6月に読んだ本。

●「トラブル・てりぶる・ハッカーズ」後池田真也[角川スニーカー文庫](97/6/30)

近未来ネットーワークを舞台にした、ハッカーもの。
第一回角川学園小説大賞受賞作だそうですが…
…なんだか、コロコロコミックあたりに連載していたマンガをアニメ化して、それをノベライズしたような感じの小説。会話のノリが「アニメ的」で…でもさ、あのあまりに説明的なセリフはなんとかしてほしかった(T T;)。悪人がそんなペラペラと悪事を喋るかっ!!主人公たちにしても、独り言、多すぎません(^ ^;)?
あと、ネットの描写が、なあ…ゲームのようで、薄っぺらいんですよ。まあ、未来って設定だし、ハッキングの手口を事細かに書くことの是非もあるから、それはそれでよくても、でもちゃんと世界に統一感がほしいです。ネットで「バトル」をしている時、描写だけをちゃんと読めば、今とあまりかわらない、キャラクターベースの画面でコマンド入力をしてハッキングを行っているように思えるけど、所々「電脳戦士」(笑)してるところがあるのに違和感が…。だったらいっそのこと、ネットに入る時には、そういう「戦士」のような姿になるって設定にして、きちんと説明してくれたらよかったのに。
(ちなみにこれはイラストのせいの勘違いではなく、文章によるシステムの説明がちゃんとされてないことを問題としています。)
ストーリーも先が読めるし…設定にしても、ネットワークのハッカーを主人公にしたものって、それほど目新しくもないでしょ?マンガでは、かなり前からこのジャンルにおいて、刺激的なことやってるじゃないですか。小説でも、ネットワークものでは、「電脳のイヴ」はおもしかったぞ。
とにかく、これがなぜ「角川学園小説大賞受賞」なのかがわからないです(^ ^;)。「The Snaker」をみても選評が載ってなかったし…
賞の価値っていうのは、その受賞作の質と、受賞者のその後の活躍によって決まると思うんですよ。
そういう意味では、この作品は大賞作品にふさわしいとは思えないんだけどなあ…
商業的には、「大賞」という言葉があった方が一時的には売れるだろうけど、こんな調子では、この賞そのものに信頼性がでないだろうから、長い目でみたら損じゃないかなあ…
…とりあえず、次にこの賞の受賞作があっても、私は買わないと思います(^ ^;)。
(同時に受賞作の学園ホラーものを買ったから、それは読みますけど〜)


●「王朝の香り〜現代の源氏物語絵」[京都書院アツコレクション](97/6/29)

うちの近くの本屋に、美術関係のコーナーがある本屋があるんですが、そこで見つけました。源氏の54帖を京都の画壇の日本画家がひとり1帖ずつ描き、また源氏物語について54人の作家のエッセイが載っています。
絵画はおーるカラーで、とてもキレイです(*^ ^*)。エッセイも、有名な人がずらりといて…個人的には、北村薫が「私」(円紫さんシリーズの)が紫の上について語るシーンをかいたものがあったのが一番嬉しかったですね〜。ちなみにヘミングウェイと源氏物語を中心とした物語の予定があるそうです……源氏を賛美する文がある一方で、非難めいた内容のものも、全然関係ないような(笑)文章もあって、バラエティに飛んでておもしろいです。
これだけ豪華な本が、たった1000円で買えていいの?…と思ったけど、これは元々「婦人画報」に連載されていたのをまとめたものだとか。なるほど。この出版社が出している「アーツコレクション」のシリーズは、タイトルを聞いただけでもワクワクするようなものが多くて、これから買い集めて行こうかなあ、って思っています。でも、全国的においてるんでしょうか、この本(^ ^;)。


●「幽霊島の戦士」栗本薫[ハヤカワ文庫](97/6/29)

グイン・サーガの外伝10です。シルヴィアを探しにグインは死者の町・ゾルーディアに赴く…という話です。
久しぶりのグインですね〜。マリウスも久しぶりだし。
今回は、久しぶりにおどろおどろしい世界になってます。久しぶりにヒロイックファンタジーしています。
で、イラストが今回から末弥純さんになっています。天野さんからかわると聞いて、誰になるかと思ってたら、末弥さんだったのね。末弥さんといえば、私にとってはファミコン版の「ウィザードリィ」のキャラデザの人っていうイメージしかありません(^ ^;)。末弥さんの「グイン」の印象は…結構、オーソドックスな感じですよね。正統派って感じ。グインの世界には合ってるんじゃないかなあ、とは思いますが…
末弥さんの書くナリスやイシュトやリンダはどんな感じになるんでしょう?


