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【ヒカルの碁:第99局「私が打つ」】 01/01/05

初夢はなぜかジャンプを読んでる夢でした。なんと小畑先生が原稿を落としたせいで、ほったさんのネームがそのまま載ってる、というもので…シュールなラクガキのような緒方さんを見て身悶え。こんな私の2001年はどっちだ。

さて、待ちに待ったジャンプ。あの不定期連載もいいところの「ハンター」を柱にしなきゃいけないなんて、ジャンプの持ちコマの少なさが露呈されてますよねぇ。全盛期のジャンプだったら素行の悪さ(?)で切り捨てられてたでしょうに。ハンターの担当さんは絶対に胃を壊してそう。
「ヒカルの碁」の感想。第99局「私が打つ」。名人と打たせてほしいと懇願する佐為に当惑するヒカル。碁に興味ない頃に佐為に打たせてしまったためにアキラに植えつけてしまった幻影をやっと払拭できそうになってきただけに、ヒカルとしても二度と同じ過ちを繰り返すつもりはない。佐為の幻影を背負ってややこしいことになるのはごめんだと告げるヒカルに、「背負えばいい」という佐為。ヒカルは前に佐為が言った言葉を蒸し返して、「3人目に打たせてもらえ」と。そのヒカルの言葉に、ヒカルはもう自分に打たせてくれることはないんだ、とショックを受ける佐為だった。
そして新初段シリーズ。対局控え室に現れたのは緒方セイジ九段。しかし先客として桑原本因坊がいた。寒々とした舌戦の応酬。なぜヒカルを見にきたか問う緒方さんに「シックスセンス、第六感じゃ」という桑原先生。「バカバカしい」と緒方さん。そこに和谷くんと越智くんがやってくる。トッププロがわざわざヒカルを見にきたことに、「進藤って何者?」といぶかしく思う越智くんだった。そして、アキラも対局を見にやってきた…
いよいよ名人とヒカルの対局。名人もヒカルに注目していることを告げ、「キミの力をみせてもらおう」と。しかし、佐為は名人と指し向かいのヒカルが座るはずの席に、決意に満ちた表情で先に座るのだった…


