Frank Zappa plays The GUITAR


 ザッパのギターソロは、どのアルバムにも大量に詰め込まれていて、しかもどのソロも大変個性豊かであるので、どれが良くて、どれがお勧めであるなどは、なかなかいえない。
 しかし、ザッパにおいて「ソロを弾く」という行為は、それ自体「作曲」であるということがいえると私は考えている。したがって、ここでザッパのギターソロについて取り上げない手は無いのである。
 以下、微力ながら、ザッパの「特に凄い」ギターソロが聴ける曲とアルバムについ てあげつらってみたいと思う。

 なお、言うまでもないことだが、ここで紹介されているアルバムの選択基準というものは 特にない。全く主観的なものである。強いて言えば、アルバム全体としてギターの印象が 強いもの、といったところであろうか。とにかく、ザッパのアルバムには、何を聴いても ソロがてんこ盛りになっているので。


Frank Zappa plays "GREAT GUITAR SOLO" in Album


Hot Rats (1969)
 このアルバムでは、ザッパはとにかくギターを延々と弾き続けます。そのプレイは、 未来永劫まで続くかのようです。ときにはロックで、ときにはブルースで、またときには ジャズで。そして、このアルバムによって、ザッパはギタリストの地位を確立したと 言っていいでしょう。このアルバムの発売当時のメロディー・メーカーでの人気投票で、 ザッパはギタリスト部門で第4位にランクされています。
 このアルバムの1曲目のWillie The Pimpに関して、元ロキシー・ミュージックのフィル・ マンザネラが面白い発言をしているので、ここに引用しておきます。
…「Willie The Pimp」でも彼のソロはまるで永遠に止まらないんじゃないかと思えるようなものだ。 僕もオリジナルに沿ってプレイしてみたけど、ドッと疲れ果てたところで止めざるを得なかったよ。 ザッパは1オクターブの中で普通のギタリストがプレイできる音の2倍の音符をプレイできる。 彼はそれに5thと9thを加えて滑らかのサウンドにし、さらにちょっと小休止という時に ワウワウをうまく使って止めるんだ。
 フィル・マンザネラがザッパの曲を弾いてみたというのも面白いですが、この発言からも、 ザッパがいかに「とんでもない」プレイをする人かが伺われます。

Burnt Weeny Sandwich (1969)
 このアルバムでは、ザッパのソロというのはSide.1の4曲目のTHEME FROM BURNT WEENY SANDWICHと 6曲目のHOLIDAY IN BERLIN,FULL BLOWNにでしか聴かれませんが、この2曲のソロが また凄い。とても幻想的というか幻惑的なソロです。
 THEME FROM BURNT WEENY SANDWICHは、1曲丸ごとギターなのですが、バックの ビートの陰から出たり入ったりするアバンギャルドなパーカッションと絡み合って、一種独特の 雰囲気を醸し出しています。
 そして、HOLIDAY IN BERLIN,FULL BLOWNでは、絶妙なワウ・ペダルのプレイがたまりません。 通常の、ビートに合わせたようなワウと違って、メロディーに絡むそのワウは、表情に富んでいて 素晴らしい。
 なお、使用されているギターは、内ジャケットにも写真がありますが、フルアコかセミアコ だと思われます。

Chunga's Revenge (1970)
 Side.1、1曲目のTransylvania Boogieでのプレイについては、アルバム紹介の中でも書いたが、 まず何より目まぐるしく変化するビートとそれに絡むギターがが素晴らしい。ザッパの ギター曲の中でも代表曲の一つであろうこの曲では、ギターのトーンがまた特徴的である。 とにかく、低音をありったけ絞ったようなギチギチのトーンに、思い切りデッドな雰囲気で、 お得意のワウを存分に効かせトーンを切り替えながらメロディを弾き分けるそのプレイは、 とっても凄いです。これが東欧的なスケーリングと相まって、異国的な雰囲気をたっぷり 味わうことができます。
 また、Side.1、2曲目のRoad LadiesやSide.2、3曲目Chunga's Revengeでは、 ザッパのハイテンションなソロが堪能できます。
 あと、忘れてならないのが、Side.1、4〜6曲目のThe Nancy & Mary Music(これは ライブ録音)では、とてもソリッドでかっこいいリズムギターを聴くことができます。 できればもっと長く収録して欲しかった(そのパートは途中でカットされてしまうのです)。

Over-Nite Sensation (1973)
 このアルバムでは、Side.1の1曲目のCamarillo BrilloとSide.2の2曲目の Dinah Moe Humm以外は、全てザッパのソロが入ります。
 面白いのは、それぞれのソロで全部ギターのトーンが異なるという ことです。Side.1の2曲目とか3曲目では、コンプレッサーか何かでアタックを強調したような、 「パタパタ」した感じのトーン。4曲目のFifty-Fiftyは、ぐずぐずとした感じのトーンで もの凄い早弾きをしています。どうやって弾いているか一度見てみたい。Side.2の1曲目 Zomby Woofは、とてもクリアでトレブリーなトーンで、何かこう、不思議なアーミングを 駆使してぐねぐねとしたギターを弾いています。このアーミングは、やっぱりギブソンSG なのでしょうか。そして、最後のMontanaでは、ディストーションを効かせたソリッドな トーンが使用されています。
 このアルバム、アナログ版では高音がカットされたような感じで、全体的に妙にモコモコ した音だったのですが、CD版ではその辺が修復されていて、とてもしゃきっとした仕上がりに なっています。

