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【ヒカルの碁 第115局「sai vs toya koyo(4)】 01/05/07

今週のジャンプ。ほう、シャーマンキングアニメ化ですか。まあジャンプらしいバトルマンガだし、うまくアニメ化できればブレイクするかなあ。最初の方は(予選の頃は)結構おもしろかったですもの。
「ハンター」は主人公側の絶対的な正義の否定というおもしろい展開ではありますが、あれやると作者が後々苦しくならないですか? ……とにかく次号も載ってることを祈って。
「ブラック・キャット」はマンガやゲームのありがちストーリーの寄せ集めという印象しかなくて、適当に読み飛ばしてたんですが……今回不覚にも輪くん(僕の地球を守って)似の少年(悪役)に萌えてしまいました。いやどっちかというとあれは秀英からのイメージかしらん? あとドクターにも…あちがち!!と思いつつも、メガネには弱いのよ〜。とにかくこのマンガは世界観のカキワリ加減(文明の発達レベルとか組織のシステムとかそのあたりの整合性のなさ)が読んでて落ちつかないんです。まあ所詮は少年マンガとはいえ、もうちょっとなんとかならないかなあ…元ネタをいろんなところから持ってくるからこんな形になってしまったんだろうけども。
「テニスの王子様」のこの順位は何事〜。…最近の「テニス」は特におもしろいとは思わないけれども、順位が妙に高かったときからそんなにレベルが下がってるとは思わないけどなあ。私にはこのマンガは試合よりも日常生活風景の方が楽しかったりします。

「ヒカルの碁」→第115局「sai vs toya koyo(4)」。saiの可能性についてあれこれ想像をめぐらすアキラ。ヒカルが名人のお見舞いに来た事を思い出し、その考えで頭がいっぱいになってしまう。しかし過去の苦い思いから、それを否定しようとする。まだ自分は進藤とsaiのことを疑っているんだろうか、と。
一方、緒方さん。明かに約束されていた対戦、名人はメールを使えないため(緒方さんはメールのセッティングはしなかったんでしょう)相手とは直接会って対局の約束をした可能性があると考えをめぐらす。十段戦の第4局にきていた相手か、もしくは見舞いにきた誰か…このときに緒方さんの脳裏にもヒカルの姿が浮かぶ。しかし、「sai=ヒカル」の可能性についてはすぐに否定する。なぜなら若獅子戦でみたときのヒカルの対局はsaiのものではないし、ヒカルがsaiレベルであれば院生の頃からもっと騒がれているはずだから、と。ただヒカルがsai本人でなくてもsaiの知り合いである可能性は、ある。ヒカルがsaiの知り合いでなかったとしても、名人とここまでの碁を打つほどの強豪でありながら正体不明のsaiが、身近にいる人と繋がりがあるのだ。「sai いったい 何者なんだ」
若手の勉強会にて、若手棋士にsaiについての心当たりを聞かれるアキラ。ヒカルとのインターネットカフェでのやりとりを思い出すものの、硬い表情で「心当たりはありません」とアキラは告げた。勉強会参加者の面々は、ここまで強い相手は絶対に有名なプロに違いない、中国か韓国のプロでは…?と推測していた。それを聞きながら、アキラはひとり自分の思考に没頭するのだった。saiの百戦錬磨の強さは、進藤ではない…と。2年前のsaiとの対局、あのネットの向こうにいた相手、それはヒカルではない。でもなぜか昔の、出会った頃のヒカルに重なってしまう…
そして名人。対局も終盤にはいり、黒(名人)が有利でありながらこの相手には気を緩めることができないと考えていた。ネット越しに伝わってくる気迫、それがかつてヒカルと新初段戦のときに相対して感じたものと同じであったことに気づく名人。その時、白が放った一手に名人は驚愕する。
saiの一手は黒有利だった状況をひっくり返すもので、意外でありながら打たれてみればそれ以外にはないと思わせるような見事な手であった。形勢は互角、いや名人がいささか不利な状況に負い込まれていた。


