとしてはそれほど好みではないけれども、互いに(別の意味で)不器用な攻と受が少しずつ気持ちを交わしてゆく話というのは読んでて癒されます。
ちなみに挿絵は紺野キタさん。繊細な絵で素敵でした。


●「キャッチセールス潜入ルポ ついていったらこうなった」多田文明[彩図社]1200円(03/11/21) →【bk1】【Amazon】

「アンケートにお答えください」「絵をみていきませんか」「英会話に興味はありませんか」とか、道を歩いているだけで色々と声をかけられます。私はキャッチセールスは全部無視なので被害にあったことはありませんが、この手の体験談には興味をもってしまうので、つい購入してしまいました。
エステから悪質芸能事務所までの20の体験談。おもしろかったです。悪徳を見抜くためのポイントや、勧誘にあった際の脱出方法のアドバイスも巻末に載ってます。
ネット上でもキャッチセールスや悪徳商法の体験談を読むことはできますが、本になっていることでお手軽にまわし読みができますので、消費者教育のテキストしてもオススメです。


●「A君(17)の戦争6 すべてはふるさとのために」豪屋大介[富士見ファンタジア文庫]660円(03/11/21) →【bk1】【Amazon】

「A君(17)の戦争」シリーズ最新刊。楽しみにしているシリーズなので、購入してすぐに読了でした。
いかにも苛められっ子の冴えない少年が、なぜかアニメ的な異世界に「魔王」として召還された。彼の役割は、人間に攻められ、滅亡しかけた魔界を救うことだった…という、軟弱ヲタクの皮を被った架空戦記な作品です。
今回の話は魔界側が攻勢に出ているので、わりと気楽に楽しむことができました。でも年が明けたらまた辛い状況が続くのでしょうが。
毎度感想に書いていますが、ヲタクネタは読んでて辛い。でも「戦争」についての話は表層的なものじゃないのが面白かったです。ひそかに一番の見所は作者が想定される読者(中高生)にどうやって噛み砕いて伝えようとするかの努力の跡なのではないかと思ったり。
この世界の「謎」の核心部分に近づきつつあるようで、今後の展開が楽しみです。
それにしても前巻の感想に書いた「極悪非道な戦術」を本当にやっちゃったんですね… あの戦後処理を押し付けられた人は辛かっただろうなあ…


●「欺術 史上最大のハッカーが明かす禁断の技法」ケビン・ミトニック/ウィリアム・サイモン/岩谷宏:訳[ソフトバンク]1900円(03/11/14) →【bk1】【Amazon】

数々の有名企業のコンピュータに進入し、1995年にFBIに逮捕されたケビン氏(現在はセキリュティコンサルタント会社の社長)によって書かれた、「ソーシャルエンジニアリング」についての本です。発売当時(今年の6月)に購入していたのに、積読になっていました。
ソーシャルエンジニアリングとは、自分の身分を詐称したり、人の親切心につけこんだりすることで、その人を騙すテクニックのこと。いくら高いお金を出して最新のセキュリティシステムを構築していても、「人」の教育が不十分であれば、そこが「穴」となって機密情報が流出する恐れがあります。
本書の見所は豊富なソーシャルエンジニアリングの(架空の)事例ですが、何気ない情報を踏み台にして、少しずつ核心に迫っていく部分は、第三者的にみるだけであれば、「ミステリ」を読んでるみたいでおもしろかったです。でも、それが自分の身にもふりかかる可能性があるものであるのですから、そういう視点で見ると怖い本です。
私自身はそれなりにソーシャルエンジニアリングについての知識はあると思っていましたが、それでも「これをされたら私も騙されちゃうかもなー」と思ってしまうようなものもありました。ソーシャルエンジニアリングの防御法は、具体的な事例を頭の片隅に留めておいて、危ない状況になったときに「警告」メッセージが頭に浮かび上がるようにすることですので、会社勤めの人は一読しておくべき本ではないかと思います。
巻末にソーシャルエンジニアリングに対抗するためのセキュリティポリシーの一例も載っています。これが最低限やらなきゃいけないことなのは十分にわかりますが、実際にちゃんと実行できる会社ってどのくらいあるんだろう…


●「Hyper Hybrid Organization 01-03 通過儀礼」高畑京一郎[電撃文庫]550円(03/11/10) →【bk1】【Amazon】

「Hyper Hybrid Organization 01-02 突破」の続編、やっと発売されました。
「正義の味方」である改造人間・ガーディアンに恋人を殺されてしまった青年・山口は、復讐のために「悪の組織」ユニコーンに身を投じた。無事に「戦闘員養成所」を卒業した山口を待ち構えていた過酷な任務とは…
何度も発売延期になっていたこともあって、発売を待ちわびていました。でも本屋でみた瞬間、「イラスト変わってるッ」…と。残念です。
今回はユニコーンの幹部達が続々登場、雑誌「電撃hp」に連載中の外伝とも少しずつつながってくるのにワクワクしました。でもなぜ藤岡と「ユニコーン」は戦うことになったのか、「ユニコーン」の目的はなんなのか、外伝と本編の間はまだ全然埋まっていないので、早く続きが読みたいです。
でも次は1年後かしら… 外伝も連載を休みがちだしなあ。
最近の「萌え」要素が強い電撃文庫とは思えないほど、男くさくて燃えるシリーズで素敵です。といいつつ、「戦う男たちの熱い絆や憎しみ」がじっくりと描かれているのが私にとっては萌えだったりしますが。


