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【アニメ ヒカルの碁 第36局「オレの名は」】 02/06/23

白熱するヒカルと秀英の対局。そこにやってきたのは、海王中囲碁部の顧問のユンだった。ユンはいつもと違う雰囲気に、何が起こったのか碁会所の客に聞いた。韓国の研究生と日本の院生の対決だと聞いて盤面を見にいったユンは、ヒカルをみて1年前にあれだけヘタだった彼が現在は院生だということに驚いた。最初にヒカルをみたときにはその技量に驚いたが、2度目の対局ではがっかりさせられた。それは自分だけではなく、アキラも…
秀英とヒカルは互いに「コイツには負けない」と気迫を持って応酬していた。そんな様子を佐為は嬉しそうに眺める。ヒカルと秀英の対局は諍いから始まったが、なんとも心躍らさせる碁になっている。どうしても勝ちたい一戦なのに無難な手を選ばない。なんという伸び盛りの時期の眩しさよ… しかし、勝者はひとり。最後はどちらがヨミ勝つのか…
形勢はヒカルの方が少し不利だった。そしてヒカルが打った一手、ユンは意図がわからず、秀英や和谷は失着(間違った手を打つこと)だと思った。しかし佐為は微笑んでいた。佐為だけにはヒカルの意図がわかっていたのだ。ここにいる誰よりもヒカルは上をいっている、と。
対局が進んで秀英は不意に気がついた。先ほどの悪手と思えた一手がここになって絶好の位置につけている。戸惑う秀英。和谷や伊角もやがてヒカルの意図に気がついた。先ほどの一手は左上の攻防を睨んでのものだったと。あの次点では部分的にヒカルが損なワカレ(局面が一段落した状況)だったのは承知の上だったのだ。今はヒカルの形勢が有利になっている。ギャラリーのおじさんたちも、あの時のヒカルの一手はこの局面まで読んだものであったことを知って驚いていた。しかし秀英も粘り、白熱した対局は続いた。そして終局。結局ヒカルが1目半差で勝利。激しい戦いの興奮がギャラリーたちを包みこんでいた。秀英は悔しさをこらえきれず、大泣きをしてしまう。ここしばらくは投げやりになってたから負けてもここまで悔しくはなかった。挑発されて秀英は本気になったが、そんな秀英にヒカルは互角に渡り合ってきたのだ。そう、あくまでも互角、負けを認めたわけではない。秀英は誓った、今度はプロになってコイツと戦いに日本にくる、と。
そして泣きながら秀英はヒカルに「お前の名前!!」という。ヒカルは力強く、「オレの名前は進藤ヒカル」と答えた。碁会所のマスターはこれでよかったのだと思った。今までみじめさから目を背けていた秀英だったが、今回の対局でちゃんと正面から向きあうことができた。秀英はこの日で日本から帰るだろうけども、きっと彼はこれから伸びるだろう、と。
秀英は泣きながら、オジさんたちに連れられて席を立った。そしてヒカルの側にユンがやってくる。ヒカルはユンのことを覚えてなかったが佐為が教え、そしてユンも自分から海王中の囲碁部の顧問をやっていると名乗った。ユンは今回の対局でヒカルに感服したことを伝えた。ユンは3回ヒカルの対局をみているが、1度目小学生のヒカルが中学生に混じって大会に出たとき(実際に打ったのは佐為であるが)の見事さにしたが、2度目のアキラとの対局(これは途中から当時ヘボだったヒカルが打った)には落胆。そして3度目の対局に驚きを隠せなかった。ヒカルはユンが佐為ではなく、まさに今日の自分を誉めてくれてることに気がついて喜んだ。
ユンは、1度目のヒカルの一局、あれは幻かと思えたが今ならあの一局は確かにヒカルが打ったものだと思えると告げた。佐為はその言葉を聞いて凍りつく。ユンは言った、「私もまた心に刻もう 進藤ヒカルの名を」
碁会所からでて、ヒカルは和谷や伊角と別れを告げた。いよいよ来週からはプロ試験の本選が始まる。試験会場での再会を約束した。ヒカルは満足そうだった。なんといってもユン先生が佐為の打った一局を、「ヒカルが打った一局」だと思えるほどにヒカルのことを認めてくれたのだ。ユン先生が見てるのはヒカルであって、ヒカルの中の佐為の幻ではない。いずれアキラの中の佐為だっていつか消してやる。「オレの名前は進藤ヒカル」
…一方、佐為は「いない?」「消す?」とかすかな不安を感じていた。