感想。あああ、緒方さんっっ!! お久しぶりです〜。会いたかった…半年ぶりくらいかしら。いつ復活するんだろうと思いつつ待つのは辛かったです。さて、緒方さん、今回は私服モードでブラック緒方。皮の上下にインナーはざっくりしたセーターです。頬骨復活ですね。やっぱり緒方さんはそうでなくちゃ!!
桑原先生との舌戦、あからさまに不機嫌になったり、ガキ扱いされたりするあたりの青さがこれまたたまらん感じです。こういう緒方さんの「青さ」を表現するためにも王座挑戦権を取り上げられてしまったんでしょうか…この流れだと緒方さんはタイトルはまだとれなさそうだし、王座をまた逃しちゃってたりしたらヘタレ度がさらにアップしてて情けないことになってたんだろうなあ。ちなみに緒方さんの赤ラークもニコチン量は多いそうですが、桑原先生のピースはもっと強いタバコだそうで。あ、でも緒方さんは調子いいのねっ。噂の倉田さんにも勝ったとか。それにしても倉田さんの登場はいつかな〜。
あと、このふたりの会話で桑原先生は佐為が見えていたわけではなく気配だけを感じていたこと、緒方さんはオカルト的な素地はないことが判明。緒方さんはもう何度もヒカルと会ってるから、霊が見えないヒトであることは分かってましたが……でも個人的にはヒカルの中の佐為に緒方さんが気づくのではないかと期待してるんで。
あと、アキラの驚いた表情はかわいかったです。アキラのプライドの高さから考えて直接見にはこないかなあと思ってたんですが我慢できなかったんですかねぇ。ヒカルとの対面はなるんでしょうか。
話戻って、今回のことで佐為とヒカルの「いつもいっしょ」な関係にヒビが入ってしまいました。ヒカルの身勝手な物言いは、また読者の反感買うだろうなあ…と思うけど、ヒカルの人生はヒカルのものであるわけだから気持ちわからなくもないんです。一方、佐為もかなりわがままなんですよね。でも佐為は元々囲碁を愛するあまり怨霊にまでなってしまった、かけ値なしの囲碁バカだからこうなってしまうのも無理ないことで…佐為は本因坊秀策にとりついたときにはほとんど自由に自分で打つことができたそうですが、それは秀策が自我がはっきりしてない幼少期に佐為と出会ってしまったということもあるし、当時のお城碁での対局というのは一門の興亡をかけたものであるため、個人のプライドよりも確実に勝つことの方がはるかに重要だったからというのもあるんでしょう。(個人的には秀策は佐為の気持ちを思いやって、譲ってあげたのだと思っていたい) 佐為がそのときのことを「当たり前」のように思っていたことも問題なわけで。
でも佐為がいくらわがままだといっても、あんな切ない顔をされると、みてて辛いものがありますね。小畑先生の画力があるからこそ、そういう思いまでひしひしと伝わってくるですが。
さて、次週の展開。いくら佐為が強張ったとしても、記録に残る対局で果たしてヒカルが譲ることはあるんでしょうか。でも豪腕と称されるほったさんなら可能にするかも。個人的には、前に書いたようにヒカル=saiだと緒方さんや和谷くん、アキラが気づいてヒカルはまたしても重い影を背負うことになる…という展開だと面白いんですが。以前はこのあとに佐為が消えるかも?と思ったこともあったんですが、ヒカルと佐為の葛藤をもっと徹底的に書く方が難しいけれどもおもしろそうですもの。いや、ほったさんならもっと予想もつかない展開にすることもありえますが。
それにしても去年の今頃はヒカルが2組で悪戦苦闘してた頃で、次の年にはヒカルがプロになってるなんて思ってもいなかったなあ。去年ヒカルたちがアキラの対局を見にきたように、院生の仲のよい子たちもきてくれるといいな。
さて、来週は100局記念ってことで巻頭カラーに大増ページ。前号でもカラーだったし、小畑さん過労になってないかしら。第二回人気投票も開始ですが、前回でジャンプ編集部も懲りただろうからネット投票は今回はナシかな? ハガキだけでも私はもちろん投票します、緒方さんに。順位上がってるといいけど。注目は伊角さんが何位になってるか、だよね〜。3位以内に入る可能性も高いと予想してるんですが。前回は加賀くんというもう出てこないキャラが二位でしたが、今回もそういうことになるとおもしろいかも。「ヒカルの碁」の場合はストーリー展開の方が絶対であって、キャラの扱いが人気があがってもよくならないんですが、そういう少年マンガらしからぬところがこのマンガのよさでもあるんです。そういう姿勢は絶対に崩してほしくないですね。


【ヒカルの碁 第100局「ヒカルの長考」】 01/01/15

第100局「ヒカルの長考」。新初段シリーズ、ヒカルより先に名人に相対して盤の前に座った佐為。戸惑って佐為の名を呼ぶヒカルには反応せず、目の前の名人をにらみつける。しかし、名人が「どうした?進藤くん」声をかけたのはヒカルだった。いくら闘志を燃やしても、自分は相手に存在を分かってもらうことすらできないのだ…という事実に気づき、傷ついた佐為は「ごめんなさい、ヒカル。ちょっと座っただけですよ」と席を立つ。「スネルなよ」といいつつも、佐為の悲しそうな顔に気持ちが揺れるヒカルだった。
一方、控え室では桑原先生が緒方さんに賭けを持ちかける。この対局は新初段側が黒で有利な上にさらに五目半のハンデをもらっている。(実際には11目くらい新人側が有利ということ) それでもこんな新人が名人相手に勝つのは難しいだろう、名人はご祝儀で勝ちを譲るような男ではないし…といいつつもヒカルに賭けると言って1万円を机の上に置く桑原先生。名人門下生として当然名人が勝つと思っている緒方さんは名人に、といいながらさらに1万円を上に重ねた。そして、アキラが緊張しながら対局を見守っていた。
さて、対局室。前々から名人と対局したいと言ってた佐為の寂しそうな背中をみながら、佐為にとってこんなチャンスはめったにない、でもこれだけ有利な条件で佐為に打たせると勝つに決まってるし、そして自分が佐為のせいでまた注目されるのも困る…しかし仮に、逆にこちらに名人のハンデを上回る15目くらいのハンデがあるとすれば…圧倒的に勝つために佐為は無茶な手を打たなければならなくなるから、ヒカルが恐れてるような事態を回避することができるかも、とふとヒカルは考えます。佐為は「それでやります!!」と即座に反応。そしてヒカルは佐為に打たせることに。
それから20分経過。相手も分かってる上に持ち時間が2時間しかないのにこんなところで時間を使うのはおかしいと観戦者がいぶかしく思う中、長考をする佐為。佐為と名人ではおそらく半目を争うほど実力が伯仲しているだろう。そんな相手に15目の差をつけて勝つためには、相手が全滅するか自分が全滅するかの無謀な戦いをするしかないのだ…と考える佐為。そしてやっと打った一手目は星。


