「運命のタロットシリーズ」ネタバレ感想。

●「運命のタロットシリーズ」皆川ゆか[講談社X文庫ティーンズハート](98/2/20)

…残酷な話です。
このシリーズでは、運命は「決定論」です。世界ができた瞬間にすべての運命は決められていて、それは変えられないものになっています。自分のこれから先が、どう努力しても変えられないとしたら……キツいですよね、それって。しかも、タロットの精霊たちには、時間を移動し、先を知る能力のある人たちがいます。何をやってもかえられないと知っているからこそ、《運命の輪》は中立を選んだんでしょうか。
決まった運命に逆らい、「改変」を企むプロメテウスたちと、それを阻止しようとする「ティターンズ」。このティターンズからプロメテウスに変わった人たちって、《女帝》とか(《女教皇》はティターンズの方だし)、《皇帝》にしても、そして《死神》にしても…本当に大切な物を失って、それを取り戻すために、運命に逆らおうとしてるんだろうなあ。それがどれだけむなしい作業か、わかっていても。
この運命についてだけではなくても、残酷なエピソードはでてきます。佐倉くんと初山さんと島津くんの泥沼の三角関係にしても、未来の唯との再会のエピソードにしても、「ここまでかかなくても」って思っちゃう位。未来の唯のエピソードは、高校のときの唯が生き生きした子だっただけに、余計残酷でした。「友達だからといって、すべての面を見せていたわけではない」…そりゃ、そうなんだよね。でも、それをああいう形で付きつけるのはね…それを書くからこそ、話に深みが出てくるんですが。

でも。自分の最愛の人を亡くし、また自分の最期を知っていても、あれだけ強く前向きに生きられる、《女帝》。ライコは、《女教皇》を経て、《女帝》になるんですよね。ライコがあの強さに辿りつく過程が楽しみです。インタビューで作者がこたえている、「決定論の世界の中でどう生きるか」の答をどう示してくれるか、楽しみ。

あとは、謎関係がどうなるか、だなあ…魔法使いの正体は誰か、とか。以前の協力者が《戦車》だとすれば……なんですかねぇ(^ ^;)???これがミスディレクションかもしれないですけど。まだ出てきてない精霊もいるし。あとは、《皇帝》の最後がどういう形で訪れるのか、またなぜ「タロットの精霊」が存在するのか。そういう部分の回答は全部示してくれるのかなあ。第二部の展開が楽しみです。


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