今週のアニメのデキには満足でした。絵も止め絵は大体きれいだったし、対局にも緊張感があってよかったです。秀英の泣きっぷりもよかった。
前回と同じく原作1.5話をアニメの1話にしてたんですが、間延びした感じもなかったですし。セリフなどはほぼ原作と同じでしたが、対局シーンは原作では盤面の一部しかでなくてわかりにくかったものが、アニメでは盤面を俯瞰しているので対局の流れがわかりやすいのがよかったです。ヒカルのあの一手にしても、原作では何故「悪手」だと思われたのかわからなかったんですが、たしかにすぐにとられちゃうし、自滅するだけの一手にしか一見みえませんもんねぇ。なるほど。

原作との違いです。
(1)ユン先生の服装
原作ではボーダーTシャツに雪駄という「近所に遊びにいいきます」なだらしないカッコでしたが、アニメではワイシャツにネクタイをしめてました。このカッコは海王中でのシーンでよく使われてましたから、設定画の流用なのかな?
(2)対局シーンの解説
ヒカルの一手が効果をあげたあとの二人の対局シーン、原作ではユン先生や碁会所マスターの解説が少しあったですが、それがカット。アニメの場合、音楽と石を打つ音のリズムで緊張感を出せているので、なくてもよかったと思います。
(3)対局終了、整地に。
お互い顔を見合わせて、言葉も交わせず整地に入るシーン。原作にはなくアニメオリジナルですが、これはなかなかよかったです。
(4)お名前の名前だよ
アニメでは秀英くんは日本語を喋れるのかそうでないのかよくわからない描き方でしたが、原作では韓国語でヒカルに「お前の名前だよ!!」と韓国語で聞いたあとに「YOUR NAME!!」と通訳を待たずにヒカルに問いかけます。意味がわかったヒカルは、名前を日本語で名乗る、と。
(5)席を立つ秀英
おじさんたちに帽子をかぶせてもらい、泣きながらもヒカルをじっと睨みつけながら去ってゆく秀英と、その秀英の視線を身じろぎもせずに受けとめるヒカル。ここはアニメオリジナルですが、ふたりの互いをライバル視する気持ちがうまく伝わってくる演出でした。
(6)佐為の不安
原作ではかすかな不安を感じた佐為に、ヒカルは振りかえって無邪気に「佐為!今夜もうとうな!いやっちゅーほど!」と言います。佐為もそれを聞いて満面の笑顔でヒカルを追いかけます。「…気のせいですよね、きっと」と自分の不安を封じこめて。
アニメではこのシーンがない方が余韻があってエンディングに繋がりやすいと考えてのカットなんでしょうか。でもあのシーンがあった方が、逆に不安が高まるんですが。とりあえず不安を棚上げにした佐為を「大丈夫かなあ?」とみてる方がハラハラするというか。

今回は、今までの伏線が一度集約し、ここからまた起点となるターニングポイントとなる話です。原作を読んでたときに、秀英くんがでてきたのは将来の日韓戦を睨んでのライバルの顔見せかな?程度に考えていました。それが突然ユン先生がでてきてびっくり。ユン先生が韓国人だったのはそのためだったのかー!!と。ユン先生が韓国人であることは、原作12局、アニメでは第6話にあたりますが、そこですでに判明しています。昔はユン先生が韓国人であるのは、アキラとの対局で韓国の囲碁事情の話題を出すためかな?くらいにしか考えてなかったんですよ。それが、ヒカルと秀英くんとの対局の場に顔を出すのが不自然じゃない設定にするためだったとは。
それはわかっても、「あ、ユン先生の役割はこの対局のことをアキラに伝えることなんだろうなあ」としか思ってなかったんですが… まさか佐為の存在不安のトリガーになってしまうとは。

「ヒカルの碁」の構造でおもしろいのは、ヒカルとアキラの「追いかけっこ」ではないかと私は考えています。「誤解」と「思いこみ」と「すれ違い」が物語を加速させる。なぜ誤解が生じたかといえば「佐為の存在」。ヒカルが自らの力で打ちたいと思うようになったのは、アキラにしても名人にしてもヒカル自身ではなくその中にいる佐為をみてて、ヒカルはそれを不満に思い、「自分の実力で認めてもらいたい」と気持ちが強くなったためでした。
ヒカルは佐為のことはもちろん大好きでしょうが、それと碁打ちとしての自分を、佐為ではなく自分を認めてほしいという気持ちは別でしょう。今回のアニメでの「アキラの中の佐為を消す」というヒカルのセリフは残酷といえば残酷なセリフですが、ヒカルの年齢的なことや、今までの経緯を考えるとそういう言葉がでちゃうのも無理はないかと…
今はまだ佐為とヒカルの齟齬は表面化してませんが、いずれヒカルの碁打ちとしてのプライドと、佐為の自負心はぶつかることでしょう。ふたりの意地がぶつかったときに、物語はどういう方向に進んでいくんでしょうか。




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