うわー、緒方さんっ!! …今回はメガネをとった緒方さんにやられました。美しいっ!! ……清涼院流水氏のJODシリーズという奇妙なミステリのシリーズに、「超絶美形で顔をみたら失神する人が続出なので、警察の要請で常にサングラスをかけている探偵・九十九十九(つくもじゅうく)」というメチャな設定のキャラがでてるんですが、今回の緒方さんをみてそれを思い出してしまいました。緒方さんが普段メガネをかけているのは、その美しさを隠すために…って…すみません、緒方ファンゆえ思考回路がマヒしちゃってるので。先週の私生活といい、こんなに緒方さんがクローズアップされてもいいのかしら。幸せすぎて怖い。そうそう、前に緒方さんの部屋が出てきた時も思ったけども、やはりパソコン机の後ろにある本棚は洋書がほとんどじゃないですか〜。国際アマ碁大会のときも何気なく英語を喋っていましたが、英語はペラペラなんですね。それだけの学歴があるのかもしれませんが、あの色の薄い瞳からして実は祖父母あたりが外国人で、小さい頃はアメリカかイギリスあたりに住んでいた…とかいう設定だったりしたらオイシイかなあ、と。妄想が止まりません。
さて、話をまもとモードにして。緒方さんにはsai絡みの伏線が色々とありますが、今回の緒方さんの予想が一番正解に近いことを考えると(saiはヒカルではないが、ヒカルに近い存在である)、saiの謎について緒方さんは深く関わってくるんじゃないかと思います。直接対局をしてない、脇から見てる方が俯瞰することで真実が見えやすくなるんじゃないかと。saiの正解に辿りつく一番手になってくれることを期待してます…が緒方さんはオカルト否定派なのがネックなんですよねぇ。うむむ。
アキラは即座にネットカフェに突入するかと思ったんですが、そうはならないようですね。やはり何度もヒカルに落胆させられたことで、心理的な予防線を張っているのかな? でもアキラのこと、このまま「sai=ヒカル」疑惑を自分の中に押し留めておけるとは思えませんし、父親を問い詰めるか対局後にネットカフェに向かってしまうか…くらいはするんじゃないかなあ。
佐為の指がきれい。碁を打つ姿はおそらくプロ棋士の人をモデルにして撮影したものを資料にしているのではないかと思うのですが、佐為のモデルはひょっとしてモデルは梅沢さんかな? あの指の形の美しさ、動きの優美さは女の人のものじゃないかという気がしますので。
名人はヒカルとの対局にsaiと同じ気迫を感じてましたが、名人に佐為は見えないだろうから、親子してヒカルとsaiを混同してしまうことになるんでしょうか……そうなると佐為もヒカルもかわいそう。
対局は佐為が有利となりましたが、このまま名人が負けたら本当に引退してしまうんでしょうか? 来週が対局に決着がつき、そして予告によると意外な展開となるそうですから……名人が終局直前に倒れるとか、そういうのは誰もが予想する結末ですものねぇ。ほったさんの腕前に期待しましょう。
来週はまたしてもセンターカラー。…えっ、この前巻頭カラーやったばかりじゃないですかっ!! いくらなんでも小畑先生、働きすぎじゃないですか? ……いくら他の作家さんに比べて原作・ネーム付きだからそのあたりの手間を減らせるとはいえ、週刊誌連載とは思えないあの美しい絵を保ち続けることを考えたら、そんなに余裕があるわけじゃないと思うんですが… カラーは嬉しいんだけども、小畑先生が心配で。あとまた企画だそうですが、今度は日本棋院の紹介とか。またイゴエモン? 日本棋院は「ヒカルの碁」熱が高じて1年ほど前に状況して行ったことがありますが、もうマンガの中そのまんま!! …でファンにはたまらない場所です。関東圏に住んでる方は一度行ってみたらどうでしょう? 「ニセモノの魚」がお出迎えしてくれますよ。

さて、ついでに「赤マルジャンプ」の番外編の話と、コミックス12巻の話。「赤マルジャンプ」には「おごって(ハート)和谷くん」という、森下九段の娘のしげ子ちゃんがプロ試験合格祝いに和谷くんにおごってもらう…3ページのショートマンガが載ってます。短いながらも、森下九段のエピソードなんか結構微笑ましくていいですなあ。たぶんコミックスに収録されますので、わざわざ買うほどのことはないかと。
コミックス12巻は、背表紙が倉田さん(はみ出てる…)で、表紙はヒカル・和谷くん・越智くん・アキラ・冴木さん・緒方さんとなってます。緒方さん初の表紙登場なんですが、緒方ファンとしては複雑…こんな一まとめにされるなんて。中ボスらしくピンで登場してもらいたかったのです。ううう。あと中はカラーや企画の再録が多く、楽しみにしていた「ネームの日々」がひとつもなかったのが残念でした。


【ヒカルの碁 第116局「千年の答】 01/05/14

今週のヒカルの碁。第116局「千年の答」。対局は終盤にさしかかっていた。名人は考える。もう局面は小ヨセに入っている。状況は細かいが一本道だ。しかもこの相手ならばミスをするようなこともないだろう。このままでは自分の半目差負けとなる…そして名人が選んだのは、投了の道だった。
あの名人の負け宣言に驚く観客たち。みんなそれなりの腕の持ち主ではあるが、終盤まで完全に読みきったわけではなく、あまりにも細かい局面のために勝敗のゆくえはまだはっきりとはわかっていなかったのだ。
さすがに緒方さんには名人の負けは見えていたようだが、それでも驚きの色は隠せなかった。名人は沈着に対局をしていた、それなのにさらにsaiはその上をいった。あのsaiの一手、そこからの展開で名人が巻き返す道はあったのか?を考え続ける緒方さん。「sai! 何者だ! sai!」
一方アキラは、「saiは昔のヒカルに似ている」と確信を抱く。「こんなの! なんの答えにもなってないけど!」
対局終了後の佐為は満足そうだった。名人ほどの相手と互いに全力を尽くし、ハイレベルの対局を行うことができた。名人に感謝し、そしてヒカルにも感謝をしようとしたが…ヒカルはなにやら考えこんでいる。そしてヒカルは、名人の終盤の一手について、別の手を示し、そこに打っていれば佐為に勝てたのではないか?と指摘する。動かしようない、ベストの対局だったはずなのに、さらに上をゆく解答を示され驚く佐為。そのとき、佐為に天啓のようにある考えが浮かんだ。「神はこの一局をヒカルにみせるために私に千年の時を永らえさせたのだ」と。