今週は表紙&巻頭カラー。表紙はコミカルにしようと思ってすこしハズしているかも。中の表紙はポスター形式のロング。オールキャラで、懐かしい顔が〜。おお、岸本部長!! なぜ顔が赤いんですか? 美和くんまで出ているのがびっくりですな。緒方さんは前回人気投票に続き二度目のカラー登場。(正確には回想シーンも含めると三度目ですが) もう、素敵ですっ。でも今回も瞳の色がわからなかったのは残念。アキラ、なんかストーカーだ。さて、今回は第二回人気投票のお知らせが。前回で懲りたのか今回はインターネット投票はなしなのね(荒らしめいた二重投票とか多かったんです)。 今回の人気投票の注目は伊角さんが何位に食い込むかということ。まず間違いなく、ヒカルよりは上でしょうね。佐為とか加賀くんとか伊角さんとか不遇なキャラばかりが上位に入ったら愉快かも。かといって、人気投票の結果でキャラの出番を増やすようなことはほったさんは絶対にしないでしょうが。そういうところが好きなんですけど。私はもちろん緒方さんに投票します。前回より順位上がってるといいな〜。組織票OKとのことで、緒方さんに10枚くらい投票しようかしら。
さて、本編。いよいよ佐為が打ちます。名人vs佐為はラスト近くのエピソードになるかと思っていたので、これだけ早い段階での対局はすこし意外でした。そのせいか、これで佐為が消えちゃうんじゃないかと心配している人もいるけど、今回の対局は対等の条件ではない変則的なものであるために、前哨戦で終るんじゃないかと思います。あの囲碁を愛する一心で怨霊にまでなってしまった佐為が簡単に満足して成仏できるとは思えないし。それに、最初からあれだけ伏線を引いてるだけに、読者としては真っ向からの名人vs佐為の対局をみないことには納得できないじゃないですか。できればその対局は「進藤ヒカル」としてでなく、藤原佐為として名人に認識してほしい。その場合なら公式戦ではなく、佐為の正体を明かした上での非公式戦となるんでしょうが。そのキーになるのは緒方さんではないかと思っています。第54局での「現代の定石を覚えた本因坊秀策」という伏線がありますから。でもどうやって、というのを考えると…難しいですね。でもほったさんならなんとかしてくれるでしょう、きっと。「現代の定石を〜」と言えば今回の対局での佐為の一手目は星。現世に蘇ったときには一手目で星に打つのに驚いていたけど、その佐為も現代の碁を吸収して成長したんですよね。
ヒカルのかわりに佐為が打つこと。それをズルいと思う人もいるかもしれないけども、この対局はプロとしての成績(昇段など)には関わりのないお祭りだし、何度も繰り返し碁を打てない佐為の苦しみを描いてきてるだけに、私としては「許す」という気分。元々、外部からみるとヒカルのかわりに佐為が打ってもバレないし、私がヒカルだったら佐為に全部打たせちゃうでしょうね。それを咎める人はいないわけで。知っているのは読者だけ。ヒカルが自力で打たなければいけないという部分はマンガ中ではヒカルのプライドとして処理しています。そして今回佐為に打たせるのは、佐為の熱意に押されたからという形になっています。アキラと対戦した頃、わけも分からず打ってた頃とは違ってヒカルもその対局の意味がわかるから、あまりにsaiの存在が強く感じさせるような棋譜になったときにヒカルは…どうするんでしょ。どんな展開になるのか、今から楽しみです。
今回も緒方さんがでてきて、しかも微妙に桑原先生に弄ばれてる感じが楽しすぎです。緒方さんのベストショットは「ありませんね」のシーン。なにげないコマだけど、線がなんともいえず美しい。
美しさで言えば、佐為の背中。小畑先生、背中で気持ちを語らせるのがうまいです。第57局の三谷くんがノートみつけたシーンでも思ったけれども、小畑先生が絵で感情を表現させることができるからこそ、ほったさんもああいうネームがきれるんでしょうね。
さて、次回予告によると名人と佐為の対局はもう決着が付くようです。予想するならば、15目の差をつけることはできなかったけど、逆コミを数えるとヒカルの勝ちとなった、というのでどうでしょうか。それがどういう展開につながるのかは想像もつかないけれども。


