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【アニメ ヒカルの碁 第38局「挑戦者たち」】 02/07/07

プロ試験第七戦。ヒカルは椿との対局だった。試験会場入り口で待ち構え、ヒカルにプレッシャーをかけようとした椿をヒカルは軽くいなし、逆に「今度バイクに乗せてね」と切りかえしたほどだった。ヒカルが本当に変わった、と椿が呟くのを聞いて、越智は飯島もそんなことを言っていたなと思い出していた。
この日の対局のお昼休み。昼食後、ヒカルと椿の会話はお昼休憩の手番はどっちがいいかという話になる。「どっちでもいい」と答える椿にヒカルは予選のときと言ってることが違う、と文句を。椿は本選は予選よりも時間が長いからお昼休みはゆっくり休んだ方がいいのだという。椿の声の大きさに、飯島が「うるさい」とクレームをつけた。「…のん気そうだなアンタ プロ試験に落ちても職場に戻ればいいってことか」と言う飯島に椿は戻れる職場はないと怒り出した。予選は数日で終わるから休みを貰えたが、本選は2か月ずっと続くために辞めざるをえなかったのだ。椿以外の他の受験生たちでも、プロ試験のためにずっとフリーターをやっていたり、また遠く長野から通っていたりと、それぞれ碁のプロを目指すために苦労をしたり何かを犠牲にしたりしてきているのだ。才能も境遇も人それぞれだが、結局「たくさん勝った者」がプロになれるという単純な話なのだ。…そしてヒカルは椿相手に勝利をおさめた。
第8戦、越智、伊角、和谷、ヒカルは全勝をキープしていた。
第9戦、全勝組の中で和谷が足立相手に一敗を喫した。それを知って伊角動揺する。そんな伊角をみながら、本田は和谷は負けたといってもたかが一敗、自分だってまだニ敗だと呟いて去っていった。
そして翌日の夜。アキラが越智の家に指導碁に行く日だった。アキラは電車の中で、ヒカルの今の実力を知りたいと渇望し、背後にヒカルが迫ってきていることを実感していた。
アキラが越智の家に到着。さっそく指導碁が始まった。越智はアキラをみて普通のヤツだと最初は感じたが、石を持ったアキラの真剣なまなざしに気おされてしまった。
対局後、アキラは越智の力に失望していた。あれだけの実力があれば院生トップだろうが、自分の代わりになれるほどの力はない。もし越智が自分ほどの力があれば、越智とヒカルの対局で、自分とヒカルが対等なのがどうかを見極めることができるのに…とアキラはがっかりしていた。対局後トイレに長いことこもっていた越智を心配した祖父が連れて部屋にやってきた。越智は苛立ちながら祖父を部屋から追い出した。
越智はアキラの強さに驚きを隠せなかった。なるほどあれだけまわりが騒ぐだけのことはある…と。プロになったら彼はライバルなのだ。アキラは越智が真剣対局を求めていたように思えたので指導碁ではなく、真剣に打ったということを話す。それから感想戦に。あくまでも地にこだわる越智に、「厚みは攻めに働かせないと」とアドバイスをしながら、アキラは考えごとをしていた。ヒカルと越智の対局まで一か月半あるから、越智を鍛えて少しは引き上げることができる… アキラは越智から情報を引き出そうと、何気なく知らないふりでプロ試験の話題を越智にふった。しかし越智からヒカルがこの日の第10戦でヒカルが負けたということを聞いて、アキラは動揺した。ヒカルのことを明かに気にしているアキラの言動に、越智は昔に院生の間で流れていた噂話を思い出した。塔矢アキラが進藤ヒカルをライバル視している、と… しかしヒカルが二組でもたもたしていたために誰もそんな噂は信じなかったのだ。越智は自分にとっては格下であるヒカルばかりにアキラがこだわるのを不愉快に思った。越智とヒカルが対局する最終日まで自分が時間のつくかぎり面倒をみようとアキラが言い出した。越智はアキラの目的が自分をモノサシにしてヒカルとの実力をはかろうとしているのだと気がつき、怒り出し、アキラを追いかえした。
越智は「なんで進藤?」と自問自答する。ヒカルはいつの間にか一組にきて、上位にあがり、そしてプロ試験は一敗という好成績できている… 「アイツかわったよ」という飯島の言葉を越智は思い出していた。
第11戦、越智と伊角は全勝をキープ、和谷とヒカルも一敗を保っていた。本田と伊角は一緒に帰りながらあれこれ話しこんでいた。伊角は今年こそは受からないとダメだと言う。伊角は今年は18歳、プロ試験は30歳まで受けられるとはいえ、院生でいられるのは18までなのだ。本田は次の伊角とヒカルの対局ではヒカルが勝てばいいのにと軽口を叩いた。本田はなんとか二敗をキープしているものの、上位陣が崩れてこないと自分の食いこむ余地がない。ヒカルはどこかで崩れるだろうと本田はみていた。伊角はヒカルには負けられない、と気持ちを新たにする。
一方ヒカルは、自宅で佐為と碁を打っていた。この前はおなかを壊していたためにヒカルは一敗してしまったが、体調も精神面も万全であればヒカルが伊角に勝つことも可能だ、と佐為はいう。ヒカルはその佐為の言葉に「集中しないと負けるぜ?」と佐為を挑発してしまうほどに、戦意と自信に溢れていた。
そして第12戦。越智はヒカルの背中をみながら、アキラが越智に「進藤をどう思う?」と聞いてきたことを思い出していた。越智はヒカルはどうせ伊角に負けるだろうとたかをくくっていた。一方ヒカルは、さすがに緊張の色が隠せない。そんなヒカルをみて、佐為は予選のときにヒカルがやっていたおまじない…手のひらに白星ハンコを押す…のはどうかと言い出し、ヒカルもその気になって控え室からでた。そしてちょうどやってきた伊角と玄関でばったりとであった。