今週もセンターカラー。扉絵のヒカルの質感と躍動感がすばらしいです。でもこんなに頻繁にカラーで大丈夫かなあ。
さて、今回はまさにこのマンガが「ヒカルの碁」であることを思い知らされました。あまりにも早すぎる頂上対決には、こういう意味があったとは。「ヒカルの碁」はヒカルと佐為はW主役ぽい構成となってますが、ヒカルは「碁」について佐為という「初めから最強」キャラに引きずられてる部分があったんですよ。今回の対局も佐為のためのエピソードかと思ってたんですが、実はその対局もヒカルの可能性を示す踏み台となるものでした。
佐為が何度も自問した「なぜ神は私をヒカルの元に降臨させたのか」の答えがこんなところででてくるとは思いませんでした。ヒカルの才能については、今までには「記憶力、集中力がすごいこと」「おもしろい発想の手を打つときがある」(一見悪手)ということが描かれてきましたが、佐為や名人、アキラなどに比べるとそれもさほど光るものではなかったように思います。それが今回は名人や佐為のヨミよりもさらに上をいく可能性を示しました。もっともそれをもってすぐに「ヒカルは佐為より強い」とは言えないでしょうが。今の段階ではヒカルは時折すばらしい閃きを見せますが、一局すべてにおいて最善の手が打てるほどヨミが強いわけではないでしょうし。私が思うには、ヒカルは理屈よりも感覚的に一手が浮かぶのではないでしょうか。要するに天才型。碁の神様と対話する可能性を秘めてるのでしょう。竹本健治のマンガ「入神」(南雲堂 905円)を思い出します。あそこでいうと桃井タイプなんじゃないかなあ。ちなみにこの話も神の一手を極めるために見せる棋士たちの執念の一局の話。作者は本業が小説家なので絵はうまくないんですが、とにかく話はおもしろいので興味があったら読んでみてくださいませ。

さて、今後の展開。まず名人は引退するでしょうね。あの人も頑固そうですから、前言を翻すとは思えない。でもあの五冠の名人が第一線から退くハメになるとは…名人は本来想定されたラスボスだったはずですよ? さすが、ほったさん。豪腕と呼ばれるだけのことはあります。
で、名人が引退したら、緒方さんが不戦勝でタナボタで十段ゲットなんでしょうか。緒方ファンとしては待ちに待ったタイトル獲得ですが、こんな譲られたような形でのタイトル取得は不服です。できれば緒方さんもそんな自ら奪ったのではないタイトルなんか拒否してもらいたいものですが…
アキラはまたしてもヒカル自身ではなく佐為の方をみてしまうことになりましたね。せっかくヒカルそのものを見てくれるようになってきたのに…またしてもヒカルとアキラの絆がこじれることになりました。でもアキラは家に帰ったらやはり父親を問い詰めるのかしら? でも名人は口外しないと約束した以上、絶対に言わないだろうなあ。
その名人にしても、ヒカルと佐為のことを混同するハメになりそうです。名人もこのままでは引き下がれないと思いますが、どうするんでしょうねぇ。
1年半前のsaiの活躍くらいなら囲碁マニアの間で語られるくらいで済んでますが、五冠の名人が突然引退、しかもそれは正体不明の棋士・saiにやられたせいだとなったら囲碁界に留まらず、一般マスコミまでsaiの正体について騒ぎそうな気がするんですが…そうなったらヒカルもうっかりネット碁ができなくなるから、またしばらくsaiは人と対局できないかも。
今週号を読んで私が一番心配したのは、佐為消滅の可能性。…あの囲碁への執念の化身のような霊が、「本因坊秀策」として数多の名局を打っても満足しなかったあの佐為が、名人とのたった一局で「神の一手」を極めて成仏するとは思ってないんですが…でも今回「神が自分に与えた役割」を悟ったことで「私の役割を終えた」と消えちゃわないかなあと不安になりました。普通の少年マンガでは、実質一番人気キャラを途中退場させることはまずありませんが、加賀くんの再登場はなく伊角さんをプロ試験に落してしまったほった先生のことですから、何があってもおかしくないし。…という気持ちがあるのも確か。どっちにしてもこのマンガがヒカルの成長を描く「ヒカルの碁」である以上、いずれ佐為はヒカルの元を離れ、ヒカルは自立しなければいけないのですが、それはもっと先ではないかと思ってたんです。ヒカルが佐為を負かすことでやっと成仏できる、と。いわゆる「佐為ラスボス」説ですね。でもほったさんが誰でも考えつくような展開に素直にする方とも思えないですし… 展開的には、ここでヒカルが佐為を失うことで自立を強要されるのもおもしろいかと思うんです。世間は佐為の存在に騒ぐだろし、塔矢親子もヒカルをsaiではないかという疑惑を持っている。そんな中で、本当のsaiは消失してしまった…というのも。でもそれよりも、佐為がヒカルの元に留まって、ヒカルと佐為の変化していく関係、その葛藤もちゃんと描ききってもらいたいという気持ちの方が大きいですね。
ものすごく失礼な言い方になってしまいますが、ヒカルのところに降臨したときには佐為にとってヒカルは自分が「神の一手を極める」ための外部へのアクセス手段でしかなかったのではないかと思っています。…そのためヒカルに「打たせて貰えない」ことで、元々ヒカルなしでは他者へ意思さえ伝えることができない佐為はアイデンティティの危機を感じるようになりました。それで1度ヒカルとやりあって、それで気まずくなったこともあって、今回の名人と佐為の対局が実現したわけですが。
佐為にとっての価値は今回の件である意味ひっくり返ってしまいました。アキラの新初段戦のあと、佐為は「塔矢アキラという存在はまるでヒカルを成長させるために神が用意されたかにみえる」と感じていますが、まさか自分までヒカルのために用意された存在であると考える日がくるなんて、思ってもいなかったでしょう。もちろんこれは佐為がそう感じているだけであって、各キャラはそれぞれ主体的に存在し、行動しているわけですが。でもこの日を境に佐為とヒカルの関係もまた微妙に変わるでしょう。佐為にとってヒカルは自分の弟子からライバルになっただけではなく、囲碁の神様の寵愛を巡る相手にもなってしまうわけです。
ただ佐為というキャラは、自分を陥れた相手への恨みではなく、純粋に囲碁を打ちたいとう一途な思いゆえに怨霊化したほどの存在です。囲碁の神が選んだのが自分ではなくヒカルなのではないかと思うようになっても、囲碁への思いは絶対に捨てられないはず。一時的には物分かりよくヒカルの師匠でいることを選んだとしても、いつか必ずヒカル以外の相手とも真剣な対局をしたいという思いが押さえられなくなるでしょう。そのときに自分が佐為と混同されることをよしとしないヒカルとの間に深刻な溝が生まれるかもしれません。「ヒカルの碁」の初期設定からするとこの問題は避けて通れないはずですので、ほったさんにはそのあたりを真正面から語っていただきたいものです。この辺りはすでにいくつも伏線が引かれていますから、なんらかの形で描かれると思っていますが。