●「なんて素敵にジャパネスク 1,2」氷室冴子[集英社コバルト文庫](97/6/28)

古本屋で「ジャパネスク」の4〜6を見つけて、パラパラ読んでたら、なんか急に読みたくなったので最初の方も買ってしまいました。
…懐かしいねぇ…私が中学の頃、コバルトは新井素子と氷室冴子の全盛期で、私もご多聞に漏れずハマリましたよ。
今読み返しても、2巻は名作ですよね。野望、謀略、恋、悲劇。よくあの程度の分量で、これだけドキドキハラハラさせてくれますよね〜。ストーリーの先を知ってても、話に引き込まれます。
平安時代をジュニア小説に取り入れたのが、たしか氷室冴子がはじめてだったんじゃないかなあ。今ではジュニア小説もSFも時代小説も、伝奇モノや、ホモ小説までなんでもアリですが、当時では「平安コメディ」って画期的だったんだよねぇ…
もし、万が一読んでない人がいたら、ぜひ読んでくださいね〜。今でもちょっと大きな書店では簡単に手に入りますし。2巻だけでも話はわかりますが、1巻から読めば、より深く味わうことができます。
中学生当時、これを読んで、「いつか吉野に行きたい」って思ってたけど、結局まだ言ってないや(^ ^;)。これを読むと「雪の吉野に行きたい」って思っちゃうけど、雪の頃に行ったら雪しかないし(^ ^;)、来年の桜の季節にでも行こうかなあ。


●「機械どもの荒野(メタルダム)」森岡浩之[ソノラマ文庫](97/6/26)

−−−「機械どもの反乱」以降、文明は低下し、人間はメタルダムにいる「機械」を「狩って」その部品を利用して細々と文明生活を送っていた。ハンターのタケルが捕まえた「スナーク」は、奇妙なことに、意志をもって喋り出した。「私は使者です。あなたの助けが必要です」……
あの「星界の紋章」の盛岡浩之の新作。ソノラマ文庫は守備範囲外だから、教えてもらわなければ気が付かないところでした(^ ^;)。
世界設定から考えると、でてくるキャラはすべてしたたかでたくましくて、しめっぽくないのがいいですね〜。
幼なじみ3人組のやりとりがおもしろいっ(*^ ^*)。チャルもいい味出してるし。
ただ、世界設定がこの手の小説にはありがちだなあ、というのが…それで後半の展開がこうなるっていうのはなかなかおもしろかったけど。
あの「星界の紋章」の作者だけに、世界の構築の仕方がちょっと残念でした。
あと、表紙のデザインとか、イラストがイマイチ。ソノラマはこれだからなあ(^ ^;)。似たようなジャンルでも、電撃文庫の表紙のデザインは凝ってるのにねぇ。(この前の「ブラックジャケット」とか本当によかったもの。)
とにかく、おもしろいのはおもしろかったです。


●「炎風の聖者」柴田明美[集英社スーパーファンタジー文庫](97/6/26)

−−−旅を続けている神官の卵のユリウスに父から手紙がきた。突然、手紙が動きだし、文字を浮かべ、会話ができるようになってしまった。しかも、「紙」は記憶を失っていて…
この「紙」がオチャメです(*^ ^*)。会話がおもしろいの〜。
最後はちょっと切なくて、それもいいです(*^ ^*)。


●「名画感応術」横尾忠則[光文社文庫](97/6/25)

「CLASSY」という女性雑誌に連載していたエッセイをまとめたものだそうです。
評論家ではなく、実作者がどのような視点で絵をみてるんだろう?というところに興味があって買ってみました。とりあげられている作家は有名な人が多いし、美しい図版入りだからとっつきやすいと思います。
サブタイトルが「神の贈り物を歓ぶ」で、主張である「絵画というのは、知識を学んで、理解しようとするものではなく、素直に心をひらいて、“感じる”べきだ」というようなことには大賛成です。
でも……ひとつの絵あたりの文章量が少ないせいか、絵についての解説がオーソドックスなせいか、なんだかちょっと文章は物足りないです。ただ、図版は多いし、それだけで得した気分ですね(*^ ^*)。


