99年2月に読んだ本。

●「怪笑小説」東野圭吾[集英社文庫](99/2/26)

お笑い小説の短編集。
傑作です。いやあ、本当におもしろい。「毒笑小説」の方はまあまあおもしろかったけど、こっちはすっごくおもしろかったです。
どれもおもしろかったけど、個人的に一番気に入ってるのは、「一徹おやじ」です。「おっかけバアさん」はおもしろいけど、人事ではないというか(^ ^;)。
とにかく、オススメですよん。


●「桜闇絵の宴 山百合の地脈」桜沢薫[小学館キャンバス文庫](99/2/25)

パレットノベル大賞受賞作の「青の玉響 山百合の血脈」の続編です。
怨霊退治もので、なんとかの一族系統の作品なんですが、これが結構おもしろかったですす。エピソードの展開の仕方も、あとはキャラもよかったし。前作にちょっとしか出番のなかった鸞が今回はかなり出演しています。海堂さんとのコンビがよかったです。
素直じゃないお子様たちのつっぱり方とかかわいかったし。なかなか今後が期待できそうな作家ですね。この系統の作品が好きな方は、読んで損ないと思います。二作目ですが、前作を読んでなくても大丈夫だろうし。…実際、私も前の話はほとんど忘れてましたから(^ ^;)。


●「ピンポン接待術」清水義範[祥伝社文庫](99/2/24)

ゴルフが禁止された時代、サラリーマンの接待として、ピンポンがはやりだした…という設定の表題作ほか、スポーツをテーマとしたお笑い短編集。イージーリーディングというか、軽く読める作品集になってるので、息抜きにはいいかも。


●「悪魔の花園 帝国猟奇探偵社」流星香[小学館キャンバス文庫](99/2/24)

舞台は昭和のはじめの東京。銀髪の美少年で侯爵の魔魅也は、「帝国猟奇探偵社」をひらいて奇妙な事件の解決をしていた。ある日、男爵家の令嬢から不吉な夢をみるという相談を受ける。その夢は、当主と庭師以外は立ち入り禁止だった、男爵家の秘密の花園の公開を決めてから始まっていたが…
最初はミステリかと思ってたんですが、オカルトだったんですね。この時代の空気が薄かったりするのは残念ですが、いかにもなキャラ設定もそれほど気にならなかったし、悪くはなかったなあ、と。ノリとしては、乱歩の少年探偵団のような感じかも。シリーズものになるのかな?続きがでるなら読みたいです。


●「LIE」榊原和希[集英社コバルト文庫](99/2/23)

「僕らは玩具の銃を手に」で1997年のノベル大賞に入選した作者の第二作。
多重人格の少女がでてくるサイコサスペンス。
……ちょっとこれはまずいんでは?話の展開もイマイチだし、設定の細かいところもちゃんとしてないし。あと、謎解きはある程度はやってほしいなあ。こんな中途半端なまま終わるのはちょっと…
ところどころセンスのよさを感じさせるだけに、残念です。担当さんがちゃんとみてあげてくれなきゃ(^ ^;)。


●「腐蝕の街」我孫子武丸[双葉文庫](99/2/22)

95年にハードカバーででた作品の、文庫本化。
2024年の東京を舞台にした、SFミステリー。死刑執行されたはずの連続殺人犯と同じ手口の犯行が起こった。彼は蘇ったのか…とかいうような話。
これを読もうと思ったのは、「美少年がでてくる」という話を昔聞いた記憶があったので(^ ^;)……で、その目的の美少年くんですが、タイプ的にはアッシュ・リンクスですが、もうちょっとキャラ立ちしてたらよかったんですけど。ミステリとしては…まあまあかなあ。


●「毒笑小説」東野圭吾[集英社文庫](99/2/21)

お笑い短編集。前にハードカバーに出てたんだんだけど、文庫本化したのね。
お笑いとしても「わはは」ではなくて「ふふふ」という感じの話かな。まあまあおもしろかったです。
おもしろかったのは「マニュアル警察」「殺意取扱説明書」かな。
同じようなシリーズの、「怪笑小説」ももう文庫本化してるんですね。探さなきゃ。
巻末に京極夏彦さんとの対談が載ってます。京極さんのデブシリーズは、私はまだ読んでないんですけどおもしろいんでしょうか(^ ^;)?