今週も絵に力があって素晴らしいです。絵から微妙なニュアンスまで伝わってきて。佐為の表情、しぐさも美しいのですが、今回のベストショットは「どう!? 佐為」と言ったあと振り向いたヒカルの顔ではないかと。あの表情。力強い、まっすぐな瞳。…いい顔してるなあと思います。何百と費やした言葉よりも、たった1枚の絵でキャラの気持ちを雄弁に語れる小畑先生の画力に乾杯。

予告は「名人の病室でヒカルを待っていたものは…!?」 まさか名人の体調悪化なんて事態じゃないですよね? それだけは絶対嫌だけども、ほったさんはそんな読者が誰でも思うような展開にはしないとは思います。じゃあ、どうなるんだろう…来週が待ち遠しいです。


【ヒカルの碁 第117局「発覚」】 01/05/21

第117局「発覚」。名人が投了を宣言しsaiに負けたこと、そしてsaiの強さに驚く世界中の観戦者たち。アキラが行ってた若手の研究会ではさっそく今回の碁の検討を始め、「saiはアマじゃないよ」などと話しあっていた。アキラはひとり食い入るようにパソコンをみつめながら、父親のことを思っていた。緒方九段は、saiの名前を呟きながら、タバコの箱を握り潰していた。
その日の夜、自宅で佐為に話しかけるヒカル。前に佐為は「打ってる者にしか一番深いところは見えない」って言ってたが、今回の対局ではヒカルは名人と佐為のちょうど真ん中にいたような感じで、ふたり共の考えが分かっていたのだと。そのときになってやっと、ヒカルは名人の「負けたら引退する」という言葉を思い出して青ざめる。
翌日の日曜早朝、ヒカルは名人の入院する病院を訪ねた。なんだか上の空の佐為に文句をいうヒカル。病室には名人と夫人がいたが、名人は夫人に席を外してもらうようにお願いする。ヒカルは今回の名人引退宣言をなんとか冗談としてごまかしてもらおうとするが、それに対しての名人の言葉は「saiはキミか?」という鋭いものだった。慌てて否定するヒカルに、saiとの対局中に感じたものは、新初段戦のときのヒカルと向かいあったときに感じたものと同じだったと伝える名人。だからといって名人はsaiの正体を詮索するつもりはなく、ただsaiとネットでいいからもう一度打ちたい、と。その言葉を聞いて、ヒカルは名人がネットを続けるならそれができるし、saiに打たせて喜ばせてあげることができると考えていた。しかし佐為にとってすでにそれは喜びではない。「…もう遅い! おそらく私には 私にそんな時間は残っていまい! 感じる私の中で 有無を言わさず情容赦なく 止まっていた時の砂が滑り落ち始めた」のだから。
なんとか引退発言を撤回させようと、「もう一度勝ったら引退とかナシにしてくれます?」というヒカルに、名人は落ちついて「一度口にしたことは守る」と、今度の十段戦が終わったら引退する意思を告げたのだった。名人にとっては引退自体は重要なことではない。逆に棋士としてついてまわるつまらない取材などの義務から解放され、碁に専念することができるのだから。「碁が打てなくなるわけじゃないんだ 私にはこの身があるのだから」 タイトル戦でなくても本気の一局は打てる。相手が誰だかわからなくても。…だからこそ、もう一度saiとの対局を、ヒカルにお願いするのだった。
その時、saiの正体を探るために緒方九段も病院にやってきた。病室に入ろうとして、中から聞こえてくる声にノックの手を止める。その声がヒカルのものであることに気がついた緒方九段は、こっそりと病室に入る。そこでヒカルの口から「saiとまた打ちたいんでしょ!? 先生」という言葉を聞いて、ヒカルに「やはりお前がsaiと関係あるんだな!?」と緒方九段は問い詰める。パニックになったヒカルは、慌てて逃げ出すが、緒方は名人の静止を振りきってヒカルを追いかけ、ついに捕まえる。壁際に追い詰め、乱暴に襟首を掴みながら緒方九段は、「おまえがsaiを知ってるならオレにも打たせろっ」と。