●「見仏記」いとうせいこう・みうらじゅん[角川文庫](97/6/24)

やっと文庫落ちしましたね〜。ずっと読みたかった本だったので、嬉しいです(*^ ^*)。
ふたりが仏像をみて回る旅行記(?)です。感覚的にとらえるみうらじゅんと、つい分析をしてしまういとうせいこう。それぞれの独自の見解と、そのせめぎあいがおもしろいです(*^ ^*)。
仏像に興味のある人も、ない人もぜひ読んでください。
新しい仏像の姿を発見することができると思うから。


●「パソコン犯罪から身を守る」谷岡康則[講談社BLUE BACKS](97/6/23)

サブタイトルに「インターネット時代は危険がいっぱい」となっています。
ブルーバックスの本を買うのは久しぶりだなあ。近くにブルーバックスの充実している本屋がないから(^ ^;)。
さて、この本だけど、サブタイトルからもわかるように、商用ネットワークだとか、インターネットで起こり得る犯罪や危険について書いた本です。ある程度キャリアのあるユーザーにはあまりにも当たり前の話や、知ってる話ばかりだろうけど、「インターネットを始めたばかり」という方は、ぜひ読んでください。
ちょっと前は、「インターネット礼讃」のような記事ばかりで、それが最近は「インターネットはアブナイところ」というような感じの記事ばかりなんだよね(^ ^;)。通信の世界も、実際の世界とかわらずに便利でいいところもあるし、危険なところもあるのは当たり前なのにね。
ただ、どういうことをすればどういう危険があるのか、そのリスクは知っておいた方がいいと思うので、自信のない方はぜひ読んでください。


●「亜愛一郎の転倒」泡坂妻夫[創元推理文庫](97/6/22)

端正な顔立ちなのに、どこがぼけっとしたところがあるカメラマン亜愛一郎。不可解な状況に接した時、彼の名推理が冴え渡る。
亜シリーズの短編集です。ちなみに解説は田中芳樹です。
なんとも贅沢な短編集です。ひとつひとつの謎もおもしろいだけでなく、回文にこだわったりという遊び心がきいてます。これが15年も前にでた本とは思えないほど。話にでてくる風俗がかなり古くて、そのあたりはたしかに昔の話だなあ、という感じはしますが。
「亜愛一郎の狼狽」「亜愛一郎の転倒」「亜愛一郎の逃亡」というシリーズで、「狼狽」は同じく創元からでていますし、ぜひ読んでください。オススメです〜。(たしか「逃亡」も近日刊行のはず。)


●「嗤う伊右衛門」京極夏彦[中央公論社](97/6/20)

京極夏彦の描く「四谷怪談」です。
感想は…だらだらと目眩坂を登っていたら、気が付いたら断崖絶壁にいた…とでもいう感じか。
夜が来ると、闇になる。江戸時代は照明が行灯位しかないから、闇との境界があいまいとなる。「あちら」に引き込まれそうな、そんな日常と隣り合わせの闇がひたひたとせめてくるような、そういう感じの怖さかなあ。
私は「四谷怪談」はラフストーリーしか知らないので、どのあたりまでが定石で、どこからが京極流なのかがわからないのがちょっともどかしかったです。うむむ、勉強せねば(^ ^;)。
すでに読了された方は、もしよろしければネタバレ感想を読んでください。


●「勝手に★守護霊!」柴田明美[集英社スーパーファンタジー文庫](97/6/19)

いかにもティーン文庫というような、タイトルと表紙にくらっとして、「パス…」って思ったけど、この作者の本は今までも読んでてそこそこおもしろかったから、一応買ってみました(^ ^;)。
高校1年生の安奈のもとに、突然金髪碧眼長髪の美形の霊がやってきた。彼は私の守護霊なの?…というような話です(^ ^;)。
思ったよりも楽しめました。前半はもたついてて今一つでしたが、後半は結構おもしろかったです。
でも、この作者なら、私は「虹の迷宮」が一番かなあ。


●「ブラッドジャケット」古橋秀之[電撃文庫](97/6/18)

