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【ヒカルの碁 第166局「社 敗れる!」】 02/09/30


まずは今週のダイジェスト。
・アキラはまずヒカルの優勢を確認するが、手順が全くわからないので控え室に戻る。
・そんなアキラに気づく越智くん。相変わらずヒカルのことしか頭にないアキラに苛立つ。
・越智vs和谷は越智くんの中押し勝ち。越智くんは和谷くんにイヤミを言い、和谷くんはさっさと帰ろうとする。しかしヒカルと社くんの対局をみて固まっている越智くんをみて、和谷くんも盤面をみて驚く。
・控え室に急ぐ二人は、ヒカルと社くんの対局を一手目から並べてもらい、その内容に驚く。倉田さん、アキラ、棋院の渡辺先生や他の人たちもみな社くんを賞賛。越智くんもそれに気がついていた。
・そこに出版部の小瀬村が北斗通信システム企画室長の戸刈氏と共にやってくる。中国・韓国は代表が決まったので、日本も決まり次第パンフレットを作るらしい。
・社くんが投了して対局は終了。しかし越智くんは社くんと代表の座をかけて対局させてほしい、自分も皆もこのままでは納得できないから…と申し出する。
・突然の話に、社くんも含めて皆驚くばかりだった。

個人的には代表になるのはヒカルと和谷くんだと思っていたので、予想が外れてしまいました。さすがにほったさんの作る物語は私程度が簡単に筋を読めるようなものじゃなかったです。

今回は越智くんの気概を感じさせた話でした。個人的にとても楽しみにしていた、対局後にアキラはヒカルになんて声をかけるか、社くんとヒカルはどんな会話を交わすかは、越智くんの申し出の衝撃で全部飛んでしまいました。(この騒動が終わったあとに、描写はなされるとは思いますが)
越智くんは口は悪いし、性格も「友達になりたいなあ」とは思えないものではありますが、でも悔しさから目をそらさず、それを自分が強くなるための力へと変えることができるあたり、いいキャラだなあと思います。(今回、和谷くんのヘタレ描写との対比が絶妙です) 越智くんは回りの人が社くんを持ち上げるのが悔しくて申し出したわけではなくて、自分でも社くんの強さをちゃんとわかっているからこそ「たまたま強いヤツに当らなかったから代表になれた」と自分で思いたくないから、ああいうことを言い出したのはないでしょうか。越智くんは社くんが自分より強いことはわかっていても、でもきっと「勝つ」つもりであの発言をしたんでしょうね。どんなに相手が強いとわかっていても、気持ちで負けていてはダメ。そういうところ、今回の越智くんはカッコよかったなあ、と。
かつてアキラにから受けた屈辱(全く棋士として相手にされてない)を乗り越えて強くなってきたわけです。以前、越智くんはアキラに「地ばかりを気にしすぎ、もっと攻めは厚みに働かされるべき」というような指摘を受けたわけですが、前回の描写では越智くんの攻めの「厚み」について述べられていますから、そのあたりはクリアできたんでしょうね。それでも目の前に高い壁があることに気がついて… でも逃げずに挑もうとする姿勢がある限り、越智くんの成長は今後も続いていくのではないでしょうか。

とはいえ、越智くんと社くんの対局が実現したらまず間違いなく越智くんが負けるでしょうが、問題はその申し出が受け入れられるかということです。少なくとも社くんはチャンスが自分だけもう一度増えたことを喜ぶタイプではなさそうなので、その申し出に飛びつくとは思えません。(でも越智くんの気概を感じて勝負を受け入れるという描写ならありそう。) 問題は棋院のあの先生がイレギュラーな話を受け入れるかどうかですが… 今回、スポンサーである北斗通信システムの企画室長・戸刈さんがすぐ近くまで来ていることがポイントかもしれません。スポンサーがOKを出せばGOを出しやすいですし。なるべく早くに代表を決めなくてはいけないとしても、越智くんか社くんかになるのであれば、両方の写真をとっておいて、後で電話で「代表は彼になりました」と教えれば済むことですし。対局開始は3時からで、持ち時間1時間半ですから、現在は6時過ぎでしょうか。それからひと勝負というのは大変ですが、時間的に不可能ではありません。社くんがこの日、日帰りのつもりだったら困るでしょうが、宿は誰かの家に泊めてもらえばなんとかなるし、新幹線の切符は翌日でも使えますから。(指定席には座れなくなるけれども)
今回の最終予選の参加者や北斗杯関係者たちは社くんの力を皆認めているので、社くんだけ2回チャンスがあることを「ズルい」とは思わないでしょうし。
それらを考えると対局は実現するんじゃないかなあ。そうなったら北斗杯代表は、アキラ、ヒカル、社くんになりますね。これは楽しみです。

さて、その戸刈氏ですが、彼は囲碁には興味がなく、日本が負けても別に構わない(むしろ負けてほしい)と思っていることが以前のエピソードで描かれました。その彼が碁打ち達の情熱を目の当たりにしても…いや、かわらないでしょうね。すでにしっかりとした芯を持っている大人のビジネスマンですから、そう簡単に揺らぐような柔な価値観なんぞ持ってないでしょう。でも少しは碁に興味がでるかもしれませんが。

ヒカルの強さというのは、今のところは棋譜には残っていないために対局した人たちが感じているだけですが、今回のは多くの人が現場に立ち会いましたし、その刺激的な内容ゆえに多くの人に伝えられるんじゃないかと思いますが… 週刊碁に棋譜がのったりしないのかな?

私が和谷くんが代表になると思っていたのは、和谷くんのヘタレ描写が連載第一回からずっと続いていたことでした。こうやって徐々に精神的に弱くなっていくのであれば、なまじっかなショックでは自分の今の姿のダメさに気がついて立ち直ることはできないだろうと考え、その大きなショックは「北斗杯でズタボロにされること」なのではないかと思ったのです。和谷くんは結局代表になれなかったわけですが、その負けた後の描写でも「逃げるように帰ろうとした」ように、代表落ちが有効なショックになってないんですよね。(このあたり、越智くんの自負心との描写が対照的です) 越智くんの気概を見せられて自分の間違いに気がつく…というのもショックとして弱そうだしなあ。
このままでは和谷くんは「ヤムチャ化」してしまいそうですが、今までの和谷くんのダメ描写はほったさんの意図的なものに思えますから、彼がそこから抜け出せるきっかけもエピソードとしては現れると思うのですが… でもそれがどんな話になるのか、全く予想がつきません。本田くんのように、小さなショックであれば、それから気持ちを立てなおすエピソードが短くてもいいんですが、和谷くんの気持ちが弱くなっていく描写はかなり長いですからね… 少なくとも伊角さんのプロ試験アテ間違い→ギリギリで落ちる→中国修行くらいの分量はないと、今までの描写とのバランスがとれなさそうだし。うーん。


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