うわぁぁぁぁ、緒方さんっ!! …というキャラ萌えな感想は後にして。
表紙に、「佐為の千年は、すべてヒカルのためなのか…。」というアオリ文句がついていますが。一点集約的な話もそれはそれでおもしろいのですが、私的には「誰かのための人生」より「それぞれ自分のための人生」であってほしいので、このアオリ文句はフェイクで、本当の答はさらにもうひとつあった…という二重しかけになってほしい。だって、この答では佐為自身が満足できるものではなさそうですもの。ほったさんは今までの展開でもミスディレクションを行って意外な展開をみせてることもありますから、可能性はあると思うんですが。このまま佐為は早い段階で物語から姿を消しそうですが、その最後のときに佐為が納得できるような本当の答が見つかるといいのだけれども。

冒頭でヒカルが「名人の考えも佐為の考えも分かっていた」と話してますが、ヒカルが佐為の憑坐になって、今回の対局を内側でみてたからこそそういう感覚になったのでしょう。佐為の力を借りることで、今のヒカルではなし得なかった深いところまで到達できたのかもしれません。だからこそ、佐為が「神はこの一局をヒカルにみせるために私に千年の時を永らえさせたのだ」という考えに繋がるのかも。

多視点を俯瞰する面白み。それが今回も際立っていたと思うのです。この「日常」がいつまでも続くと思ってるヒカルと、自分の時の短さに苦しむ左為、そして碁への純粋な思いを語る名人。この三者の感情ベクトルのズレをうまく表現し、神の視点にいる読者が一望できるようにすっきりとまとめてますね。バトル系の少年マンガというのは、感情のベクトルが一方向に同じか対立しているかしかないのが多いんですが、「微妙な気持ちのすれ違い」をうまく表現しているという意味では、「ヒカルの碁」は少女マンガ的な恋愛ものに近いものがあるかも。でもこの枚数であれだけの情報量を描写できるのは、さすがです。

名人は息子とは違って、「謎は謎のまま」受けいれることができる人なんですね。そういうところに人間としての深みを感じますが。で、これでやっと佐為と名人は「両思い」になれましたが、名人の口から「saiと打ちたい」という言葉を聞いても、それは遅すぎた告白なんでしょう。
佐為はいつかは消滅するだろうと思ってたけれども、この分では予想以上に早そうです。早過ぎるよ… 佐為は精神のみの存在ですが、それが今までこの世に留まっていられたのは、「神の一手を打つまで成仏するわけにはいかない」という強烈な思念ゆえだったんでしょうね。だからこそ、自分の存在意義が他人のためにあったという考えは、佐為をこの世に留めておく楔を外してしまうものだったのかもしれません。あの答で「私はヒカルの為に身を尽くそう」と佐為が考えるようにはならないだろうとは思ってましたが、こういう方向にきたとはねぇ。…どうするんですか、佐為とヒカルの葛藤やsai絡みの伏線やら。私は名人引退→本格的ネット参戦を受けて「場所も肩書きも超越した、力だけがすべてのネットバトル」が佐為メインで、「棋士としての戦い」がヒカルメインという二重構造で話が進んでいくかと楽しみにしてたのになあ… このまま佐為が消えるなら、今までの伏線の後始末はすべてヒカルが請け負わなくてはいけなくなります。その上でどういう展開をみせるかというのも、それはそれでおもしろいんですが。

saiと名人の対局は、その前後も含めていつになく物語の進行がゆっくりしていました。それは絵でじっくりみせるということと、佐為の「止まった砂時計」を示していたのかもしれません。だからそのゆったりと進む時間が終わって、いつものペースで話が進行しだすからこそ、「佐為の砂時計が動きはじめた」ことをさらに実感できるような気がします。それにしてもあの佐為の表情は切ないねぇ。胸が締め付けられるような感じがします。あるアンチ佐為な人がsaiと名人の対局の前に「名人はプロの立場をかけているが、佐為には何もリスクがないじゃないか。それはズルすぎる」という感想を書いてたんですね。…ほったさんはその不公平さをわかってたんでしょう。エピソードが一区切りついて、佐為に自らの存在という最も高い代償を支払わせたのですから。

でも本当にいいのかなあ。佐為って実質一番人気じゃないですか。ビジュアル的にも一番の華で、ある意味ではヒロイン代理。ほったさんも大のお気に入り。それを物語から消してしまうなんて… 私は「ヒカルの碁」のこういう「物語至上主義」というのがとても好きなんですが、人気とりという面ではそれでもいいんだろうか…?ということが気になりますねぇ。まあそれを言い出すと、伊角さんがプロ試験に落ちることはなかっただろうし。このマンガってヒカル以外のキャラ萌えファンだと読んでて辛いものがあるんですよ。人気によって出番増えたり、物語の中でよい待遇を受けることはまずないから。このマンガの場合は、キャラが好きで読んでる人よりも、物語が面白いから読んでる人の方が多いとは思うんですが…でも佐為を失うことで人気が落ちはしないかとか不安にはなります。私はたとえ緒方さんが物語からいなくなったりザコ扱いになったとしても、「ヒカルの碁」自体は好きでいると思いますが。今のように、物語が絶妙な構成で成り立っている限りは。ほったさんにはこのまま読者に媚びない展開を続けてほしいものだけれども。