●「コールド・ゲヘナ」三雲岳斗[電撃文庫](99/2/20)

第五回電撃ゲーム大賞の銀賞受賞作。
ドラゴンとか人型兵器とかがでてくるファンタジーです。
悪くはないなあ、という感じですが、作者もあとがきに書いてあるようにシリーズものの一作目のようで提示されている謎のほとんどが解明されてないんですよね。そのあたりが少々バランスが悪く感じられたというか。
戦闘シーンにスピード感があったのはよかったです。


●「学園武芸帳 月に笑(な)く」白井信隆[電撃文庫](99/2/20)

第五回電撃ゲーム小説大賞の金賞受賞作。
学園モノで、学園を支配する生徒会とか六将軍とか、その黒幕の四天王とかいたり、レジスタンス組織があったりとか、まあそういう話です。
金賞受賞作だけあって、小気味のいい、ノリのいい話でした。途中まではまあそこそこ程度でしたが、最後の方の展開はなかなかでした。


●「毎日晴天!」菅野彰[キャラ文庫](99/2/19)

前の日に続いて菅野彰の本です。これは半年位前に出た本で、当時はノーチェックだったから買ってなかったんです。
出版社に勤める大河の家に、姉と結婚した高校時代の親友で担当している作家である秀が住むこむことに。しかし、突然姉が失踪してしまう。それでも秀は大河たち兄弟と住み続けるが…
シチュエーション・ラブコメディという感じでしょうか。この話はちょっと作為的だよなあ…って思っちゃうけど…でもキャラの作り方や、エピソードの使い方はうまいなあ。
真弓のような、単なるかわいこちゃんに思えて結構したたかなキャラというのは好きかも。続き、いつでるんでしょうか。

●「眠れない夜の子供」菅野彰[新書館ディアプラス文庫](99/2/18)

ボーイズラブものです。話の筋自体は、「小さい頃一緒に遊んだ、初恋の少年と再会して恋に落ちる」というパターンではありますが………いい話だなあ。すっごくよかったです。じれったくて、こっぱずかしい話ではありますが、それでいてじんわりと暖かくなるような、素敵な話でした。
キャラ造形、エピソードの使い方、それが本当にうまいんですよね。大学生という、一番自由でなんでもできて、オトナとコドモの境目にいる頃の、あの雰囲気とそれがいつかは終わる不安と寂しさと。なんだか昔のことを色々と思い出してしまいました。
あと、あの兄貴たちが最高でした!!7人兄弟の話、ぜひ読んでみたいなあ。書いてくれないかなあ。
ボーイズラブ系が平気な人はぜひ読んでほしいし、あんまり好きでない人も気が向けば…ボーイズラブというジャンル小説に終わらない小説ですし。
4月にもこの文庫で菅野さんの新刊がでるんですね。楽しみ。


●「蒲田行進曲」つかこうへい[光文社文庫](99/2/17)

「蒲田行進曲」はちょっと前に読んでたのですが、続編の「銀ちゃんが、ゆく」をどうしても読みたかったんですよ。角川文庫版では全然みかけなかったので諦めてたら、光文社文庫の「つかこうへい演劇館」シリーズのひとつとして、「蒲田行進曲」とあわせて収録されてました。
ちなみに表紙は舞台再演にあわせて、ニシキと草なぎくんのイラストになってます。
「銀ちゃんが、ゆく」は「蒲田〜」の5年後、ふたたび新撰組の映画が収録されることからはじまります。アタリ役の土方を演じる銀ちゃん、女優復帰した小夏、そして小夏の娘のルリ子にふりかかる悲劇。…ずいぶんと辛い話でした。その上、ヤスの扱いが………ひどすぎるよなあ(^ ^;)。個人的には、解説に書いてあった、舞台「銀ちゃんが、逝く」でのラストの方でみたかったと思います。小説版の最後の方は、少々唐突に感じてしまったので。
今週末に舞台「蒲田行進曲」を見に行きます。楽しみだなあ。


●「グイン・サーガ64 ゴーラの僭王」栗本薫[ハヤカワ文庫](99/2/16)