「ブラックロッド」の続編。
積層都市ケイオス・ヘキサンを、吸血鬼の恐怖から救った「ブラッドジャケット」の隊長・アーヴィング・ナイトウォーカーの過去の話です。
前作にもましてパワフルで、濃厚で、読んでてクラクラしました。ハマッた。もー、すっごくいいですぅ〜〜。
オカルトをすべての生活の基盤となり溶け合った世界、独特の言葉、特異なキャラ、それらの醸し出す強烈なにおいが素敵です。血も、肉も、首も飛び散るような話でありながら、結構リリカルなところもあるし。アーヴィングとミラの「隠れ家」での生活のところとか、青春映画って感じで、ちょっと切なくていいんです〜(T T;)。
神父がすごかったよね(^ ^;)。…いやあ、強烈なキャラでした。その分、ロング・ファングの影がちょっと薄かったような(^ ^;)…
私は大満足でしたけど、結構スプラッタな話だし、世界や用語が独特なので一読だけではわかりにくいし、万人に勧められる話ではないんですが…少しでも興味も持ったら、ぜひ読んでください。
前作を読まなくても、この本だけでも話は完結してますし、大丈夫ですよん。
続編もでるのかな?個人的には、降魔局と公安局の確執に興味があるんです。


●「ブラックロッド」古橋秀之[電撃文庫](97/6/17)

ライトノベルズは好きだけど、なんだかちょっと電撃文庫っていうのは避けてたんですよ(^ ^;)。ゲームやアニメのノベライズが多いせいで、抵抗があったのかなあ。
この本は、「ブラッドジャケット」の表紙に惹かれて、その前編ということで買いました。
第二回電撃ゲーム大賞受賞作だそうです。
話は、オカルト分野が非常に発達した世界の話。サイバーパンクな悪魔調伏モノですが、密教、陰陽師、魔女、悪魔、すべてがどろどろに溶け合って、発酵した世界で。…いいんだよなあ…この退廃した世界の空気がなんとも言えずいいです。設定やストーリーが一読ではわかりにくく、言葉使いも独特なせいで、読みにくいといえばそうなんだけど、このパワーや空気を味わってほしいものです。
表紙のイラストいい、口絵といい、カッコいいんです〜。


●「ヴァージン・システム」弓原望[集英社スーパーファンタジー文庫](97/6/16)

帯には、「スペース・バトルアクション」と書いているけど、読んだ印象としては、「ガンダム」から「エヴァンゲリオン」のようなロボットモノをつぎはぎしたような感じの話でした。
世界設定やその描き方が薄っぺらかったのが残念。SF要素がストーリーとうまくかみ合ってなかったような感じがする。


●「いざ言問はむ都鳥」澤木喬[創元推理文庫](97/6/13)

植物学科の助手であり、趣味でバイオリンをひいている主人公・沢木敬のまわりで起こるささいな「不思議」から、主人公の親友の樋口は「事件」を解決する…という、「日常ミステリ」タイプの連作短編集です。
主人公の日常生活の「エッセイ」のような部分は興味深く読めたけど、「謎」部分に関しては、ストーリー本体と色が違いすぎて、なんかその部分だけ違和感を感じる。あと、推理が強引すぎるよ(^ ^;)。
ちょっとこじつけがすぎるような感じがする。事件も血なまぐさいし(^ ^;)。
ちょっと残念でした。

●「電脳のイヴ」町井登志夫[講談社ホワイトハート](97/6/12)

−−第三回ホワイトハート大賞優秀賞受賞作。
舞台は近未来の日本。その頃、アジアを中心に、新しいネット世界が始まりだしていた。「ワープ・ギア」というヘルメットをかぶることによって、3次元、音も感覚も感じられる、「バーチャルリアリティ」を味わうことができる電脳空間。そこで、世界規模の進化し続けるRPGにハマっていた麗子は、電脳空間でできた親友が自殺したことを知る。彼女の死の原因は、このゲームに隠されているのか?…
おもしろかったです(*^ ^*)。このネット空間の手触りがなかなかリアルでいいです。また、「現実」においての主人公の抱える問題、それがストーリーと密接にかかわっているし。結局は、電脳空間にしても、現実にしても、「コミュニケーション」というのが最大の問題なわけで。
ただ、少々残念だったのが…後半部分、話を大きくしようとして、なんか話のバランスが悪くなったような感じがする。あと、このネット、セキュリティどうなってるの(^ ^;)?
そんな簡単に破壊プログラム(もぐらのことね)とか作れていいのか〜?
プログラムはBASIC?