さて、次の展開は「緒方 vs sai」になるのでしょうか? 緒方さんと佐為については、今までもいくつもの伏線が張られています。アマ碁世界選手権での「神か? 悪魔か?」、そしてその後のakira vs saiのネット碁をみたあとの「その練達さは長久の歳月を思わせる」、「現代の定石を覚えた本因坊秀策」での意味深な緒方さんのアップ、若獅子戦でのsaiの悲しい一人芝居。…ここまで揃っていることもあって、「佐為の存在を最初に確認する外部の人は緒方さんだったらいいなあ」と私は思ってました。だからいつかはsaiと緒方さんの対局はあるだろうと思ってましたが、ここでいきなり。…緒方さんにとっては師匠の敵討ちというのもあるのかなあ。で、問題はこの対局が実現するのか否か、そして実現したとして物語上どういう意味を持つか?ということです。佐為が自分の時間が短いことを自覚している以上、ここでこの対局がお流れになると、最後まで実現することはないでしょう。だとしたら今までの伏線が無意味になる。ふたりの対局が実現したとして…緒方さんは明かに名人よりも格下ですから、佐為は当然勝つのは目に見えてます。問題はそれがどういう意味を持つか。個人的には、緒方さんとの対局で佐為が別の「答え」を見つけ、現世に留まれるようになる…のを希望。ああ、こんなご都合主義な展開をほったさんがするとは思えないんですが〜。

オマケ。
発覚。名人の奥様の名前は「明子」なんですね〜。でもこの人って、中学生の子供がいるようには見えないよなあ。若い、若い。明子さんはヒカルのことを知らなかったようですが、まさか息子がストーカーじみたことをしていた相手だとは思うまい。…名人からヒカルのことをアキラには話さないだろうけど、たぶん奥さんの方からアキラに「ヒカルが朝からやってきた」ことだけは伝わって、アキラの「ヒカル=sai」疑惑がまた膨らむのかなあ。
名人は棋士を引退するそうですが、息子がまだ中学生なのに(いくらプロとはいえ)、リタイアしちゃっていいんでしょうか? 今までの稼ぎだけで、あの広そうな家の固定資産税も払えるんでしょうか? …まあ名人クラスの有名人になったら、講演会だけでも十分稼いでいけそうですけどね。いいのかなー、本当に。
もう物語上どうでもよくなってきた十段戦なんですが、「名人が勝利し、十段のタイトルを保持したまま引退」では緒方さんがマヌケすぎます。…でも名人が最後まで打ってくれるので、不戦勝で緒方さんがタイトルホルダーにという最悪の事態だけは避けられそうです。ああ、名人にとって棋士としての最後の一局の相手は緒方さんになるのねっ!! でも勝てないだろうなあ、緒方さん…

さて、キャラ萌えコーナー。緒方ファンとしては、今週も叫ばずにいられなかったです。うぉぉぉ〜〜〜〜。 まず、エレベーターの中でもポーズをつけて立ってる緒方さん!!  怪しい!! 素敵過ぎます〜。 前に「ネームの日々」でほったさんと小畑さんのキャッチポールで「かわいい佐為ちゃんがスクスクと育っていきます」とかいてありましたが、きっと「怪しい緒方さん」もそういう過程を経て育っていったのよ… 一巻にでてきたときにはそんな人じゃなかったのになあ。まあ、そういうところも魅力なんですが。
普段はクールを装ってる人ですから、こうやって感情剥き出しにするような乱暴さを見せられるとドキドキします。特にラストページの構図にはたまらんものがあります。次回予告「執拗に食い下がる緒方に、ヒカルがとった行動は…」うおっ、来週も緒方さんが〜〜。あの8か月に渡る緒方さんの不在の日々、まさかこんなに緒方さんが物語に深く関わったり、女が出たり部屋がでたりするような日が来るとは思ってもいませんでした。でもあまりに幸せが続くと、そのあと反動がありそうで怖いです。

さて、以下、腐り妄想→うぉーーー、緒方×ヒカル萌え!! 乱暴な緒方さんと本気で怯えるヒカル!! 特にラストシーンの1コマ目。あの構図といい、なんかもう血が滾ります。何度みてもたまりません。私、緒方さんは好きだけど緒方×アキラにはイマイチ萌えられないものがあったんですよ。でも緒方×ヒカルはいいかも…やおいなら、「口を割らないなら体に聞いてやる!!」になるところですね。ふふふ。