「グイン・サーガ」シリーズの最新刊。
今回の内容はタイトルの通りです。それにしても、やっとこのタイトルにたどり着きましたねぇ。
いやあ、長かった。それにしてもあと36冊で終わるのかしらん、この話…
マルコとイシュトとの会話はなかなか楽しかったです。
アムネリス、やっとの再登場ですが、あの扱い(T T;)。
あと、イシュトが○○になってしまったなんて、びっくりしたなあ……
次はまたマルガでの話でしょうね、タイトルからすると。その次もそうみたいだし…
グインの再登場はいつになるんでしょうか。


●「カナリア・ファイル6 黒耳天女」毛利志生子[集英社スーパーファンタジー文庫](99/2/12)

「カナリアファイル」の続編。
今回は綾瀬側の事情がメインです。思っていたような、単純な「悪の組織」とはかなり違うようで、何がなんだかよくわからないというか(^ ^;)。
単に今までの話を覚えてないってことも大きいかもしれません。
もうそろそろラストが近づいてるそうで、どういう方向に行くのか、楽しみです。


●「愛を乞うひと」下田治美[角川文庫](99/2/9)

あのひろさんも泣いたという、作品です。
孤児院に預けられていた照恵は、10歳のときに母親の元に引き取られた。彼女を待っていたのは、実の母親からの過酷な仕打ちだった。死ぬような折檻を受けながらも、母親の愛を求めた照恵だが…
児童虐待モノでありますが、リアリティと迫力はかなりのものです。この母親が怖いんだわ、これが…
そのようなひどい運命にさらされながらも、心の傷を乗り越えて愛し愛されることを覚えていく、照恵の姿が感動的な作品でした。
あと、「血」というものを色々と考えさせられました。


●「ブギーポップ・オーバードライブ 歪曲王」上遠野浩平[電撃文庫](99/2/9)

「ブギーポップ」シリーズ最新刊。
今度の話は、バレンタイン1日の出来事。「歪んだ」建物である「ムーンテンプル」の観覧イベントに参加した人たちは、「カスタード・パイ」の曲と共に異世界へと連れ込まれた……
話自体も、イラストも今までとは違った方向に向いてるような感じがします。シリーズ全体の変曲点というか。
今回はなんといっても、ブギーポップが最初から最後まで大活躍してたのには驚きました。シリーズ4作目にして初めて主人公らしかったというか。反面、凪の出番が少ないのが寂しかったですが(^ ^;)。
またしても前作までの登場人物がたくさんできてましたが、田中くんがなかなか思い出せなくて困りました。後半に差しかかったところでやっとわかりました。「ブギーポップは笑わない」にでてきた、弓道部の彼だったんですねー。終盤までに思い出せてよかった(^ ^;)。
あと、寺月恭一郎ってなんか記憶に残っているなあ、と思ったら「電撃hp」に載った短編に出てきてましたね。短編の方はなかなかいい感じなので、早く短編集としてでてくれないかなあ。
この話は、正直いって私と波長が少々ズレてるんですが、やっぱり買ってすぐに読みはじめて、イッキ読みをしてしまいました。
それにしてもこの世界って、石を投げたら超能力者か人造人間に当たりそうな気がするんですが(^ ^;)、ブギーポップはそれじゃ一体なんなんだろう??と思ってしまいました。今までの話であれば、まだ「ごく普通の人間」の範疇で済んだかもしれないけど、今回はねぇ…やはり彼も特殊な能力の持ち主であるということなのかなあ。いや、それだけでは終わらないんでしょうけど。


●「きらきらひかる」江國香織[新潮文庫](99/2/9)

アル中で情緒不安定の妻と、ホモの夫と、その恋人の青年。この3人を中心に繰り広げられる、純粋な愛の話です。
映画化もされてますが、この設定から「特定の趣向の女性にウケるためのキワモノ?」と思っちゃいまして、見なかったんですよ。全然そんなことなかったです〜。
愛と信頼だけが頼りの、バランスが悪いけれども透明で優しい関係とふわふわした生活。ただ現実の方が彼らを放っておかなくて。なんだか儚い美しさを持つ、素敵な話でした。
とてもよかったです。


●「夢幻調伏 斎姫異聞」宮乃崎桜子[講談社X文庫ホワイトハート](99/2/8)

「斎姫異聞」シリーズ4冊目。平安時代を舞台にした調伏モノです。
毎夜繰りかえされる悪夢のために、疑心暗鬼となった道長は義明と宮を陥れようとするが…
今回の作品は、結構よかったです。義明と宮の“じれったさ”がなかなか。義明はまっとうすぎてもうひとつ面白味がなかったけど、今回はそのストレートさがうまく作用したのではないかと。
次も楽しみです。