【ヒカルの碁 第101局「不透明な一局」】 01/01/22

今週のヒカルの碁。第101局「不透明な一局」。20分にも及ぶ長考の末、やっと打ち始めたヒカル。そんなヒカルに呆れながら、週刊碁の記者の天野は記者控え室に引き上げ、そこに桑原本因坊・緒方九段という思わぬ二人をみて驚く。ヒカルに興味が?という問いに「すれ違ったときにピンときた」と告げる桑原先生。それを「勘だそうです」とバカにする緒方さんに「勘をバカにするようじゃいつまでたってもワシに勝てんぞ」と桑原先生が切り返す。天野さんが今回の対局は名人の指名で実現したと明かすと、緒方さんが「それはアキラが進藤をライバル視してるからでしょう」と。天野さんに「そうなの?」と聞かれ、言葉を濁すアキラ。それに対して桑原先生が「いや、息子は関係なしに名人自身が気にかけてるハズじゃ。あの男も勘は鋭いからの」
そして、盤上では序盤からヒカル(佐為)が攻めはじめた。
今回の対局は本来であれば通常の対局に比べて11目も有利であるにかかわらず、己に15目のハンデ課した佐為。佐為の立てた作戦は、自分と対等である名人にその状態で打ち勝つためにわざとスキを作って誘いこみヨミの勝負に持ってゆくこと。しかし、名人はその誘いに乗ってこない。
その対局はハタからみていると、ヒカルが無謀な攻めをしているようにしかみえなかった。少なくとも桑原先生意外には。積極的に攻めていかない名人の意図を訝しく思う緒方さんに桑原先生だけしたり顔で「勘のイイヤツじゃからの」
一方、名人も一見荒れたようにみえる碁が奥が深いことに感づく。そして、ヒカルに、新人とは思えないような威圧感を覚えるのだった。
結局佐為の作戦は失敗に終り、あっけなく投了。「思ったとおりだ」とこの対局をヒカルの勇み足だと天野は考え、和谷くん、越智くんと共に検討会をみるために対局室にゆく。「進藤の評価は保留だな」と呟き1万円札を二枚サイフにしまった緒方さん。「いやこれはオモシロイ碁じゃよ。もし次もこんな対局があったらワシは小僧に賭ける」と告げる桑原を一瞥し、緒方さんは部屋からでていった。二人だけとなった控え室、桑原先生の言葉が気になり、アキラはすぐにでてゆくことができない。そんなアキラに「小僧が自らに大きなハンデを課していたのだとしたら納得がゆく」と説明する桑原。なぜそんなことをする必要があるのか、理解できず驚愕するアキラだった。
そして対局室。佐為は落ちこんでいた。しかし、名人は「なんのハンデもなしに打ちたかったよ。君がどうしてこんな打ち方をしたかわからないが、それでもキミの持つ何かは隠しきれない。次に打つ時を楽しみにしている」と告げるのだった。


ほう。こんな展開になりましたか。佐為と名人の初対局だ!!…と盛りあがったのが案外簡単に収束してしまい、がっかりした人も多いかもしれませんね。たまに意外な展開よりも自分が望むような痛快な展開がみたい!!というのはありますし。特に少年マンガには。そういう意味では肩透かしではありましたが、この物語の深さを感じさせる展開でありました。
大きな流れとしては、結局ヒカルの最初の思惑…佐為には打たせてやりたいけど、余計な荷物を背負いたくないので、佐為に大きなハンデを課して無茶な展開を強いて佐為の法外な強さを隠す…は大体において成功しました。しかし、名人や桑原本因坊のようないくつもの死活を乗り越え、頂点に立つような人々にはそのヒカルの意図が看破されてしまいます。今回は「勘」の部分が強調されてましたが、ある一線を越えるためには理屈を超越した何かが必要になるということを示しているわけで。…その点、緒方さんなんかまだまだこわっぱなのね…緒方ファンとしてはそう扱いは悲しい限りですが。緒方さんが桑原先生にリベンジできるのはいつの日になるでしょう。