【ヒカルの碁 第118局「追求」】 01/05/28

ハンターは久しぶりに(?)お休み。そろそろネーム詰まりですかねぇ。
さて、「ヒカルの碁」第118局「追求」。緒方に壁際に追いつめられ、saiと対局をさせろ、と強要されたヒカル。熱くなる緒方の言葉を聞きながら、佐為は切ない、どこか遠い目をしていた。ヒカルはたまたまsaiと名人のネット碁をみてただけ、となんとか言い訳するが、そこにエレベーターの扉が開き、アキラがやってくる。ヒカルの存在にアキラは目を丸くし、驚いたヒカルもあわてて扉の閉まる寸前のエレベーターに乗って難を逃れた。緒方から「ヒカルとsaiは知り合いに違いない」ということを聞くが、アキラはヒカルとsaiは知り合いというものではなく…と考えるのだった。
名人の病室に入った緒方とアキラ。緒方は名人に「saiとの対局は進藤が持ちかけてきたんですね?」と問い詰めるが、名人は「saiとはネットで合って対局を持ちかけられただけだ」とそれを否定する。それでも追求しようとする緒方だったが、アキラは父親が否定する以上、問い詰めてもムダだと思っていた。アキラは考える。緒方さんはヒカルとsaiは知り合いだと思っているが、アキラには答えが出せない。でも「進藤がすべてのナゾのカギを握っている!」と。
なんとか緒方の追及から抜け出したヒカル。緒方とアキラのふたりに疑われることになったが、名人であれば黙っていてくれるだろうと信頼していた。また名人と対局をさせてやると言っても、佐為があまりに浮かない顔をしているのをみたヒカルは、少し佐為に苛立ちを感じていた。打たせてやったばかりなのに、また「佐為の打ちたい病」がでたんじゃないかと誤解して。「あわてるなって 時間はあるんだから」と佐為を元気付けようとするヒカルに、「ヒカルにはあっても 私にはない―」と心の中で呟く佐為だった。
日が変わって、森下九段の研究会。和谷くんがsaiと名人の対局を並べ、みんなで検討を始める。皆でなんとか黒が逆転できる道はないのかと考えるときに、ヒカルが嬉しそうに、あのとき見つけた一手を披露。ヒカルの着想に周りが感心する中、佐為だけが浮かない顔をしていた。「ヒカルの才や力に 私だけではなくまわりも気づき始めた」「見える ヒカルの頭上に輝いてる 私にはない"未来"が」


痛い。痛いよー、今回のお話も。佐為ちゃんマイナス思考はいっちゃってるから、もう。私は佐為はもちろん好きですが格別にファンではない(ヒカルも和谷も名人もアキラも同じくらい好き。特別なのは緒方さんだけですね)のですが、それでもこれだけ痛いってことは、佐為ファンの人にとってはいかほどばかりか。プロ試験編の伊角さんがポカミスしてから低空飛行のあたりでも読んでてキツいものがありましたが、今になって思えばあんなのまだ生ヌルかったのね… ハラハラさせるのもエンターティメントのひとつとは言え、ネームにも絵にもケタ外れの描写力があるせいで、痛さがダブルパンチ。来週が楽しみなんだけど読むのが怖いような気持ちで。普通少年マンガであれば、主人公サイドの人たちが物語上虐げられることはまずないんですよ。例え死んだとしても蘇っちゃうのがジャンプの伝統芸ですから。でも、ほったさんですからねぇ… 葉瀬中の面々の出番がないのも、伊角さんがプロ試験に落ちてしまったのも、「ほったさんならあんなことでもやりかねんっ!!」と思わせるための伏線にすぎないのではないかとかんぐってしまいたくなるくらいです。面白いんだけども読んでて身が持たない部分もあるというか。

ああ、緒方さんが「知ってるんだな saiを! 知ってるんなら オレにも打たせろ」と言うシーン、なんだか遠い悲しい目をしている佐為の表情がっ!! 切なすぎる… これは58局での若獅子戦における佐為の悲しい一人芝居に対するアンサーとなるエピソードなんですが、せっかく「いつかは対局したい相手」と思っていた緒方さんの方から対局を申し込まれても、すべては遅すぎて。なんとも微妙で複雑な佐為の気持ちをうまく表した絵だと思います。…ってこの一文を書くために7巻を読み返した時に「あれ、小畑先生ってこんなに絵が下手だっけ?」とつい思ってしまったほど。いや、もちろんその時点でもぶっちぎりにうまいのですが、ぎりぎりまで砥がれた刀のようにピリリとした切れ味のある、ここしばらくの絵のグレードの高さから比較すると、あの当時の絵さえ気が抜けてるように見えてしまうのです。プロ生活10年目にして、まだまだ成長していく小畑先生も驚異的ですなあ。もちろんそれは、微妙な心理描写を必要とされる原作があってこそでもあるのでしょう。
それにしても佐為がマイナス思考ぐるぐる状態ですな。前回の感想にもかいたのですが、佐為が今まで存在していられたのはひょっとしたら「私は神の一手を極めるまで成仏できない」という強い思いからなのでは? 佐為は精神のみの存在ですから、その存在を支えるのはただ強い意思のみ。それが弱ってしまったからこそ、「もう時間はない」と感じるようになったんじゃ…と考えてます。だから、佐為の気持ちの持ち方で事態は絶対に好転するって!! 元気だせよー、佐為!!
今回の話で、またヒカルがパッシング受けちゃうかなあ… 私はヒカルは基本的にいい子だと思っています。佐為ファンからすると佐為をないがしろにしているように思えるかもしれないけど、思春期のナイーブな時期に精神に寄生されて、それを受け入れてくれるだけでも十分でしょう。ヒカルと佐為がよくケンカをするのも、佐為が気持ちが子供っぽいところがあるというのと、ヒカルも佐為を対等の存在として受け入れてるからというのもあるんじゃないかな。今回の件にしても、ヒカルは佐為を喜ばせたくて色々と行動をしたのに、思い通りに嬉しがってくれなくてむくれてるだけです。いかにも子供ですが。ただ神の視点にいる読者からすると、佐為ののっぴきならない状態や気持ちが分かってるから、ヒカルの言動はそれを理解してくれないので苛立つ部分があるのは確かだけども。でも設定上ヒカル→佐為へ気持ちが伝わっても、佐為→ヒカルには伝わらないので、自分の中に留めてそれを伝えようとしない佐為にも問題はあるんだし。…ここ数話のテーマは「すれ違い」なんじゃないかと思うほどに、神の視点からみてると「うわー、いらいらするっ!!」って感じなんですが、この感じって恋愛マンガやドラマをみてるのに近いよね…さっさと二人とも素直に告白したらめでたしめでたしなのに、お互い意地はってたりちょっとした誤解のせいで気持ちがすれ違って、「あー、もっと早くくっつかっかい!!」と怒鳴りたくなるような。でも恋愛モノはそれが醍醐味ですから。ということで、今の「ヒカルの碁」に苛立ってる方も、その気持ちを楽しむ方がいいかと。(自分も含めてね)