●「声」小林栗奈[集英社スーパーファンタジー文庫](97/6/11)

「呪いの手紙」をモチーフにした、ホラー。…でも、あんまり怖くないです(^ ^;)。
素材のせいか、話の見せ方のせいか(^ ^;)。
途中までサスペンスにみせかけて、オカルトになっちゃうのがなんだか唐突な感じがするし、この人の作品の中でも、今回はイマイチかなあ。

●「メルカトルと美袋のための殺人」麻耶雄嵩[講談社ノベルズ](97/6/10)

“銘”探偵メルカトル鮎の短編集。7つの短編が入ってます。
最初読んでて、「あこぎな探偵やな〜」って思ったんですが(“あこぎ”とは関西弁で、イジワルとか利己的とか、そういう感じの言葉なんだけど…微妙なニュアンスをうまく伝えらない(^ ^;))、読み進むにつれ、「…鬼畜。」と思うようになりました(^ ^;)。
名探偵って、性格が悪かったり、変な奴だったりする人って多いけど、これほど鬼畜な探偵は初めてです(^ ^;)。「翼ある闇」の時もけっこうあこぎだったけど、まさかここまで鬼畜な奴とは(^ ^;)。
ちなみにメルカトル鮎って、真夏でもタキシード着てシルクハットをかぶって、ステッキを持ち歩いているような人です(^ ^;)。…銘探偵の制服なんだそうだ(^ ^;)。
話自体は、事件発覚後の処理はともかく(^ ^;)、トリックとかはそれほど「超絶」でもないんですよねぇ。1本、「それはなんでも(^ ^;)」といいたくなるような、麻耶作品らしい、壊れた話はありましたが。
実は途中から、ストーリーそのものよりも、鬼畜な探偵と、世にも不幸なワトソン・美袋三条くんの、精神的SMにも似た(爆)関係に興味が移っちゃってね〜(^ ^;)。…いいわー、これ(爆)。
しかし、これだけの仕打ちをうけて、殺したいほど憎んでいるくせに、なぜ一緒に旅行とかしちゃうんでしょうか、美袋くん。困った時に頼ったりするし。
このあと、「翼ある闇」をすこし読み返したんですけど、なんかメルってこの話ではマヌケだわ(^ ^;)。
「翼ある闇」のあと、美袋くんがどういう反応をしたのか、知りたいな〜。
この本は、別の意味でとても気に入りました(爆)。

●「英国庭園の謎」有栖川有栖[講談社ノベルズ](97/6/9)

おなじみの火村&アリスシリーズ。表題を含めて、6つのミステリの短編が入っています。
…で、感想は…まあまあ、おもしろかったです。
その中の、いくつかの短編について。
「完璧な遺書」は、アイデアとしてはおもしろいと思うけど、実際アレが反証となるのかは疑問。
「ジャバウォッキー」、なかなかおもしろかったです。あとがきを読むと、別の意味でおもしろいです(笑)。たしかに、あの後の車の運命を考えると…(^ ^;)。
「英国庭園の謎」は、私はターナーが好きで、その流れから英国風景画と英国式庭園の話には元々興味があったから、そのあたりのうん蓄だけでも楽しかったです。…でも、このお屋敷、泉北にあるんですよね〜(^ ^;)。泉北は、私の実家の近くで、ある程度知ってるだけに…。といっても、プールとかパンジョとかいうようなイメージしかなかったりするわけですが(ローカルネタでゴメン(^ ^;))。泉北かあ…泉北と英国式の庭園が結びつかなくて、なんか違和感を感じちゃいました(^ ^;)。

●「砂上の楽園」飛沢磨利子[講談社ホワイトハート](97/6/7)

「隣界ハンター」シリーズの最終巻です。
−−−“少女めいた外見の美少年”の真希と、無愛想な省吾のふたりは、隣世界から空間を超えてやってくる、「客」の対処をする「組織」のハンター。村井というハンター候補が、ふたりの間を引き裂くことに……
感想は、「なんか後味悪いなあ〜」に尽きます。
村井はたしかに嫌な奴だし、ああなったのは当然って気がするけど、でもなんでこういう話がシリーズ最終巻になるかなあ…組織における「大人の事情」は話のリアリティを増すだろうけど、でもこう話の前面に出てきちゃうと、なんだかなぁ…。
こういうことになった事情はわかるんだけど、主人公側がこういう卑劣な(^ ^;)行為に出てほしくなかったです。陰険な話や鬼畜な話は、私は大好きだったりしますけど(^ ^;)、でもこのシリーズでこういう毒のある話は読みたくなかった。
前の結那鬼の話がよかっただけに、ラストがこういう話になって、残念でした(^ ^;)。

