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【ヒカルの碁 第138局「訪問者」】 01/10/28

第138局「訪問者」。日本に戻ってきた伊角は、和谷に電話をしていつものマクドナルドに呼び出す。久々の再開だったがふたりともそのブランクを感じずに和やかにお喋りしていた。伊角は中国棋院で小さい頃の和谷そっくりの楽平に懐かれたことや、プロの人たちと対局をいくつもこなして自信をつけたことを語った。(ちなみに例の賭は伊角さんが負けて楊海さんはMDを取られたらしい)そして本題に。伊角は帰国してからプロ試験にむけて最後のしこりを除くためにもヒカルと打ちたいと思っていたが、「週刊碁」でヒカルが不戦敗をしていたため病気か何かかと気になっていたのだ。伊角は和谷からヒカルは五月からずっと対局に来ず、理由はわからないがもう打つ気がないらしいと聞いて、ヒカルの家に向かった。
伊角はヒカルの母親にヒカルの部屋に通され、ヒカルが学校から帰ってくるまで待つことになった。伊角は碁盤にほこりが溜まってることで、本当に長いことヒカルが碁を打ってないことを知った。そして、慌てて帰ってきて扉をあわただしく開けて、ヒカルが帰ってきた。ヒカルは伊角をみたとたん、気落ちした顔をした。部屋に人の気配があったから、佐為が帰ってきたのかと思ってしまったのだ… 久しぶりに会った伊角を邪険に追い返すわけにはいかない。しかしヒカルは伊角の話題がヒカルが碁を打ってないことにいって困った。伊角はヒカルが打たなくなった原因は、ライバル視していたアキラが強くなって追いつけなくなったのかと言い出した。ヒカルはアキラは関係ないといいつつも、「追いつけない」とはどういうことかと気になって話を聞く。アキラはすでに三段に昇格、なんと本因坊戦の三次予選決勝まで進んでいた。
日本棋院。荻原雅彦九段と塔矢アキラ三段の本因坊戦三次予選決勝が行なわれていた。対局を観戦していた天野記者が控え室に戻ると、そこでは桑原本因坊が一服していた。桑原はアキラの対局の様子を天野に尋ねる。現在の対局は難しい情勢にあるが、もしアキラが勝てば15歳プロ2年目にして本因坊リーグ入りという快挙になるため、天野は興奮を隠せない。今年の本因坊戦では、倉田が桑原に破れたものの、アキラの台頭も含めて「新しい波」を感じていた。ただ。桑原、元名人、緒方といったトッププロが注目していたヒカルは不戦敗を続けたままである。どうしたのだろう?と訝しがる天野に、桑原は何も心配していないという。「迷いも苦しみも必要じゃ」 ヒカルをプロの世界にひきずりだしたアキラが上を向いているかぎり、ヒカルは自分の向き合うべき相手の前に戻ってくる、と。その言い方ではまるでヒカルがアキラの宿命のライバルではないか、桑原はヒカルを買かぶりすぎでは?…と天野はいうが、桑原は「買かぶりなもんか 塔矢アキラ自信がそう思っておるんじゃから」と言い残して去っていった。
戻って、ヒカルの部屋にて。アキラがもう頂上近くまで来ていることに驚きの色が隠せないヒカル。そんなヒカルをみて、伊角はヒカルが碁への情熱を失ってないことを見抜く。だったらなぜ碁を打たないのかを問い詰める伊角に、ヒカルは碁をやめるのは自分の勝手だといい放つ。伊角は碁盤を持ってきて、ヒカルに一局打とうと詰め寄った。放っておいてほしいというヒカルに、伊角は自分のために打ってほしいと頼む。「進藤 覚えているか 去年のプロ試験 オレとお前の一局」