原作のときも「アキラ、ヒカルのことになると周りみえないなあ」と思ったものですが、それに声がつくとさらにその印象が強くなります。あれじゃ越智くんが気を悪くするのも無理ないでしょう。だって、目の前の人は自分をみずに、別の人のことが頭のすべてをしめているんですから。
でもそんな周りくどい手段を使ってヒカルの力をはからなくても、直接会って対局すれば済む話なんですよね。アキラが「もう会わない」と自分から告げたために、身動きがとれないのはわかっていますが。それにしてもアキラって本当にヒカルのことしか見えてない。「伊角という人」呼ばわりってことは、アキラは伊角さんを個人認識してないんでしょうか? 去年、2か月に渡りプロ試験を共にしたのに… 眼中になかったんでしょうねぇ…
越智くんとアキラとの邂逅は一度目はこういう結果になりましたが、これはまた色々と物語に影響を与えるわけで…

今回のエピソードで椿さんの印象が変わった人も多いのではないでしょうか。私も予選の話の時は「なんかヘンな奴」というマイナスイメージでしたが、それまでの生活を捨ててプロという夢に挑んだわけです。しかも、アニメでは話にでてませんが、椿さんの年齢は30歳。(原作ではプロ試験の勝敗表がジャンプ公式ページに物語の進行と同じくして載せられていて、それで年齢やフルネームが判明しました)プロ試験受験資格がある、最後の年なんですね。もう椿さんには「来年」はなく、しかも帰れる職場もない。
他の外来の人達もみずからの人生をかけて試験に挑んでいます。でもそんな事情は関係なく、勝ったものがプロになれる「わかりやすい」残酷な世界なのですから。「ヒカルの碁」は、そういうシビアな世界なのです…

越智くんとアキラの感想戦のふたりのセリフのやりとりは、ふたりの囲碁感をうまくあらわしているそうです。これは「ヒカルの碁勝利学」(石倉昇 集英社インターナショナル)の受け売りなんですが…(注意:この本にはアニメ未放映分のコミックスの内容に言及していますので、コミックスを読んでない方は注意をしてください。)
越智「ボクの敗因は分かっています。ボクはこの二手で強引に右辺を囲いに行ったんだけどこれが悪くて…出切られてしまってはもうダメだ。やっぱりノビなくてはいけないんだ」
アキラ「確かにそれもあるけれどもキミは少々地を気にしすぎるんじゃないかな。厚みは攻めに働かせないと…」
と、アキラは越智くんが地ばかりに気がとられていることをアキラは指摘しています。
囲碁は自分の石で囲った陣地(地)が多い方が勝ちです。でも「地」を気にしすぎていたらダメで、大局観を持って「地」と「厚み」のバランスをとらなきゃダメだそうです。前述の石倉さんの本では、「地」は「実利=目先の利益」、「厚み」は「将来への投資・夢」と喩えられています。先々を見越した上で(大局観を持つ)、目先のことと将来への投資にかける力をどうバランスとっていくか… 初心者や若い人はどうしても目の前の利益に目を奪われがちですが、本当に強い人はその「大局観」が優れているとか。もちろんその大局観を実現するだけの力が伴っていないとダメなんでしょう。

アニメの絵は、今回も結構きれいでした。特にアキラはいい感じ。このまま作画が安定してくれたらなあ。
原作との違いは…今回はほぼ原作そのままでした。アニメオリジナルは、アキラと越智くんとの対局を始めようとするシーンですね。原作では玄関入った次には対局終了、越智くんがトイレにこもってました。

次回はいよいよプロ試験中盤のクライマックス、ヒカルvs伊角さんです。お楽しみに。


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