見ていた人それぞれに不可解な印象を残した一局となりました。和谷くんと越智くんには「なぜヒカルがあれだけのトッププロ達に注目されてるのか?」という疑問が残ったでしょう。名人と桑原先生には「なぜ自らにハンデを課すような形で対局したか」 緒方さんは判断保留ですが。アキラにとっては…やっと自分の元まで近づいたヒカルがみせた対局は、自滅するような不可解な碁だった。でも桑原先生から「自分にハンデをつけた上での対局」である可能性を聞くわけです。それが理解できたかはともかく。アキラは元々ヒカルの「不思議」に惹かれて追いかけてたわけですが、今回も「キミは誰なんだ」には解答がでないまま。…そしてさらに惹かれつつも近寄れない状態が続くんでしょうか。

「ヒカルの碁」は少年マンガの王道である「少年の成長物語」「ライバルたちとの切磋琢磨」などを踏まえながらも、予想外の展開など細かいところでは「お約束」を打ち破っているところが魅力だと思うんです。王道少年マンガとしての「ヒカルの碁」であれば、アキラはいつかヒカルと真正面に向き合って対局をしなければならない。今のように佐為の幻影に惑わされている状態ではなく。そのためには佐為が憑依してるというヒカルの事情をアキラが納得する必要があると思うんですが、問題はどうやってそんな展開に持ちこむか、ですよね…今までの伏線から緒方さんがキーキャラかと思ってたんですが(saiに関わりがあるし、「現代の定石を覚えた本因坊秀策」のときの思わせぶりなアップとか)、この分だと名人や桑原先生の方が真実には近そう……緒方さん、超常現象バカにしてそうだし。ただ個人的には緒方さんに佐為をみつけてほしいんです。若獅子戦のときの佐為の一人芝居があまりにも哀れだったので、それに応えてほしいから。
話戻して、王道展開としては、ヒカルvsアキラの対決の他に名人vs佐為の真剣勝負というのもありますね。これは絶対に実現するでしょう。今回の不完全燃焼だった対局はその伏線に違いありません。
もうひとつは、ヒカルが佐為から自立、でしょうね。友達であり、師匠であり、母親(父親というよりは母親な感じがしませんか?)である佐為がヒカルから離れること。「ヒカルの碁」はある意味「オバケのQ太郎」「ドラえもん」などと同じ異世界生物居候モノなんです。こういう話では、最後にはちゃんときれいに「お別れ」をしなければ話を畳めません。大人になってもドラえもんと一緒にいることはできないんですから。その点は「いつまでも一緒にいれるわけじゃない」という伏線は既に引かれています。「ヒカルの碁」でおもしろそうだなあと思うのが、その問題が佐為のアイデンティティの危機に結びついてるところです。ヒカルは佐為の影を払拭したがってるし、佐為もヒカルの黒子でいることをよしとしない。それがアキラとヒカルの歪んだライバル関係にリンクしてるのが興味深いですね。
こういう部分をほったさんがどう処理してくれるか。先が楽しみです。

キャラ萌え視点でいうと、緒方さん、名人のことを話すときには丁寧な言葉使いになるんですね〜。どの顔もカッコいいですが、ベストショットは「勘だそうです」と出て行くときに桑原先生に振り向いたときの高慢な顔。ああ、これでこそ緒方さん!!
年が明けてから緒方さんを思う存分みれて幸せでした。たとえ桑原先生に弄ばれたこわっぱであっても。この次の登場はいつになるかなあ。脇役に惚れるとそれが辛いんですよね。とにかく、はやく再登場してくださいませ。