●「真・運命のタロット7 《隠者》は影に」皆川ゆか[講談社X文庫ティーンズハート](99/2/7)

「真・運命のタロット」シリーズ最新刊。
今回の感想は…《戦車》がオチャメでよかったなあ。本当にアロハ姿や海パン姿を拝める日がくるなんて思ってませんでした、はい。《悪魔》と小悪魔たちもかわいくてよかったです。
大河はもっとガツンといかなきゃ(^ ^;)。まだまだだねぇ。
……肝心の本編の内容ですが、今回はよくわかんなかったです(^ ^;)。今までの本を今貸し出し中なので前作を確かめることができないし、今までの話は覚えていないし…で流れがわかんないよ(^ ^;)。ややこしい話がたくさんでてるし……全編出そろってから読み返そう(^ ^;)。まあ今年中には終わりそうにもないし、まだ先のことになりそう。
あと気になるのは、《戦車》の前の協力者はどういう人だったのか、あと人間だったときの《悪魔》ってたしか男だったよね?カインとはなにか関係があったのかな???…それとなにより、《隠者》の出番があるかということ(^ ^;)。今回の出番の少なさって今までの中で一番なんじゃ…
やっと《魔法使い》が復活したし(でもいつの《魔法使い》??)、そろそろ事態は好転するかしら。


●「私が彼を殺した」東野圭吾[講談社ノベルズ](99/2/5)

タイトルからわかるように、「どちらかが彼女を殺した」に通じる作品です。探偵役は同じ方ですし。
結婚式のさなか、新郎が殺された。そのとき、「私が殺した」と心の中でつぶやいた容疑者は3人。犯人はそのうちのひとりだが……という筋書きだけでは二時間ドラマのようですが、話の骨組みやディテールがしっかりしてて、ぐいぐい読ませます。
何も考えずに小説を読む人もいます。たとえそれがミステリであっても、推理もロクにせずに、挿入されている時刻表なんかまともにみずに、とりあえず先に読み続けるような人。こういう感じに、完全に傍観者の立場から流れをみて楽しんでるだけの人っていうのも、少なくないと思うんですよ。私も3割位はそうですから(^ ^;)。
ただ、この作品ではそういう楽しみ方は許されないんですよね。真剣に考えないと。だから、少なくとも二回は読む必要はあるんでしょうね。
さて、私の場合…とりあえず、一回目は終わりました。おもしろかったです。さあ、これから二回目。頑張ってみるけど、きっとミステリ系のサイトを回って、ネタバレを探しているような気がします(^ ^;)。
……すっかりヌルいミステリ読みになっちゃったよなあ…
読むだけの価値はある作品ですが、推理せずにミステリを読む人にはオススメできないかも。

【99/2/6 追記】一応、犯人らしきもの?がわかったので、書いておきます。完全ネタバレ感想はここ。当たってたらいいなあ(^ ^;)。

●「サイケデリック・レスキュー キャプテン・ラスト」一条理希[集英社スーパーファンタジー文庫](99/2/4)

「サイケデリック・レスキュー」シリーズ三作目。水城財閥の私設特殊救助隊のお話。今回は、沈没した貨物船に取り残された乗組員の救出。しかもその船はある組織から兵器の持ち逃げをしていて、危険な兵器がたくさん積んであるし、組織からの追っ手である改造人間の殺し屋も潜伏している…という状況。
このシリーズは結構好きで、新作も楽しみにしてたんですが…もちろん、ハラハラしながら楽しんで読みましたが……ハリウッドのアクション映画で、評判のシリーズの続編を作る際に、より大掛かりな設定になった反面、主人公がスーパーマン化してしまってリアリティが減ってしまう……ような感じを受けてしまいました。
それにしても暮崎さん、何者なんでしょ(^ ^;)。これからは「組織」との対決がメインになるのかな?個人的には智恵と勇気で乗り切る「レスキュー」をもっと読みたいのですが。
そういう意味では、やはり一作目の「サイケデリック・レスキュー」が一番よかったなあ。

●「キル・ゾーン 来たれ、壊滅の夜よ」須賀しのぶ[集英社コバルト文庫](99/2/3)