●「緑の我が家」小野不由美[講談社ホワイトハート](97/6/5)

待ってました、の小野不由美さんの新作です!!話そのものは、90年に発行した「グリーンホームの亡霊たち」を加筆訂正したものだけど、「グリーンホーム〜」の方は、私が小野さんを知った時にはすでに絶版だったもの(^ ^;)。
話は、高校生の男の子がひとり暮らしをするために、「グリーンホーム」に引越ししてくる。そこで、いくつもの不愉快なイタズラ(?)が続いて…という話。
ホラーです。結構、じわじわとくる怖さです。私がひとり暮らしをしているから余計怖かったのかも(^ ^;)。
さすが小野さん、描写が的確で、こっちの脳裏にくっきりと色々なものがみえるんですよ。だから、150ページのところ、私にも「声」が聞こえちゃって、怖かったですよ〜(T T;)。このときは、歩きながら本を読んでて(おいおい(^ ^;))、まだ外が明るくて人もたくさんいたからまだ平気だったけど、夜中に部屋でひとり読んでいるんじゃなくてよかった(^ ^;)。
ラストでは、ちょっと泣いてしまいました。成仏してほしいものです…無理か…
次作は「十二国記」なんだよね。なるべくはやめに読めたらいいな〜。

●「ゼウスの恋人」あさぎり夕[集英社コバルト文庫](97/6/5)

「ボーイズ・ラブ・ミステリー」なんだそうです(^ ^;)。
でも、ミステリー部分は弱すぎるよ〜。ジュニア小説でも、ちゃんとしたミステリーだってあるんだから、これはちょっと(^ ^;)。
で、「ボーイズ・ラブ」の方は、「美形の生徒会長」と「転校してきた不良」というよくあるパターンなんだもん(^ ^;)。でも、手慣れていて、話は読みやすいです。ただ登場人物と作者の距離が近すぎる、あの地の文が馴染めませんでした。「泉くん」シリーズの番外編ではわりと平気だったのに、なんでだろう(^ ^;)?

●「ミステリー傑作選31 死導者がいっぱい」日本推理作家協会編[講談社文庫](97/6/4)

93年のミステリから選んだ短編アンソロジー集。
とにかく、高橋克彦の「陰の歌麿」を読めただけで元はとった!!って感じです〜。塔馬さん、好きなんですよ(*^ ^*)。それにチョーサクも出てきてるし、なんか得した気分(笑)。「歌麿殺贋事件」は私の好きでたまらない短編集のひとつなんだけど、浮世絵を題材にしたコンゲームです。基本的な浮世絵の知識が必要だけど(^ ^;)、おもしろいので読んでほしいです〜。(高橋克彦の浮世絵シリーズは、「写楽殺人事件」「北斎〜」「広重〜」の順に読んで、そのあとに「歌麿殺贋事件」を読んでくださいね。)
他の話で印象に残ったのは、「密室の職権」(佐野洋)と「ステーション・パーラー」(高村薫)。
「密室の職権」は話そのものよりも、検察審査会の説明や、検索審査法の説明がとにかくおもしろかったです。私、知らなかったです、こういう制度があるって(^ ^;)。
「ステーション・パーラー」は、高村薫の短編を読んだのは実は初めてなんですが(^ ^;)、短編でもこれだけのテンションの高さを持っているのねぇ…圧倒されました。

●「ミステリー傑作選30 もうすぐ犯行記念日」日本推理作家協会編[講談社文庫](97/6/1)

これまた、徹夜並びのために買った本。こういう短編集は細切れで読めるから時間つぶしには最適だよね。
92年、93年発表のミステリから選んだものだそうだけど、今回収録のうちの3分の1は、その作家の短編集で読んでました(^ ^;)。発表日の古さから考えると、それは仕方ないか(^ ^;)。
プロの作家の中から選んだ作品だけに、おもしろかったし、読み応えもあったけど、アンソロジーは“寄せ集め”だから、それぞれの作品の持ち味が相殺しあっているような気がしちゃうのは私の気のせいかなあ…その作家の短編集で読んだときの方がおもしろかったんですよ(^ ^;)。

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