One Size Fits All (1975)
 このアルバムでは、ザッパのギターの中でも、わりとロックっぽいフレーズがたっぷり聴けます。
 聴きどころは、何といってもSide.1、1曲目のInca Roadsですが、これについてはアルバム紹介の ところでたっぷり書いたので、ここでは他の曲について。Side.2、2曲目のCan't Afford No Shoes では、ノリの良いロックンロールギターが聴かれます。こういうソロは、ザッパでは珍しいのではないかな。 また、4曲目のPo-Jama Peopleでは、なにやらワウ・ペダルで中域を強調したような、そしてサスティーンを 多少殺し気味の「ジュグジュグ」したトーンでの、延々と続くソロが聴かれます。Side.2では、4曲目のAndyで、 ザッパのソロが聴かれます。
 このアルバムでは、ソロに止まらず、ザッパの全てのギタープレイがロックフィーリングに溢れていて、 とても"いかした"出来になっており、ザッパのギターを堪能することができます。

Sheik Yerbouti (1979)
 中期ザッパの記念碑的存在であるこの作品でも、勿論ザッパ先生は凄いソロを聴かせてくれます。 ただ、ソロが収録されている曲数としてはそんなに多くなく、Side.2、3曲目のRat Tomago、 7曲目のThe Sheik Yerbouti Tango、Side.4、2曲目のYo'Mamaという3曲だけでしょうか。
 しかし、この3曲のソロは凄すぎる!
 Rat Tomagoでは、あくまでハードに、ソリッドに、引きずるようなヘヴィさでもってソロが弾かれます。 並のハードロックやメタルのギターなんか「屁」でもありません。金属の塊が次々と迫ってくる、 そんな破壊力があります。これに対応できるのは、'70初期のRobert Fripp (KING CRIMSON) くらいではないでしょうか、って、これではえらく評価が偏ってしまいますが。
 The Sheik Yerbouti Tangoでは、トレブリーなディストーショントーンで、初めはなにやらタンゴらしき フレーズを弾いているが、途中から調正が崩れ出し、最後にはフリーなソロになります。 ここら辺が聞きどころ。
 そして、極めつけはYo'Mama。アルバム紹介のところでも書きましたが、もうこれは文句無しに凄い。 ザッパの全ギターソロ(勿論、アルバムとして収録されたもののうち)の中でもベスト3に入るくらいの ものです。必聴です。
 因みに、これら3曲は、Steve Vai採譜によるTHE FRANK ZAPPA GUITAR BOOKに そのソロの楽譜が掲載されています。とても簡単に弾けるようなものではありませんが。

Joe's Garage ACT II&III (1979)
 CDでは、ACT Iと一緒にカップリングされていますが、ザッパのギターはACT II&IIIで堪能できます。 そして、この中でもACT III(実際には、どの辺がACT IIIであるかははっきりとしませんが)では、 ザッパのギターのオンパレードといったところです。トーンとしては、やや弱めにディストーションが かけられ、高域が強調された抜けの良い音で統一されています。このACT II&IIIの後半のほとんどで、 ザッパはギターを弾きまくります。
 そして、やはりWatermelon In Easter Hayのことは書かねばなりますまい。9/4拍子のゆったりとした ビートで奏でられるその偉大なソロは、全く、どんな言葉よりも雄弁で、まさしく、"MUSIC IS THE BEST"を体現しています。
 全てのロックの歴史を見渡しても、これに匹敵するギターはWoodstockのJim Hendrixのギターしかないと思われるほどです。
 因みに、この曲では、ほとんどギターの生音に近いトーンと、中域〜高域にかけてが強調された ディストーション・トーンとがバランスよく使われています。

Shut Up'n Play Yer Guitar (1981)
 このアルバムでは、ザッパはこれでもかといわんばかりにギターを弾きまくります。
 もうとにかく、3枚組のアルバムの全て(正確には、最後の曲を除く全て)がギターソロです。 だいたい、あのSteve Vaiがリズム・ギターでしか 参加していないということからしても、いかに 凄いかということがわかります(まぁ、これは単に構成上のことだろうと思いますが)。
 この、凄いソロが詰め込まれたアルバムの中で、ことさらに特筆すべき曲は、3枚組のそれぞれに 付けられたタイトル曲、Shut Up'n Play Yer GuitarShut Up'n Play Yer Guitar Some More、 それに、Return of The Son of Shut Up'n Play Yer Guitarです。ひたすら高みに 登り続けるそのプレイは、本当にエキサイティングで、神々しささえ感じます。このアルバムの日本語版の 解説で、ザッパの日本公演の時に、プレイするザッパの○○の部分が盛り上がってきて、これぞ プロのミュージシャンの姿である云々という話が書かれていますが、さもありなん、という感じです。
 とにかく、このアルバムに関しては、黙って聴いてみるしかありません。

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