次回予告。「ブルーな気分の佐為に気をつかったヒカルが向かった場所は…」
予想その1。見ず知らずの碁会所で佐為に思う存分打たせる。
予想その2。インターネットカフェでsai復活。
予想その3。合格祝いに、パソコンショップでパソコン購入。思う存分ネット碁だ。
私の頭ではこれくらいしか…それがどういう展開に結びつくかなんて予想もつきませんが。…そろそろ倉田六段、出てこないですかねぇ…


【ヒカルの碁 第102局「再戦を期して」】 01/01/29

第102局「再戦を期して」。
ヒカルの新初段戦、名人vs佐為は佐為の罠不発で自滅に終った。しかし対局後、名人はヒカル(佐為)が自らにハンデを課して対局していたことを見抜く。ハンデのことだけではなく、佐為の強さまで分かったのか?と焦るヒカルに、さらに名人は「対局中、まるで歴戦の古豪のような気迫をキミに感じた。この次に打つときは互戦で」と告げるのだった。その言葉に佐為は名人を見据え「…ええいつか」と答えた。その後天野記者、和谷くん、越智くんが対局室に入ってきて感想戦に。
控え室。桑原本因坊にヒカルがハンデを自らに課して打っていたのでは?…と聞いたアキラは理解できずに訝しむ。ヒカルの不思議さをおもしろがる桑原本因坊に、アキラは自分はヒカルのことがわからないと、ヒカルとの出会いの経緯を説明する。初めて対局したときには恐ろしいほど強かったのが、突然別人のように弱くなり、そして今はプロになっている…と。そんなアキラに桑原本因坊は「ではアヤツをプロの世界に来させたのはキミということか」といい、アキラの名前を聞いて「覚えておこう」と呟きながら帰っていった。アキラは控え室に戻ってきたカメラマンから、感想戦でヒカルが何を聞かれてもひと言も喋らなかったことを聞く。
さて、ヒカルの家。名人との再戦、「いつかはなんとかなるのかな」と言葉を濁すヒカルにワガママを言う佐為。それにカチンときたヒカルは、ヒカルにとっても大事な一局を佐為のワガママで潰されてしまったことを文句を言う。さすがにしゅんとする佐為だった。そこから本因坊秀策…虎次郎に佐為が取りついていた時の話になる。その時は佐為が思う存分打ってたけれども、秀策が碁打ちなのに自分で打たなかったのはなぜ?と疑問に思ったヒカルに、佐為は「私がいけないんです。現世に戻って、次があるとは知らなかったので焦ってワガママを言ってしまった」と。ひょっとして、秀策が早死にしたのは佐為がとりついたためか?…と読者が一度は考えるような疑問を佐為にぶつけるヒカル。佐為は即座に否定して、虎次郎(秀策)は優しかったから、自分に感染するかもしれないのに流行り病に臥せった人を看病したのだと。秀策と比べられてヒカルは不機嫌になる。しかし追憶に沈む佐為をみて、ヒカルは気分転換にどこかにつれていってやろうと考えるのだった。一方佐為は、なぜ神は自分をヒカルのもとに蘇らせたのか?と悩む。ヒカルは強くなっていって、自分が打つ機会はないのに…
結局、ヒカルは佐為を地方のアマチュア囲碁イベントにつれていった。そんなヒカルの気遣いを知って、自分のわがままを反省する佐為。これからはもう打ちたいなんて…時々しか言うまい、と。
その囲碁イベントには8万の碁盤を20万で売る悪徳業者がプロ棋士・御器曽の手引きで潜りこんでいた。