●「シックス・ボルトII」神野オキナ[電撃文庫]630円(03/11/10) →【bk1】【Amazon】

前作からほぼ1年ぶりとなる、「シックス・ボルト」の続編。「スターシップトルーパーズ」や「ガンパレードマーチ」に刺激されてできた、極限状態の中で明日を信じきれないけれども必死で戦う少年・少女たちの物語。
「管理者」から地球人に押し付けられた戦争。選ばれた少年少女たちは、異星人である「権利者」から貸与された武器を用いて「権利者」たちの代用存在と一定のルール下で戦わけなればいけない。人類が勝利をおさめれば文明の仲間入りができるが、負けてしまえば滅ぼされてしまうのだ。
万が一亡くなっても"クローン"として蘇ることができる、数の上だけでは誰も死なない戦争。その「絶滅戦争」がついに日本でも始まってしまった。激しい戦いの末、圧倒的な力を持つ「聖痕者(スディグマズ)」として覚醒した由宇。しかし、軍の上部は一人でも多くの「聖痕者」を生み出すために、わざと宇由を戦闘に参加させず、凄惨な戦場を意図的に生み出してゆくのだった…

うわー、なんてえげつない話を書きますかっ!! (←最大級の褒め言葉)
前作も相当悲惨な話でしたが、圧倒的な力を手に入れても、それが不幸につながってしまう今回の由宇くんが不憫です。でも、その過酷さが素敵。
来月に「III」が刊行されますが、そこで今回にでてきた様々な謎が解明されるのでしょうか。


●「あなたの話はなぜ「通じない」のか」山田ズーニー[筑摩書房]1400円(03/11/06) →【bk1】【Amazon】

ほぼ日刊イトイ新聞にて「大人の小論文教室。」の連載を持ってる山田ズーニーさんの、「伝わる・揺さぶる!文章を書く」に続く二冊目の本です。
帯には『「自分にウソをつかず相手を説得したいのに…」とお悩みのあなた。』と書かれていますが、この本のポイントは「自分にウソをつかずに」の部分。楽して近道をしたい、相手を操るための表面的なテクニックを知りたいだけの人にはこの本は向いていません。等身大の自分こそを分かってほしいと思いながらも、コミュニケーションがうまくいかずに傷ついてきた人にこそ役に立つ本です。詳しく説明されているのは、「伝わる・揺さぶる!文章を書く」と同じように、自分とじっくり対話し、人と真摯に相対することで「思い」を減衰や歪曲なしに伝えるようにするための、「基礎体力」…「考える力」のつけ方についてなのですから。
前作やサイトでかかれてた話とかぶる部分が多かったですが、でも改めて本でまとめて読むことで、色々と考えさせられました。特に自分の「メディア力」の話とか。
前作の感想でも書きましたが、今回の本も自分のサイトを持って文章を書いている人には特にオススメの本です。


●「クレオパトラの夢」恩田陸[双葉社]1400円(03/11/03) →【bk1】【Amazon】

製薬会社の調査員の神原恵弥は、都落ちした不倫相手を追いかけて東京を離れた双子の妹の和見を連れ戻しに、北海道までやってきた。「仕事」も兼ねて。和見と落ち合った恵弥は、先に用事があるといって葬式に連れていかれた。その葬式は、和見の不倫相手である若槻博士のものだったのだ…
「MAZE[めいず]」の神原恵弥が再び登場。でも前作を覚えてなくても、読んでなくても全く問題はありません。ミステリーともホラーともファンタジーとも思えるような前作と違い、今回はまっとうなサスペンス。でも恩田陸作品の魅力であるイメージの「ゆらぎ」の部分も十分に堪能できる作品でした。
お互いに心の底を探りあうような会話から少しずつ浮かび上がってくる事実。「冷凍みかん」のような不安定なイメージが「世界」を揺さぶる感覚。堪能しました。
それにしても、恩田陸作品は「予感」を感じさせる発端は素晴らしいものの、終わらせ方はどうもしおしおな作品が多いのですが、今回のは物語の閉じ方もいい感じでした。「蛇行する川のほとり」「まひるの月を追いかけて」も閉じ方もきれいで、書くほどにうまくなっていってるんでしょうね。でもその進歩がなぜか寂しく思えてしまうあたり、ファンというのは身勝手なものです。


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