「嗤う伊右衛門」ネタバレ感想。

●「嗤う伊右衛門」京極夏彦[中央公論社](97/6/20)

ここからネタバレの感想です。
「小説すばる」の対談で、京極せんせは「嗤う伊右衛門」を書いていても怖くなかった、それにお化けも出てこないし…って書いてたけど、たしかに出てこないんですよね、お化けが(^ ^;)。
恐いのはオバケでも人間でもなくて、運命…巡り合わせ…ってことなのかなあ。
そういうあたりとか、蚊帳の扱いとか、そのあたりがなんだか「魍魎の匣」を思わせますよね。

…で、この話は、怪談ではなく、「純愛物語」だったのね(^ ^;)。
でも、それにしては、伊右衛門が岩をそれだけ思う気持ちは、もうひとつ腑に落ちないんですよね。
たしかに今回のお岩さんのキャラはおもしろいと思ったけど、身を引くあたりとか健気だなあ、とか思ったけど、でもそこまで伊右衛門が執着するほどなぜ惚れたんだろ?…というのが。
そのあたりの書き込みが足りないのでは?と思う。
あと、終盤は結構たたみかけるような展開になったけど、序盤と中盤がダラタラしすぎ(^ ^;)。
私はその独特のダラダラ感が、あの文章とあいまって不思議なにおいを醸し出すのがすごく好きだから別にいいけど、でももうちょっと構成が…
京極夏彦は「凄い作家」だけど、「うまい」って思ったことはないんだよね(^ ^;)。
やっぱり天然なんだろうなあ、この人は。
(関係ありませんが、宮部みゆきは読むたびに(特に短編)ひたすら「うまいなあ…」と感心してしまいます。楽しいとかよりも、これが先にきちゃうの(^ ^;)。これもこれでなんですが…)

さて、最後の…ですが、岩っていつの間にあの家に戻ってたんでしょうか?
そう思ってパラパラ読み返して考えたのが、伊右衛門が家の隙間をすべてふさいだあたりかなあ、と思うわけです。岩を納屋にかくまっていて、梅の目から岩を隠すために、簡単に外にでれないようにしたのではないかと。…いや、「香を焚いて異様なにおいがしていた」などから考えると、すでに死体となった岩を納屋に隠していたんでしょうか?(香はにおい隠しで。)
それは、伊右衛門が切ったのか、それとも岩は自害したのか。
「切れない」と言ってたら、後者かなあ、と思うけど…
わざとそのあたりはわからないようにしたんだと思うけど、この本を読んだ方、どう思いましたか?
よければメールをください。

…と、この感想をかいたあとに、ふと312ページをみたら、「辛櫃のごとき大きな桐の箱」…あ、ここか。納屋ではなく、ずっと家の中においていたんですね(^ ^;)。…ってことは、家を締め切ったのは、においが外にもれないように、とのことかなあ。なんたって、夏だもんなあ…


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