前半部分は名人・本因坊・アキラあたりとの因縁の再構築で、中盤が佐為のヒカルの関係の修復と整理。終盤は次回への展開。
名人はさすがに懐の深い人ですね。表面的にわからないものであっても、本質を見分けることができる。名人であればヒカルが「平安時代の棋士の霊がとりついていて」というバカバカしく思えるような打ち明け話をしても、それなりに受けいれ、本気で対局をしてくれるんじゃないかしら。緒方さんはリアリストゆえにそんな話は頭から信じないだろうし、アキラだってヒカルの表面に現れる整合性のなさに振り回されている。そのあたりが二人ともまだまだ若く未熟であるということでしょうか。
今、佐為に一番近い外部の人間は間違いなく名人でしょうね。佐為との次の対局も実現するでしょう。いつかきっと。
ここしばらくの展開は佐為もすこしワガママが過ぎたわけですが、そういう風に読者が思っているようなことをヒカルが代弁。佐為も反省してますが、「打ちたいなどと、時々しか言うまい」とあんまり懲りてないあたりがやはり佐為らしいですね。囲碁をやりたい一心で怨霊にまでなった彼がそう簡単にあきらめるわけがないですもの。それに佐為がヒカルの影に甘んじる展開だとおもしろくないですし。
前から疑問に思ってた、佐為と秀策の関係についての説明が。秀策が自分が打たずに佐為に打たせてあげたことは、佐為のワガママと秀策の優しさゆえのことだと書かれています。でも他にも出会ったときの年齢だとか、お城碁の持つ意味の大きさなども関わってきてるんでしょう。秀策が佐為と出会ったのは、おそらく五歳から七歳の間です。(この点については、ヒカルの碁ファンサイト「九路盤」に詳しい解説があります。)その位の年齢では、まだ確固たる自我も芽生えてなかったでしょう。ヒカルが佐為と出会ったのは11歳から12歳の間ですから、それと比較すると出会った年齢のせいで佐為との関係がかなり違っていたことは容易に想像できます。佐為が秀策のことを幼名の「虎次郎」という名前で呼んでいるのは、親しい間柄であったというだけではなく、子離れできてない親みたいな部分があったのではないかと推測しています。(元服して改名した後に、たとえ親しい関係であっても幼名で呼び続けるものなんでしょうか? 私は時代モノは幕末あたりしか読んだことないのでわからないんです。このあたりについて詳しい方がいましたら、教えてくださるとありがたいです。)それにお城碁というのは一族の隆盛をかけた勝負であるために、自分個人の責任だけでは済まされないんですよね。その立場にたったら、より確実に勝つために佐為に打たせるのも無理はないと思います。ヒカルは秀策に比べると一局で背負うものが小さいために、自分のプライドを優先できるので自分で自由に打てるけど。
でも佐為がいうように「優しさ」が一番の理由で秀策は佐為に自由に打たせてあげたんだろうと思いたいですね。佐為の気持ちが分かるから、佐為を喜ばせてあげたいから打たせてあげる、と。色々な齟齬はあっただろうけど、佐為と秀策の間には暖かい絆があったんじゃないかしら。
さて、話変わって。なぜ「ヒカルの碁」が「平安時代の棋士の霊がとりついた」物語であって、「本因坊秀策の霊が直接とりついた」話ではないのでしょうか。個人的な考えでは、一番の理由は「ビジュアル」だと思います。狩衣は絵になりますからね〜。それと、「二人目」であること、が重要なのではないかと。一人目があまりに特別だったために、二人目の人とつい比べてしまって。そういうのってやるせない。三人目だったら「いろいろなタイプがあるな」ということでまだ割り切れる部分がありますもの。「十二国記」シリーズ(小野不由美 講談社文庫)の景麒と景王の関係もそれがあるから切ないですよね。他の大部分の麒麟にとっては王様はひとりしかいないのに、景麒にとっては二人目。しかも一人目が無念なことになっただけに、簡単に「昔は昔、今は今」と割り切れない。…そういうのと相似的なものをヒカルと佐為の関係にも感じます。

後半部分に唐突にでてきた悪徳棋士と悪徳業者の話。…これがどうエピソードに絡んでくるのかまったく予想もできないんですが。ヒカルは碁盤の価値なんて判別つかないだろうし、佐為も相場を知ってるかどうかは。まあカヤ製であるかどうかはわかりそうですね。佐為なりヒカルなりが悪徳棋士や業者をやっつけるというような単純な展開になるとも思えませんし。それは一度ダケさんエピソードでやってるし、やっつけるだけだと後の展開に結びつかず、意味不明エピソードとなってしまうからです。
「ヒカルの碁」で意味不明エピソードは現在のところただひとつ、門脇さんとの対局の話ですが、あれはまず間違いなく今後に絡んでくるでしょうし。だとすると、どういう意味ができるのか…あ、この20万の値段をつけてる碁盤とは別に「例の碁盤」という言葉がありますが、これがポイントかな? 来週の展開が楽しみです。


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