「キル・ゾーン」シリーズの番外編。待望のエイゼンの過去編です。
表紙のエイゼン、学生服ですよーーーーー!!素敵です(*^ ^*)。
それにしても、エイゼンは昔からエイゼンだったというか。本編のときから、危険な感じのする人だなあと思ってましたが……ユージィン様とは別の意味で、完全に壊れちゃってますねぇ(^ ^;)。…その壊れ方がなかなかよかったですが。
でもエイゼンがこういう人だってことは、キャッスルとの今後がどうなるのか気になります。エイゼンは絶対にキャッスルに惚れてると思うし(本人はなかなか認めないだろうけど)、なにかに執着することを嫌う人だけに、本当にほしいものだと気づいたら、どういう行動をとるのか……なんだか心配だなあ。
時代と心中するハメになったサウルが悲しすぎました。あと、学生時代のメイエはなかなか痛快なキャラでしたね。本編に出てきたときは、あんまり好きではなかったんですけど。あとエイゼン姉が強烈でした(^ ^;)。…さすがあのエイゼンのお姉さんだけありますよねぇ。
とにかく、次のKZ本編が楽しみです。

●「つめたいよるに」江國香織[新潮文庫](99/2/3)

掲示板でよく江國香織さんがオススメ作家として名前が挙がってたので、読んでみることにしました。
「つめたいよるに」は短編集です。透明できれいな感じがする作品です。たしかに、いろんな人がオススメ作家としてあげてるだけのことはありますよね。
個人的に気に入ったのは、「デューク」と「ねぎを刻む」です。


●「やみなべの陰謀」田中哲弥[電撃文庫](99/2/2)

「大久保町」シリーズでお馴染みの田中哲弥の新刊です。ネットでは結構評判いいですよねぇ。
「5つの短編が巧妙に組み合わさってひとつの長編を作る」話です。この人はバカな設定をマジメにやるタイプのコメディ(?)作品を書く方なんですが、今回もどれもなんだか変な話でしたねぇ。
全体の大仕掛けは、「ふーん、そうきたか」…という感じですが、全体的には楽しかったかな、と。
この中だったら、「マイ・ブルー・ヘブン」かなあ。「大久保町」のようなバカ設定がなかなかよかったです。
今回も、「大久保町」にお馴染みの登場人物が出演してますので、そっちを知ってた方が楽しめるかも?


●「球形の季節」恩田陸[新潮文庫](99/2/1)

「三月は深き紅の淵を」「光の帝国 常野物語」で話題になった恩田陸の、「六番目の小夜子」に続くデビュー二作目「球形の季節」の文庫本化。ハードカバーでは5年前にでてました。
私はこの本は人に借りて読んだんですが、好きな作家の作品だし、半分話を忘れてるので、文庫本化を機会に購入しました。
東北のある町にある、ごく普通の地方高校。そこに、奇妙な噂が広がっていた…そして、町では奇妙なことが起こりはじめていた…という感じの話ですが、あらすじに書いてあるような「学園モダンホラー」というのはちょっと違うような感じがします。少なくとも、怖くはないし…ファンタジーかな、どっちかというと。「ホラー」を期待すると、肩透かしを食らうかもしれません。
一度読んだ本ではありますが……ストーリーをはっきりと覚えてないせいもありますが、作者が紡ぎ出す物語の色合いの美しさを存分に楽しむことができました。やっぱり好きだなあ、恩田陸は。波長が合うというか…
こういう、「すぐ近くに別の世界が隣り合わせに存在している」感覚、人工的に発生した「秩序」、「噂」「おまじない」の使い方、それらが描く世界が、いいなあ、と。あとひとりひとりのキャラの立て方、エピソードの描き方もとにかく好きというか。
秘密めいたエピソードの展開の仕方に比べて、ラストがかなり弱い…という部分はありますが、世界観が気に入ってるので、個人的には全く気になりませんでした。
私はすごく好きな作品です。誰でも好きになれる作品かどうかはちょっとわからないですけど(^ ^;)。
恩田陸の、誰にでも好かれそうな作品は「光の帝国 常野物語」だと思いますが、これはハードカバーだからちょっと勧めにくいんですが。
とにかく、今後かなり期待される作家の一人だと思いますし、興味があったら読んでもらえたらなあ、と思います。


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