これで「伊角の碁」がうまく「ヒカルの碁」にリンクしました。数回にわたって丁寧に伊角さんの中国編を書いたのは、まずはこういう形で本筋に繋がったわけです。たぶんこれだけじゃなくて、もっと後で色々と関わってくるとは思いますが。…いや、「伊角の碁」を「展開に行き詰まった挙句、人気とりのために書いたエピソード」だと言ってる人もいたんですよ。「それは違う〜〜〜」といいたくて仕方なかったんですが、まあなんとも… 伊角さんメインのエピソードはヒカル中心の展開からすると異質なものではありましたが、今までの「ヒカルの碁」からすると、一見意味不明な布石が、後で別の手筋で重要な役割を果たしていることに後から気がつくことも多いわけです。そういう立体的な構成を自然に分かりやすくできるのがほったさんのすごさなんですよね。
私の場合は「ほったゆみ信者」というよりは、「ほったさんならこれだけで終わるわけがないっ!! 絶対何か後で関わりがあるんだっ」と思うあたり、「ほったゆみ陰謀論者」かもしれません… 小畑先生については信者状態かなあ。でもあれだけ美しい線をみせられたら… 今回も伊角をみつけたあとの気落ちしたヒカルの表情とか、うまいです。あと表紙もいいねぇ。

それにしても。ヒカルはまだ佐為のことを諦めきれないんだなあ… 部屋に戻るたびに、「ひょっとして」という希望を捨てきれないのかなあ、今でも。
伊角さんが眠りかけていたヒカルの「アキラへの情熱」を刺激してきましたが、うーん、これだけでは正直いってヒカルが立ち直るにはまだ決定打に欠けるかあ、と。だって、その直前にはヒカルの頭を「佐為が戻ってきたかも!!」という望みが一瞬占めてたんですよ。まだこの段階では「佐為が戻ってこなくてもいいから碁を打ちたい」とまでは思えないかと。しかも、あの伊角さんのアテ間違いの一局、ヒカルも納得しきれなくて佐為と一緒に打ちなおしをしたわけで。佐為との思い出に繋がるわけだから… まあヒカルにとっては碁はどんなものでも佐為と結びつく記憶といえばそうでしょうが。予告では「伊角との会話の先に見え始めたヒカルの明日とは!?」となっていますが。
ただ、この伊角さんの押しが決定的な何かに繋げる役割を果たすのではないかと思います。きっと、夜明けは近い。

ヒカルが立ち直るための決定打は…これが過ぎたら、次のポイントは8月のアマ碁世界大会じゃないかと思っています。因島編ででてきた周平さんの他、saiとtoya koyoの対局を観戦した人たちがまた一同に会するのですから。佐為は消え、ヒカルは佐為を失った悲しみを誰とも共有することができない。でも、囲碁を通して、saiのことは多くの人が知っている。そのことをヒカルが知ることで、なんらかの救いにならないかなあ…
もしくは、saiとヒカルが深い関わりを持つことを知り、対局を通じて深い世界を佐為と共有できた名人。あの人なら、バカバカしいとしか思えない「囲碁の霊」の話もそのまま受け入れてくれるんじゃないかと思うんですが。

それにしても桑原先生、おいしいです。生き様がしっかり皺に刻まれてるなあ、という感じがします。遠くから本質を見極める力を持っているような。さらに大きくなるためには苦しみ、迷うことも必要。戻ってくるまでじっと待てばいいだけ。
名人は引退したものの、桑原先生はまだまだ元気なようです。若い者とは貫禄が違うし、なんか緒方さんまだまだ勝てそうにないよ、このままでは…

私が心配していた伊角さんのビザは、中国で書きかえたそうです。やはり後でフォローがありましたか。
それにしても楊海さん、MDプレイヤー残念でしたね〜。楽平くんはすっかり伊角さんに懐いたようですが、お別れのときには寂しがったのかなあ。いずれ国際棋戦で和谷くんと楽平くんの顔合わせとかもありそうですが、楽平くん和谷くんを敵愾心燃やしたりして。だって、伊角さんはなんだかんだいって、自分の向こうにいつも別の人の姿をみてたんですから、それに気がついてたらいい気はしないでしょうとも。はやくそういう話も読みたいなあ。

おまけ。囲碁データベース日刊囲碁822に依田名人が自分の棋譜が「ヒカルの碁」に使われたことについての話が載っています。「ヒカルの碁」で使われている棋譜はストーリーに合わせて日本棋院編集関係者で用意するんだとか。


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