ただ、エピソードそのものからみると佐為の存在は風前のともし火ですが、全体の伏線の張り方から考えると、今回の話を読んで私は逆に「佐為のすぐの消滅はない。もしくは消滅したとしても、なんらかの形で復活する」のではないかという印象を受けました。緒方vs sai戦が実現しなかったのもあるし、saiがネガティブ思考にハマってるからというもあります。緒方vs saiはここまで伏線をはったら対局はナシってことはないでしょう。ほったさんは時折意表をつく話の展開となりますが、あれはきっちり布石を打った上で、それを生かして思いもかけない手を打つだけの話で。「バキ!」の板垣恵介氏も先の予測できないストーリー展開を行う作家さんですが、あの人の場合はどっちかというと「ちゃぶ台ひっくり返し」に近いからなあ。でもそれがあまりにも豪快なのが非常に愉快なんですが。(「バキ!」も好きな作品です、達人萌えなの〜。) 佐為が「自分の千年はヒカルのためにあった」と感じてしまったときに、もしこれで佐為が「 これからはヒカルの未来のために私の身を捧げしましょう」と急に物分りがよくなったら佐為は確実に消えるだろうと思ったのですが、そうはならなくてよかったです。佐為が苦しい過程を経て他人のために生きることの素晴らしさを理解するか、もしくは誰かのために生かされてるのではなくそれぞれが自分のために生きているんだ!!ということが分かるようになれば、佐為も物語上の役割を終え、話はヒカルの真の意味での成長物語に移るんじゃないかと予想しています。
もっともこれは私の願望がほとんどなんですが…そう思いつつも、「ほったさんなら佐為を不本意のまま消滅させ、すべての責め苦をヒカルに背負わせる苦難の道を選択しかねない」と考えてもしまうんです。ほったさんだからなあ、あの人の考えは読みきれないんですよ。

緒方さんはヒカルとsaiは別人だけども関係があると思っていますね。なんだかんだで一番正解に近いじゃないでしょうか。アキラは「ヒカル=sai」だと断定はしかねてますが、どちらかというとそういう印象を受けてそうですもんねぇ。やっとヒカルが頑張ってアキラの中の佐為を少しずつ払拭していったのに、またしてもアキラは佐為に惹かれてしまう。この物語であるヒカルvsアキラがきちんと行われるためには、アキラは佐為の影に惑わされずにヒカルをきちんと見ることができるようにならなきゃダメだ…というのが持論なので。そのためにはアキラが佐為とヒカルを違うものだと認識しなきゃいけない、というかそうあってほしいんですけども。そういえば巷の予想では「ヒカルが佐為をとり込んでパワーアップ」というのもいくつかみかけるんですが、私はこれはイヤなんです。だってヒカルと佐為は別の人格ではないですか。そういう形でヒカルがパワーアップしても、それは純粋なヒカルの実力ではないので不正な感じを残してしまうから。「ふたりの力を合わせて戦う」ってジャンプマンガではよくありますが、この場合「敵」であるアキラは自分の身ひとつなだけにそれは卑怯に感じてしまうので。この物語の初期設定からすると、ヒカルは佐為に全部打たせて、ヒカルは「神童」の名を欲しいままにして賞賛だけ受けることも可能だったのわけです。それを敢えてやらず、ヒカルが己のプライドのために自分の力を高めていくという道を選んだのですから、最後までそれを貫きとおして欲しくて。

久しぶりの森下九段研究会は嬉しかったです。でも森下九段って名人のことを「行洋」と名前で呼ぶんですねっ。ライバル意識は剥き出しにしてても、結構仲いいんじゃ。白川先生や冴木さんのアップをもっとみたかったな〜。
それにしてもこの話、どんな方向に向かうのやら…今回は次回予告がないから、どんな話になるのかが見当もつきません。


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